第79 王との対面
僕は周りをキョロキョロ見回す
赤い柱が周りに立ち、装飾など見事なものである
龍が描かれていたり、シーサーや孔雀などといった置物などもある
そして目の前には、ここニライカナイの王が座るとされている椅子が薄いカーテンの先に見えていた
しばらくお待ちくださいと言われたが、やっぱり初めて来る場所だとウキウキしてやっぱりどうしても見てしまう
隣にいる雷龍は静かに目を瞑りながら待っている
なんかやっぱり風格があるなと思った
そんなことより早く王とやらはこないのだろうか?そう考え始めた時
奥の方からチリーンと言う鈴の音が聞こえた
その音が鳴った途端、周りに立っていた兵士達がザッという綺麗な音を立てて直立した
シルフとリークもその音と共に歩き出し、王が座るとされる椅子の前で一礼をした後左右に分かれ膝をつく
「王の御前である皆の者一礼!!」
そうシルフが言うと周りは揃って一礼をした
隣にいる雷龍もお辞儀をしていたので慌てて僕もお辞儀した
顔を上げると王が手で何か合図をだす
それを見てリークが一歩前に出た
「兵に次ぐ!王は今から客人と話があるため私リーク並びにシルフ以外部屋から出るようにとの事だ」
その一言を聞くと周りにいた兵は皆「ハッ!仰せにままに我が王よ!!」と言い一礼してから大広間から出て行った
大広間に静寂が訪れた
その間何か話す様子はない、これはもうちょっと待っている方がよいのか?と考えているとカーテンの中から声が聞こえた
「行ったかの?シルフよ・・周りに兵は一人もおらぬか?」
「はい!王よここにはもう私たち五人しかおりません」
「そうか、ですが念には念をリークすべてのドアが閉まっているか確認そしてこの部屋に防音の魔法をかけていてもらってもよいですか?」
「かしこまりました王よ」
シルフとリークにカーテンの向こうにいる王は指示を出す
とてもきれいな声だ、きっとこの声を聞いたら間違いなくここに芸能プロダクションの人が居たらみんなで取り合いになるそう確信できる程の透き通った声だった
だが、自分はどこかでこの声を聞いたことがある気がする
するとリークが大広間の周りを確認したようで戻ってきた
リークが膝をつき手を合わせ「完了いたしました」と一言伝えると王が立ち上がった
そしてカーテンをバッと取り払い中から出てきて大きな声で一言
「よく来た!!!夢見間賭よ!!!待ちくたびれておったぞ!!!」
そう発して出てきたのは僕と同じくらいの身長のきらびやかな琉球かすりの着物をまとった女性だった
僕はいきなりの事で驚いて雷龍をチラッと横目で見る
雷龍は額に手を当ててうつむいている
少し呆れているようだ
もしかして雷龍この王様?王女様?とも知り合いなのだろうか?
一瞬そう思ったがもう一度王の方を見ると腕組をし決まった!と言わんばかりにドヤ顔をしている
その王の左右にいたリークとシルフもため息をついている
本当はもっと厳格にしてほしいんだろうな
そう思っていると王が前に歩き出し近寄ってきた
「うむ!久方ぶりだの!夢見間よ!元気かの?」
「はぁ・・元気ですが・・でも久方ぶりって僕は王様と顔合わせるのは今回が初めてのはずなのですが・・」
「ん?・・なんじゃ気づいておらぬのか??」
「気づいていないって・・なにがですか??」
僕がそう言うとシルフが前にやってきて
「王よ・・賭さんいえ・・夢見間様はそのお姿の王とお会いするのは初めてだと思われます」
「なぬ!そうであった!!忘れておったわでわさすがにこの姿ではわからぬか」
そう言って王はくるりと身体をひるがえし一回転した
すると、一瞬で服が変わり見覚えのある琉球かすりを身に着け顔を隠した姿へと変わった
「あっ!!!その姿は!!!秋葉原で出会った琉玉を僕に渡した・・ということはまさか」
「ようやく気付いたか、これは我が変装しよく城を抜け出すための衣装でないろいろ服に変えられ認識を変えられる魔法付与されている神具の一種じゃ、だから地上では本来私は普通の人に見えたはずなのだがお前は我に気づいて後を追ってきたそれがあの出会いというわけだ。ちなみに秋葉原という場所に居た普通の者たちには我はただの女子高生くらいにしか見えていなかったはずだ」
そうかこれでなんであの時周りにいた人達が見向きもしなかったかわかった
僕以外の人にはこの目立つ格好ではなく
一般の女子高生に見えていたわけか
それならあの時の状況も納得できる
いや・・納得しようとしなければならない。
ツッコミどころもおおいにあるのだが、特に何故女子高生?とツッコミたくはなるのだがあえてそこは我慢だと思い口にでそうな言葉を飲み込んだ。
だが聞かなくてはならないことが一つあったので口にする
「あの時の方が王様だということはわかりました。しかしならば聞かなくてはいけないことがあります、何故あの時僕にこの琉玉を渡したのか・・そして試練があると言ったのですか?」
そう・・ただ見分けただけでこの琉玉を僕に渡すのはおかしいこと
この地ニライカナイに来るための神具こんな大事なものを偶然出会った自分にポンと渡せるのは何か理由があったからそれに試練とあの時言っていた
その試練は沖縄で鬼や雷龍と戦ったことなどの事だったのだろう
自分はここまで来る時何回も考えていた
すると王はフムと小さい声を出し顎に手を当てて少し考えるような仕草をする
そして数秒考えたのちこちらを見て言葉を発した
「お前に琉玉を渡したのは未来が見えたからじゃ」
「未来??」
「そう未来じゃ・・私の目は実は色違いそち達の世界ではオッドアイというんだったかの?この片目は相手の未来を見ることができるのだ。あの時本当なら琉玉を渡す気もなかっただがなしかし・・」
王はそこで口をつぐんだ
先ほどから言う言葉を選んでいるのか少し考えながら喋っているのが見てわかっていた
何かを隠している?いや隠す必要がないよな?そう思いながら王の言葉を待った
王は言葉選びをようやく終えたのか少しうつむき考えていた顔をこちらにむけた
「しかし、見えてしまったのだ・・お主の未来が・・・」
「僕の未来・・」
「そうお主の未来・・本来ならば本当はそちらの世界の人の子の未来を変えてはいかんのじゃがな、琉玉を持たないお前の未来とその琉玉を持つお前の未来両方が見えたのだ」
そう言って王は踵を返しこちらに背を向け歩き出した
今の話から察するに、自分はこの琉玉をもったことによって王様に未来を変えてもらったという事だろう
もしあの時この琉玉をもらえていなかったらどうなっていたのだろうか?
それはもう王しかわからないことだが、ifの世界つまり違う未来を辿っていたのだろう
もしかしたらとても絶望的な未来だったのかもしれない
そう考えながら背を向けた王を見続ける
王はまた踵を返しこちらを向いた
「変わってしまった未来の話はしないでおくとしよう。大事なのは今なのだからな、私は琉玉を持ったお主が必要であったとだけは伝えておこう、そして幾多の試練を乗り越えてその琉玉を持ってここまでくるのは確定事項だったのだが・・・本来来る時間と少しずれてしまっているようだ。」
「時間がずれている?どういうことですか?」
「そのままの意味じゃ・・確定していたはずの未来が何者かが干渉したせいで変わってしまったのだ」
僕はその言葉を聞き雷龍の方を見る
しかし雷龍は目を瞑りながらうつむき王の言葉を待っているようだった
すると王は笑いながら「雷龍を疑うでない、そいつではない何者かが干渉してきたんじゃ」と持っていた扇子で口元を隠す
結構笑っているのだろうか?そう思いながら見ているとリークが言葉を発した
「雷龍さんが何かするわけないじゃないかだってその人は----」
「やめなさいリーク」
シルフがリークの言おうとした言葉をかき消した
シルフの目はリークを睨みつけていた
先ほどまでの優しい目ではない
本当に怒っているようだった
その目を見てリークも「ごっごめん」と口をつぐんだ
シルフはハッとなり王を見たすると王は優しく微笑み
「シルフありがとう・・あなたが止めなかったら私が止めていました」
王が言うとシルフは「いえ」と小さく言葉を返した
なんかものすごい気になる
アニメだったらなんか雷龍に秘密があることは明白なんだけれどなぁとか考えていると王が歩み寄ってきた
「今の事は忘れてくださいというのは無理でしょうからいずれわかるときがきますのですみませんが今は話せませんが許してください」
軽くお辞儀をし謝ってきた
まぁ事情があるのだろういずれわかるというのなら今気にしても仕方ない僕は「わかりました」と伝えると王は微笑みを返した
「で・・干渉してきているというものが誰かはわかっているのですか?」
もう話しても大丈夫か?と言わんばかりに雷龍が口をはさんできた
このままでは前に進まないと思ったのだろう
いやだけどお前が原因の一つでもあるんですけどね?と思いはしたが言わないで置いた
すると王は頷き
「はい、あなたのおかげでわかりました雷龍。干渉してきているのはアースラという方ですあなたが見て話していなかったらわからなかったでしょう」
あれ?と思った
雷龍はここにきてアースラの事は一言も言ってはいない
なのに王はアースラの事を知り雷龍のおかげと言ったので疑問に思っていると考えている僕に気づいたらしく
「あぁ!言ってなかったですね!先ほど片目の未来視については話しましたが、もう片目は過去を見ることができるのですよ。まぁ過去を見るのは必要な条件が揃ってないと見えませんし本人が隠そうとしていることは見えません」
なるほど納得できた
だからアースラの情報もわかったわけ雷龍は話を聞いて確信し隠すつもりもなかったから見えたわけだ
さて!ここからいろいろ話を聞こう!と言葉を発しようとした瞬間
ぐううううううううううう
っと大きな音がなった
言うまでもない僕のお腹の音だ
一瞬のうちにその場に静寂が訪れ僕がお腹を押さえた
そして恥ずかしくなり赤面した
「うわああああ違います!!!けしてお腹がすいたというわけでなくて!!あああ!!すみません大事な話をしている最中にいいいい」
慌てて取り繕うように声を上げてみんなに弁解をする
それを見てぷっと噴出したのは王だった
そして皆続いて笑い出した
ああぁ!!!いっそのこと殺してくれ~と思っていると王が
「久々に笑わしてもらったぞ、そうじゃの話が長くなりそうじゃからな一度食事をとって休んでから話を続けるとしよう!リーク、シルフ、夢見間様を案内してあげなさい」
そう二人に促す
リークは大きく笑っているがシルフは笑いを我慢するようにうつむき手で口を覆っている
もういっそのこと笑ってくれそう思った
こうして二人に連れられながら先に王の間?を出たのだった
「よいのか?雷龍・・・伝えなくて」
王が雷龍に問う雷龍は自分の手を見ながら
「あなたは・・もう未来が見えているのでしょう?」
そう言うと王は遠くの方を見ながら
「あぁ・・だからこそだ・・そちにはいろいろしてもらっておるだから一言言おう、後悔のないようにな」
そう言って王は三人が進んだ方へと歩き出す
「後悔がないようにか・・・」
雷龍は手を見ながらつぶやくその手が薄くなり始めているのをみながら




