第33 黒と白
歩いても歩いても歩いても道、いや光さえも見えない空間
自分はどれくらい歩いたのだろう?
それすらわからなくなるくらいに歩き続けた
出口すら見えない、この空間はなんなんだろう
とりあえず、手を前に出し空間を握りしめてみようとする
当然空気を掴むだけで、手の中には何も入っていない
すると、急に囁くように何かが聞こえ始めた
沢山歩いても聞こえなかったのに今頃になって何故声が聞こえたのだろう?
不思議に思ったがもしかしたら、今行なった[手で握る]という行為が何かのキーになっていたのだろうか?
そう考えながらも聞こえた微かな声に耳を澄ます
だがそれは本当に小さく何を言っているかは聞き取れない
このままではらちがあかないと思い声が聞こえる方へ歩いてみる
進むにつれて徐々に声が聞こえ始めた
「や・・・・・こ・・・・・・」
やこ??何を言っているのだろう
まだハッキリとは聞こえない声にどんどん近づく
声は徐々に徐々にだが聞こえ始めた
「やめ・・・・こ・・・てくれ」
その声を聞いたとき
これは誰かが助けを求めている声だ
そう思い暗闇の中を走る
その声に耳を澄まして
方向を確かめながら走っているとふと目の前に小さなランプが現れた
ユラユラと空中を浮遊するランプ
周りを見回したが誰もおらず暗闇だけが支配していた
少しだけ思案した・・
これが何かの罠だったりするのではないか・・・3分ほどだろう、考えた末にランプを手に取る
手に取ると吸いつくようにランプは自分の手になじんだ
まるでどこかで持ったことがあるような感覚だった
すると先程の声がまた聞こえた
それもさっきより距離が近づいてるのを示すかのように声が聞こえた
「やめて・・もうこ・・・てくれ」
その声を聞き急に背筋に凍りつくような感覚が走った
その瞬間これ以上近づいていいのかためらった
この距離に来て何故だかすぐに気づいてしまったはっきりとは聞こえないのに
その声はあまりにも絶望し助けを求めてるのではなく懇願してるのだ
そう・・この声の主はこう言ってるのだと悟った
[やめてくれもうころしてくれ]
声の感じからしてもう数十メートル先なのだろう
そこに何があるかはわからない
ただわかる事は誰かが殺されることを望んでいるということだけ
ごくっと唾を飲み込む
そしておそるおそる歩を進める
一歩二歩・・ゆっくりゆっくり
すると今度はジャラジャラ・・ジャラジャラという鉄がこすれるような音が聞こえ始めた
この音もなんの音なのかあの絶望したような声を聞いた後ならわかる
声を出すその主は鎖で繋がれているのだ
フーーっと息を吐いて精神を保つ
たぶん今から見る光景はもしかしたら想像を絶する光景かもしれない
引き返すならまだ間に合うかもしれない
そう一瞬考えたが足が前に出た
ゆっくり歩を進めていくとその先にたどり着いた
闇雲に走り回っても見つからなかったのに今目の前に現れたのはドア
その中からは先程聞こえた声が聞こえる
ゆっくりドアノブに手を置き握りしめる
するとひやっととても冷たい感覚に襲われる
深呼吸をしながら目をつぶる
一・二回深呼吸をしゆっくり目を開け意を決して扉を開けた
バタン!!という音が黒い空間に鳴り響く
だが、開けたその先には誰もいなかった
ランプを使い周りを照らすが誰も居ないのだ
「嘘だろ・・」思わずつぶやいた
あの声は確かに聞こえてそして鎖の音のようなものも耳にした
しかし、目の前にあるのは誰もいない部屋
そしてその部屋の真ん中には封筒が置かれていた
あまりにも不気味なほど不自然に置かれたその封筒を拾いあげる
裏を見るが差出人の名前などは書かれていない
見てもいいものか戸惑ったがここまできたならとゆっくりと封を切った
中からは一枚の手紙がでてきた
綺麗に二つ折りにされたその手紙を開く
[お前がいなければ世界は・・・・・]と赤い文字で書かれていた
それを見たとたん後ろ音がして振り返る
するとそこには黒いフードをかぶった人が立っていた
「なっ!!」そんな声をだして驚きしりもちをつく
黒服フードは指をさす
すると後ろに見覚えがある三人の女性が現れた
1人は桜さん・もう一人は光ちゃん・そして神子さん事天照
三人が鎖で繋がれて現れたのだ
「桜さん!!!光ちゃん!!!!」叫んで呼びかけるが反応がない
神子さんの方を見て大きな声で呼びかける
「神子さん!!!!」
だが同じく反応がない
くそっと立ち上がろうとするとおわっと言う声と共に転んでしまう
見ると自分の足が鎖で固定されているのに気づいた
慌てて鎖を外そうとするが外れない
ガチャガチャ音を立てながら必死にもがいていると黒服フードが三人に近づいていく
その手にはランプの光に反射して見えたナイフ
まさか・・・嫌な予感が走る
ズボンに手を当てカードを探すが見つからない
くそっ!!と鎖を地面にガンガン打ちつけて取ろうとするが外れない
冷汗が止まらない
今想像してることが起らないことを願いながら必死に取ろうとしてると
ドスッという音が聞こえた
振り向くと桜さんがナイフで切り裂かれ倒れて血を流している
あっあああ・・と声にならない声が自分の口からもれる
続いて黒服フードは光ちゃんを刺し
そしてついに・・・ドスッと神子さんの心臓にナイフを刺した
三人から流れる血を見ながら必死に進もうとするが鎖のせいで届かない
「くそっ!!くそ!!!なんだよこれ!!!なんなんだよ!!!」
泣きながら鎖を叩くがビクともしない鎖をガンガン叩く足はどんどん血が流れていた
すると黒フードは自分の方に向き直り
「闇に染まれ・・・夢見間賭・・・お前は・・・無力だ・・目の前にいる人達を誰も守れない、救う事なんてできない・・なら諦めて闇に染まれ・・・どん底の暗闇は居心地がいいぞ・・絶望してこちら側になれ夢見間賭お前は×○×○×○なのだから」
そう言うといきなり周りが燃え盛る廃墟に変わった
周りを見ると神子さんの他に沢山の人が倒れていた
ある人は切り裂かれ、またある人は炎で燃やされていた
この光景は・・一瞬見たあの光景だ優が言っていた世界
そう思っていると周りに居た殺された人たちが自分の周りに集まり始めた
そして口々にこうつぶやき始めた
「お前がいなければ生きられたんだ・・・」
「お前さえ現れなければ・・・」
「おまえさえ!!おまえさえ!!!おまえさえ!!!!」
それは絶望した人々の暗い心を引き裂くような声
耳をふさいでも聞こえてくる
その声に自分はつぶやいた
「やめてくれ・・・もうころしてくれ・・・・」
バッと起き上がる凄い冷汗をかいていた
周りを見回すとそこはいつもの自分の部屋だった
ハーハーハーと荒い呼吸が部屋に響く
毛布をとり立ち上がり冷蔵庫から水を取り出しそれを飲んで落ち着かせた
ベットに座り時間を見ると現在の時刻は二時だった
コミケに今日は少しゆっくり行くつもりでかけていた目覚ましより二時間も早かった
時計から目線を戻し自分の手を見る
先ほどの夢は何故か鮮明に覚えていた
顔をブンブンふり忘れようとする
あれは・・・夢??本当に???そう思いたくなるほど鮮明だった
怖いほどに、死んでいく仲間たちの姿も人々からの声も
昔経験したトラウマよりも・・・
少し過去を思い出しそうになるが顔をバシッと叩き切り替える
水を飲みふーと息を吐いてからまたベットに潜りこむ
二日間の疲れもあるからあんな夢を見たんだろうと思い髪をくしゃくしゃといじり目をつぶる
もしかしたら三日目もあいつらが現れて戦う事になるかもしれない
そう考えた瞬間「お前は誰も救えない」という夢の言葉を思い出してしまいブンブンと首をふる
あれは夢!!あれは夢!!!と何度も言い聞かせまた眠りについた
すると今度は違う夢を見た
先ほどとはうって変り白い空間
そこにはカードが浮かんでいた
神子さんからもらったカードだ
ゆっくり近づくとカードは円を描き空を舞った
慌ててカードを取ろうとするとカードがまばゆく光った
くっと目を手で覆い目を伏せ数秒して目を開けると目の前にはアーサー・歌歩・拳・沖田が立っていた
こればかりはわかるあっ夢だと
するとアーサーが「夢だけど夢じゃないぜ、俺たちはカードによってお前が想像してくれたこの精神世界にできた人物だ」
そうアーサーが答えると今度は歌歩が元気な声で声をかけてきた
「やっほー賭くん!私の力使ってくれてありがとうね!完全に女の子になるのは拒んでたけど嬉しかったよ~でもちょっと見てみたい気もしたけどな~」
無邪気に言う歌歩を見て軽く苦笑いをする
少し混乱した顔をしてると拳が喋り始めた
「まぁ・・・簡単にいうと使い魔みたいな感じになったとでも思ってくれ、今は夢の中でしかこうやって話はできないんだけどな。お前が成長すれば徐々に日常でも会話できるようになるぜ」
ニッと笑いながら説明してくれた
まぁざっくりとした説明だなと感じたがなんかアニメで見た拳もそんな感じだったなとクスッと笑ってしまった
すると今度は沖田が一礼して喋り始めた
「僕のあの技は危険だったのによく耐えてくれた君の想像力は本当に凄いな。でももうあんな無茶はしないでほしい・・・今回は良かったがあんな事を続けたら君の身体が持たないからな」
そういい頭にポンッと手を置いて撫でてくれた
夢にまで見たキャラクターたちと夢の中でとはいえ喋れてる!!!と嬉しそうにしているとアーサーがコホンと咳払いをして皆が静まり返った
「さて・・こうやって夢で会えたことを喜ぶことは俺たちも安心している・・・先程は君が目を覚まさなかったら少しやばかったからな・・・」
そういいジッと四人は自分を見つめてきた
先ほどというのはあの黒い夢の事だろうとすぐに気づいた
少しうつむいた姿勢になりかけるとアーサーは言った
「大丈夫だ・・・君はあのような事にはならない・・自分を信じて私たちや他の二次元のキャラクター達も頼ってくれ!!!だが一つだけ約束してほしい・・・・黒くなったカードは今は使わないでほしい。あれは今の君の手におえない物だ前は天照が承諾して大丈夫ではあったが、今の黒いカードのまま使えば・・・だから使わないでほしいお願いだ」
そう言い四人はお辞儀をする
黒いカード・・・確かに黒くなってから異様な気を放っている気はしていたが相当じゃじゃ馬になっているのだろうか?そう思いながら四人を見て頷く
「わかった。できるだけ使わないようにする!だから全力で力を貸してくれみんな!!!」
「「「「おう!!!!」」」」と元気声が白い空間に轟いた
するとどこからともなく目覚ましの音が鳴り響いた
目をさまし目覚ましを止める
現在の時刻を確認する
午前四時
キャラクター達に激励??されたような夢を見たおかげで少し気分は持ち直したがまだ心のどこかで引っかかる・・・が今は考えるのをやめようとカーテンを開ける
「さあ!!!!最終日だ!!!!」




