第89 どうしてこうなった?
「で・・桜いったいどういう事かしらこれ?」
天照の目の前には桜が正座させられていた
「えっと・・私にもわけわからなくて気が付いたら・・」
「あ~お姉ちゃんいじめるのメッ!!」
いきなり天照の前に角を生やした子供が仁王立ちで立ちふさがる
それを見て桜がアワアワすると後ろの方から
「ローくん今桜さんと天照様は大事なお話してるからあっちで遊びましょう」
と光がローと呼ばれる子を連れに来た
「メッ!お姉ちゃん守らないといけないからダメなの!!」
ローと呼ばれる子は天照にグルグルうなりながら威嚇をする
すると天照の横からネクタルがひょっこり顔をだして
「君はえらいなぁ守ろうとしてくれるなんて、でもなぁ桜はんは今いじめられてるわけやあらへんのよ。大事な話をするためにこうしてるんよぉ」
ネクタルが言うとローと呼ばれる子は桜と天照を交互に見て
「本当??」とウルウルした目で問いかけてきたので二人してうんうんと頷くとローと呼ばれる子は明るい顔になり
「じゃあ僕光姉ちゃんとこのお姉ちゃんとあっちいくぅいこう!お姉ちゃん達!」
そう言って光とネクタルの手を引いて向こうに歩いて行った
ちなみにネクタルは「えっちょっとまちな・・」と声を上げたが凄い力で抵抗できなかったようで手を引いてというよりは引きずられての方が正しい感じだった
三人が遠くの方に行って天照はフーとため息をついて桜を見て
「やっと話せるわね、でどういうことなのあれ?明らかに子どもよね?しかも鬼人の・・友達になったっていってたけどあなたたちの相手あの子だったの?」
天照が桜に問いかけ桜が答えようとすると
「天照様、説明は私がしましょう・・」
そこには先ほどまでいなかった焔が立っていた
その答えに桜は手でどうぞどうぞとジェスチャーをして天照は聞く姿勢になった
「あれは天照様たちがくる一時間前の事でしたあれはそうですね水族館に入る前でした・・」
「ねぇ!!桜さん達!!早く水族館入りましょうよ!!」
光がウキウキしながら水族館を指さしてはしゃいでいる
桜と焔はようやく追いつき一息ついて顔を上げる
するとピリッとした空気を感じ桜が振り向きグローブをはめ
焔は光を連れて呪符を構えながら後ろに下がった
「え??なに?どうしたの二人とも?」
光が戸惑っていると
「ふ~ん気づいていたんだ、ただの馬鹿じゃないみたいだね」
とどこからともなく声がした
光もその声でようやく敵が近くにいるんだと知りスケッチブックを構える
すると木の陰から二本の角を生やした人が現れた
「鬼人!?」
三人がその姿を見て臨戦態勢をとると
「まぁ待て待てこんなとこで争ったら危ないやろ、えっと・・人気のない場所に移動しないか?」
いきなりの提案に少しびっくりしたが、確かにここだと沢山人が居るので願ったり叶ったりなのでその提案に三人は了承した
鬼人は「それでええ」と言って踵を返し歩き始めた
それを三人は後を追うように歩き始めた
しかし、焔と桜はさっきの発言に若干違和感を感じ鬼人の後を追いながら
「焔さん・・こいつなんか違和感ありません??」
「ですね。さっきの発言若干ですが無理をしている感じが私もします」
「はい・・なんというか背伸びしているみたいなもしくは台本を読んでいるみたいな」
「少し様子をみますか」
桜と焔が話している中光だけは何故か話に入ってこないでじ~と鬼人を見ながら歩き続けていた
すると何を思ったか光が急に駆け足で鬼人に近づいて行った
光の行動に桜と焔は注意する間もなく光は鬼人のそばに行き
「ねぇ!一人で歩くのつまらないでしょ?どうせ移動するなら一緒に歩きませんか?」
と光は声をかけた
桜と焔は全身から血の気が引いた
敵と思われる相手になんて提案しとんねんとおおいに焦った
すると声かけられた鬼人は一瞬光を睨み見た
あぁ!ここで戦うことになるのか?と桜と焔が覚悟しはじめると意外な声が耳に入った
「いいのか・・?一緒に歩いて?ぼっじゃない俺お前らの敵だぞ」
鬼人が言うと光はにっこり笑い
「えぇ歩きましょう!一緒に!敵でも今はただ歩いているだけじゃない戦う場所に着いたら戦えばいいしそれに一人で歩くのは寂しいじゃないねっ」
と光が答えると鬼人は少し顎に手をあて考え
「わかった・・じゃあ着くまでだいいな」
そう言うと光は笑いながら頷き
「私の名前は光!あなたお名前なんていうの?」
光が鬼人に問いかけるのを見て
いやそう簡単に問いかけに答えるわけないだろと後ろにいた桜と焔が冷や汗を流しながら見ていると
「ロー・・ローシュテルバルム・・俺の名だ」
と鬼人はあっさりと答え
「ローシュテルバルム・・いい名前ねでも長くて呼びにくいからローって呼んでもいいかしら?」
光がそう言うとローシュテルバルムは「ローかわかったそれでいい」と答えた
その答えを聞いて光はニコッと笑い
「じゃあローお話しながら歩こうか」と話を続けていく光
その光景に桜と焔は何がどうなっているんだと頭を抱えながら二人の後を歩き続けた
本来敵であるはずの鬼人の名はローシュテルバルム
それが判明したのはまだOK問題はない
しかし、その敵の名を「ロー」と短くし一緒に話歩き続ける光とロー
一体どうなってるんだと悩みながらも見守り続けていると
「ふ~んローは火の力を使うのが上手いのね今簡単に使えたりするの?」
と光が聞くと
「使える・・こうやってこうすると火の玉できる」
と手のひらに小さな火の玉を何個か作ってみてろよと言わんばかりに光を見て火の玉でお手玉をするロー
それをみて「すごいすごい」とはしゃぐ光
もう桜と焔はなんだこの光景はと頭がぐるぐるし始めた
敵にあっさりと自分の得意な力見せるって何考えてんだこの鬼人は!?となったが
いや待て油断させるための行動かもしれないと二人して同じ思考をし
警戒を怠らず見ていた
それからも前を歩く二人は好きな食べ物の話や嫌いな食べ物などそんなたわいない会話をしながら歩き続け、それを後ろを歩く二人はハラハラしながら見守り歩くという状況を15分くらい続けようやく鬼人の足が止まった
「ここくらいでいいか、光はあっち側だから戻るんだ」
そうローが言うと光はうんと頷き桜と焔の元に戻った
光が戻ってくると二人がすごい疲れている顔をしているのに気づいた
「二人ともどうしたの?なんか疲れている感じだけどもしかして歩き疲れた?」
と光が心配して問いかけると桜と焔がため息をつき
「あんた・・どんだけのことしたかわかってないのね・・・」
「そうですね・・こちらは本当にどうなるかとひやひやしていたのですが」
その反応にえっえっ?と光がなっているとそれを見てまた二人して大きなため息をついた
するとドンっと大きな音が鳴り三人がその方向を見るとローが構えていた
それを見て桜と焔はやれやれと構えると光がすっと二人の前に手を出し
「私がやるわ!」
えっと二人がなっていると光が走り出した
それを見てローも走り出した
ローは先ほど光に見せた火の玉を作り光に向かって放ってきた
光はそれを見てスケッチブックを開き
中から銃を取り出した
そしてその銃を放った
なのだが様子がおかしかった
普通銃声などはドンっという大きな音が鳴るはずだがならなかった
しかし光はその銃でドンドン火の玉を打ち消していく
何が起こっているのかわからない桜が見ていると焔が横でクスクス笑い始めた
「なっなんで笑ってるのよあんた」
桜が少し怒りながら言うと
「いやぁ笑わずにはいられないでしょ、だって光さんが使っている武器あれただのウォーターガンなんですから」
そう焔が笑いながら言うと桜に一瞬の沈黙が流れ「はぁっ!?」と声をあげて言われた光の武器を見ていると銃口から出ているのは銃弾ではなくただの普通より威力が違う水だった
桜が唖然としていると笑うのをやめて焔がため息をつきながら
「やれやれ僕たちはまんまと騙されていたわけですね」
「騙されたって何を?」
と桜が首をかしげながら言うと
「だってあの鬼人子どもなんですよ」
焔がそう言うと桜が何を言ってんだ?こいつはともう一度光と鬼人の方を向くと
そこには先ほど見えていた鬼人の姿はなく小さな鬼人がいた
「え?どういうこと?さっきの鬼人は??」
桜が戸惑っていると焔が小さい鬼人を指さし
「あれが先ほど僕らが見ていた鬼人ですよ」
「えっ?全然大きさ違うじゃないあれなわけないじゃない」
桜がそう言うと焔は頭をかきながら
「だから騙されたと言ってるんじゃないですか、僕たちはあの鬼人の能力に騙されたんですよ大人に見えるという幻術にね」
「どういうこと?」
桜が言うと焔は光を指さし
「光さんにはあの鬼人がずっとあの姿で見えていたという事ですよ、おそらくある年齢に達してない子は普通にあの姿で見えるんでしょうね、ですが年齢が上になっていると大人の鬼人に見えるというものでしょう、だから私たちは幻覚でまどわされた大人の鬼人だったというわけです。光さんが戸惑わずすぐに鬼人に話しかけていったのはあの姿で見えていたからでしょうね。そして僕らがあの鬼人が子どもに見えるようになった理由は僕は戦おうとしてだした式神を介して一瞬見た為に幻術と気づけたから、桜さんは僕が子どもだと言って認識が変わったからでしょうね」
「なるほど・・・」
そう二人で話していると光が全部の火の玉を撃ち落とし
鬼人に向かってウォーターガンを構え
「私の勝ちぃ~どう?私凄いでしょ?ローくん」
とニッと笑いかけると
「あちゃ~~光強すぎ!」
と地団太を踏んでいる
光は笑いながらローの近くに行き
「ねっ戦いなんてやめて一緒に遊びましょう!その方が絶対楽しいよ!」
そう言うとローはうつむきながら
「でも倒せって言われているから・・・じゃないとニライカナイに行けないぞって」
ともじもじしながら言うと
光がローの頭を撫でながら
「大丈夫!私のね知り合いに凄い人いるからその人に頼めば戦いなんてしないできっとニライカナイに行けるはずだからね?桜さん」
といきなり話を振られ「ああうん」と桜が答えると
「ほら桜お姉ちゃんもああいってるから私を信じて!友達になろ!!」
光がニコッと笑いながらいうとローは嬉しそうに
「友達!なる!!!」と笑顔で光に抱き着いたのだった
「というのが今回あったことです」
焔がすべて話し終えると天照はふーと息をつきながら光をみた
「あの子が居なかったらきっと気づかずあの子と戦っていたという事ね。私たち神はあんな小さい子の幻術には引っかからないからね、だからおそらくアースラは人間しかいないあなたたちの所にあの鬼人の子を送ったわけか。そしてバトらせて絶望させようとしたが失敗だったというわけね」
「はい・・危ないところでした」
桜がうつむきながら答えると天照は手をポンと叩き立ち上がり
「とりあえず今回は運がよかったという事でいいかしら、まぁ安心はできないけどとりあえず戻ろうか」
そう言って桜を立たせ光たちを呼び帰路に着くのだった




