第58 女の涙
さて・・俺も行くべきかどうか?
優は思案しながらポケットを探る
そこには認識阻害用の白い仮面が入っている
マーリンに直してもらい賭にはもう通じないが少しだけ調整してもらい他の人にはばれない様に出力を上げてもらっている最新版だ
マスクを握りしめながら考えていると
「まぁそこに座ったらどうですか?未来の方せっかく入れた紅茶もまだ沢山あるのですから」
後ろからジャンヌが声をかけて来た
その瞬間後ろに飛びジャンヌから距離をとった
ジャンヌは先程座っていた椅子に座り直し紅茶を飲んでいる
この目の前にいる者は今確かに言った「未来の方」と
つまりこの賭の母親もといいジャンヌ・ダルクは俺の内情を知っている!?
驚きを隠せないでいるとジャンヌが一言言った
「座りなさいと言っているでしょう小僧」
部屋全体を押しつぶしそうになるくらいのプレッシャーがかけられた
くっ押しつぶされる・・
そう思いながら目の前にある椅子に座り直す
すると部屋全体を覆っていた圧が消えた
「そう最初からそうやって大人しく聞いていたらよかったのよ優くん」
ニコッとジャンヌは微笑む
そしてまた紅茶を入れ直して優の前にカップを移動させる
不思議な事にカップは机を綺麗に移動し一滴もこぼれず優の前で止まった
それを一度見てジャンヌを見る
「大丈夫ですよ、毒なんて入っていませんそれに毒を入れるくらいなら先ほどやっています。それに私はあなたの敵ではないのですからそんな事はしません」
「ではいただきます」
ゆっくりと口に含み能力をばれない程度に使って成分とかを解析する特に問題はないようだ
「ふぅ・・そんなに信用ないんですか?能力まで使って調べるなんて、まぁさっきプレッシャーを与えてしまったのだから仕方ありませんか」
ため息をつき優を見つめる
気づかれていた
バレない程度に能力を落とし使っていたのをまさか見破られるとは思っていなかった
今目の前に居る人が只者ではないことがこれでハッキリした
紅茶を飲みながら少し恐ろしい感覚を覚えた
敵ではないと言っている以上大丈夫だと思うがもし敵だったらと思うと身の毛がよだつ敵になる
そう感じているとジャンヌが立ち上がり
「でわ未来の方、あの方は元気ですか?」
「あの方?というと・・」
「マーリン様の事ですよ」
ジャンヌはにっこり笑顔を浮かべて答える
この女どこまで知っているんだ!?
冷汗がとめどなく流れてきた
しかし隠しても意味がないだろうとなり
「えぇ・・元気ですよとても」
そう答えると優に背を向け
「そうですか、あの女・・いやマーリン様は元気なのですね」
今あの女って言わなかったかこの人?と思ったがツッコミは入れないで置くことにした
でもなぜこの人は俺の事もマーリン様の事も知っているんだと思っていると
「なぜ自分達の事を知っているんだ?という顔をしていますね、いいでしょうお答えします。私は一度マーリン様とお会いしているのです、夢の中ですが」
「夢の中ですか??」
「えぇ・・あの方は人が幸せに見ていた夢に土足で上がってきて荒らしに荒らしていったのですよ!さすがに夢の中だとわかりそれならと能力全開放で戦ったのですが夢の中という事もありあちらが一枚上手でしてねほんと腹立たしい」
机を叩きながら地団太をジャンヌは踏んでいる
ポカーンとしているとそれに気づきハッとなり咳払いをする
「というわけで負けた私はある約束をしたという訳ですよ」
「約束?ですか」
「はい!約束です、なのであの女・・違ったマーリン様からあなたは手紙を受け取り皆さんに渡しましたよね?」
この人やっぱりマーリン様を相当恨んでるなと思いながら手紙を取り出す
「これですよね?読んだとき少し不思議に思いましたが・・なるほどこれで納得しました」
そう言って手紙を開く
「汝南国の地に赴き試練を乗り越えろさすれば大いなる闇を切り裂く力を与える」
そこにはそう書かれていた
優がそれを見せて立ち上がる
「南国ってのはハワイなのか沖縄なのかはっきりしなかったが賭に誘われて沖縄に何かあるんだってマーリン様がなにか企んでいるってのは薄々は気づいていたがあんたがこれに一枚かんでるってわけか」
そう言って机を叩くとジャンヌが天井を向く
なんだ?と思い上を見上げると上から何か落ちてくる
「なっ!?なんだ!!!」
後ろに飛び退くと轟音と共に目の前に剣が二本刺さっていた
明らかに嫌な予感しかしない展開だなと思っているとジャンヌが剣の前に立ち一気にその剣を地面から抜き取る
「えぇ一枚噛んでますねそしてあなたに関しては私が担当することになっています、本当は・・賭を母親として手助けしたいのですがそう言う訳にもいかないので」
落ち込んだ声で優に向かっていう
たぶんジャンヌの中の夢見間未来の本音なんだろうなと思った
そう考えているとジャンヌの身体が光り始めた
「まったく・・あの女に利用されるのもしゃくです、それにこの事が天界にバレたり天照様にバレるのは今はマズイのに・・でもこの先賭の助けになるならしかたありません!!あなたを鍛え上げます!!!というか!憂さ晴らしに使わせていただきます!お覚悟を!!!」
そう言いジャンヌは地面を蹴った
早い!!
優は宙に飛び上がりジャンヌの突進を避ける
数秒反応が遅れたらやられていただろうしかしギリギリのところで優は避けた
「あなた反応がいいですね!さすがあの女の弟子ですね。この一発で終わったらどうしようかと思いましたよ、でもこれなら本気をだしても大丈夫そうですねちょっと待っててください」
「いやぁそれほどでもってえっ・・本気って嘘ですよね?」
「冗談なんかいいませんよこれも賭の為あなたには荒療治で行かせていただきますね」
ニコッと笑顔を見せて手に持ったリモコンを押す
すると部屋の周りを囲んでいた本棚がゆっくりと下がり机なども地面に消えていき部屋には何も障害物が無くなった
それを確認しジャンヌは剣を構える
「我!神の名のもとに!!血潮を剣に!光を力に!我が肉体は鋼に!オリハルティアライト!!!」
そう唱えるとジャンヌの周りに鎧が何もないところから現れジャンヌに装着される
綺麗な銀色の鎧だが動きやすいように軽装備型に仕上がっている
とても神々しく輝く姿はまさに聖女だった
優は見とれてしまっていた
するとジャンヌが叫ぶ
「我が名はジャンヌ・ダルクオリハルティア!!!いざ参る!!!」
そう名乗りを上げた瞬間優の目の前から消えた
「データプロテクト展開!!!!」
そう言うと優の周りを白い球体が覆う
優は周りをしっかりみる
データプロテクトは防御に特化した能力で、その力は相手が自分の半径5メートルに近づいたら自動的にそこに防御シールドを張るというものなのだが展開してわずか数秒で優の身体は宙を舞っていた
「なっ!!に!?」
優は訳が分からなくなっていた
あまりに一瞬過ぎて解析さえできなかったのだ
そしてシールドの展開も追いつかなかった
自分が浮いている下を見るとそこにはジャンヌが立っていた
「この!!!データジャベリン!!!」
空中で態勢を立て直しジャンヌに向かってデータで出来た槍を放つ
音速で飛ぶ槍これなら多少いけるそう思ってみていると
パシッという音と共に軽々と掴まれていた
「うむ30点!隙をつくとかそう言うのじゃないよね今の感情に任せて撃ったら隙が出来るわよ」
そう言うとまた姿が消えた
すぐに反応し対応しようとしたが
「遅い!!!」
その声と共にジャンヌは優の背中にいた
そしてもたれかかりながら
「あなたは能力に頼りすぎるところがあるわね、まぁあなたの能力は計算がされるようだから仕方ないみたいだけど・・でも計算がすべてじゃないのよ!!!」
そう言うと両腕で優を叩き落とした
ドゴンっという音と共に優は地面にめり込む
「くっは」
起き上がり軽く血を吐く
この世界にこんなに力が強い人がいるなんてありえない
しかもここは自分が居た世界より過去の次元の世界
ならなんでこの人は自分の世界にはいなかったんだ・・・
なんで俺らを救ってくれなかったんだ・・
なんで・・・
なんで・・・・・
なんで・・・・・・
急に心が折れそうになり
優はくじけそうになった
試練なんてどうでもいい
この人が居れば・・
そう考えているとするとジャンヌが目の前に立つ
「どうしてこんなに強いのに自分の世界には居なかったんだみたいな顔をしているわね優くん」
そう言われ優が顔をあげるとジャンヌは悔しそうな顔をしている
「ごめんなさい私にもわからない・・なぜあなた達の世界に私が存在しなかったか、あの女に聞いても答えようとしなかったわ、ただ・・もしかしたらそちらの世界では私という存在は生まれてなかったかもしれない、そういう世界だったのかもしれない」
力強く握り拳をつくるジャンヌ
「だから罪滅ぼしではないけれど、今ここであなたを鍛え上げて賭と共に奴らを倒していただきます、奴らの狙いは恐らくかの地に眠る物それの破壊だと考えていますなので立ち上がってください」
涙目になりながらジャンヌが言う
優はその顔を見て頭をかく
「ハア・・なんだかねぇ確かに悔しいって思っちゃって少しくじけそうになっちまったけれど、うん!しかたねぇ」
そういい立ち上がりジャンヌの涙をぬぐう
「女の人の涙には俺は弱いんだ、それにマーリン様が出した試練ならやりとげないといけない理由があるんでしょうにだから・・」
優は頭を下げ
「俺をあんたより強くしてください!!!お願いします」
大きな声で言うとジャンヌはクスッと笑った
そして真剣な顔つきになって
「最初からそのつもりよ!!!それに!!私てかこの身体は賭のお母様の身体なんだからそんな口説き文句みたいなこと言わないの!!!」
そう言って優に背中を向ける
「惚れちゃいそうになるじゃない・・バカ」
小さな声で言うと
「なんかいいました??」
優が首をかしげる
「なんでもない!!!じゃあ今からもっと本気を出すから覚悟しなさいよ!!!」
「えええ!!!まだ本気じゃなかったんですか!!?勘弁してくださいよ~ってか賭達大丈夫なんですかね?」
優が話をそらすために言うと
「あぁ賭なら大丈夫だと思うわよ、だってあの子がついているもの」
ジャンヌはニッと笑う
「あの子?あの子って天照様達の事ですか???」
そう優がジャンヌに聞くと首をふる
「いやいや!違う違う!そうね・・・あの子の大切なパートナーかしらね!ようやくまた会えるから」
そう言って今度は優しく微笑む
そしてポンと手を叩き
「さて!だから心配いらないからあの子たち帰ってくるまでやるわよ~~~」
元気よく声をあげる
「お手柔らかにお願いします・・・」




