第22 価値観
いきなりの2人のぶつかり合いに驚き目を閉じその場を動けないでいた。
いや、動かさないようにされていたと言った方がいい。
2人の拳がぶつかり合い、周りに衝撃波が起きたはずなのに自分は吹き飛ばされもしなかった。
目を開けよく見ると自分を守るように、バリアらしき壁に身体を包まれ守られていた、それに触ろうとするとバチッと音を立てて手がはじかれた。
どうやら、中から外に出れないようにする結界の様な物だとなんとなく察しがついたがこんな事をするのは敵側の相手だろう思いチラッと2人を見るとお互い拳を払いのけ距離をとっていた。
神子さんはすでに天照の格好になり炎を纏い、ネクタルは心見から得た黒いオーラを纏い互いに隙を見せないように構えていたが、最初にしゃべったのはネクタルだった。
「えらいはよぉ見つかってしまいましたなぁ、ほんの少し力を夢見間さんに見せただけだったんやけどなぁ」
クスクス笑いながらも隙を見せる様子はない、それに対して天照も少し息をふぅとはいてから言葉を発した。
「あんたの力は小さい頃からよく見せてもらっていたから気づけた・・・幻影酒気、気を練ったお酒を一滴垂らすことで相手に自分が居ないと思わすことが出来る技、昔かくれんぼとか一緒にした時使われたからよく覚えてるわ・・・ネクタル」
かっかくれんぼ?この2人幼馴染かなんかだったのか??いやいやというかそんな技あったらかくれんぼ誰も見つけられなくないか?って今はそういう事じゃなくて!!!などと心の中で一人ツッコミしていると
「あはぁあ・・そんな昔の事よく覚えてましたなぁさすがやわぁでも、それだけですぐ見つかるわけあらへんよなぁ・・・やっぱりこの変な神具の力?」
と手に出したのは僕のスマホだった。
慌ててポケットをあさぐるが見当たらない、いつの間に取られたんだ少し恐ろしく感じた。
何故なら、それが出来たという事はいつでも僕を殺せたという意味なのだから。
思わず息をのんだ。
天照はそれを見ながら頷く
「そうよ、隠してもどうせバレるから白状するわ。それには闇に反応するよう設定された神具が入っているのだけど、うかつだったあなたの存在を忘れていたんだからね。いや忘れさせられていたというべきかしら、昨日交わした言葉で気づくべきだったわ、私はあなたに「なんだ、お前も居たのかいネクタルお酒好きなだけのあんたまで出てくるなんてどういうことだい。」って」
確かに言っていた、それが疑問に感じた事の一つだ。
話を聞いている限りでは、2人が顔見知りなのかな?と昨日は感じるだけだったが今日神酒さんだった時のネクタルはアニメや漫画、二次元が好きだったという事がわかる。
なのに、普通なら驚き「アニメやお酒が好きなあんたが」となるはずが、神子さんは「お酒好きなだけのあんたが出てくるなんて」と言っていたのだ、昔から知り合いだと推測されるそんな2人がお互いの好きな事を忘れるのはおかしいと思った。
するとネクタルが
「あはぁほんとさすがやわぁ~そやねぇ忘れてもらっていたんよ、昨日は記憶忘却酒使わせてもろうてたからなぁ、あんさんには少しだけ記憶を忘れてもらいました。だから、あの時だけあんさんの記憶の私は「お酒すきなだけのネクタル」だったんです。」
天照は構えを解いてまっすぐネクタルだけを見た
「えぇ・・・本当に違和感がなくて気づかなかった、記憶忘却酒・・・よくあんたに使われていたのにねぇ・・何かきっかけがないかぎりそれがなんだったのか思い出せなくさせる技・・・あんた、昨日私のサークルに来ていたのね、その時私にお酒を一滴つけたそうでしょ?」
構えを解いてネクタルはパチパチと手を叩いた。
「さすがやほんに昔から頭がさえてるとこは変わってへんのね・・思い出したきっかけはやっぱり新選組かえ?」
「ええ・・・そう今日のサインCDを手に入れようとパンフを見たときに思い出したわ、あなたと仲が良かった事も、一緒にサークル作って大手サークルになった事も皆思い出した」
悔しそうに握り拳をつくる天照
「そして・・・あなたに理解してもらえなかったことも・・・・」
そう言って少しうつむいてしまった。
・・・・やっと理解することができた。
神子さんが言っていた仲たがいしてしまった相手と言うのはネクタル
そして神酒さんだったときにネクタルが言っていたあんなに仲良かった友とは天照だったのだ。
昔は相当仲が良かったのだろう、お互い好きな新選組をリアルタイムで見ながら話をし、絵を描いたりしてサークルを出し、大手になったりと・・・
でも何かのきっかけで喧嘩別れをしてしまったそういう事だ。
理解してもらえなかった・・・一体何をだ・・・二人に何があって今こうやってお互い敵同士になっているのだろうか、するとネクタルが構える。
「理解できるわけがない・・・だから・・・・天照・・・あんさんの考えを!!!ここで変える!!!」
ネクタルが一瞬で天照の前に移動する
拳を振りおろすそれを受け止める天照
「変わらないのね・・・ならこちらもあなたに全力で理解してもらう!!!」
そう言い受け止めた拳を掴み
「おらあああああああああああ!!!」
勢いよく投げ飛ばした。
飛ばされたネクタルを追う天照
飛ばされながらも体制を立て直し地面にしっかり着地するネクタル、そしてすぐに勢いよくダッシュし天照に攻撃をしかける。
「だららららららあ!!!!」
「うらららららららららら!!!」
ネクタルが無数のパンチをくりだす、それを避けながら近づいていく天照も無数のパンチをくりだす。
お互い避けるのが上手く互いにかすったりしてはいるもののダメージらしきものは与えられていなかった。
すると、遠くから声が近づいてきた。
「賭く~~~~~ん」
「賭さ~~~~~ん」
振り向くと桜さんと光ちゃんが息を切らして走ってきた。
自分の前に着くと2人は止まりは息を整えてしゃべり始めた。
「賭くん大丈夫???ってこの状態は何???」
自分の周りにあるバリア的な何かを見て問われる。
「えっと・・・多分アニメ的な展開なら・・多分ネクタルが僕を閉じ込めたって感じかと」
じろじろ見ながら自分の周りをぐるぐる回る桜さん
「ん~~~どうやら結界の様だけど・・・術式がわからないから出すの苦労しそうね・・能力は使えないの?」
そう言われあっと思い出したようにカードを取り出し能力を使おうとするが
「あれ・・頭が回らなくて想像が働かない・・・能力が封じられてる!!?」
そう自分の永遠の想像は想像力が肝になってる、つまり想像が出来ないと能力が使えないという事がまさかのここで判明した。
何回も他のカードもだして想像しようとするができない。
どうやらこの結界らしきものは、相手の思考を鈍らせるものらしい。
それを見て光ちゃんが紙とペンを取り出し
「中からダメなら外から壊す!!!!」
と言い絵を描き始めた。
やな予感しかしないのだがと見ているとすぐに絵を描き終えた光ちゃんが唱える
「開け!!!俺の力!!!絵に宿る力秘められし思いに答えたまえ!!!絵の魔術!!!(アートマジック)」
そう唱えると絵の中から出て来たのはまさかの・・・
「がっガトリングガン!!!!?」
驚きのあまりに固まってしまった
やばいやばい!!!絶対これはやばい!!!!まずこれで敗れたとして僕が怪我どころではすまないからだ。
「ちょちょっと!!!待っ」
そう言って止めようとする前に
「いっっきまああああああす!!!!!」
元気な声でガトリングガンの引き金を引いた。
ガガガガガガガガガガガガガと言う音と共に自分を囲む結界に当たるがビクともしない。
キュウウウウウンという音とともにガトリングガンが止まった。
「ありゃあ・・・ビクともしませんね」
と頭をポリポリとかく光ちゃん
いや・・・むしろビクともしなくて助かったと出られなくて複雑だがホッとした。
でもビクともしないのは当たり前だろう。
今は少し離れたところで戦っているが、あの神子さんとネクタルがぶつかり合ってできた衝撃波でさえ防いだものなのだからそんじゃそこらの力では多分どうにもできないようにしているはずだ
だけどとチラッと2人の戦う所を見る
天照とネクタルは先程より激しい攻防をしていた。
さすがにお互い少しずつではあるがダメージを与えあっていたが、それでも一歩も引かないで戦っていた、何が2人をそこまで戦う事にしているんだろうか・・・そう思いながら見ていると
桜さんが話し始めた。
「いいわ・・私がこの結界何とかしてみせる!結界の能力使いの私が解けないなんて恥だもの絶対やってみせるわ!!!」
赤い手袋をして結界の前で集中し始める。
それを見ながら思ったことがあるので聞いてみた。
「桜さん達そういえばなんで遅れて来たんですか???それにこんな凄い騒動になってるんですが結界張ってなくて大丈夫なんですか?」
疑問をなげかけると桜さんは集中し始めていたので答えてくれなかったが光ちゃんが答えてくれた。
「えっとですね、遅れた理由はですね会場中にいる黒服天使さん達に連絡してたのと、その人達を防災公園周りに配置してたからです。今結界を張ってるのはあの黒服天使さん達なんです。」
そう言われ納得できた。
確かに、桜さんが結界を張ったらその分桜さんは戦闘になった時に意識が分散してしまう。
しかし、それを他の人に頼めば戦闘にも集中して参戦できるという訳だ。
黒服天使達はあの姿だがちゃんとした天界の使者なのだ、だから結界を張る事もできるわけでその為に神子さんは呼んどいたのだろう。
「なら少しは安心だね。じゃあ僕は後でいいんで神子さんを手伝いに行ってください!!もしかしたら意識を分散させたら解けるかも!!」
そういうと光ちゃんが首をふった。
「実はここに来る前に言われたんです天照様に・・手を出すなってそう言って指示を出した後1人で飛んでいったんです。」
「手を出すなって!!本当に!?」
そう聞き返すと光ちゃんは頷いた。
みたび2人の方を見る。
多分手を出すなって言うのはきっと何かあるからなんだろう。
理解してもらえなかったと言っていた、多分それを今度こそ理解してもらう為に神子さんは1人で戦うと決めたのだろう。
でも、戦って何かを理解してもらうなんてそれでいいのだろうか??
そこにしっかりとした答えがあるのだろうか?
そう思いながら見ているとネクタルが吹っ飛ばされてきた。
地面に何回も打ち付けられながらバウンドしたりしたが、最後はしっかり着地した。
はあはあと息をあげている。
そしてこちらをチラッと見る
「あはぁ夢見間くんは・・ちょっとおとなしゅうしていてな・・その結界絶対はずせんさかい、でも・・邪魔はさせてもらおか・・・心見!!!」
そういうとネクタルの身体から心見が出て来た
「グオオオオオオオオオ!!!」
そう叫び黒い人型のような物体になった。
そして桜さんに向かって攻撃を仕掛けてきた
「桜さん!!!!」そう言うと同時に攻撃が降り注ぐ
砂埃が舞い散る
目を開けると桜さんは無事だ
その前には
「間に合った・・・・」
光ちゃんがシールドを張っていた
「新しい能力者!!?昨日は確か3人だったはず・・まさか!?」
ギロッとネクタルが神子さんを見る
「そう!まだ居たのさ!」
そう叫びながら剣を出してネクタルに攻撃を仕掛けたが避けられる。
パラパラと砂が空から舞い落ちる
「ネクタル!!!お願い!!!もうこれ以上戦いたくない!!!あなただってアニメや二次元好きでしょ!あの頃と変わらないんでしょ!?だから受け入れて!!!」
そう言いながら神子さん剣を構える
「絶対・・・・絶対にいやや!!!!」
ネクタルも空間から剣を取り出し構える
「なんで・・・・なんでそこまで否定するのよ!!!!いいじゃない!!!ネクタル!!!BLだって大事な二次元の一つなのよ!!!!」
ん???えっと・・・・今なんて言いました???
その場にいた、自分も光ちゃんも結界を外そうと集中していた桜さんにも沈黙が走った
まさか・・・この2人の喧嘩の発端って・・・
ネクタルが叫ぶ
「ぜっっっったいにダメ!!!!!あんな悪影響があるものを二次元になんて受け入れられまへん!!!」
「なんでよ!!!!いいじゃない!!!沖田さんと斎藤さんのBLとかもう最高よ!!!あれこそ芸術ってものよ!!!」
「いいえ!!!友情ならわかるけど!!!男同士で恋なんてわては許すことはできまへん!!!」
「そんなこと言って!!!!あんたユリは許しているくせに!!女同士がいいなら男同士も間違いじゃないじゃない!!!」
「女同士はなんか綺麗だからいいんです!!!」
「男もイケメンだったらBLありでしょうが!!!!!このわからずやああああああ」
そう叫びながら神子さんがネクタルに突っ込んでいく
「それはこっちのセリフやああああああああああああ!!!」
カキンという音を立てて互いの剣がぶつかり合う
激しく剣の打ち合いをして遠のいていく。
取り残された3人は沈黙が続いた。
そして心見でさえ空気を読んでいるのかその場で動こうとしなかった。
桜さんが集中を切らしたらしく喋り始めた。
「えっと・・・・つまりあの人達は、BLつまりボーイズラブを受け入れられるか、受け入れられないかで、二次元と世界の存続を今揺るがしてるってわけ?」
「えっと・・・そういう事だと思います・・・・」
自分はそういうのには疎いのでよくはわからないが、これが昔はよく論議されていたとネットにも書いていた気がする。
きのこ、タケノコ戦争?または同担拒否戦争?なんか違う気もするがそんな感じだったと記憶している
しかし、この時代では男性同士の結婚も女性同士の結婚も受け入れられるようになっている、なので2人は昔の事で争ってるという事だ。
そしてこの戦い世界がかかっているという重要な事なのだという事に3人でため息をもらす。
そして動き出したのは光ちゃんだった。
「心見さん・・・すみませんが今回はあっさり倒されてくれませんか?初めてなのにって言うか言葉通じてるかわかりませんが・・・」
声をかけると何かを察してくれたのか心見は仁王立ちになってくれた。
「ありがとうございます・・・いつか本気でバトルしましょうね」
そう言っていつの間にか具現化した剣で心見を斬りバトルを終了させた。
心見ももしかしたら感情を吸い取って戦うので、理由を知られて恥ずかしいという感情ができてやられてくれたのだろうかと消える心見をみて思った。
消えるのを見てスッと桜さんも立ち上がった。
「賭くん・・・ごめんね今回はそこで見ていてくれるかな???」
えっととなったが桜さんが凄い怒りの表情をみせていたので「はい」と答えるしかなかった。
返事を聞いて桜さんは前に進み、光ちゃんと2人一緒に並んで息を吸って大きな声で
「「大事なコミケを!!!!そんな争いに巻き込むなああああああああ!!!!!!!!」」
叫んで2人の戦いに突っ込んでいった。
ですよね~と思いながら動けない自分は見送るしかなかったのだった




