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二次元の力はこの手の中に!!!  作者: 神咲 勇気
第三章 激戦の最終日
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第35  不吉な雲

電車に乗りながら手を握ったり開いたりを繰り返す

さして意味のない事だが手をじっと見ながら何故だか何回も繰り返す

自分はこの手で戦いを繰り返した

二日前までは二次元好きのただの青年だった

そんな自分がまさか天照の血をもらっていたなんていまだに信じられないが、二日間戦ってきたという事実が身体のあちらこちらに痛みとして残っている

二次元の・・・自分が覚えているアニメや漫画のキャラになって戦った

手をグッと握りしめる


数年前の事故にあったあの日からもしかしたらこうなる事を運命づけられていたのではないか?そう思えてしまうくらいに不思議と違和感がない

むしろ何故か前にも一度体験したことがあるのではないかと考えてしまう

デジャブというやつだろうか・・・

夢の中で一度見た事を一回見たことがある!!と、驚いてしまうあの現象誰しもが一回経験したことがあるだろうと思う


だけど、あれとはなんか感覚が違う気がする


でも実際に体験したのは、一昨日と昨日が初めてのはず・・考えすぎて頭が痛くなったので頭をブンブン振って考えるのをやめる

アナウンスが次は新木場と告げるのを聞き荷物を構える

電車に乗っている人達皆が殺気漲る瞬間だ

誰もが始発の電車に乗り遅れないために神経をとがらせる

プシューっという音と共にドアが開くと一斉に早足になり階段へ向かう

もうこの時点で勝敗が決まるとも言われている、少し出遅れたもののなんとか新木場から国際展示場に向かう電車に乗れた


ふ~と安堵の息をついて窓の外を見ると雲行きが怪しい

暗くどんよりとした雲が空を覆っている

変だなと首をかしげる

確か天気予報では晴れだったはずだがと電車内の掲示板を見る

うん、やはり晴れマークだ一日通して晴れと表記されている

天気予報も外れることもあるだろうが、これは異常すぎる

何故か不吉な予感がしてならないが、今はビッグサイトに向かうしかないとスマホを取り出す手を止めた

国際展示場前に着くと始発ダッシュが始まった

負けてはならないと一緒に許される限りの速度で急ぐ


改札を出て空を見上げると、そこは晴天の青空が広がっていた

あれ?っとまたもや首をかしげる

確かに先程電車内で見た時は、暗くどんよりとした雲に覆われていたはずだが目をごしごしこすってからもう一度確かめる

見間違うはずがないくらいの青空だ

周りを見ても正常だったのでふーっと息を吐く

きっと緊張しすぎと疲れで一瞬目がおかしくなったんだなと首をふって顔を叩く

止まっていると迷惑になるので歩き出し列に並ぼうとすると一瞬ヒヤッと何かが肩を通り過ぎるのを感じた


んっと声を出しそうになったが堪えて首元を触るがなんともない

なんだったんだ?と一瞬気にしたがまぁいいかと忘れることにした

列形成がなされ自分はビッグサイトが見える中央付近に座ることができた

一日目よりは前だと少し嬉しかったが、なんか物足りないとスマホを見る

画面に表示されたのは待ち受け画面のみ


三人からの連絡がない・・

とりあえずおはようございますと着きましたがどこにいますか?などのメッセージを送ってみたがいっこうに返事がくる気配がない

一瞬頭の中に最初に見た黒い夢がよぎった

妙な胸騒ぎを感じアプリのヒヨコを見るがそのままだ

考えすぎかとホッと胸を撫で下ろす、がやっぱり三人とも連絡がないのはおかしい

とりあえず席取り用に持ってきた座椅子と軽い荷物を置いて列から離れ周りを探す

だが、人が多すぎてとても連絡なしで探すことなんて不可能だ


ん~~っと悩んでいるとスマホが鳴った

画面を見ると神子と書かれていた

やっぱ気にし過ぎだったかと電話に出るすると


「賭くん!!!大丈夫かい!!?なんともないかい!?」と出るなり大声で神子が聞いてきた


なんともないかい?とはどういうことなんだろうかと問いかけようとするとザザザザとノイズが入る

そしてとぎれとぎれに声が聞こえ始める


「すまない・・・少し・・・ぼう・いを受けてし・・たすぐにはい・・・いから無理は・・・でくれ」そう聞こえ通話が切れた


今のを聞く限り神子さんの身に何かあったのだと予想される

全部はしっかり聞こえなかったが、こちらを心配していることはわかった

つまりこちらで何か起こるかもしれないという事だ

周りを確認するが特に変わった様子はない

他の2人にも連絡しようとすると突如と目の前に黒い影が現れた

ビクッとなり後ずさりをするとカラスだった

脅かすなよと思いながらそいつを見ると何やら手紙を持っていた

明らかに自分への手紙だとわかる


こういうパターンは明らかに悪い奴だと心が騒いでいる

恐る恐る手紙をカラスから受け取るとカアアアアアと大きな声をあげて目の前で消えたが、どうやら周りには聞こえない類のものだったらしい反応がない

手紙を見ると



夢見間賭

邪魔をする奴らは排除した

お前との勝負を俺は望む

エントランスにてお前を待つ

来なければ地獄をみせてやる



とだけ書かれていた

差出人の名前はないが送った相手はネクタルを除けば確実にあいつしかいないだろう

あんなライバル宣言みたいなことをしたんだ、一対一での勝負を望んだのだろう

そう思い手紙を閉じるとボッと手紙に青い炎が灯り地面に投げ捨てると燃え尽きた


嫌な予感がこうも当たると頭をかかえてしまう

アニメとかでこういう事は何回かあるだろうが、三日間ぶっ続けってのはやめてほしいと思ってしまう

だが、人の欲望が集まりそして二次元を消したいと願うならコミケはかっこうの的みたいなものだからしかたはないかとため息を吐く


そしてポケットにカードが入ってるのを確認しエントランスへ向かう

さすがにこの時間は通してもらえないだろうと思っていると、ビッグサイト下エントランス前の広場だけ様子がおかしかった

並んでる人たちからまったく生気を感じないのだ

近づいてみると皆虚ろな表情をしている

さっきまでなんともなかったのにと思っていると虚ろな表情をしている人達の足元を黒いもやがゆっくりゆっくり進んでるのが見えた

それを見た瞬間これが原因かとわかりはしたが解き方などわかるはずがない

とにかくこれをかけているであろう奴をどうにかしないとと急いでエントランスへ向かう

入り口に入るとエントランス中央に男が立っていた


ゆっくりゆっくり近づくと男はニヤッと笑い顔を上げた


「待っていたぞ夢見間賭」


ギラッと光る目の色は紫、肩には犬の首が乗せられており半裸で下は黒いダメージジーンズ一日目と同じ格好をしている


「一日目と同じ格好で来るなんてお前服がそれしかないのか?えっと確か・・・すまん名前なんだったって?」


そう言うとお笑い芸人がずっこけた時のようなしぐさを男は見せた

かっこよく決めたはずが相手に名前を憶えられてなくて完全に恥ずかしい感じになってしまい男は恥ずかしそうにプルプルしながら叫んだ


「アヌビスだ!!!アブビス!!てめぇたった二日で名前わすれてんじゃねぇぞ!!アホか貴様!!」


顔を赤くしながらアヌビスは怒った

それを見ながら「いや~~すみません・・・アホではないんですが、その僕人の名前覚えるの苦手でそれにあんなちょっと会っただったから・・・なんかすみません」

と頭を下げた


昔から名前を覚えるのが苦手で、クラス全員の名前を覚えるのに一か月半くらいかかったくらいなので仕方ないと思っているとアヌビスはちっと舌打ちをした


「まぁいい!!!今から嫌ってほど覚えさせてやるから覚悟しやがれ!といってもここで敗れるから覚えられるわけねぇかもしんないがなぁ」

とどこから取り出したのかでっかい鎌を構えた

大きさからして一メートルは軽くあることは確かだ

アニメとかでよくあるデスサイズって武器だろうかと興味心身に見る

いっこうに何も構えもしない自分を見てアヌビスは怒鳴った


「てめぇ!!さっさと武器出しやがれ!!!!さっさとしねえと外を地獄絵図にすっぞ!!」

と怒りを見せた


あぁ・・となりカードを取り出した

とりあえず相手はデスサイズなので遠距離も近距離も戦えるアーサーになって戦うとしてと剣のカードを取り出したところで気づいた。


「アヌビス・・外を地獄絵図にするってどういうことだ?」


睨みつけるようにアヌビスを見るとニヤッと笑ってアヌビスはゆっくりと口を開けた


「虚ろな表情した人間ども見ただろ??その下を通る黒いモヤもあれはなあいつらから夢や希望ってやつを吸い取ってんだよ!!!そして絶望した人間どもが最後どうするか知ってるか??」


ニヤニヤしながら少し間を置いてアヌビスは口を開いた


「殺し合いを始めんだよ」


なっ!?っという表情を見せるとアヌビスは大声で笑った


「その表情だ!!!その表情を見たかったんだぜ!!!あ~その表情見れて満足だわ冥界から持ってきたかいがあったってもんだ」

シャラーンと音を鳴らしながら鎌を前に出して持つアヌビス


それを見ながら歯をギリッとさせた

もうすでに何千人と来ているだろう外でそんな事が起これば間違いなく大惨事だ

なんとしても止めなければならないとカードを構えようとするとアヌビスが口を開いた


「あの霧が並んでる人間どもすべてに広がるのはコミケが始まると言われてる10時きっかりだ、だからよぉ!!それまでに俺を気絶あるいは殺してみせな!!!さぁ!!楽しいショーの始まりだ!!!」


アヌビスはそう叫んで突っ込んできた


僕はそれを見ながら今までにないくらい怒りに満ち溢れていた

ふざけるなという気持ちが心であふれて仕方がなかった

みんなが楽しみにしている祭りを血に染めてたまるかとそう思いカードをかざした

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