第51 いざ!空港へ!
窓から見える景色がどんどん過ぎていく
品川駅で羽田空港へ向かう電車にゆられている
電車の中はキャリーバックなどを持っている人達でいっぱいだ
もちろん自分達もその中の人達だ
目の前には、桜さんと光ちゃんが座席に座っている
自分の隣には、神子さんが吊り輪に捕まって一緒に立っている
桜さんは小説を読み、光ちゃんは電車の中だというのに小さいスケッチブックに絵の練習をしている
隣にいる神子さんをチラッと見ると神子さんは首を軽く傾けこちらを見る
「どうしたの?賭くん?」
「あっいえ!なんでもありません、すみません」
そう?と言って神子さんは前を向く
自分もまた前に見える窓を見る
過ぎ去っていく景色を見ると、どんどんビルが過ぎていくしばらくすると広い景色が見え始めた
空港が近づいている証拠だ
もうすぐ空港に着き、自分たちは沖縄へ旅立つ
脳裏に浮かぶのは秋葉原で出会ったあの琉球かすりを身に纏った人だ
「試練は行けばわかります、その琉玉はかの地への道しるべ」
そう言っていた
この数日間それを考えていた
試練・・一体何があるのだろうか?
そして・・トランクをチラリと見る
その中には受け取った「琉玉」が入っている
家で磨いたり、話しかけてみたりいろいろしてみたがまったく反応がなかった琉玉
やはり沖縄に行かなければ何も起こらないのだろうか?
少し考えていると「賭くん??」
ハッとなり隣を見る
神子さんが心配そうにしている
「賭くん難しそうな顔しているけど本当に大丈夫?なんか悩んでいるの?それとも沖縄に帰るのがいやなの?」
「いえ!沖縄に帰るのは嫌じゃないんですが、ちょっと気になる事があって」
「気になること?」
神子さんが首をかしげる
「はい、いや何で僕だけじゃなくてなんでちゃんと人数分のチケットを用意していたのかなってそれが不思議でならなくて」
「ああそうね、なんでだろうね」
神子さんは目をそらした
少し気になりはしたがスルーした
しかし、嘘をついた
確かにそのことも気になる事ではあるのだが、琉玉の事は話していない
本当なら日本の最高神である天照、いや今は人間体でいる神子さんに相談すべきはずなのだが、まだ話すべきではないと判断しての事だ
もしあの琉球かすりをつけた人が皆を必要としているならもっと前に、自分達が揃っているときに現れるはずだがあの人は自分が一人になった時に現れた
つまり、今は伝えるべき時ではないと判断した
だがあの人はこうも言った
「皆の力を借りて奴らを止める力を手に入れてください」
皆の力を借りて、それは今揃っている仲間の力を使わないと試練は乗り越えられないのかもしれない
そして「奴ら」
今いるだけでも敵と認識できるのは、この世界で一番強い「ジェノサイド」、その部下「アヌビス」、ネクタルも一応敵ではあるのだがこの前和解した
それでもってきっと最大の敵未来の敵「闇夜望」
前は身体を乗っ取って現れたが、いずれ本体自体が現れるはずだ
その時までにもっと強くならなくてはならない
そう思いながら外を見るとトンネルに入り始めた
どうやら到着するようだ、時間にして15分くらい予定通りである
「着きましたよ三人とも行きましょうか」
そう声をかけると桜さんと光ちゃんが席を立ち、神子さんも降りる準備を始める
到着すると駅は二手に分かれている
第一旅客ターミナルJARなどに乗るなら左、第二旅客ターミナルADAなどに乗るなら右
今回自分達は第二旅客ターミナルのADAに乗るので右にいく
エスカレーターを登って出発ロビーである二階にあがる
「さてチェックインと・・」
するとチェックインカウンター近くに麦わら帽子をつけた男がこちらを向いて手を振っている
頭を抱える
「賭くん、あの人この間の・・・」
「ああ・・僕の友達です」
そう話してると男は近づいてきた
「お~す!賭、待ちくたびれたぜ~いや~親が送ってくれたから先に着いたんだが、どうも早すぎたってな」
笑いながら話しかけてきた
そして周りにいる三人をきょとんとさせている
深いため息をつく
「おん??どうした?ため息なんかついて幸せ逃げるぞ」
「お前はもっと周りを気にしてよ!明らかに三人ともこの間と雰囲気違うから戸惑ってるよ」
そう言うと優は顔を引き締め直して
「この間はすぐに立ち去ってすみませんでした。初めまして水鳥 優と申します!いつも賭がお世話になってます!今回は一緒によろしくお願いします」
挨拶すると三人は「はあ」という返事をした
優を引っ張って少し三人から距離をとって小声で話す
「お前な、最初からそんな感じだったらもっと印象よかっただろうけど今のお前ただのちゃらい人にしか見えないぞ」
「ええっ!?そんなまさか!?」
驚いた反応をする
はぁとため息をついて
「いいか?お前まだ仮面の男ってバレてないんだらかもっとしっかりしてくれ」
そう言うと今度は優が驚いた
「かっ賭なんで俺が仮面の男ってバレたんだ!?あんな完璧な変装までしていたのに!?」
「お前あれで僕にばれないと思ったのかい!!!まぁいいやとにかく粗相のないようにしてくれよわかったか?」
ニコッと笑うと優は冷汗を流しながら「おっおう」と返事をした
優がなんでここまで怯えているかというと、昔の出来事がトラウマを引いているのだろうがまぁあれは自業自得だったので良しとする
三人の方に戻りこれで全員そろった形になる
「さて気を取り直してチェックイン・・いやその前にごめん売店で土産買っていいかな??実家に持っていきたいからさ」
そう言うと皆同意してくれた
売店に行くと、東京土産が並んでいる「東京バナナ」が一番の売れどころだったりするわけだが他にも多数のお土産が売っている
煎餅だったり、プリンだったり、カステラ・飴玉などなど種類は豊富だ
迷ったりしたが選んだのは
「結局あんなに悩んで東京バナナにしたわけなんですね賭さん」
光ちゃんがお土産袋を見て言う
「返す言葉もありません」
とうつむく
「まぁいいじゃない!家族の為にしっかり選ぼうと頑張ったんだからだけど・・その量なに?」
桜さんが不思議そうな顔をしている
それもそのはず東京バナナ30個入りを10個も買っているのだから驚かない人が不思議だ
気のせいか周りの人からの視線を集めている気がする
「えっと・・沖縄に着いたらわかると思うんで今は気にしないでください、それよりチェックインしましょう!」
慌てて話題をそらしチェックインカウンターに向かう
端末を機械に当てチケットを取り、荷物を預けるために荷物検査をする
最近の機械は発達しており、センサーでバックの中に何があるか、危険物などはないかをすべて判断できるようになっており警備が厳重になっている
チェックが終わると荷物を預けることができるという形になっている
ほどなくして全員がキャリーバックなどを預けることが出来た
時間を見るとあと30分くらいでは出発の予定だ
どうしようかと考えていると神子さんから声があがった
「私!空弁っていうの食べたい!!!」
そう言うと他の三人も
「いいですね」
「そうですね!弁当いいと思います!」
「確かに旅に弁当は付き物ですからね」
と意見が一致した
「それじゃあ中に入って空弁買っていく事にしますか」
賭がそう言うと「異議なし!」と皆で中に入った
出発ロビーと近くにはまたいろんな売店があり、少し高くなっていたりもするが弁当が沢山売っている、食堂形式のお店もあるが今回は弁当という事もありそれぞれ弁当をバラバラに選んでいる
賭も肉弁当にしようか、いくらが入った弁当にしようか悩んでいると
「賭はんこの弁当も美味しそうやで」
と後ろから声がして受け取る
弁当には「絶賛!うなぎ弁当MAX」と書かれていた
お~これも美味そうだと受け取った方向をみると
「なんや空港ってやっぱにぎやかやね~弁当もこんだけ種類あると楽しゅうなるなぁ」
と楽しそうに話しかける人物
「しっしっ神酒さん!?」
「ん?そやよ~神酒やよ~どうしたん??化け物でも見たように驚いて」
そう言いながら目の前によってきた
「いや!!えっ!?なんで神酒さんがここに!?」
あまりのいきなりの出来事に驚く
「なんでって、私も沖縄に用事があるさかい飛行機に乗りに来たんよそしたら偶然あんさんが居たっていう訳や」
ニコニコ笑いながら言う
「絶対嘘ですよね?どこで知ったんですか沖縄に行く事」
そう聞くと神酒は笑いながら
「あはぁやっぱり偶然ってのは信じてもらえへんわな、そうやねしっとったんやであんさん達が沖縄に行く事多分考えたらわかると思うけどなぁ、まぁ教えてあげへんけどな」
ニヤニヤしながら歩き出す
「大丈夫や、誰にもいわへんからまぁもし力が必要なら手を貸すからいつでもいうてなぁほなまた沖縄で会おうなぁ」
そう言って立ち去ろうとすると急に思い出したようにこちらに振り返る
「あっそや!言っとくわ今回アヌビスも沖縄にいるはずやから注意してなぁほなまた」
と言って人混みに消えていった
アヌビスも沖縄に・・あの琉球かすりの人が言っていた奴らとはやはりアヌビス達なのだろうか?
とにかく沖縄に飛び立つ前から果てしなく嫌な予感しかしない賭だった




