第82 鬼の真実
「わはははは!!わしはそちらの世界では封印されて宝玉になっていることになっておったのか」
千雷鬼は豪快に笑う
それを見ながら頭を抱えている
僕らの世界に伝わっている伝承ってもう嘘八百ばかりではないだろうか?
どこかのアニメであったな机に座ってても真実はわからないってまさにその通りだ
真実は自分の目で耳で体験しないとわからないということだ
王の話によると先代と千雷鬼は千年前の戦いの末お互い和解しそれぞれの場所を収めることになったそうだ
その際にできた国が光の国ニライカナイと闇の国ダークス国だそうだ
しかもその戦いが勃発した原因がすごい理由
「お互いの力どちらが優れているか決めるために戦争が起きたぁあ!?」
その答えに驚いて机を乗り出してしまった
どうやら先代の王が千雷鬼に自分の方が優れているって食事会の際に言ったことが発端で負けず嫌いな千雷鬼がならばと戦いが始まったことにより俺も私もといろんな人が混ざっていき戦いがどんどん激化していったそうだ
どうやら当時僕らの世界でも戦いとかが活発だった為にその思考がニライカナイにながれこんできていたのも原因の一つらしい
戦争ってやっぱり一人の権力者のそういう事で起こるんだなと勉強になるなという感心と呆れが混在した
てか今僕らの世界に問題が起きているのって元を返せば先代の王のせいとなるわけだ
おのれ先代の王・・
しかも話を聞くとどうやらその戦争を止めたのも和解させたのも現王ストーリア王だそうだ
先代王と千雷鬼が戦う嵐ような戦場を潜り抜け先代王の頭を思いっきりグーパンでノックアウトしたそうだ
そして千雷鬼を睨みつけ同じく吹っ飛ばしたのち正座をさせて説教をし和解をさせて今に至るとの事だ
その時のストーリア王はまさに鬼のようだったと千雷鬼は笑いながら話した
ストーリア王は少し恥ずかしそうな顔をしていた
というか千年前の話にストーリア王も千雷鬼もいるってあんたら何歳だってツッコミたかったがもう驚きすぎてそんな気にもなれなかった
「まぁざっと話してきたが理解してもらえたか?」
ストーリア王が頭の中でツッコミ疲れた僕の顔を見ながら心配そうに見る
なんとか気力を戻しながらうなずくと王は「そうか」とほっとした表情を見せる
でも疑問が一つできた
千雷鬼も封印などされずにこうやって和解し交流しているのに何故鬼人達を封印したのだろうか?
気になったので聞くことにした
「一つ気になったってか今まさに僕らの世界でアースラが利用しようとしている鬼や鬼人達はなんで封印されたんです?しかも千年かけて消滅させようとしていたって先ほど言ってましたが・・」
その質問に部屋にピタッと沈黙がおとずれる
ストーリア王が「実はな…」口を開こうとするのを千雷鬼が「まて」と止め
そして千雷鬼が立ち上がり
「すまない・・それはわしが原因なのだ」
深く礼をしいきなり謝罪をした
顔を上げ先ほどまで豪快に笑っていた顔とはうって変わって真剣な顔をしている
「千雷鬼さんが原因ってどういうことですか?」
僕が問いかけると千雷鬼は拳を握りしめ
「わしが・・先代の王を超えたいと願ったばかりに部下のある数名がわしのためにと使ってはいけない神具を使ってしまったんじゃ・・その名は「魔高玉」」
「魔高玉・・いったいそれはなんですか?」
「魔高玉読み通りなのだがそれは魔力を高めてくれる効果が秘められている玉の事じゃ、だがそれは同時に恐ろしい副作用もあるのじゃ」
「副作用いったいそれは・・・」
しばらく言葉につまりながら千雷鬼はうつむきそしてゆっくりと
「使用者は心を玉に支配されてしまうんじゃ」
千雷鬼が答えると円卓に座る皆が沈黙した
心を玉に支配される?意味がわからないという顔をしていると
「つまりは本来そのものではない心が肉体に入ってきてしまうという事だ」
雷龍が隣から答えた
本来の心は一つであることによって人間も自分の身体を支配できている
しかし肉体にもう一つ別の心が入ってきたらどうなるだろうか?
心と心が互いにぶつかり合い最終的にどちらかが残る
そういうことだ
「ということは・・封印された鬼や鬼人達は・・・」
「あぁ・・封印されたのは皆魔高玉を使用して玉に心を乗っ取られた者たちじゃ」
そう言って千雷鬼はぎりっと歯を食いしばっている
その音は自分の耳にも聞こえるほどだった
「わしがもっと厳重にあの玉を封印しておけばこんな事にはならなかったんじゃ」
余程悔しいのだろう
千雷鬼の目からひとしずく涙がこぼれた
僕が戦った鬼も魔高玉に心が支配された鬼だったのかもしれない
だからこそ雷龍はあの鬼を・・・
そう思い雷龍を見ると雷龍は目を瞑りながらもその手は拳を握りしめていた
目をもどし千雷鬼を見ると涙をぬぐいこちらを見て
「迷惑を・・君たちの世界にまた迷惑を・・・本当にすまない・・」
と千雷鬼は謝った
その姿を見て僕は何も言えなかった
いつもならきっと「あなたのせいじゃないですよ」とでも声をかけるはずだ
だが何故だかその言葉が出なかった
何故だかわからない
だけど軽々しく言ってはいけない気がした
この人は今までもそしてこれからもこの後悔を背負いながら生きていく
そんな人に自分はまだかけられる言葉をもちあわせていない
だけど一つだけ言える
アースラ奴にこれ以上鬼や鬼人達を利用させてはいけないそう心で思いながら
拳を机の上で握りしめた
しばらくして少し重い雰囲気になってしまったとの事でストーリア王が気分転換をしよう!
とのことで城の長い通路を皆で移動している
だが移動中も皆口を閉ざしそれぞれに通路から見える街並みを見たり、空を見たりと様々な事をして王に続いて歩いている
僕は千雷鬼の背中を見ながら歩いている
一体この人の背中にはどれだけの後悔がのしかかっているのだろう
そう思いながら歩いていると
「夢見間よ・・もしかしたらお前も奴のように何かを背負うときが来るかもしれないがその時はお前は千雷鬼のように前へ進めるか?」
雷龍が自分のそばに来て聞いてきた
僕は「わからない」と答えると雷龍は少し切なそうな顔しながら
「お前が進む道は多分イバラの道になるだろう、だからこそあの男をみて考え、今のうちに心しておいた方がおけそしてもしもあの男のように何か失ったとしても前へ歩けるように心の準備だけはいつでもしておけ」
雷龍の言葉を聞き雷龍の顔を見て
「まるでこれから先の未来何かあるの知ってそうな口ぶりだな・・てか敵のわりには僕の事心配してくれるんだなお前・・・わかった、そんなことが来るとは思わないけど心に留めておく」
そんな会話をしている時なんだか心臓がズキッと軽く痛んだがすぐに収まった
幸い雷龍には気づかれなかったようだ
一体この痛みはなんだろう・・
そういえば・・雛に逃げないでと言われたっけ
もしかしたら今の痛みは記憶のどこかに関係あるのだろうか?
そう思い
「なぁ・・雷龍・・僕とお前って----」
「さぁ!!!ついたぞ!!!皆中に入るのだ!!!」
僕の問いはストーリア王の大きな声にかき消された
雷龍はそれに気づき
「何か言ったか?」
と聞いてくれたが首をふり「なんでもない」と僕が答えると雷龍は不思議そうにしたが王に呼ばれ中に入っていった
その背中を見ながら
「聞くチャンスはいつでもあるよな」
そうつぶやいて王が案内する部屋に入った
王に案内された部屋に入るとそこは大きな武道場だった
床は畳で天井はでっかいライトなどが吊るされて壁は真っ白だ
へ~と驚きながらも壁を触ったりしているとストーリア王が笑いながら見ているので恥ずかしくなってすぐにやめた
王はやめなくてもいいのにと言ったがさすがにね
しかし、王は何故こんな場所に連れてきたのだろう?と思っていると
「それじゃあ!!気分転換にここで軽い運動しましょう!!といってもやるのは夢見間と千雷鬼どのだけだがな」
と元気に説明をした
その言葉に思わず「え!?」と僕は声を上げたが雷龍・シルフ・リークはやっぱりかと呆れ顔をしている
すると千雷鬼はバシンと両手を鳴らす
「王の頼みとあれば断れまい!さっ夢見間殿やりましょうぞ!」
そういって僕の手を引いて武道場の中央にある円まで歩き出した
まさかと思うが千雷鬼も気づいていたんじゃないだろうな?こうなることをと顔をみるともうやるぞ!と言わんばかりにウキウキしている
これはもうどうやら避けようがないようだと諦めがついた
中央につくとストーリア王たちの身体が透明な球体で包まれ前にある舞台のようなところに移動した
球体は観客席みたいなものだろうと見て思った
すると武道場のスピーカーからストーリア王の声が流れた
「え~この施設はどこかの人間が考えて作った宇宙一固い金属で構成されているのでちょっとやそっとじゃ壊れないので存分に戦ってください!ただ千雷鬼殿は少しは加減するように!」
そう言うと千雷鬼は少し残念そうな顔をしたが「わかった」と返事をした
その答えにホッと胸をなでおろした
なんせ昔先代と超絶バトルした相手が本気出したらひとたまりもないだろう
もうやるしかないかということでカードを取り出した
取り出したのは剣のカード
それをみて千雷鬼は「ほぅ」と小さくつぶやいた
その小さなつぶやきに少しビクッとなったが落ち着いてカードを構えて合図を待つ
そして
「はじめ!!!」
ストーリア王の声が響き渡り戦いが始まったのだった




