第18 ひよこの缶バッジ
悩んでも仕方はないともう一度窓の外を眺める、2日目という事もあり、窓の外に見えるビッグサイト前に居る人の大群はもうこれからどこか国を落としに来てるのではないかと思うくらいに集まり熱気が広がっていた。
警察官も周りに多数配置されているのが見える。
昨日初めて体験したが、あの中に居るのは結構大変であり夏真っ只中の朝から待ち続けるのだ。
コミケではこの状態は毎年普通の事らしいが、なにせ日本のアニメ、漫画、声優、二次元は宇宙1なんて言われているほどなので、年々外国から観光客も増えて人は増加してる一方なわけで、その為国も対策をしたりしているそうだ。
しかし、一時期だけ国の事情でこのビッグサイトではなく別の場所でコミケを開催したらしいが、例年通りとはいかず大混乱を極めて沢山の人から苦情が殺到したという事もあり、その時の様にならないためにも国も少し協力をするようになったとの話である。
まぁ、もはやコミケは日本の文化的行事なのでしかたないだろう。
というか、みんなで楽しめるならそれが一番なので国が力を貸してくれるのはありがたいことだ。
まあそんな中、2次元や世界を壊そうと企む奴らが居ると知ったのは昨日の事。
まさか自分が戦うことになるとは・・・夢であってほしいと思いたいが夢ではないのだ。
しかも、それを確認できる人たちもこの部屋に揃ってる。
僕たちに力を偶然というか、与えてしまうなんて微塵も考えてもいなかった日本の最高神の1人が居る時点でもう現実離れしているが夢じゃないのだ。
まぁ、夢であろうがそうでなかろうがもうそれはどうでもいい事なのだろうな。
巻き込まれた時点で覚悟は出来ているのだから。
とにもかくにも、僕が好きな2次元を壊そうなんてそんな奴らはどうにかして倒さないとまた楽しみを邪魔されるのでなんとかしたいものだ。
窓の外を見ながらそう考えてると不意に部屋のドアが開いて黒いスーツの黒ずくめの男が入ってきた。
運営の人が入ってきたのか!?バッと神子さん以外の3人は少し警戒したがその人はすぐ神子さんの前に立ち一礼をした。
「天照様各自配置につきました。」
「おお、そうかこれで一応は安心できるわけだね」
「はい、ですがなにぶん急だったもので急場しのぎになりますのでどうかその時はよろしくお願いします。」
「うむ、わかった。さがってよいぞ、それと私たちがでたらここの貸切も運営に言って解いてもらってもよい。」
「わかりました。そのようにしときます、でわ失礼いたします。」
そういって黒ずくめの男はドアを閉めて出て行った。
いったいなんだったんだろうと思っていると
「驚かせてしまったの3人共、あやつは天界の天使じゃ」
その言葉を聞きしばし三人同時に固まったように沈黙し
「「「てんし~~~~~!?」」」
3人揃って声がそろうほどの驚愕であった。
いや!どっちかというとヤクザにいそうな感じの人だったんですがと思ったがその言葉を飲み込んだ。
とにかく話の続きを聞かなくてはならない。
「天使ですか、ということは何かあったんですか!?それともまたあいつらが!?」
「いや、何もおきとらんし、まだやつらも現れておらん」
「そうなんだ、よかった。」
と桜さんが胸をなでおろすと神子さんが答えた。
「今はだ!もしかしたらこれから現れるやもしれんのだから緊張は解くな、だがずっと警戒をするのも大変だろうと思ってね、天界に連絡して数名派遣してもらったという訳だ、お父様には少し電話越しにくどくど言われたが了承をもらえてね、戦闘はできないやつらだが異変があればすぐに知らせてくれるように配置してもらった。」
「なるほど!それは助かりますね。何か少しでも異変があれば見えないところでも知らせがくれば対応ができますからね。」
光は手をポンと叩いて喜んだ。
「そうじゃ!しかし、この広いビッグサイトしかも電波が悪くて携帯などつながりにくいのは知っておるよな?」
「はい、知っています」
桜さんが答えてくれた。
確かに、昨日そのせいで僕は桜さんと連絡が上手く取れず大変苦労した。
なにせ何千人に携帯電波があるのだからしかたがないことだ。
すると神子さんは着物の袖をあれでもない、これでもないとごそごそあさぐりだした。
何を出すのだろうと見守るが中々出てこない、むしろその着物どうゆう構造になっているか不思議である。
どこぞの国民的アニメが持っているポケットなのか?と思うくらい探している。
「おっあったあったこれじゃこれ」
ようやく探すことが出来たらしく手にだし見せてきた。
手に出されたそれは、ひよこの絵が描かれた缶バッジだった。
少しの間三人は、目が点になったがしばらくして桜さんが切り出した。
「天照様・・・ふざけていますか?」
とじ~っと見た。
「ふっふざけるわけがなかろう!!!大真面目じゃ!!いいからそれを手に持ってみよ!」
「手にですか?いいですけど・・・本当にふざけてないんですよね?」
「いいから!!もってみろ!それでわかる」
少し機嫌を損ねたらしくほっぺをふくらましている。
言われた通りに3人それぞれ手に持ってみる、すると缶バッジが光りだした。
「えっ!?なんですか?光りだしましたよ!」
3人で慌てていると神子さんは手をパンと両手で叩き「認証せよ!!!3人の名は賭!桜!!光!!!」そう唱えると缶バッジは更に光を放ち3人が持ってるそれぞれの携帯デバイスの中に入り込んだ。
「ふう!これでひとまず完了じゃ」と満足する神子さん
いきなりの事でびっくりしたが、先ほどのひよこ缶バッジは3人のデバイスのホーム画面に表示されていた。
「それは、電波を気にしなくても通信できるまあなんだわかりやすく言えばトランシーバーみたいなものと考えてくれ、あとは危険感知センサーも搭載しとる!今はひよこじゃが危険な存在が近づいて来たらニワトリになるのじゃ!ニワトリになったらコケーと鳴くからすぐわかるじゃろう、ちなみにそのひよこはお前たちの言葉を理解しいろいろ覚えていく事によって成長もするのでないろいろ試してみるとよい。」
と胸を張っておおいばりしている神子さん、どうやら神子さんの自信作だという事がうかがえる。
確かに、電波を気にしないで通信が出来ることはいいことだ。
しかし、あんなたいそうな事しなくてもアプリインストールみたいにしてくれた方が楽だったのではないのだろうかと心で思ったが言わないことにした。
桜さんが咳払いをした。
「とりあえず、これで通信については問題が無くなったという事で後は、昨日来たやつらが来ないことを願うだけですが・・・・コミケは人の欲望も集まるところですので必ず今日も現れると思います、なので皆さん気を引き締めていきましょう!!エイエイオー!」
と手をグーにし高々とかざした。
いきなりだったのでじーっと見いてしまい桜さんはハッとなり赤面してちじこまった。
この人こういう事もするんだなと思い少し笑ってしまった。
「さて!桜のかわいい部分が見れたところで分担をするがよいかの?」
「かわいくないです!!!」
「なんじゃ充分かわいかったぞ。エイエイオーっての」
にやにやしながら神子さんが桜さんをおちょくると桜さんが手にグローブをはめた。
「一発いっときますか??」と満面の笑みだが明らかに怖い
神子さんは震えながら首をブンブンふったのを見てこちらを見る桜さん。
僕も光さんも首をブンブンふって拒絶し拳をおろしてくれた。
桜さんを怒らせるともしかしたら怖い事になるかもしれたいといい教訓になったので覚えておこう。
ビクビクしながらも神子さんが
「さて!気を取り直して分担をするが、まず確か光はブースがあるんじゃったな?」と光をみる
光はうなずく
「桜は売り子で確か企業ブースで働く予定じゃったな?」と桜さんをみる
桜さんもうなずく
「で!私は今日は企業ブースに用があって回る予定なんだが賭は何か予定はあるか?」
と聞いてきた。
「ん~僕は特にはないのでいろんな所見て回ろうかと考えてます、友達も今日も来ているでしょうしそいつともしかしたら一緒に回る可能性もありますね。」
可能性と言ったが、まぁ確実にあいつは来ているだろうから今日は一緒に回るとふんでいる。
「そうか・・・・一緒に回ろうとおもったのに・・・」
「えっ神子さんなにかいいました??」
「いや!!なんでもない!!」
神子さんは顔を赤くしながら首をふる
不思議に思ったがまぁ良しとした。
「でわ各々、2日目のコミケを楽しみつつ各自しっかりと警戒してくれたまえ!!でわいくぞ!!」
という神子さんの合図で皆部屋を後にした。
暗闇の中声が響く
「あんさん達は今日は動かないの?」
「ふん!!!あいつも俺も昨日の傷がまだ癒えていないからな今日は回復に専念さえてもらうが、お前はでるんだろ?」
「あはぁ今日はあの祭り2日目やからねぇ。私はちょっと用事もかねていきますよ」
「お前がなぜ俺らの仲間になったか本当に謎だ・・・まぁどうせ・・やつと関係してるんだろ?」
「それは・・・関係あらへん・・・・」
「どうだかな・・・まっどうでもいいことだなさっさといっちまいな!昨日働かなかった分くらいはしっかりやってこいよ」
「あんさんに言われんでもやってくるよ、ほないってきます」
と空間に穴ができ消えていった。




