第41 相対する価値
「闇夜 望だと!?」
歯ぎしりをしながらアヌビスは目の前にいる相手の名前を口にする
その名前を呼ばれて賭の身体を乗っ取った男は笑う
桜と光はその不気味に笑う顔を見て理解する
今目の前に居るのは身体は賭だとしても賭ではない者だという事を
アニメの話やコミケの話などをしていた時の光り輝いていた笑顔とは全く違う、その不気味に笑う顔を見て背筋が凍りつきそうだった
すると男は桜と光をちらりと見てからまたアヌビスを見た
「あぁ闇夜 望それが俺の名だ、しっかし・・」
望は辺りを見回してため息をついた
「全然だめだな・・・何やってやがんだまだ全然破壊もできていねぇじゃねぇか・・・もう少し・・っとそうか・・・おい!!そこの女」
と今度はしっかりこちらを向いて指を差してきた
桜は「わたし?」と自分に指を差しながら尋ねた
「そう!お前だ・・そのなんだ・・今西暦何年の何月だ?」
桜と光は首をかしげる、一体そのような事を聞いてどうするのだろうか?と少し訝しんでいると
「とっとと答えやがれ!!!」と怒鳴ってきた
その声だけで周りの石がバキッとヒビが入った
「えっと2040年の8月よ!!それがどうかしたって言うの!?というかさっさとその身体から出っててくれないかしら!?賭くんを早く返しなさい!!」
少し怖いながらも言うと望はフンッと鼻をならしてまたアヌビスに向き直る
「2040年の8月かぁくっくくくく」
ニヤニヤしながら笑い始める
「てめぇ・・・何がおかしいんだ」
アヌビスは睨みつけながら望に問うと望は笑いながら喋り始めた
「だってよ・・おかしくてたまんねぇもんよ、まさか過去の世界にくるとは思ってもみなかったもんだからよぉおっなるほどなるほどだからお前はあっちの世界より弱かったってわけか」
うんうんと頷きながら1人で納得しているとアヌビスがイガリマを構え直し距離を詰めて振り下ろすと望は手を前に出すすると先程と同じように振り下ろされたイガリマが空中でカチカチ音を立てながら止まった。
「過去だかあっちの世界だかごちゃごちゃ何言ってやがる!!!俺が弱いだ!!!戦ってもいねぇお前が何言ってやがる!!!ぶっ殺してやる!!!」
ガシャーンと音を立て何かを弾き返したような感じで後ろに戻りアヌビスは距離をとる
そしてイガリマを抜刀術のような持ち方で構える
「これでもくらいやがれ!!!!!!神斬空裂斬」
そう言いながら大きくイガリマを凄い速さで横一文字に振りぬいた
すると望が指一本構え
「やはりね・・・この時代じゃお前はこれだけの実力ってわけか・・」
そしてスッと指をゆっくりと振り下ろすとザンッという音と共に目に前で空間が裂けた
「「え!?」」
桜と光は声を揃えて驚いた
指一本それだけを振っただけで目の前に黒い空間がぽっかりと空いたのださすがの2人は目を丸くした
しかし一番驚いているのはアヌビスだった
「嘘だろ・・・なんなんだよ!!!お前!!!今の一撃見えたっていうのかよ!!神をも切り裂ける力だぞ!!!夢見間の・・人間の身体を乗っ取ったお前ごときが・・・なんなんだよ!!そこの女といいお前といいなんなんだよ!!」
震えながら怒鳴りちらすアヌビス
それを見ながら望はフンっとまた鼻を鳴らす
「それはお前その技何回見たと思ってんだ、今の攻撃くらい目をつぶっていたって防げるぞ」
そう言うとアヌビスは歯ぎしりしながら言った
「何回も見ただぁ!!!嘘つくんじゃねぇ!!!!この技はこの間完成したばかりの新技でまだ誰にもみせちゃいねぇ!!!」
アヌビスはイガリマを地面に突き刺して叫んだ
望は頭をかきながらん~と唸り喋り始めた
「やっぱ犬っころに何回言っても理解できないのかねぇ・・・だから俺は別の世界のしかも未来のお前と戦って倒してきたんだよ、何回も何回も何回も!!それはそれは楽しかったってもんだ!!頑張って頑張って攻撃してくるお前を斬り伏せるのは快感だったぜぇ!まぁ初戦の時はさすがに苦労したんだがなぁ・・だ・け・どお前の攻略の仕方もう知ってるし余裕なんだよ・・しかもまだ全然成長してないお前なんて弱すぎるってもんなんだよ」
そう言うとアヌビスは俯いた
それを見て望はニヤッと笑いながらアヌビスに近づいていく
「あはっ絶望しちゃった???ねぇ?絶望しちゃったの?もう心砕けちゃったのかな?やっぱ弱い奴は過去でも弱いまんまなんだねぇ~どんな気持ち??今どんな気持ち???」
と声をかけながら目の前で声をかける
すると「あぁ・・・最高の気分だ!!!!」
声をあげて望にしがみつく
「うかつなんだよ!!!てめぇ!!!この距離なら!!!」
アヌビスが首を動かすとイガリマが浮き上がり2人目掛けて斬りかかる
「ダメ~~~~~~~~~!!!!」
桜と光が叫ぶ
賭の身体が真っ二つにされる焦って行こうとしたが明らかに間に合わない
クッと目を2人がつぶると
ガキンという鈍い音が鳴り響く
目を開くとカチカチと音を立てて望の身体に当たりながら止まっていた
「なんだとぉ!!!!?どうなってやがる!!!!確かに不意をついたはずなのに・・」
アヌビスが驚いてると望がため息をつく
「あ~うんやっぱ君馬鹿だよね・・・気づかないとでも思ったのかい?それに言ったはずだよね?俺は君と何回も戦っているって、信じられないのも無理はないけど事実なんだぜ?ならわかるはずだよね?」
「まさか・・・・」
望はニヤリと笑った
「そうだよフフ・・別の世界の君は今と同じ挑発を受けて同じ行動をしたんだよ!!!まさか過去の君も同じ行動をするとは思わなかったけどそうかそうかやっぱり馬鹿は死ななきゃ治らないってこの国の言葉は間違っていなかったんだねぇ!!!」
そう言いながら楽しそうに笑いながらアヌビスに罵声を浴びせる
アヌビスはゆっくりと望にしがみついていた手を離し頭を抱える
するとアヌビスの身体から黒い霧が出ようとしていた
「あれは・・・」
桜と光はすぐにわかった
あの霧はアヌビスブレーンがアヌビス本体に入った時と同じ霧
つまり本体から抜けようとしていることに
確かに2人になればもしかしたら勝てるかもしれない
そう思い何も言わずに見守ってると望がその霧を掴んだ
「やぁアヌビスブレーンもちろん君の事もよく知っているよ!君が本体から抜け出るとき必ず薄い霧になって出てくることも織り込み済みだ、そして君の弱点も何回も見せてもらってるんだよ霧になってるときに掴まれると強制的に本体に戻すことができるんだよね」
そう言いながら霧を握りつぶすとアヌビスの中に戻っていった
するとカハッとアヌビスが血を吐いた
望が血を吐いたアヌビスを見下しながら笑う
そして思いっきりアヌビスを蹴り飛ばした
ガハッといううめき声と共にアヌビスが数メートル転がり止まるとアヌビスは動かなかった
いや実際には動けないのだろう
ここまで完全に自分のやり方を見抜かれてるなら手も足もでないのだから
すると望がこちらに振り返る
「ねぇ・・ところでさなんでこんなとこに君達みたいな一般人二人がいるんだい?」
「えっ?」
急に声をかけられて戸惑う桜と光
答えに詰まっていると望はすぐに
「あぁもしかして夢見間賭と友達とかそういう感じかな?ごめんね身体借りちゃってるけど俺とリンクしたこいつの身体を使わなきゃ今はこっちにこれなかったんだよ」
そう言いながらさっきの不気味な笑顔とは違う優しい顔をみせた
桜は少し違和感を感じた
この感じはこの望という男は自分達を知らない?
そう思いながらもリンクという言葉が気になり尋ねようとした
「リンクした??リンクって・・・どういうことですか??」
桜が聞こうとしたことを光が先に尋ねた
すると望は頭をかきながら答える
「ん~とね簡単にいうと人間には陰と陽つまり光もあれば闇もあるだろ?それと一緒で世界では相対する価値観があるわけだよ御嬢さん方夢見間賭は確か二次元やこの世界の夢や希望を守りたいみたいな願いを持っている、対する俺はこの世を絶望と恐怖で混沌の闇を望んでるわけだよ」
「つまり・・あなたと賭くんが違う考えを持ってるから精神が抜けた賭くんの身体を借りることができたってことでいいのかしら?」
桜が聞くと望は拍手をする
「おねえさん凄いね!まさかこんなにすぐ理解してくれるなんて助かるよでもねもう一つ身体を借りれた要因があるんだよ」
ニコッと笑いながら指を一本立てる
「それはね・・この夢見間賭は世界渡りの能力があるんだよ、本人はまだ覚醒してないみたいだけどねいずれは覚醒するだろう・・そして俺と対決することになるっとおしゃべりが過ぎたね一般の女の子にはこれ以上話したらまずいからねこの話はおしまい!」
そう言い手をポンと叩いて話を切り上げてまたアヌビスの方に向き直る
そして一歩また一歩とアヌビスに近づいていき目の前で立ち止まる
アヌビスはお腹を押さえながら望を見上げる
「うん!随分絶望してくれたみたいで俺も嬉しいよアヌビス!ここまで心を簡単に折れるなんて若い君はやっぱりもろかったんだね、それじゃまぁ・・・さようなら」
そう言い手を上に振りかざすそして振り下ろそうとした瞬間
「そうはさせない!!!」
という声と共に雷が屋上展示場に落ちた
バチバチっという音と共に光の中から男が出て来た
そして手の平を前に出して叫んだ
「データアクセス!!!!」




