第50 琉玉
秋葉原電気街口を左に出るとそこには沢山の人が行き交っていた。
ゲームセンターのゼガでクレーンゲームなどをしている人達が見え観光客もいるだろうが、よく見るとコミケで配っていた紙バックを持っている人がチラホラといる。
それを走りながら横目で見て大通りにでると
「えっ・・・」
思わず止まってしまった
そこに広がっていたのは、今期から始まるアニメの看板が沢山飾られているビルと道路を縦横無尽に行き交っている人達だった。
前来た時はこの道路は沢山の車が行き交って歩行者線は沢山の人が居て歩くのも大変だったことを記憶している
だが、今道路は人が歩き回ったり、道路の真ん中で写真を撮ったりなどしていたりなどいつもとは違う光景が広がっていた。
「どういうことですかこれ!これが幻のコミケですか??」
賭が慌てて聞くと三人は足を止めてきょとんとしている
「えっと・・・賭くんまさか歩行者天国見たことない?」
「はい」
神子が聞いた質問に即答すると三人はそこからか~と頭を抱える
「賭くん休みの時秋葉原に来たこと無いんだね、えっとね説明すると秋葉原は土日祝祭日はこうやって道路を解放するのよ」
「そうそう、あまりにもアニメとかが発展したから外国からも旅行者が増えてしまいましたからね~」
桜と光が歩きながら説明する
「昔は少しいろいろあって歩行者天国もなくなったんだけどね、時代がもう一度復活させてくれたってわけなのよだから幻の四日目とは関係はないけど、そうねこれのおかげで私たちは動きやすくなっているわねって説明してる間に歩きになっちゃった急がなきゃね」
とまた走り出そうとした時
「お先にいかせてもらいやす~」
と言う声と共にバッとそばを影が通り過ぎた
「「「えっ!!?」」」
賭、桜、光が驚いた
しかしすぐに神子が走り出した
「先をいかせるかあああああああ!!!神酒~~~~~~」
そう自分たちの横を通り過ぎたのは、人間モードになったネクタルだったのだ
神子はすぐにそれに気づいて反応したのだ
二人はすごい速さで人を避けながら走っていく
取り残された三人はポカンとあっけにとられていたがハッとなり二人の後を追っかけた
「くううううううう!!!!」
追いついた時にはらじんばんの店内で神酒さんの前で神子さんがひれ伏していた
神酒さんが手に持っていたのはコミケで限定販売していた同人雑誌だった
「まだまだやなぁ~神子はん、昔より油断しすぎじゃあらへんか?」
クスクスと笑いながら神子を見下ろしている
後から追いついた賭達に気づき手を振る
「あんさん達遅いよ~もうちょっと早かったら、この子が大泣きしている姿が見れたのにぃ」
とてもイキイキした笑顔で話をしてきた
いや充分すぎるくらいおかしな光景を今見ているんだがと思っていると、神酒が近寄ってきた
「あんさん昨日はやばかったなぁ、端末にもしもの為にしこんだあれ役に立ってよかったわぁ、まさかあんなに早く使う事になるとは思わへんかったけど結果オーライって事で」
そう言いながら肩に手をポンと置く
「はい、昨日は本当に神酒さんも含めてみんなには助けられました!ありがとうございました」
と一礼をすると神酒は嬉しそうに笑顔をみせる
「で、あの今これどういう状況なんですか?神酒さんが持っているそれコミケで限定発売されていた商品ですよね?」
そう聞くと神酒が頷く
「そやでコミケで発売されていた限定もんや、だけどな即完売してもうて手に入れられなかったんや、それを今こいつの前で手に入れたってわけなんよ」
そう言いつつ神子を見下す
その言葉を聞いて神子が神酒をキッと睨みつける
「あんた・・去年も一昨年も来なかったのになんで!?なんで今年現れるのよ!!欲しかったのに!今日しかチャンスないとコミケでは諦めていたのに目の前で取られるなんて・・・くそぅ!」
と地面をバンと叩きつける
その光景を見ながら感じるのは、周りからのお客さんの視線
正直言って相当痛い
痛すぎて他人のふりをしたいくらいだと思ってしまう
すると、スッと桜が前に出て神子の方をポンと叩く
神子が桜を見ると桜は言葉をかけた
「神子さん今うなだれていていいの?今あなたがここでうなだれている瞬間にもお宝は沢山の人に取引されているのよ!さぁ!立ち上がりなさい!立ってお宝を目指すのです!」
そう言うと神子は立ち上がり
「そうね!そうよね!!桜の言う通りだわ!!私諦めない!!!」
キリッと神酒さんの方に神子が向き直り
「勝負よ神酒さん!!!先手は取られたけども!どれだけ!!お宝を集められるか!!!」
クスッと笑って神酒が神子の前に立つ
「ええですよ!!!では今日の夕方までにどれだけコミケのお宝グッズを集めきれるかでよろしい?」
神酒がそう言うと神子は頷く
「え~では!よ~いスタート」と桜が言うのと同時に二人が光の速度でお店を出て行った
「でっ!!結局幻のコミケ四日目ってなんなんですか!?」
幻のコミケ四日目それはコミケは三日間しか開催されないのだが、そこで手に入れたお宝をすぐに読んで満足したからとか、すごい欲しくて手に入れたがそれで満足してしまったとかまぁ後は転売屋が売ったとかいうものがどうやら秋葉原などで沢山売られることらしい
転売屋から買うのは嫌だが、お店からならいいという思考らしい明らかにコミケで売っている値段より倍の値段設定になっているらしいのだが、当日手に入れられなかった人達からしたら少しくらいとなって買う
グッズが沢山行き交う光景を見ていつしか誰かが幻のコミケ四日目と言ったそうだ
秋葉原のドーナツ屋に入ってお茶をしながら桜さんと光ちゃんに説明をしてもらった
「だからあんなに神子さん焦っていたんですね、でも手に入ると思っていたものがまさか目の前で敵になっていた友人・・・いや人ではないですがさすがに目的の物奪われたらそりゃ落ち込みますね」
苦笑いしながらココアを飲む
「あっところで二人は何か買われたんですか?コミケではあまり買ってなかったようにも思ったんですけど」
そう聞くと二人は鞄からビニール袋を取り出し
「もちろん」
「買いましたとも!」
二人は得意気にテーブルに出した
「えっ!?いつ買ったんですか!?」
賭が驚くと二人は見合って
「えっ?あの二人がうもめたりしている内に他人のふりして」
「そうそう!賭さんに二人をお任せしてその隙に買ったんです」
手で顔を押さえうつむいた
まさかあんな一瞬でこの二人は目的の物を手に入れていたなんてと少し恐ろしさを感じたのと、他人のふりをしていつの間にか居なくなっていたんかい!というツッコミをしたいくらいだった
でもまぁ過ぎた事だからいいかと顔を上げると二人はお宝を開放して見入っていた
二人はまるで子どものような目をして同人誌を読んでいるのだが、ちらっと見てみるとタイトルが物騒である
桜さんの読んでる同人誌は「男を拳でねじ伏せろ」と光ちゃんのは「厳選世界の暗殺武器、伝説武器100選」と書かれており少しだけゾッとしたが、戦いの為の資料だと頭でそう思い込みココアを一口飲んでそれ以外の考えをねじ伏せた
二人が楽しそうにお宝に夢中になっているので、久々に秋葉原を散策してみようと一人ドーナツ屋を後にして歩行者天国の大通りを歩いてみる
見回して見ると、コミケほどではないが本当に人が多い
でも見ていて思うのは、何故か歩行者天国なのに日本人のほとんどが歩道を歩くという奇妙な行動しているなと少し見ていて感じる
何か心理的なものが作用しているのだろうきっと
そう考えながら、ゆっくり歩いているとリンッという綺麗な音がし振り返る
するとそこには綺麗な着物をつけた人が立っていた
こんな暑い中、着物で暑くないのかな?と思いながらよくみてみるとその人がつけているのが沖縄の伝統的な琉球かすりなのがわかった
沖縄の人?っと思って近づこうとしたがおかしなことに気づいた
周りの人は誰も気づいていないのだ
とても目立つ格好をしているはずなのに誰も見向きもせずに通り過ぎていく
すると、その人は路地に入っていった
「待て!!!」そう声をかけてあと追っかけると明らかに人ではないスピードでどんどん離れていく
なんとか追いつくとまったく人気がない路地にで止まった
こちらに背を向けて立つ姿は何やらオーラを感じる
ゴクリと唾を飲み込んで声をかける
「あなた、何者ですか?」
だが返答がない
「聞き方がおかしかったですか?あっまずは名乗った方がいいですかね?僕の名前は夢見間賭と申します、あなたのお名前聞いてもいいですか?」
と聞いてみるとこちらに振り返る
「夢見間、やはりあなたがそうなんですね。私に名前はありません、ですが怪しいものではありません顔を隠しているのもごめんなさい、訳を聞かずにこれを受け取ってもらえますか?」
そう言い手を前に出す
罠じゃないか?と少し警戒したが不思議と足が前に出た
そして近づき、かすりの人から受け取る
手の中を見ると綺麗な虹色に光る玉があった
「これは?」
と尋ねると手をおろし
「これの名は琉玉、あなたはこれから行くかの地で沢山の試練が振りかかります」
「試練?」
聞き返すとかすりの人はこちらにまた背を向ける
「あなたなら必ず乗り越えられます。沢山の出会いもあるはずです、皆の力を借りて奴らを止める力を手に入れてください。」
「奴らって、一人じゃないのか?それにこの琉玉ってなんなんですか?試練ってなんですか!?」
そう言うとかすりの人はゆっくりと歩き出す
「試練は行けばわかります、その琉玉はかの地への道しるべ、あなたの故郷であって故郷ではない場所への道しるべ奴らより先にたどり着いてください私は待っています」
そう言ってかすりの人は霧の様に目の前で消えた
白昼夢にでもあったのかと思って手を見るがそこには受け取った琉玉が輝いていた
「故郷であって故郷ではない場所への道しるべ」
故郷、あの人は琉球かすりを着けていたならば答えは沖縄にあるのだろうか?
ただ今わかる事は、あの人は助けを求めている
かの地というのはよくはわからない
だけど、行くしかない
故郷沖縄へ




