第64 それぞれの特訓1
遠くで轟音が轟く。
誰かが特訓を始めたのか。
音の感じからして自分が居る場所から結構遠くしかも反対側からの音だという事がわかる
しかし、ここまで届くくらいの轟音相当大きな技を使ったのだろうか?
物陰に隠れながら考える
すると遠くからシュバっという空を裂く音と共に目の前の木に何かが刺さる
どうやら見つかってしまったようだ
急いで場所を移動しようと身をかがめ草木をかき分ける
相手にはまだこちらの正確な場所は知られていないはずだ
しっかりと周りを確認して移動をはじめる
ゆっくり息を殺しながら進み続ける
すると距離にして十メートルくらいだろう人影が見えた。
なんでだ!?正直に驚きが隠せない
何故なら攻撃が飛んできた方向と逆に進んだはずなのに、そいつはそこに立っていた
思わず息をのんでいると
「やれやれ隠れてばかりでは何の特訓にもなりませんよ。大人しくでてきませんかねおっと」
遠くでまた轟音が轟き地面が揺れる
態勢を立て直し相手は髪の毛をかきあげオールバックにする。
「こんなにド派手に技を連発するなんて・・相当本気でやっていますね。ただ霊的とか神気的な要素が感じられないのでこれは打撃技によるものか、つまり賭様達ですかいやはや桜さんは容赦ないようですね」
と男はつぶやく
この轟音だけでそこまで推測するとはやはりこの相手はあなどれない。
そう思い武器を手に取る
ゆっくり息を吐いて思いっきり息を吸って息を止めて男に向かってダッシュした。
草木を一気にかき分けて相手に近づく
すると相手はそれを察知したのか手に札を取り出しなにやらぶつぶつと唱え始める
唱えてる声は小さくて聞こえないがわかる事は一つ
「気づかれたならこのままいく!!」
そう思い狙いをつけて具現化した銃
ショットマグナムを走りながら構える
距離にして5、4、3
ここだ!!!
銃のトリガーを引く
連射で放たれた弾丸は相手に目掛けて飛んでいく
しかし相手は避けるしぐさをしない
特訓なのでショック弾を使用しているがその行動行動に慌ててしまった
「よけろおお!!!」
思わず声をあげる
するとパキンという高音とともに男に当たる前に空中で弾丸が全弾止まっている
「なっなにぃ!?」
驚きが隠せない。
むしろ驚かないわけがない。
自分が放った弾丸がすべて空中で音を立てながら止まっているのだからその光景は不思議でしかない。
「やれやれ・・あなたという人は特訓だからと言って相手の心配をするなんて優しすぎますよ光さん」
そう言いながら男はこちらを向く
男はにっこりと笑顔を見せる
その目の前で光が放った弾丸は威力を失いチリンという音を立てて落ちた
「ははっそうね私が考えを改めるべきね。今の攻撃は明らかに完璧だったのにあなたはそれを避けもせずに防いだ焔さんあなた何者なのさ本当にその化け物じみた能力なんなの?」
引き笑いで答えそして問いかける
その問いに焔は口に手を当てながら考える
するとパキンという音と共に焔の後ろで弾丸が同じように止まっている
「おやもう一つ弾丸があったのですね危ない危ない」
焔はニコニコほほえみながら空中で止まるその弾丸をはたき落とす
作戦は失敗した
自分が話しかけている隙に新たに具現化させたサイレントホーミングという弾をショットマグナムに込めて撃ち込んだのにそれも防がれた
歯をギリッとしながら光は焔をじっとみる
「いやはやいい作戦でしたよ!中々です。あなたは賭様や桜さんと違い冷静で頭が回るタイプなのですねなるほど、だから私と光さんがペアで特訓という訳ですか考えられていますね」
笑いながら話しかけてくる
なんなんだこの男はと思いながら見ていると耳にかすかだがヒュンヒュンという音が左側から来るのが聞こえた
とっさにバッとかがむとヒュンと音を立てながら飛んできた物は木に刺さった
よくみると先ほども飛んできた手裏剣だった
「おや、やはりあなた対したものですね今のをしっかり避けるなんてわからない様に飛ばしたのですが」
焔は感心している
この男も自分と少し時間差があったが攻撃を仕掛けていたということかと焔を見る。
「今のを避けられたという事は及第点くらいには能力が覚醒しているとみて良いのでしょうか」
焔は少しうつむきながら考え込む
及第点?能力の覚醒?一体どういう事だろうかそう思いながら見ていると焔が考えをまとめたのか顔を上げる
「では少し試させていただきます」
そう言いポケットから札を取り出す
「オン!アビラウンケンソワカ!我に力をかせ!!!十二神将!!朱雀!!」
そう唱えると目の前に巨大な火の鳥が現れた
「なっ!!朱雀!!?十二神将ってまさか!!あなたの正体って陰陽師!?」
十二神将の事は知っている
騰虵 朱雀 六合
勾陳 青龍 貴人
天后 大陰 玄武
大裳 白虎 天空
全部合わせて十二匹の神々の獣
それが十二神将だ
昔親の買ってきた同人誌の中にそれらがでる作品がありどんなものだろうと調べたことがきっかけで知っている
その中でも四神は有名だ
アニメなどでもよく取り上げられるので知っている、それについこないだもビッグサイトの戦いで賭さんが出した
しかしあれと比べ物にならないくらいの光を放つ朱雀
光が驚いていると朱雀は姿を変えて弓に変化した
それを手に取り焔はこちらを向く
「そう私の正体は陰陽師だ!しかも賭様が使う二次元のキャラではない正真正銘のだ。ビッグサイトで賭様が四神を出したときはそれは嬉しかったものだ、私も四神を使えるからねしかし・・・」
そういい焔が弓に変化した朱雀を構える
「あのレベルと一緒にしていたら君死ぬよ」
そう言い弓を放つ
とっさに身体が動き避けると焔が放った矢は燃え盛り飛んで行った方向の木を一瞬で炎で消し去ってしまった
「うそ!?」
それを見た瞬間身体がぞくっと悪寒が走ったのがわかった
明らかに賭がみせたものとは比べ物にならないパワーを発揮している
あの時賭は望を倒すためとはいえ世界を壊さないレベルに落として放っていた
だがこの焔が放つ攻撃は格段に違う
制御をしっかりできているのだ
一点集中まさにそれだ
賭の拡散したあの攻撃とは違い一点を正確に打ち抜く
それをすることによって世界を破壊できる可能性があったパワーを出せている
避けられなかったらやばかった
身体がすぐに動いたのがよかったそう思った
するとすぐに違う矢が飛んできた
それも避けることが出来た
これは同じ遠距離武器では分が悪いとスケッチブックを取り出した
「させんよ!!!」
そういって矢を連続で放ってきた
「くっ」
寸でのところで避ける
いや避けるので精一杯と言った方が正しいだろう
少しでも気を抜いたら焔が放つ朱雀の矢の餌食である
どうする?そう考えながら矢を避け続ける
「ずっと逃げ回っていては何もならないだろ!ここがもし人がいる空間だったらお前は周りを巻き込んでいるのだぞ」
焔は矢を放ちながら声をかけてくる
確かにそうだ
もしこの空間に人が居たら明らかにみんなに攻撃がいっている
そう想像したとたん心臓がドクンと唸った
そして逃げ回っていた足が止まった
「どうした観念したのか?」
そう焔が問いかけると光が顔を上げて答える
「観念??いや・・覚悟が出来たんだ!!!」
そういいスケッチブックを取り出す
「させんといっているだろ」
焔が矢を放つ
矢は光目掛けて飛んでいく
それを見ながら光はペンを取る
はやく・・・
もっと・・・・
もっとはやく
光の目が赤く染まる
そしてズドンという矢が命中する鈍い音がなりその場が燃え盛る
「やりすぎたか・・やはりまだはやすぎましたか・・・」
そういいながら近づくと焔はハッと気づく
そこには光の姿がなかったのである
そして燃えているのは
「これは!!人形!!?」
焔は辺りを見回す
だが光の姿はどこにも見えない
「どこだ!!どこにいる!!!」
すると風を切る音が聞こえた
その方向に焔は矢を放つ
だがそこには光はいない
一体どこにそう考えていると今度は上から少しだが風を切る音がほんの少し聞こえた
「まさか!?」
焔が上を向くと
「おりゃあああああああああ」
という声と共に光が空から剣を振りかざして焔を斬りつける
ザッシュという音共に焔の燕尾服が切れる
あと一歩避けるのが遅かったら危なかった地面に手を突きながら焔の顔が少し歪んだ
すると光が
「その顔!ようやく笑っている顔じゃないの見れた」
嬉しそうに指摘してきた
焔はやれやれと立ち上がり
「今のは人形を使ってその爆風にのって空へあがったのですか??少し危ない賭けではございませんか?」
焔が言うと光はうつむく
「確かに危なかったけど・・」
「けどなんです?」
焔が尋ねる
「あんたが誰かを傷つけることになるって言った時、嫌だと思ったならもっと早く自分が描けるようになればあんたを超えられるそう考えた時なんか自分が自分でないくらいにペンが走っただからあの作戦はいけると思ったんだ」
光は顔を上げて真剣な目をして焔に言い放った
焔はフフフと笑い始めた
「何がおかしいの!!」
光は顔を膨らませて怒る
「いや失礼!!やはり賭様のご友人になる方は誰かを他人の事を大事にする方なんだなと思ってなんか嬉しくなってしまいましてね」
焔がまたニコニコと笑う
光がそれを見て指を差す
「あんたのそのニコニコ笑顔また歪ませてやるから覚悟しな・・さい」
そう言ってその場に倒れそれを焔がかかえる
ふぅと焔が息を吐く
「お疲れ様です・・無事でよかった」
本当にやばい賭けだったが少しだけ期待もしていた
賭様の友人になってくれた方だから
だから自分の正体を明かした
あの方はどこまで計算しているのだろうか
そう考えながら空を見上げる
「目が覚めたらまた特訓の続きですからね」
そう言い光の頭を撫でた
遠くからは先程とは違う轟音が轟いていた




