第40 現れた者
夏なのに周囲は冷たい風が吹き抜ける
土煙の中横たわるその人物をみて2人は駆け寄る
「賭くん!!!」
「賭さん!!!」
桜が賭を抱き上げるが反応がない
まるで魂が抜けたように目には生気を感じない
恐る恐る賭の胸に手を当ててみるとトクントクンと心臓は鼓動を打ち動いている
とりあえずほっと胸を撫で下ろす
しかし手を握っても少し揺さぶっても反応がない
キッと怖い形相で少し先にいる人物を睨みつける
シャランという音を立て武器を背中に担ぎゆっくり歩いてくる
するとその人物の隣に先程飛び去った霧状のものが渦巻いている
「なんだお前あんなに息巻いていた割には負けてしっぽ巻いて逃げて来たのか?ブレーン?」
クックククと笑いながら霧状のものに話しかける
今度は霧状のものから声が聞こえた
「うるさいですよ・・・今回は足止めが私の役目結果的には成功したのです。なんの問題はないでしょう・・にしてもわざわざ神器を使うほどの相手ではなかったのではないですか??この男よりあの女の方がこれからの障害になりますよ」
そう答えながらアヌビスの周りを回り始める
「あ~わかったよどうせ夢見間の奴とは決着ついちまったしなぁ・・もうちょっと成長してからやり合いたかったんだがな待ってるなんてできないからなぁ・・ほいじゃこいつらも殺しちまうかほら!そんな抜け殻になったゴミなんて捨てちまいな!勝負の邪魔になるだけだ」
横たわる賭に指を差してシッシというジェスチャーをする
プチンという音が脳内に響くのを感じた
あぁ・・こいつには我慢しなくていいこいつだけにはと更に脳内に声が響き渡る
すると桜の周りに赤い気が立ち始めた
「光ちゃん・・・悪いけど賭くんを連れて後ろに下がっててくれる?今回は私加減ができないかもしれないから・・でももしもの時はよろしく頼むわね」
桜が横たわる賭を光に渡し小さい声でかたりかけ優しい笑顔を見せながら光に言うと光は頷いた
その直後桜は赤い閃光となり一瞬で目の前から消えた
少ししか見えなかったが光には桜の笑顔が恐ろしく感じ背筋に寒気が走ったその笑顔には明らかに殺意が見えたからだ
「アヌビスウウウウウあんただけは・・・あんただけはあああああああ!!!!」
ドンっという鈍い音を立てながらアヌビスの腹を思いっきり殴り打ち上げる
さすがのアヌビスも反応が出来なかったらしく空高く舞い上がる
「なっ!!?」
一瞬何が起こったかわからないアヌビスは戸惑いながら下を見ると修羅のように鬼の形相をした桜が更に追い打ちをかけようと迫ってきていた
「なにしてる!!!本体!!!!私を中に入れて早く回避しなさい!!!」
ハッとなりアヌビスは一緒に飛んできたブレーンの霧を体内に取り込む
だがその一瞬をついて桜が消える
「嘘だろ!!!?」アヌビスは戸惑っていると後ろから声がした
「あんただけは許さないから・・」
冷徹なその声を聞き背筋に寒気を感じ防御をしようと振り向こうとしたが間に合わず桜の右拳がアヌビスの腹に直撃しすごい勢いでアヌビスは轟音とともに地面に叩きつけられた
「ガハッ!!!」
口から血を吐く
まったく見えない
いやむしろ気配を感じないのだ
確かにこの場にいるはずなのになぜか目で追えない
アヌビスはブレーンの記憶から桜の攻撃を解析しようとしたがデータがない
いやあるにはある
だがそれはブレーンも最後にくらった一撃だけで認識が出来なかったからだ
しかし、それだけではなく桜のスピード・パワー・技のキレが数段と跳ねあがっていた
「どういうこった・・・まったく見えねえじゃねえか・・・これがあの呑気そうな女だっていうのか??あいつは結界の力と格闘術以外にも技を隠し持っていたってことかよ・・・」
そういいながら起き上がり桜を見ると桜の周りを赤い気が渦巻いていた
アヌビスはまたもや背筋に寒気が走った
その赤い気をアヌビスは見たことがあったからだ
かつて自分が起こした血の惨劇
あれを止めに入った人物が纏っていたその赤いオーラを
「嘘だ!!嘘だ!!!嘘だ!!!!なんでお前がその気を纏っている!!!!奴は!!!奴は!!!!死んだはずだ!!!!」
慌てながらイガリマを構えるアヌビス
しかし様子がおかしいのをアヌビスは感じた
よく見ると桜の目が真っ赤になっているのだ
シュウウウウと唸りながらこちらに歩いてくる桜
更に赤いオーラがどんどん増していく手に付けているグローブも炎を纏いながらどんどん燃え盛っている
ギラッと桜がアヌビスを睨みつけるとアヌビスは凍ったように動けなくなった
動けない・・・
アヌビスがどんなに頑張っても身体が全くいう事を聞かず指一本も動かない
そんな・・馬鹿な・・・
必死に動かそうとするがピクリともしない
すると桜がゆっくりゆっくり近づいてくる
声を出そうとするが声が出ない
金縛りにあったように何もできず桜を見続けるアヌビス
いやだ・・いやだ・・・いやだ!!!!!俺はこんなところで終わるなんていやだ!!!
そう思っているとゾワッと更に後ろから寒気を感じた
それに反応したのか桜の動きが止まる
すると金縛りが解けアヌビスは動けるようになった
「スキアリイイイイイ!!!!」
アヌビスがイガリマを大きく桜に振り下ろす
ガキンという音とともにイガリマが受け止められる
しかし受け止めたのは桜ではなかった
受け止めた人物にアヌビスは目を疑った
目の前に居たのはなんと倒したはずの夢見間賭だったのだから
カチカチ音を鳴らしながら空中で止まるアヌビスのイガリマ
どんなに力を入れても前に振れない
まるで空中に見えない剣があるように止められる
すると賭の後ろに居た桜の赤いオーラがどんどん収まり目の色も元の色に戻った
桜は目の前に立っている賭に声をかけようと手を伸ばそうとしたとき
「桜さん!!!!離れて!!!!!!」
と光の声が響きすぐ後ろに飛びのいた
数メートル後ろに着地し賭を見ると様子がおかしい
すぐに光が桜の元によってきた
「桜さん!!大丈夫ですか??」
光が心配そうに桜に声をかける
「ええ!!だいじょ・・・」
ぐらっとなり膝をつく
その身体を光が抱きとめる
「大丈夫じゃないですか・・なんなんですか??あの超人的な動きは?私びっくりしましたよ・・でも一番びっくりしたのは・・・・」
と視線を賭の方へと向ける
同じく桜もその方向見る
自分に何が起こったのかは記憶にない・・だが今目の前におこっている光景が不思議だった
そこには賭が立っていてアヌビスのイガリマを受け止めている
だが様子がおかしい・・・
いつもの賭の雰囲気ではない事を肌で感じた
すると賭が笑い始めた
声が違う
目の前で高笑いする賭の声がいつもと違うのだ
桜と光が喋ろうとした時それを遮り端末がなる
端末をみると天照様からだった
ピッとスイッチを入れる
「二人とも無事!!?」と天照の慌てた声が聞こえた
その声を聞き2人は緊急の何かだろうと察した
光が答える
「ええ・・・とりあえずは・・・ですが賭さんが・・・・」
と答えると電話越しの天照から暗い声が響いた
「わかってる・・・賭くん死んでいないけどやられちゃったのよね・・・こちらでも先ほどようやく地上で起きてる事をモニターしているわ、まずは桜聞こえていると思うけどあなた気づいていないでしょうけどやっかいな力手に入れたわね・・・どこでどうやって手に入れたかはわからないけどまた今度それについては話しましょう、今はその目の前に居る賭くん・・・いえ賭くんの身体を乗っ取ったそいつを止めなさい!!!」
ピクンと2人はその言葉に反応した
身体を乗っ取った?どういうことだろうと思っていると少し離れた場所でアヌビスと対峙している賭?が喋り始めた
「アハッ!!こんなもんか!!アヌビス!!!この世界ではたいしたことないんだなぁ!おい!!あっちの世界ではもっと骨があったぞぉ~」
ニヤニヤ笑いながら楽しそうにアヌビスに語りかける
「てめぇ・・・夢見間じゃねぇな?どこのどいつだ!!!あっちの世界ってなんの話だ!!!」
怒鳴りながら問いかけると賭?は片手で耳をふさぐ
「だぁ~そんなにどなんなくても聞こえてるっつ~のたくどの世界でも一緒だなぁ~おめぇは・・まぁいいお前のおかげでこちら側に出てこれたんだな名くらいは教えてやるよ」
そう言いアヌビスのイガリマを弾き返して距離をとる
そして仁王立ちしてアヌビスを見て言い放った
「分け合って俺の本体はまだ来れねえが精神が無になった夢見間賭の身体を借りて現れた!!俺の名前は闇夜 望世界を破壊する者だ!!!」




