第34 ブラック企業かしら!?
チンッという軽快な音が部屋に鳴り響いた
キュッキュという音を鳴らしバスタオルを身体に巻きつけてお風呂から上がる
白くて綺麗な肌から水を少しポタポタ垂らしながらリビングに出る
そこにはトースト二枚に目玉焼き、カリカリに焼けたベーコン、ポテトサラダとココアが用意されていた。
「ん~いい匂いね!さすが私の秘書ね!準備がいいわね!」
そう言い着替えないまま目の前にある食事に手を付けようとすると手をすごい勢いでパシンと叩かれた
「いてっ」と声をあげ手をフーフーとしていると自分の手を叩いた目の前にいる女性はニコッと笑っているが後ろから見えるオーラが物語っている今の行動は許さないと
しぶしぶリビングから出て着替えようと自室に戻る
タンスから洋服を取り出しベットに数枚広げる
それをじ~っと見ながら鏡の前に立ち何回かこれでもないあれでもないと悩んでると部屋をノックする音がした
「あっちょっと待ってもうすぐで決まるから!!!あとほんのちょっと!!!今日は自分で絶対決めるからだから待ってて」と言ってドアの向こうにいる人物に言うとバタンとドアが開いた
そこには先ほどの女性がすごい形相で立っていた
あっうっという顔をするとベットに置いてある洋服を取り一瞬の早業で着替えさせた
白い少し和風にも見えなくもない洋服に、日焼けをしない様にという配慮なのだろう大人っぽいカーディガンを着せ、これもまた動きやすいようにという配慮なのだろうスカートではなく、黒いパンツを吐かせたのだ。
着替えを終わらせると椅子に座らせて髪をドライアーで綺麗に乾かし、くしで髪をといて綺麗な黒髪を整えた
女性はふ~っと満足したように先程のすごい形相から笑顔になっていた。
あはははと苦笑いをしていると女性はあっとなりコホンと恥ずかしそうに咳払いをした
「すみません・・つい天照様の身支度の準備お手伝いををするのが楽しくて・・・」
そう言うと天照は女性の頭を撫でてあげた
「いいのよ謝らなくて、いつもこちらは助かっているんだから私がしっかり決められないのが悪いんだから、それに咲夜が居なかったら私なんてもっと準備に時間がかかってるんだから!さっ!!咲夜が準備してくれた朝ごはん早く食べましょ!!」
そういい部屋を出ると慌てて咲夜もでる。
彼女の名前は[咲夜]私の秘書をしてくれている天使の1人である
お父様の名により天使達にはそれぞれ仕事が与えられる
咲夜は天使の中でも中々に優秀な人材で天使階級上位の1人でもあるので、お父様が仕事以外は私生活が乱れきっている!!だらしがない!!という私の為に秘書として働いてくれという事で仕事を与えられたのだ。
前の秘書は・・・私の仕事姿と私生活の姿のギャップに耐えかねてお父様に懇願してまで秘書を辞めたのだが咲夜は最初は戸惑いはしたみたいだが、今では慣れてしまい普通に世話を焼いてくれる
甘やかしてくれたりもするが、しっかりと叱ってくれたりもするのでもう半分家族みたいなものだ
本物の家族はというと・・・まぁこの話はまた今度にしよう!うん!そうしよう
兎にも角にも、今では咲夜が居ないとお仕事も支障をきたすのでなくてはならない存在なのだ
「ん~やっぱり咲夜が作ってくれる朝ごはんは最高だわ!!本当にいつもありがとう!」
「いいえ!私なんてまだまだですよ!!人界にはもっと腕利きの料理人がいると聞き及んでいます!!その方々に比べればまだまだですよ」
「そんな謙遜しないの!!!私はあなたのこの朝食が大好きなのよ!だから誰かと比べちゃダメ!!あなたはあなたらしくでいいのよ」
天照がニコッと笑って咲夜を見ると咲夜照れながらも嬉しそうにしている
トーストを一枚食べ終わり二枚目には目玉焼きを乗っけて食べ始める
咲夜の目玉焼きは半熟じゃないかそうではないかの加減がしっかりしているのでとても美味しいのだ
アニメなどを見て誰しもやってみたいと思いやったことはあると思うが、失敗するとこれが結構な大惨事になってしまうことがある。
黄身が出てきて、机を汚してしまったり、はたまた洋服にたらしてシミにしてしまったりとこれが結構大変なのだ。
だから、大体の人が半熟ではなくしっかりと焼き上げて食べるのが多いと思うが、先ほども言ったように咲夜はしっかりと見極めてとても上手に作ってくれるのでいつも大満足なのだ
それを誉めようか迷ったが、まぁ謙遜してまた同じ繰り返しになることが目に見えているので今日は言わないでおこうとそのまま食べ終えた。
ある程度食べ終えた辺りで、咲夜が先にご飯を食べ終えて机に手帳を出した。
一瞬ゲッとなったが、毎朝の恒例行事なのでしかたないと思いながら咲夜を見ていると視線に気づいた様でこちらを向いた。
「あぁ・・すみません、今日は夏コミ最終日に行くとはわかっているのですが一応本日のご予定を確認しようと思うのですが・・・・よろしいですか?」
と申し訳な下げに聞いてきたのでココアを飲んでふ~っと一息ついてうなずく
すると咲夜は嬉しそうに手帳を見ながら喋り始めた
「はい!!では今日の予定はこうなっています!!!あっ表はこちらになりますね!」そういいおもむろに机に紙を広げた
紙には天照様の本日行うご予定表とでかでかと書かれていて苦笑いしてしまう
紙にはこう書かれている。
「天照様の本日行なうご予定表」
朝5時に起床して身支度を行う
朝食をとる
6時45分には人界に向かうゲートを通り人界へ降りる
7時ビッグサイトに到着
7時半に人界の方々と合流そして天使達に指示を出す
何事もなければ10時コミケ開幕
そのままコミケを守護しつつ楽しむ
予定通りなら夕方4時ごろコミケ終了
その後アフターに参加
22時頃ご帰宅後書類整理
深夜4時睡眠予定
綺麗な文字でスケジュールが書かれているが、どうしても最後の方に文句をつけたくなってしまう
コミケの時は有給を取っているのだが、やっぱり名目上最高神というのもあり書類はどんどんやってくるわけだ、その為どうしても仕事をしないといけない。
ある意味では、人界のブラック企業と同等で働かされているのではないのだろうか?と思う所がある
まぁ、有給分とその日やった仕事分はしっかりとお給金が出るので構わないのだが、さすがに昨日も一昨日も大バトルをした後に仕事もさせられ、挙句の果てに今日もとなると少しツライ
チラッと咲夜をみる
咲夜手帳を見ていてこちらに気づいていないので声をかける
「ねぇ咲夜、この夜22時以降からのお仕事今日はキャンセルできないかな?さすがに昨日も一昨日も戦ってもしかしたら今日も戦うかもしれないのにこれじゃあ身体がもたないわよ。どうにかできない??」
と相談を持ちかけると咲夜はペンを持ちながらうーんとうなった
手帳とにらめっこしながら必死に考えてくれている
やっぱり咲夜の中でもこのスケジュールはまずいんじゃないかという疑問はあったのだろう
すぐに机に紙を出し、あーでもないこーでもないとスケジュールを組み直してくれている
ちなみに実は言うと咲夜も昨日の人界でのバトルの際、結界を張ってくれていた1人でもあるので本当は休んでほしいというのもあるのだが、中々頑固で私に危険があるかもという事で休んでと言っても聞いてくれず本日も違う時間になるだろうが人界に降りてくる予定である
賭くん達には黒服天使の中に、まさかこんな綺麗な女天使が居るとは思わないだろう
3人ともあの場にいる天使全員が男だと思っていると考えているので咲夜を合わせて驚かせようとも少し考えている
そんな事を考えているとようやくスケジュール調整が終わったようで咲夜がこちらを向いた
「わかりました。今日の夜は書類はなしでいきましょう!」
そう言われ天照はよし!!とガッツポーズをしたが
「ですが!!!その変わり明日ハイペースでお仕事やってもらいますからね!!!いいですね!!!」
と咲夜が指を差していい
ガッツポーズしていた腕が一瞬で力が抜け少しガクッとうなだれた
まぁ・・早く睡眠できる分まだよしとした方がいいかもと諦めることにした
そうこうしているうちにチラッと時計を見ると時刻は6時15分になっていた
「あぁ!!もうこんな時間!!!急いで準備しなきゃ!!!」
そういいココアを飲み干し洗面台へ向かい
軽く口をゆすいで歯磨きを始める
歯磨き粉は子どもっぽいかもしれないが、天照お気に入りのブドウの味がする歯磨き粉だ
5分間しっかりと歯磨きをして口をゆすいで拭く
天照はどんな忙しい時でもこれをしっかりこなす
歯磨きを終えて洗面所を出てリビングに戻ると咲夜が今日持っていくものをすべて準備して待っていてくれた。
「ありがとう!咲夜!全部準備までしてくれて!本当にあなた頼りになるわ!」
笑顔を見せると咲夜はお辞儀をし
「褒めていただきありがとうございます!私は天照様の秘書!あなたの為なら何でもいたします!では!本日もいってらっしゃいませ!!!」
大きな声でいつも通りの挨拶をする
いつもこれをやられるのだがやっぱり慣れなくて苦笑いを少ししてしまう
「いってきます!また後でね!!」と玄関をからでる
自宅から出て人界行のエレベーターまで歩き出すと、「天照様だ!!!」「おはようございます!!」など様々な天使や、神様たちに声をかけられた
天照もそれぞれに「おはよう」「いってくるわね!」など声をかけながら急いでエレベーターまで向かう
そして無事5分前にエレベーター前に着くと黒服スーツの天使が出迎えた
「おはようございます。天照様さっそくですが、行きのエレベーターに乗りながらで昨日修復できたところや今日の人員配備などの件を確認したいのですがよろしいいでしょうか?」
深々とお辞儀をしたのちそういう
「本当は非番のはずですが・・・・わかりました。ではとりあえず、乗り込みましょう本日もあいつらが何を仕掛けてくるかわかりません!しっかりと指示は出しますがしっかりと対策を見直して今回も守り抜いていきますよ!」
凛々しい声を出して黒服天使に言うと「御意」と発してエレベーターを開けて天照を乗せる
やっぱり私に休みなんてないのかしら、ブラック企業かしらと心で思いつつ口には出さない
やれやれと少し疲れた顔をしたがすぐに引き締め直す。
そしてエレベーター内にある数々のボタンの中からビックサイト行というボタンを押して人界に降りるのであった。




