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新生




秋は15分ほどで西の森を抜けて村へと帰っていった。魔物は勿論無視だ。そして村に帰ると魔物を解体している現場を横目に秋は自分の部屋へと帰っていった。


ギギィ…と扉が空き、自分の部屋として貸し出してもらっている部屋を見渡すと、一目散にベッドに駆けるとゆっくりと腰を下ろした。


「はぁ……今回の迷宮探索では色々と問題が浮き彫りになったな…」

『はい。私も未熟さを痛感するばかりです。あのキメラ如きに手こずるなどというみっともない所をお見せいたしました。お許しを』

「ああ、しょうがない。あの魔剣ではあのレベルの魔物に太刀打ちできないというだけの事だ。心配するな……俺の方も問題だな、魔力が圧倒的に足りない。上限を増やすことは難しいが、回復手段を豊富に用意してどうにかしないといけない。だが…スキルを創造するにも回復などの構成要素が足りない。最近は『スキルランダム創造』を使える程余裕を持ってはいない。だからこそどうするか……」

『マスター。問題とは言っても大問題という程ではないのではないですか?方法としては回復効果のある魔剣を複数用意する。もしくは魔力回復効果を高めるために魔剣群などで効果を増大させるなど、用途は様々です。それに迷宮を解析して気づいた事があるのですが、迷宮内には濃密な魔力が溢れているようです。そしてそれは階層が下になれば下になる程にどんどんと濃くなります。下に行けば行くほど魔物が強くなるのはその所為かと』

「それで?何が言いたいんだ?」

『迷宮内から魔力を吸収したらどうでしょうか。勿論回復効果と生成効果の両方を取り、マスターの魔力を最高率まで高めて魔剣を創造。質と量を両方兼ね備えた魔剣を創造してみればどうでしょうか』

「ほう……ああ後は、迷宮内の戦闘用の魔剣群に魔力を吸収させて俺に送らせるというのはどうだ?」

『それでしたらもっと魔力の効率が上がるでしょう。さすがですマスター』

「おお……それじゃあさっそく作ろうか。楽しみになってきた…ゲームをやっている時の感覚だ」


そして秋は案を練り直し、明日の迷宮攻略に向けて準備を始める秋。ベッドから憑き物の取れたような顔をして立ち上がり、『魔剣異界保存術』にて保存されていた『回帰剣:ウィズダム』と『福音刀:ウェルダント』を取り出すと、それを躊躇なく家の床に突き刺した。







秋は家の床に『回帰剣:ウィズダム』と『福音刀:ウェルダント』を突き刺すと、自分の魔力の値を確認する。


「今の自分の魔力は……11万。とりあえずある程度の魔力で回復効果を持つ剣を創造して回復を待ってを繰り返して、ある程度までは回復効果のある魔剣を創造し続けるか…」


秋はこれからの方向を決めると、目を瞑り創造のためのイメージを練る。


(せっかく11万もあるのだから、それなりの効果のある魔剣を創造するか)


どうせ回復するのだから、効果の強い魔剣を創造しようと決めた秋。そして


(効果の強い…なら単刀ではなく双刀や双剣がいい……イメージとしては役割を分けて、一つ一つの作業の効果を高めていく感覚で……)


そして秋は右手と左手を開く。想像が創造されていく感覚が見えると、ゆっくりと自分の魔力が吸われて形になり、右手と左手に熱い感覚を覚えていく。そして自らのイメージを魔力に乗せて全てが終わると、秋は目を開けるのだ。


「よし、出来た。」


こうしてできた双剣の名。それは『回復魔剣:ベルク―リ』。近くに存在するだけで一本は自らの力で魔力を生成し、そして一本で周囲の魔力を吸いつくし主に手渡すという凶悪な魔剣であり、魔力およそ8万を使い創造した魔剣であるが故に、効果も尋常ではない。


『マスター。先の魔双剣を創造したことにより、1万辺り13分だったのが1万辺り10分になりました。確かに強力な効果を持つ魔剣だと推測されます』

「了解した。このまま作り続けようと思う」


ちなみにだが、現在魔剣による効果を受けない素の魔力回復速度は16分。全ての魔力である30万が回復するまで凡そ8時間かかる計算になるのだ。そして『回帰剣:ウィズダム』と『福音刀:ウェルダント』を創造した13分。そして今回の『回復魔剣:ベルク―リ』を創造して10分。これは相当な進歩といえる。


ちなみに疑問に思ったかもしれないが、能力が違うのに同じ3分しか変わらないではないかという質問に対しては、そんなにうまくいかないのが現実の異世界なのだ。魔力回復効果を受けているのと受けていないのとでは天と地ほどの差があるため3分という大きな差が生まれてしまったのだが、魔力回復効果を大きくするというのはそれ以上に難しい。その難しいを超えて同じ様に3分という大きな時間を縮められたのである。これは大きな成果といえるだろう。


「了解。少し休憩してる。30分程休憩したら次の創造に入ろう」

『了解しました。私の方でも準備を進めてまいります』


こうして秋は改めてベッドに横になると、少し目を瞑り休憩の態勢に入る秋。そんな秋を魂の中から見つめながら、アルタもまた自らの進化の為に行動を開始した。







ここはアルタの魂の世界であり、アルタというスキルが見る心象世界であり、秋の魂の中ともいえる世界。そんな世界からアルタはいつも秋のサポートを行い、同時に様々な能力を行使するのだ。


魂の世界。そこは白の世界に様々な粒が転がっている。粒の色は黄金。その一つ一つが秋の記憶であったり、スキルの構成要素であったりしている。それが散らばっているこの世界こそ秋の魂の世界で、唯一人型を保っている存在が秋に作られた演算型スキルである『大賢者:或多アルタ』だ。



(許せない)



アルタにある思い。それは主に作られた至高のスキルである自分が、汚らわしい継ぎ接ぎの魔物如きに手こずったという事実に。


(許されてはいけない)


尽くす者としての忠誠と、やってはならない事実。一番重要な事は主の命令を何が何でも遂行する事。二番目に重要な事は主の意に反する事を絶対にしてはならない事。そして三番目に重要な事は…主のお手を煩わせてしまう事。


今回は3番目の重大な禁止事項に触れた。触れてしまったのだ。だが一番目に重要といえる命令を遂行するための苦渋の決断だったのだ。


(許してはいけない。許されない。尽くす者として許されない事を私はした)


アルタの心象世界で一人自問自答を繰り返す。それはアルタの存在意義。レゾンデートルを守るためにあるルールの三番目に重要な項目を、一番目を守るためとはいえ破ってしまったのだ。許される行為だとアルタは思ってはいない。


(では、どうするべきなのか?)


自らの存在は主の為に。そのために自分が生まれてきた事をアルタは知っている。そして今。その存在意義を自らで破ってしまった自分。そんな自分は今どうするべきなのか。


(進化するしかない。主は常に至高で、常に高みを目指している。だからこそ、私は隣に立つために、ありとあらゆる場所で可能性を掴む主以上に進化し、隣に並ばないといけない。だからこそ…私は…)


そう思った瞬間。体が動いていた。自らを進化するために探した。自らに合う事の出来る構成要素の数々。秋の可能性の半分程を担っているこの黄金の粒たちに、自分の可能性を当てはめて模索する。そう、ひたすらに。愚直に。


ただひたすらに構成要素と自分とをマッチングしていく作業。魂の世界を飛び回り、構成要素を探し続けるアルタ。


様々な構成要素を漁り、かき集め、それでも足りない。それもそのはずだろう。秋は構成要素を入手していない。可能性は未知だが、現実に限界はある。可能性が無限であっても、それを形にしていなければ意味はないのだ。儚い夢幻として消えていくだけなのだ。


(それでも、探すしかない)


アルタは諦めないのだ。ただひたすらに飛び回り、無限とも言える魂の世界を一から全て探し尽くす。そこには執念という感情が存在していた。


広大な魂の世界を飛び回る。見たことがない物を探す。魂の世界に時間というものは希薄だ。時空間には魂は左右されない。存在が確立していないからだ。だがそれでも、もし時間というものが魂の世界にあるのなら、アルタは何百年という単位を賭けてその可能性を探していたのだ。


そして――――見つけたのだ。見つけてしまったのだ。アルタの可能性。


何百年という単位を持ってようやく図れるアルタの努力。それは確かに結果という形で実を結んだ。ポツリと漂うたった一つの可能性。


そこは魂の最果て。秋の魂の世界の最果てに存在した。黄金の小さな光。確かに光るその光は、小さいが脈動していた。動いていた。それはアルタも、秋も見たことのない可能性。秋ですら知らない可能性。



――――そして、その可能性を。アルタは掴んだのだ―――



―――ビリビリビリビリッ!!!


突如襲い掛かる電流。アルタは闇へと落ちていく…。







(ここは……)


アルタの体は動かない。動かせない。だが確かに流れてくる物が一つだけある。自分が何なのかわかる。何をしていたのかもわかる。だが一つだけ何か知らない映像の様な物が暗い自分の頭を流れていった。


「……ねぇ。貴方。この子に名前を…」

「ああ、この子の名前は『秋』だ。単純な名前の方が、親に期待されずにスクスクと育つと思ってね」

「それに、貴方の子供ですもの。この子には必ず数奇な運命が付いて回るわ」

「ああ、そうだね…僕の子供。それはつまり。―――の子供。それには必ず数奇な運命が付く。僕は幸いにもなんとかなったが、僕の分までこの子が悲惨な目に合うのは…見たくない」

「ええ…だけど。例え―――だったとしても。私達が守るわ。私達にはこの子の為なら、何だってできる。この子を助けるために、命すらも投げ出せる」

「そうだね…これは―――の一族に生まれた宿命なのかもしれないが、それでも、僕はそんな物認めない。例え秋が―――であったとしても、守る。――として生きさせてあげよう」

「ええ、そうね……」







アルタはハッと目を覚ますと、ここがどこかはっきりとわかる。自分が直前まで何をしていたのかをはっきりと思い出し、そして頭に流れてくる謎の映像すらも思い出した。


(ああ、我らがマスターは数奇なお人だ。ですが尽くす主が誰であろうと、秋様に変わりはありません。私は全てを賭けて貴方に尽くします)


そうしてアルタは大事に抱えていたたった一つの未知の可能性を掬うように手に乗せると、それを胸の中に押し込んだ。


ゆっくりとしまわれていく未知の可能性。すると突如化学反応を起こしたかの様にアルタの体が黄金に発光していく。光は極光となり魂の世界を照らす。


そしてアルタは、進化したのだ。ただ一つの大きな可能性。秋の生まれから構成要素を得たアルタは、また新しくなったのだ。


極光が魂の世界全てを照らす。まばらな光が大きな極光に反応していく。アルタの存在が大きく作り替えられ改変されていく。


ゆっくりと生まれ変わるアルタ。そして今ここに、スキルという枠にありながら自らを進化させた新生アルタが誕生したのだった。


ちなみにスキルとしての能力はこれだ。


==========

『アルタ・セラフィム』


完全自立型学習演算スキルとも呼べるこのスキルは進化できる完成されたスキルであり、大賢者・構成要素:自我・統合というこの世界の理に触れるにふさわしいスキルが、自らの意志と主に対する忠誠心により進化を繰り返し、スキルという枠を超えた力を身に着けたスキル。仲岡秋専用スキル。


人格創造『アルタ』

アルタという人格を創造し保持し、そして進化していくスキル。


真極演算

・人間の脳の器官のように思考・演算する事が出来る。演算スピードは自らで進化させることが出来る。上限は存在しない。


マスター・仲岡秋

仲岡秋以外をマスターとして登録する事が出来ない。仲岡秋以外にはこのスキルを操作・改変・干渉する事は一切できない。どの生物であってもそれは適応される。絶対不変。



人導案内ナビゲーション・システム

・大賢者:或多アルタという過去のスキルとして覚醒した際から知識をため込む事で、その知識と“人格保持”“真・演算”の能力とを接続させて案内を行うことができる。なおマスターに質問された際の回答などもこの機能によるものである。


危機回避システム<或害亜・極(アルガイア・ごく)

或多アルタが危機と判断した事象。またはマスター登録を行った者の命令などによって発動。マスターの能力と或多としての能力を全て使いその事象に対応するための緊急プログラム。尚或多が危機と判断した場合のみクールタイムを無視して強制発動される。尚マスターの命令であっても危機と判断させるという命令などは一切受け付けない。或害亜アルガイアシステムが発動させた場合のクールタイムは120時間。その間は例え或多アルタが危機と判断した場合でも発動する事は不可能となる。


世界構成要素解析システムLV2<創造クリエイトされる主の玉座(プリズスキャルヴ)

マスター:仲岡秋の持つ構成要素を全て解析し、新しいスキルを創造する際の補助装置。自身単体で合ってもスキルの改変や改造はそのスキル構成の範囲の20%までなら可能。“人導案内”や“真極演算”などと組み合わせて発動される。常時発動。

常にシステムを構成する要素は進化を繰り返し、レベルを自動的に上げていく。


魂世界の総統者<アルタ・セラフィム>

新しくなったアルタそのものとも言えるスキル能力。魂世界の帝王としての能力を得る事の出来る能力。

・支配の総統者

魂の中にいるありとあらゆる物を生成・改変・改造出来るスキル。ただし一度でも手を加えてしまった物は元の魂の所有者には扱う事が出来ない。このスキルのみが扱う事の出来る能力・物質として完全に生まれ変わってしまう。

・魂世界知覚

魂世界での情報体を完全に知覚しため込むことの出来るスキル。

・構成要素知覚

魂の中にある全ての構成要素を知覚する事の出来るスキル。


要素真化LV∞

常に進化を繰り返す。限界も上限も存在しない。




==========




こうしてアルタは完全な進化を遂げたのだ。『アルタ・セラフィム』として。全く新しい新生アルタとして、これからも秋の隣に立つために。


(ですが名前が変わったのはいただけませんね…。私には主から貰った『アルタ』という名前がありますが故に……名前の所だけ『或多アルタ』と、変更しておきましょう)


こうして、アルタは新たなアルタとしての覚醒を遂げた。人知れず秋は、またしても人の道をを外れてしまった最凶スキルを入手してしまったのだ。


それを知った秋が、またしても驚愕そうな顔をするのは、もう少し後のお話…。




お読みいただきありがとうございます。


一応補足

『支配の総統者』の能力をかみ砕くと。

”構成要素なんかを使ってアルタのスキルを創造することが可能!だけどアルタにしかそのスキルは使えず、秋はそれを使う事が出来ない”という事になります。

つまりアルタはこのスキルで自分専用のスキルを構成要素から組み立てる事が可能になったわけですね。

ですので『創造される主の玉座』と効果は被っておりません。あのスキルは秋のスキル創造を手助けすることができる能力となっており、同時に秋のスキルも弄る事が出来るという秋の創造を手助けするという内容になっていますので。


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