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作蔵の白いシャツ

作者: 音澤 煙管




心も空気も透き通る、空には雲一つない青さで陽射しが眩しい。そんな日が何日、何ヶ月も続きお店や行楽地は賑わったが、反対に悲しんで居たのは農家だった。連日の陽照りと干ばつで農作物が採れず価格は高騰し、家庭菜園は流行るがスーパーの生鮮野菜売り場には殆ど緑色の野菜が無くなった、葉野菜、根野菜と畑で採れる物全ての野菜が消えた。


そんな中、ある農夫婦が居た。


"もう…農家は引退かなぁ?婆さん…"


作蔵はそう言って一昨日亡くなった。


残された妻のミヨ子は空を呪った、怨んだ、でもその思いはこの空には届かず、真っ青に笑っている様に見えた。

ミヨ子は、作蔵の後を追うように納屋の渡り柱にロープを投げ自分の頭が通る程の輪を作った…そして頭を通した、とその時に納屋のトタン屋根がトン、トン、と音がする。


やがて、トン、トントン…タンタンタン、タタターッザザーッと、

何日ぶり何ヶ月ぶりの雨が降ってきた。

ミヨ子は慌てて首の輪を外し走って表に出る…


空はいつもの青から真っ白になって天から水が堕ちてくる。ミヨ子の眼にこの雨雲は黒や灰色には決して見えなかった、それは作蔵が毎日気に入って着ていた真っ白なランニングシャツだったから。


空を見上げるミヨ子の堕ちる涙と、真っ白なランニングシャツから堕ちてくる作蔵の汗の様な雨が一緒に枯れた土へ沁みていった… 。




おわり



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