第59 少年
林を走り回り約10分ほどが経過しただろうか
どんどん木の間をくぐったり草をかき分けて走り続けた
後ろを軽く振り返ると鬼達は草を手に持った刀やこん棒といった武器らしきもので斬ったり潰したりして後を追ってくる
一定の距離を保ちながら相手の出方を見るがどうやら投擲系の武器などは無いようだ
ポケットに入っているカードを取り出し確認する
手持ちは三枚
一枚はボイス、二枚目は頭脳、三枚目は剣といった具合だ
どう見ても使えるカードが剣以外ない
なぜこの三枚しかないかというと明らかな油断である
故郷である沖縄だということもあり、安心しきっていた
秋葉原で琉球かすりを身に着けた人からもらった琉玉
あの人は様々な試練がふりかかると言っていた
多分後ろから追ってくる鬼達も試練の一つなのだろう
それなのに今の今までその言葉を忘れてチロの墓に行くだけ
それくらいなら大丈夫だろうとカードのほとんどを旅行バッグに入れて車の後方に置いてしまった
明らかなミスだ
ちなみにこの三枚だけポケットに入れていた理由も安易なものでチロに見せたかったからである
実際にその話やカードを見せる前に呼び出しをもらったので見せることはできなかった
でもそのおかげで一枚だけは戦う事が出来るカードがある
しかし今の走っている状態それとこの林の中ではもし変身できたとしても変身するキャラクターによっては気に剣がぶつかり攻撃が出来ない
相手に隙を与えてしまう事になる
となれば短剣のキャラクターになれば戦えると考えたが!
「・・・短剣のキャラクター思い出せん」
そう沢山のアニメや漫画を見てきたが短剣で戦っているキャラクターがなかなか思い出せないのである
ここが「永遠の想像」の弱点二つ目である
鮮明に記憶しているキャラクターなどはすぐに変身することが可能なのだが、あいまいに記憶しているキャラクターだと変身ができないのだ
この事を知ったのは部屋でトレーニングをしていた時だ
ためしに昔懐かしいキャラクターの力も使えるかなと思って昔見たキャラクターをあいまいな記憶で変身しようとしたすると、カードが反応しなかったのだ
最初故障かな?とも思ったが別のキャラクターで試してみるとカードが反応し変身が出来た
なのでパソコンなどでそのあいまいに記憶していたキャラクターを調べ直し記憶してもう一度やってみると今度はカードが反応し変身が出来たのだ
つまりこのカードは自分の頭でしっかりと覚えていて想像が出来ている状態でないと反応しないのだ
なので今短剣キャラクターを思い出せないのでこの場ではすぐに戦えないのだ
走りながら数時間前の自分を殴り倒したいと思いながら逃げ続ける
すると少し先にひらけた場所が見える
後ろをもう一度確認すると鬼達が意味不明な言葉をしゃべりながら近づいてくる
あと少しもうちょっとで戦える場所に出られる
最後のダッシュを決める
あと50m・・・30・・・20・・・5m
そしてついにひらけたその場にたどり着いた
「よっしゃあ!!ぬけた・・・ってええええええ!!!」
目の前に海が広がっていた
なんと進んだ先は行き止まりの断崖絶壁だったのだ
「あはあはははは・・」
笑いながら後ろを振り向くと鬼達が追いつき足を止め逃げ道を封鎖する
明らかな大ピンチである
目の前には5体の異形の鬼が並ぶ
すると一匹だけ前に出て来た
前に出て来た鬼は他の4体の鬼とは違いしっかりとした防具を身に着けている
もしやこいつがリーダーかと考えていると
「おぎにんぎぇんおばえがもっでいるがのじへのみじじるべをばたせ」
と言葉を発し言ってきた
発音が悪すぎるのか人間の言葉が苦手なのかはわからないが多分言いたい言葉は多分こうである
「おい人間お前が持っているかの地への道しるべをわたせ」
うんうんさすが僕アニメなど声優さんのドラマCDなどを何度も見たり聞いたりし、しまいには発声練習本なんてものも買って練習しただけはあると自画自賛してしまうくらい鬼の言葉がわかってしまった
かの地への道しるべ?おそらく琉玉の事で間違いないだろう
かすりの人が言っていた
「その琉玉はかの地への道しるべ、あなたの故郷であって故郷ではない場所への道しるべ奴らより先にたどり着いてください私は待っています」と
奴らってのはつまり今目の前にいる鬼達の事だったのだろうか?
鬼を見ながら考えてると
「あにをいていう!!あやうがのじえのみじじるべをばたせ!!」
鬼は怒りながら刀を振り回す
ちなみに今の言葉を通訳すると「なにをしている!!はやくかの地への道しるべをわたせ!!」だ
多分合っていると思うそう考えていると後ろにいる鬼達がごにょごにょ何か言っている
今は気にしても仕方ないかもしれない
「OKOKかの地への道しるべねちょっと待っててくれなえっとこのへんに・・・」
とポケットをあさぐったりする
またまたここで油断というかなんというか恥ずかしい話なのだが・・
今琉玉はここにはない
そう!!他のカードと一緒に車の後方旅行バッグの中なのである!!!
不幸中の幸い?なのかどうかはさておきこの鬼達はそれに気づかず追ってきてくれたという訳だ
なのでもちろんあさぐっても出て気はしない
変わりにでてくるのはもちろん
カードである
すぐさまカードを取り出し手を前にだし呪文を唱えようとする
「我、夢見間 賭が願う!!!夢の間!!夢見る間!!!ひとときのってえ?」
唱えてる途中で鬼達が襲い掛かってきたのだ
「ええええええ!!!!ちょっとおわっあぶない!!ひっあちょっと待てってひい!!!」
鬼達が刀やこん棒を賭めがけて振り下ろす
間一髪のところで避けて避けてと攻撃から逃れる
そして少し鬼達から距離をとって睨みつける
「おい!!お前たち卑怯だぞ!!自分達だけ武器もって僕には変身させないなんて!!こういう時は変身終わるまで待つのがお約束ってもんだろうが!!!」
そう言って鬼達に向かって文句を言うが鬼達は首をかしげそして襲い掛かってくる
「このっ!!おっ!ほっのわった!!」
次々に来る攻撃をギリギリのところで潜り抜ける
しかし鬼達はこっちがなにかするのをわかっているのだろうこちらに隙を与えさせない様にしはじめる
「くそっ!!これじゃほっ!!変身がよっと!できないじゃ!!ねぇっすか」
避けながら何か策はないかと鬼達の攻撃を見ながら考えるするとよく見ると先ほど前に出てきていた喋れる鬼が他の4体に指示を与えながら攻撃してきているのがわかる
つまりこの鎧鬼の指示を止めれば変身ができる
それに気づくことができたが相手の鎧鬼もバカではないらしく手を止めさせようとしない
明らかにこちらの体力切れを狙ってきているのがわかる
相手の作戦どうりに進んでいるのがわかる
徐々に息が切れて来た
「くっ!ふっ」
このままではやばいなとおもっていると
こつんと足に小石をひっかけてしまいその場に倒れてしまう
「しまった!!」
すると待っていましたと言わんばかりに鎧鬼が前に出てきてこちらを見ながらニヤッと笑い刀を振り下ろす
やられる!!そう思い目をつぶった
あぁ油断してカードとか手放してしまってた僕がダメだったんだな来世ではもっと行動をしっかりして考えてなど考えていると
あれ?いつまでたっても鎧鬼の攻撃がこない
恐る恐る目を開けて見るとそこには綺麗な茶色い髪をした少年が立ち鬼の攻撃を防いでいた
「えっ!?きっきみは??」
声をかけると茶色い髪の少年は鬼を吹き飛ばす
両腕には鉤爪をつけてとってもさわやかな雰囲気の子だ
だがどこか懐かしく感じる
すると少年がニコッと笑ってこちらを向く
「やっと役に立てた・・・」
ボソッとつぶやく
やっと?僕はこの少年とどこかであっただろうかと考えていると吹き飛ばされた鬼が立ち上がる
それに気づき少年は鬼の方に向きを変える
「賭さん早く変身して!ここでやられたら楽しかった話とかもっと聞けなくなって寂しくなるんだから」
そういいながら鉤爪を構える
驚いたこの子は僕が変身できることを知ってる
何故だかはわからない
神子さんの知り合い?
そうだとしてもここにどうやって?
いやそれよりも僕はこの子とどこかで会っているそんな気がする
そう思っていると鬼がこちらに目掛けて攻撃を仕掛けようと走ってきた
「さぁ!!!早く!!!変身を!!!」
少年が叫ぶ
「なんだかよくわかんないけどとにかくありがとう!!!」
そう返事を返すと少年は嬉しそうに笑う
「こっから先は一歩も通さないよ!!!」
そう言い放って鬼達の攻撃を受け止める
それを見ながら賭もカードを構える
もちろん選ぶは剣
「いくぞ!!!我、夢見間 賭が願う!!!夢の間!!夢見る間!!!ひとときの瞬間我に力を!!!世界を守る!二次元を守る力を貸したまえ!!!永遠の想像インフィニティイマジネーションダウンロード!!!」
すると身体が光り輝く
髪の色がピンクに変わり洋服がすべて軽装の鎧に変わり靴はロングブーツという姿に変わった
そして空中から黒い剣が振ってきた
それをパシッととり構える
「退魔剣士レント!!!これより鬼達を殲滅する!!!」
名乗りを上げると鬼達が少したじろぐ
少年はキラキラした目でこちらを見ている
なんだか子犬のようだなと思いながら笑顔をむけると急にそっぽをむく
「さっさぁ!!賭さんで今もいいのかな?あいつらさっさと倒しちゃいましょう!!」
その声は何だか嬉しそうなのが伝わってくる
そしてやっぱり懐かしさが感じられるこの気持ちはなんだろう?
そう考えてると目から何故か涙が出て来た
えっ?と少し戸惑ったがそれをぬぐい剣を構える
「鬼達よさっきはよくも防御に回らせてくれたな・・こっからは俺らのターンだ!!!」
そう言い睨みつけると鬼達はその殺気にビビったのか慌てている
だが鎧鬼だけは慌てず構える
さすが指揮を執っている事だけはあるようだ
鎧鬼は四体の鬼に指示をだし陣形をとる
お互いの間に緊張が走る
動いた瞬間バトルが始まる
お互いそれがわかっている為動きを止める
そして目の前に枯葉が一枚落ちてそれが地面に着くと
「やでええええええええ!!!!!」
鎧鬼が叫び四体の鬼が動き出す
「いくぞ!!!!」
「はい!!!」
掛け声とともに俺と少年も剣と鉤爪を構え前に踏み出す
それの戦いを上空から見下ろしている奴がいるとも知らずに・・・・




