第27 諦めかけた心
「地の地脈は我と共に、天の天脈は我の力に、万象を合わせかの者の体を癒したまえ!!!天地功」
残りの力を使い天照が唱えると桜と光の傷がわずかだが回復していく
2人は先程まで倒れまいと気を張っていたのであろう
天照が近づき肩を貸して離れた時には、気を失っていた
完全に2人の傷を回復できないのは自身も傷を負い体力がほとんどないことも原因だろう
2人を回復しながら自分の無力さに腹が立っていた
自分が本当はネクタルを止めなくてはいけない、それなのに心のどこかで諦めてしまった賭くんにすべてを任せてしまった。
自分のせいでこうなったのに意固地になってしまった
もっと上手く話せていたらネクタルは、敵ではなかったんじゃないか
もしもあの時自分がBLの本なんて出そうなんて言わなければ、ずっと一緒に新選組のアニメを見たり他の作品も見ながら二次元を楽しみ仲良くいたんじゃないか・・・
考えれば考えるほどに涙がでてくる
もう後悔しても戻れないところまで来ているのはわかっている、一度すれ違っただけで人間であろうと神様であろうと壊れるのはわかっているつもりだ。
だけど・・・もう・・涙を流しながら2人の回復をしていると
「諦めるんですか?どうせ自分のせいでこうなったとか考えてるんですよね?」
そう言って気を失って横になっていた光が傷を抑えながら座る
慌てて寝かせようと天照がすると手をパシッとはらい天照をジッと見た
先ほど戦った時と同じような目をして真剣に天照を見る光
その目から天照は目をそらそうとすると光は言った
「逃げるんですか?ここで諦めて他人に任せて諦めるんですか?それじゃなんも変わらないですよ!!!向き合わなきゃいけないんです!どうしてこうなってしまったのか、それと向き合ってください!!それがBLで喧嘩したんだとしても!私が知ってるあなた達の作品は・・・憧れていたあなた達は、こんなとこで永遠に無くなってしまうんですか!!!私はあなた達みたいになりたいと目標にしていた!また一緒に作品作りたくないんですか!?諦めちゃうんですか!!!」
真剣なその目からは涙があふれていた
天照はうつむいてしまう、ここまで自分たち2人を目標にしてくれていたのにみっともないところを見せてしまったのもそうだが、何よりファンになってくれた子を泣かせてしまった罪悪感もあった
だが、今の自分にはどうすることもできないと思いながら唇を固く結びそして謝ろうと口を開きかけた瞬間
「ごめん・・なんて言葉で終わらせないでくださいね、ここまでコミケを世界を巻きこんじゃってるんですからごめんなんて一言で終わらせようとしないでください」
今度は光の横に横たわっていた桜が座る
桜も真剣な目をして天照を見る
「あなた達2人はここまで事を大きくした責任をしっかり取ってもらわないと、そうしないと私たちも収まりがつきません。でも、先ほどはすみませんでした・・その・・・怒りに任せて殴りかかってしまって」
そう言い頭をさげる
それをみて光も「すみませんでした」と頭をさげた
「私たちも楽しみを荒らされたのでついムキになってしまいました、だけどやっぱり争いの原因がBLだなんて呆れを通り越して怒りたくなりますよ、でもまた私たちも後で怒られるでしょうねまぁ・・・ただもしこの場に居て今のあなたを見て一番怒るのは今戦ってる賭くんでしょうけどね」
といい戦っている賭の方を桜が見る
その視線を追い光も天照も賭がネクタルと戦っている姿を見る
戦いは一目瞭然でネクタルが賭を圧倒しているのがわかる
何度も技を弾かれ、叩きのめされてそれでも立ち上がって戦っている賭の姿がそこにはあった
そして何度やられてもその目は決して諦めている目をしていなかった
むしろ、火がともり何かを伝えようとする目をしていた
「なんで??なんで沖田から変身をかえないの・・・明らかに防戦一方じゃない・・・他に有利になりそうなカードをあの子には渡してるはず・・・それに沢山アニメとか見ていろいろ記憶してるはずでしょ・・・なんで」
遠くで傷だらけになる賭を見ながら天照はつぶやく
「それは多分・・あなた達2人の為ですよ天照様」
そう答えられ桜の方を見ると桜は泣きながら賭を見ていた
「彼はすごい子ですね・・・昨日合ったばかりなのに、どうしてか私は彼に心が吸い寄せます。昨日心見が現れ暴れた時その時は力もないのにすぐ飛び出して子どもを助けに行ったり、戦いに身を投じたのもみんなが好きなものを守るため、駅でもすぐに子どもに手を差し伸べていた・・きっと彼は自分が傷ついても誰かの悲しい顔を見たくないのかもしれません」
桜も今の自分に何もできないことがわかっている、悔しさのあまり本当はもっと大泣きしたい気持ちで溢れているが今はじっと堪え拳を握りしめる
今は伝えなきゃいけない賭くんに変わってと心に言い聞かせながら戦っている賭を見ながらゆっくりと言葉を紡ぐ
「だから、だからこそネクタルに気持ちを伝えようとしてあのキャラクターで戦ってる、もしかしたらあなた達2人の仲を戻すカギになるかもしれない・・そう思ったから、だからあのキャラクターから変えないんじゃないでしょうか」
今度は天照の顔をしっかり見ながら答える
「そうですね・・あの人は最初に考えるのは自分の事より他人の事だと思います。私と一戦交えた時でさえ賭さんは私の事を気遣っていたと思います、だからきっと沖田から変身を変えないのは天照様が沖田を好きだから・・・そしてネクタルさんに思いを伝えやすいからじゃないでしょうか」
光も天照を見ながら答える
2人の言葉を聞き2人を見てもう一度賭のほうを見る
あんなボロボロになっても戦いつづけて、不利だろうとなんだろうと私の思いも自分自身の思いも届けようと諦めないでいる賭を見てまた涙が出始めた
自分は諦めかけていたのに・・・諦めないでいてくれるこれが桜がいう心が吸い寄せられるものなんだろう、彼自身がもつ不思議な優しさなんだろうと感じた
そう思った瞬間自分の中で諦めかけていた気持ちが、火がポッとついたように心に力を満たし始めた
「諦めたくない・・・・」
そう言いながら力強く拳を握りしめそして桜と光の方に向きを直す
「諦めたくない・・・私はまた・・・ネクタルとあの子と楽しく話がしたい・・一緒に新選組を見たい!!」
そう言うと桜と光が肩を叩きながらニッと笑う
「本音聞きましたよ!!!なら今できることを考えてください!!賭くんになにができるか」
「私たちは賭さんが、勝つために何ができるかを探すんです!やっぱり賭さん任せに少しなっちゃうけどだけど、ほんのちょっとでもいいサポートするんです」
先ほどまで涙を流していたのに天照の言葉を聞きスッキリしたようにしている
それを見て天照もうなずく
「あぁ・・・彼だけにやっぱり任せない・・自分の思いも必ずネクタルに届ける、だから二人とも後で説教はしっかり聞く!だから今は残り少ない力を貸してくれ!」
そういい握っていた拳をほどきそして、2人の手を握る
桜も光も握りしめられた手を握り返す
そうして戦う2人の方を見る
ネクタルはどうやら地面に潜り賭を引っ張って地面にぶつけてダメージを与えているようだった
賭は防御をしながら引きづられているが様子がおかしい、まるで何かを狙っているようジッと耐えているようだった
しかし、地面にいるネクタルに攻撃できそうな技を沖田は持っていただろうか
そう考えていると、一枚のチラシが飛んできた
チラシは天照の足に引っ掛かり捨てようと天照が手に持つとハッとなりチラシを見返す
そして賭とチラシを何回か見直し賭が持つ白刀を見て気づくことができた
「あの体制そして白刀・・・・あっそうか!!だが・・・いや・・・可能性はあるしありえるか・・・もしそうだとしたら賭くんも逆転ができるかもしれない、桜、光走れるくらいには回復してるね??急いでお願いがあるんだ」
「なんですか??」そういい天照の言葉に耳を傾ける
「いいい!?あの人新選組のアニメ全部記憶してるんですか!?」
驚きを隠せない光が声を上げる
「だから、あんなに賭くんが苦戦してるわけですか・・・というかまさかこれも天照様が原因とは・・・」
桜が説教タイムに入りそうだったので天照は慌てて
「私のせいだけども!!!説教は戦いが終わってからだ!!!多分賭くんが今からやる技にネクタルはおそらく対応できないはずだ」
「どうゆうことですか!?だってあの人は新選組のすべての技を覚えて・・・あっまさか」
光は天照が持つチラシを見て目を輝かせる
「気づいた光!?そのまさかかもしれないんだよ」
光は気づいた様で天照と顔を見合わせる
「何がわかったんですか!?私にもちゃんと説明してくれないと!二人だけで理解しないでください!本当に今から説教しますよ!!!」
訳がわからない桜は地団太を踏みながら顔をふくらませ怒っていると天照はどうどうと桜をなだめる
桜に2人が気づいた逆転の可能性を説明すると桜も膨れた顔を元に戻し三人は顔を見合わせる
天照は今から賭がやるかもしれないそれに対応するために桜と光に指示を出す
2人もそれに納得し頷く
そして、天照に背を向けて走る体制をとる
「でわ頼んだよ!!!」そういい2人の背中をポンと叩くと2人は笑いながら
「「任されました!!!」と走っていった
それを見送り賭の方を見る
一か八か今出来ることやれることそれは少ないかもしれない、だけど戦ってくれている賭くんの為にも諦めない事を教えてくれた2人の為にもネクタルにもう一度思いを伝えるんだ!必ず!と胸の方で拳を握り賭の方を見る
「さぁ!!!運任せだ!!!私たちの考えが間違ってないことを祈るよ」
そう言い手を前に出すと通信機が鳴り響く
桜と光からの合図だ
全力で走ってくれたのだろう間に合ってくれたようだ。
後は賭が行動に移すのを待つだけと賭を見ているとその瞬間はすぐに訪れた
賭が白刀を振り上げたのだ
そして賭が地面に刀を刺そうとするのと同時に天照も地面に手をついたのだった




