第91 空の薬莢
「汝六つの力を手に入れろ」
「汝恐れるなかれ精神を込めろ」
紙を見ながら走り続ける後ろからは、ホワイトウルフデストロイという白い巨大な狼が追ってくる
持ってるのは弾のない銃、空の薬莢二つ、綺麗な布、盾そしてこの文字が書かれた二枚の紙のみ
賭は必死に考えるどうして弾を確認しなかったのか?どうして剣にしなかったのか後悔を考えても仕方ないが悔やまれることばかりだ
少し自分のチェックの甘さなどを苦悩した後顔を手のひらで叩いた
「うっし!!後悔はここまでだ!どうにかしないと体力が尽きてやられてしまう・・なにかないか?」
走りながら周りを確認する
使えそうな武器らしきもの隠れられそうな場所見渡したが、どこにもそんなものはない
しかし
「あれは??」
遠くで地面で光る物体を発見した
その光るものがあるところまでダッシュする
すると狼もスピードを上げて追ってきた
「くそ!!!あいつなんで急に・・・・急に??」
自分で言っていて違和感を感じた
狼が攻撃を仕掛けてきた時必ずと言っていいほど近くに今持っている空の薬莢と紙が落ちていた
「これは確かめてみるか・・・」
そう思い追っかけてくる狼の方に身体を反転する
「グオオオオオオオオオ」
狼はしめたと言わんばかりに雄たけびを上げてそのまま突っ込んできた
賭は持っている綺麗な布を手に巻き付け盾を構える
数秒後狼は盾に突進してきた
ゴンっと鈍い音を鳴らし賭はふっとばされった
「くううう」
その一撃と言ったら正直キツイ
きっと車に跳ねられるのってこんな感じなんだと思ってしまうほど軽快に狼に跳ねられた
狼はそのスピードのまままたもや壁に激突し壁に突き刺さった
賭の身体は宙を舞いドシャッと音を立てて数メートル先の地面に落ちた
空中で見ていた男もこれには驚いたようで「なっ!?」と声をあげ賭の所に移動しようか一瞬迷ったとき
地面に突っ伏した賭が立ち上がった
そして手には新たな空の薬莢と手紙を持っていた
男が驚いた顔をしてこちらを見ているのに賭は気づいた
「なんでまともに正面から吹っ飛ばされてなんで動けるんだって不思議そうな顔しているな」
賭が大きな声をだして男に問いかける
男は顔をムッとさせたが返答はない
賭は笑いながら綺麗な布を見せた
男はそれがなんだ?という顔で見る
だが、よく見てみると盾を持つ所にに布が結びつけられてそれが賭の手と繋がっていた
「まさか!?あなたとんでもないこと考えましたね。」
男は驚きを隠せない顔をしながらそう言うと
賭はニヤリと笑い
「見ただけで分かったんだすごいじゃん」
皮肉たっぷりに言うと男はフッと笑い
「ありがとうございます、まさか距離を稼ぐためにワザと攻撃を受けるとは思いませんでした。その布を使いホワイトウルフデストロイの攻撃が当たる瞬間に盾を外し自分に当たる前に盾がぶつかり、尚且つ手に巻いておいたその布で少しではあるがクッション代わりに、そしてその吹っ飛ばされた衝撃で盾に引っ張られて飛んでいくというこういうことですよね?」
「正解」
男の答えに賭がいうと男はふぅと息を吐き
「あまりにも危険すぎる芸当ですね、コンマ一秒でもミスったら一発ゲームオーバーだよくやろうとおもいましたよね」
男が呆れた声で言うと賭はフッと笑いながら
「僕は賭けるのが得意なんでね、それにやらなきゃわかんないだろ?成功もしたし結果オーライだそしてわかった事もあったしな」
「わかった事?」
男がそう言うと賭が先ほど拾った紙を見せるそこには
「汝、鋼の決意を銀の弾へ」
と書かれていた
「あの狼・・元は狼男かなんかだろ??銀の弾がどういうことかはまだわからないが、空の薬莢がある所に僕が近づくと反応し襲い掛かってきたそう言う感じだろ?」
賭がそう言うと男は笑いながら
「さぁ私はそれに答える義務はないのでね、さて急がないとそろそろ動き出しますよ」
男が指さした先で狼が瓦礫の中から身体を出し始めていた
賭は舌打ちをしまた周りを確認した
するとすぐ離れた所にもう一つ空薬莢が落ち紙もあった
狼が動き出す前にそれを拾い走り出す
走りながら折りたたまれた紙を開くと中には
「汝、折れることなかれ」
と書かれていた
折れることなかれ、もしかしたら自分は空薬莢と手紙を拾う順番を間違えたのかもしれない
それを読んで思った
今まで拾った紙は
「汝六つの力を手に入れろ」
「汝恐れるなかれ精神を込めろ」
「汝、鋼の決意を銀の弾へ」
そして今拾った紙「汝、折れることなかれ」
もしかしたら今拾った紙が最初だったのではないかと
という事はと目を凝らして周りを見るすると二つの小さな光がコロシアム中央とその少し離れたはじに見えた
「やはりそうか!!」
賭は走るスピードを上げた
その瞬間轟音と共に狼がようやく瓦礫から出てきた
狼は足を持ち上げる構えをする
「あの構えは!さっきの真空破ぽい奴の構え!?あれは防御もしたら腕が痺れてしまう・・どうしたら・・・」
と走りながら考えているとふとさっき使った綺麗な布を見る
「そういえばさっきクッション替わりにしたとき痛みがまったくなかったよな・・てか僅かだけど形状が変化していたような・・」
布を取り出した瞬間後ろから風を切るような音が聞こえてきた
狼が真空破を放ったのだ
「イチかバチかだ!!!」
布を広げ真空破に向かって振り下ろす
すると振り下ろした瞬間布の形状が変わり扇のような形になり風を巻き起こし狼の真空破を消し去ったのだ
これには自分も男も狼も驚き一瞬静寂が訪れた
無我夢中で振り下ろしたから何をもってそれが変わったのかはわからない
今はただの布に戻っている
ハッと我に戻り急いで走り出す
狼もそれに気づき走り出した
「いいぞ・・予想以上だ!どれともまったく違うここだったんだ」
手帳を見ながら男は歓喜しながら賭を見守り続ける
そんな事とは知らずに賭は走り続けはじにあった空薬莢と手紙をとる
そして壁を背に狼を見る
狼は止まりかけるの様子を伺っている
賭は布を手に巻き付ける
そして試してみることにした
(これがもし固くて強い物質だったらな・・)
と心の中で何気なく思ってみた
すると巻きつけた布が形状が固くなっていった
あぁ・・やはりそうかと賭はようやく確信した
この布は(もしもこうなったらという思いを形にする布)
物質変化がある布だったのだ
ならばと賭は狼に向かって構える
狼は自分が構えるのを見て雄たけびを上げる
身体中がビリビリとした衝撃に包まれながらなんとか耐え狼に向かって走り出す
狼も近づけさせまいと足を振り下ろし真空破を撃とうとするが遅い
賭は狼の顔面に近づき狼の鼻に向かって拳を放つ
ゴン!!という鈍い音が響いた途端
「ギャアウウウウウウウウウウ」
と叫び狼がのたうち回った
犬系の鼻は結構敏感なので少し叩くだけでも相当効果があるのでそれを強化した布で叩いたのだ
効果絶大であった
狼がのたうち回っているうちに急いで中央へ走る
走りながら先ほど拾った紙を広げると
「汝、向き合え」と書かれていた
それを見てすぐにしまう
向き合う・・何と?
今の状況?
それとも他の何か?
少し心がモヤモヤしたが今は置いとくことにする
するとのたうち回っていた狼が立ち上がった
その目は赤い目から金色の目に変わっていた
毛皮も白の中に金色と赤が混ざった色に変わっていた
「なるほど・・デストロイってそういう事」
それを見て納得した
禍々しいが狼のその色はとても綺麗だった
だが狼がゆっくりと歩を進めるたびに地面にヒビが入っていった
恐らく地面の命を吸っているのだろう
デストロイ英語で確か破壊と言う意味だ
大げさな名前だと思っていたがふさわしい名前だったわけだと
あれが最終形態と言うわけだ
恐らく先ほどのように布だけでは倒せない
たぶんいや確実だろう
ポケットにしまった空の薬莢を取り出し銃に込める
残るは一つ
目標まで目の前まで迫っていた
狼はそれに気づき地面を蹴った
すると賭の頭上を飛び越え賭が走って向かう少し離れた先に着地する
「嘘だろ・・・って止まりそうだったなさっきの僕なら」
賭はそのまま最後の一つに向かって走り続ける
狼は賭に向かって口を大きく広げる
すると狼の口に光が集まり始める
恐らくエネルギー砲みたいなことをするのだろう
たぶんてか確実にくらったらおしまいな一撃だだが
走りながら最後の一つと手紙をとるが引き返さずに狼に向かって走り続ける
男の方を少しチラリと見ると男は少し驚いた顔をしながら様子を見ていた
賭は次に走りながら手紙を見ると笑えた
手紙には「汝弾に思いを!!過去を超えろ・・そして未来へ歩き出せ」
なんだよそれと思えたが最後の一つを銃に込めると銃が光りだした
銃を構える
その行動を見て狼はエネルギー弾を放つ
賭は布を広げた
「布よ!!少しでいい攻撃を防ぐ力となれ!!!」
すると布が光ったと思ったら盾も光を放ち
エネルギー弾の前で綺麗な大きな虹の盾になりぶつかり合った
凄い轟音を鳴らしながら虹の盾は攻撃を防いでいるが恐らく時間の問題だろう
亀裂が少し入り始めた
賭は目を瞑り銃を構える
「思いを銃弾に・・・」
すると銃が更に光りだしたかと思ったら先ほどまで空だった薬莢に色とりどりの弾丸が入っていた
ビキビキと音を立て割れ始める盾
その先にいる狼に向かって焦点を合わせる
すると次の瞬間盾が割れエネルギー弾が賭に向かってきた
「僕は負けない!!!」
そう言って銃弾を放つ
ドンという発射音と共に放たれる弾丸
エネルギー弾とぶつかったと思ったら一瞬で吹き飛ばし
弾丸は軌道を変え狼の前左足に当たる
その瞬間狼は奇声をあげる
それを見て賭は走る
「僕はみんなを守る!!!」
そう言って弾丸を今度は狼の前右足に放つ
見事に当たり
狼は更に奇声をあげ今度は小さなエネルギー弾を放つが先ほどより遅く
すんなりと避ける事ができた
「僕は勝つ!!」
「僕は自分も大事にする!!!」
そう言いながら後ろ右足と左足に放つ
狼は奇声を上げながらその場で動かなくなり始めた
だが狼は尻尾から真空破を放ち攻撃を仕掛けてきた
「く!!」
右足にその攻撃がかすった
足がビリビリしてその場にひざまずいた
それを見て狼はニヤリと笑い小さなエネルギー弾を放つ準備をする
「油断したな!!」
賭はニヤリと笑い反対側から布の切れ端をだす
そうすべてを使ったわけではなかったのだ
その布を地面に当て
「僕をとばせええええええ!!!」
すると風が巻き起こり賭は空中へ飛んだ
狼は驚き目で賭を追い構える
賭もまた銃を構えた
「僕はあきらめない!!!」
そう叫び狼の身体に向かって放つ
見事命中し狼は苦しそうな表情を見せるがエネルギーをため続け賭に放つ
凄い轟音と共にエネルギーの波が目の前に迫ってきた
深呼吸をしながら銃を構える
そして
「僕は過去も今も受け入れて未来へ進むんだああああ!!!!」
叫び放つ
すると銃弾が先ほどより一層輝きを放ちエネルギー弾とぶつかる
狼も負けじと放ち続ける
賭も思いを乗せ放ち続ける
コロシアム中にバチバチと雷にような火花が飛ぶ
すると声が聞こえた
「お前なら大丈夫か・・・」
その瞬間狼の攻撃の威力が少し弱まった
今だと引き金をもっと引いた
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
すると狼のエネルギー弾を圧倒し賭の弾丸が狼の額に当たる
狼はグギャアアアアアアと奇声を上げてその場に倒れた
「やったのか・・・」
そう思った瞬間ふっと意識が飛び気を失った
そのまま自由落下し地面にたたきつけられそうだったが
「危ない危ない」
そう言いながら男が受け止めた
ゆっくり地面に下ろし
賭を横にする
「お前の覚悟しかと見届けた、他の世界軸と違うお前ならきっと結末を変えられる・・だから」
そう言いカギを出すと賭の身体が光り始め鍵穴が現れた
「過去を知る時だ」
そう言って男は賭の中から出てきた鍵穴にカギをさしたのだった




