第87 その敵危険
天照とネクタルは態勢を整え赤い穴から出てきた者たちに神経を集中させながら拳を構えた
2人は相手をよく観察した
一人はどう見ても頭に角が生えているので鬼人で間違いない
だが後方にいるのは明らかに人間である
このことから二人はすぐに答えを出した
(この女が)
(この娘が)
「(アースラか!!)」
答えをはじき出した途端行動に二人は移った
ネクタルは移動術でアースラと思わしき女の後方へ移動し拳に溜めておいたエネルギーを放った
同じく天照も拳に溜めていたエネルギーを正面から放った
二手からの同時攻撃、二つのエネルギー弾が轟音を鳴らし目標に当たった
煙が立ち上る
二人は息をのみながら煙の中を見守る
するとバサッという音が煙の中から聞こえたと思ったら煙が一瞬にして四散した
見ると先ほどまで普通の恰好をしていた女の背中に羽が生えていた
「ふうん・・こちらの面はすでに割れているってことでいいのかしら?でもいきなりなんてずいぶんなご挨拶じゃない」
女が手で髪を撫でながら天照とネクタルを交互に見ながら言う
その様子を見て天照とネクタルは苦笑いする
そう明らかに攻撃が効いていないからだ
二手からの同時攻撃をくらっても何事もなかったかのように喋りだすのだから正直驚くしかない
だが焦って次の攻撃に移ったら隙ができてしまうのは明白だった
なのでゆっくりと息を吐き落ち着いて天照が口を開く
「質問するは、あなたがアースラね。雷龍から聞いているわあちらの世界・・ニライカナイの封印を解くためにいろいろしているそうね目的はなんなの!?」
天照が問いかけると女は一瞬きょとんとなったがすぐにウフフフと笑い始めた
「あの男すぐに敵であるはずのあなた方にも情報を共有するとは、なにか策でもあるのでしょうかね?では質問にお答えいたしますね。はい、おっしゃる通り私の名前はアースラと申します。絶望望様の部下であり四騎士が一人ですお見知りおきを」
絶望望という言葉に二人がピクッと反応した
するとアースラはまたウフフフと笑いながら
「その反応、少しは望様を危険と判断していると思ってよいですね。先ほど目的はなんだと問われましたが・・・そうですね・・こうやって今目の前に現れた目的の一つはすでに終えてしまったのですよ」
そういい指をパチンと鳴らすとアースラの隣に黒い光の柱が光を放ちながら立ち上がった
「え!?どういうこと!?その柱は鬼人を元にして立つって雷龍が・・・ハッ」
天照が当たりを見回すが先ほど穴から二人で出てきたはずなのに今はアースラ一人であることを確認した
「やられましたわぁ・・あんさん最初っからあの攻撃がくるって読んでいたんやなぁ」
ネクタルが言うとアースラはクスっと笑った
「その通りご名答ですよネクタルさんあなた方の前に現れれば、当然何か攻撃が来ることは予想しておりましたとも、どんな攻撃で来るかはわかりませんでしたがあなた方のパワーを見れば必然的に連れてきた鬼人は絶望することはわかっていましたから」
アースラが楽しそうに笑いながら説明するのを聞いて二人は歯をぎりっと鳴らした
雷龍から説明を受けわかっていたはずだった
鬼人を絶望させてはいけないという事を
なのに目の前に現れたアースラに意識を集中した為に一瞬で終わらせようと焦って考えたためにすぐに攻撃に移った
すぐ終わらせてしまえばいいという考えは確かに正しい
だが、よく考えるとおかしいのだ
いつもの自分達なら様子を見て攻撃をしかけるはずだ
なのに今回は躊躇いもせずにすぐに攻撃に走った
まるで何かに煽られたような感覚だった
天照がその答えを導きだそうと必死に考えていると
「そういうことかいな・・・」
先に気づいたのはネクタルだった
「なに!?ネクタル何に気づいたの?」
「うちらはこのアースラが現れそれを見た時点ですでに能力にかかってしまとったんや」
「それって・・・あっ!?」
天照もネクタルが言った言葉でようやく気付いた
雷龍が言っていた言葉
「過去の不安を煽る力を感じた」と
つまり自分たちは何の能力かは知らないがアースラをみた時点でその力の影響を受けてしまっていたという事である
するとアースラが
「あらもう気づかれたんですか??いや~んすぐに乙女の秘密を簡単に暴いちゃうなんてひどい神様たちですね。ええそうです、私が現れた時点であなた方は私の能力の影響を受けていたのですよ、相手の心に不安を煽る些細な力なのですが効果は絶大ですよ、おかげですぐに相手は攻撃を仕掛けてくるか逃げるかのどちらかですもの・・まぁ雷龍には効果が薄かったみたいですがね・・・」
茶目っ気を出すように言っているが最後の雷龍のくだりでは顔に怒りがにじみ出ていた
会ったらすぐにかかってしまう力なんて反則級だ
ゲームで言うチートに近い能力だ
まるで悪魔のような女だと思った時に天照が気づく
「あく・・ま・・・?」
天照が口に出して言うとアースラがぴくっと反応した
その反応を天照とネクタルは見逃さなかった
頭の中にある記憶を一気に算出しはじめる
すると一人思い当たる悪魔を思い出した
「デーモンレディ・・そうかお前の正体はデーモンレディか・・・なるほどそれなら私たちが能力の影響を受けるのもわかる」
「そやねぇ・・しかし・・おかしいはなしやなぁ確か、デーモンレディは討伐されたって昔きいたことがあるんやけどなぁなのに目の前におるんゆうのはけったいな話やなぁ」
天照とネクタルがアースラに問いかける
するとアースラの顔色が変わった
「んふっまさか・・こんな簡単に正体がバレるとは思いませんでしたよ・・えぇやっぱりここのワールドは潰しとかないといけませんね、あなた方を他のワールドで出会った天照とネクタルと思っていたら痛い目を見るということがはっきりわかりました。」
アースラは二人を睨みつけるように交互に見る
「お察しの通り私の正体はデーモンレディ、相手の心に不安を与え自滅に追い込む悪魔、ですが・・私はこのワールドではすでに討伐された事になっております・・このワールドではね」
「このワールド?私たちがいるこの世界の事?」
天照が首をかしげると
「おっと・・つい口が滑ってしまったようですね・・まぁいいでしょう言ってしまってもその通りワールドとはこの世界の事です、しかしあなた方はパラレルワールドと言うのをご存じですよね?」
「えぇ・・いくつもの可能性で出来た世界、もしもあぁなっていたらこうしていたらという世界が無数にあるという論説よね?」
天照が答えるとアースラは手を叩く
「その通りですさすが神ですね。その通り、ですから私はそのパラレルワールドの一つ私が世界の王になった世界からきたのですよ」
「ん??どうゆうことや?あんさんは絶望望の手下じゃないんか??」
ネクタルが聞くと笑いながら
「ええ!私は望様のおかげで生きながらえ自分の世界の住人どもをすべて殺し壊し世界の王になった!!だからあの方についていくと誓ったのです!あの方はいずれすべてのワールドを破壊しすべてを手に入れるのです!その為になら私はすべてを捧げるとちかいました。あの方こそ!すべてを手に入れるのにふさわしい」
ゾクッとした
つまりこいつは違う世界の住人で王で違う世界にいる自分たちを殺したという事だ
天照とネクタルは目を合わせる
絶望望に従うアースラがこんな感じなのだこの他にもまだ仲間がいるという事はとんでもない
しかもアースラが王と言う事は他の敵も王の可能性がありそいつらも違う世界の自分たちを殺した可能性があるという事だ
ここは一旦引くのがいいと目で合図しあう
そして行動にうつそうとするとアースラが笑うのをやめスンと落ち着くと二人を見ながら
「では・・少し遊びましょうかデーモンレディクイーン アースラ参ります」
そう言いアースラが翼を広げた




