第15 駅の中はステージ
お互い協力することを誓い、天照の血によって自分が得た能力について説明がされた。
天照・・じゃなかったなんか改めて思うがややこしいが、神子さんが言うには桜さんや自分が血によって手に入れ覚醒した能力を総称してこう呼ぶことにしたそうだ。
「maker」
意味は物事を作り出す人という意味らしいが、僕が得た能力は神子さんから言えば特殊で3つの能力を保有しているとのことだ。
まず、一つは永遠の想像メーカー、最初に天照になった神子さんと契約した時に出した能力だ。
この能力は、カードを媒体とし自分が見たことがある漫画、アニメ、二次元創作物を記憶からカードに読み取らせその想像したものの容姿や、能力を使えるという能力だそうだ。
性格もその記憶していたキャラクターなどにも似るらしく、喋り方も変わってきたりするらしい、だからアーサーをダウンロードした時僕って言ったり俺って言ったり不安定になっていたんだろう。
次に、神の想像メーカー、これはジェノサイドにやられピンチになった時に使った力で、自分の想像を力として神様と合体できるというものだ。
その時の容姿などは、合体する神様にもよるらしいが今回天照と合体した時は、白と黒が綺麗に混ざった鎧を着けて羽をはやし、髪はロングというものになっていたそうだ。
しかし、この技はしばらく使えないらしい。
神子さんに言われカードを見たが、神のカードだけ真っ黒にいつのまにかなってしまっていた。
どうやらカードにも多少ではあるが意志があり、自分には神と合体するにはまだ未熟であると判断されたのだろうと言われた、今回は天照が同意したため神のカードは力を貸してくれたのだろうと推測される。
もし、あの時神のカードが力を貸してくれなかったら恐らく3人ともやられていただろうと思う、それほど危険な賭けだったそうだ。
神のカードを使えるようにするには、それなりに特訓をやればいいらしいが時間がかかるそうでまた後日説明するそうだ。
まぁ・・・そのなんだ
あの人と僕チューってかキス?接吻・・言い方なんてどうでもいいが、したんだよな・・初めてだったから初キスなんだが・・・
チラッと神子さんの唇に目がいく
いかんいかん!!話に集中だ!集中!と頭を切り替えなおす。
そして最後にもう一つ能力があるそうだがそれについてはまだ何も言えないそうだ。
どうやら、先の能力とは違い鍵がかかっており神子さんでも不明という事らしい。
ある程度自分の能力について説明されたが、永遠の想像以外はしばらく使えないという事が現状らしい。
次に桜さんの能力について説明を受けた。
桜さんの能力は、「結界と防御メーカー」文字通り結界と防御の能力で、ビッグサイトを包むほどの広範囲の結界や防御を張ることも可能だそうだが欠点のあり、包む範囲が大きければ大きいほど時間がかかるそうだ。
なるほど・・だから助けに入るのも遅くなっちゃったわけか、と納得した。
ちなみに、桜さんがジェノサイドを吹っ飛ばした技は特注したカーボンなどの特殊な加工をした赤い手袋を媒体とし、防御壁を何十にも絡ませた技らしい。
桜さんは自慢気に技名を「ブラッドフィスト」とつけているらしいが、血の拳って・・なんて物騒なネーミングでしかも結界も防御も関係ないなと少し思ったりした。
神子さんもこの技についてもネーミングセンスに関しても大反対らしいが、桜さんは聞く耳を持たないらしい。
そして、天照さんと桜さんの合わせ技「天照結界回復転生」は、すべての傷を癒し、そこであった事を無かったことにできてしまう恐ろしい技で、今回事件がなかった事になってるのもこの力のおかげだが、時空を歪めかねないからとお父様という方に禁止令が出されたそうで、もう大規模な事はできないそうだ。
つまり次は、大規模な事件が起こる前に問題を取り除かないといけないということだ。
ならなるべく人が居ないところや、桜さんの作った結界の中で戦うしかない。
そう言った説明や話をしているうちに時間はすぎてゆき、現在の時刻は22時になっていた。
時計を見て桜さんが言う。
「もう22時になってるの!?大変!!!急いで帰らなくちゃ!!」
と慌てる桜さん何か用事でもあるのだろうかと思っていると
「明日もコミケだから帰ってお風呂に入って少しでも寝て回復しなきゃ!!!」
と驚かされる言葉を聞いた。
今日あんな戦いがあって疲れているはずなのに、そんな言葉が出てくるなんてある意味この人超人じゃないか?と疑う事しかできなかった。
自分の身体はボロボロでやばいのに一体どんな体力をしてるのだろうと考えてると神子さんも
「そうだね。明日も明後日もあるし、今日はここでお開きにしようか」と言ったのだ。
まじか・・・まじなのか?この人達と少し驚きを隠せなかったが、少し考えるとわかる事だった。
それは、コミケが好きだからである。
好きなことにはまっすぐ向き合えるもの、例えそれがどんなに疲れていても好きだから少しでも回復してそれにのぞみたいのだろう。
自分もそういう人間だからすぐに気づけた。
だから自分もすぐに切り替えることができた。
ずっと行きたいと願っていたコミケを、疲れたからって1日だけで行かなくなるなんてもったいない事はしたくないと。
「そうですね。今日はここまでにして明日また会場で会えたら会いましょう」というと2人に笑われた。
「会えたらじゃなくて絶対会うんだよ賭くん」
「そうそう!明日も楽しむこと優先ではあるけれど、やつらがまた来る可能性だってあるんだから気を引き締めていないとダメなんだからね。」と言われた。
「あっそうでしたね」というとまた2人に笑われたが別に嫌ではなかった。
そう思うと何故か一緒に笑っていた。
しゃぶしゃぶ屋を出て池袋駅の中に入ると22時という事もあり、帰宅する人などいろいろな人がまだ池袋駅内にはいた。その中には、自分達と同じようにコミケ帰りの人が居るのもチラホラ見える。
きっと自分達と一緒でコミケ帰りにご飯食べたりしにきたか、池袋のホテルに泊まりに来たかだろう。
ちなみに、コミケの時に泊まる場所は自分が聞いた話では秋葉原、池袋、などアニメ関連が少しでもある所に泊まる人が多いみたいで、ガチな人はビッグサイトのある国際展示場前のホテルに泊まるそうだ。
だが、噂では夏コミ、冬コミの日付5年後先まで予約で埋まってるとか埋まってないだとかされている。
あとはお台場にある大江戸温泉で夜をあかす人もいるそうなのだが、それともう一つあるのだが・・・うん昔から問題になってるらしいけどそれについては言わないでおこう。
なんか問題にもなりかねない気がするからな。
まぁそんな事はさておき
3人でそれぞれの駅の改札に向かって歩いてると1人の子どもが泣いていた。
周りには沢山大人とか歩いていたがチラっと見るだけで歩きすぎる、面倒だからとかすぐに見つかるからとかそんなところだろう。
あとは、不審者と間違えられたくないとか、最近は善意でやっても犯罪者扱いする人もいるから気を付けないといけないからな、と思いつつその子に近づこうとすると先に桜さんが話しかけにいってしまった。
「こんばんは!君名前なんていうのかな??迷子になっちゃったの?」
桜さんが話しかけたが子どもは更に泣き叫んだ。
慌てる桜さん、見かねて2人の所により話しかける。
「ごめんね~いきなりで怖かったんだよな。大丈夫だから泣かないでくれな、僕の名前は夢見間 賭、こっちのお姉ちゃんは盾見桜さんって言うんだよ、よろしくね。よかったら君お名前は言えるかな?」と優しく声をかけると
少しまだぐずりながらも「夢・・・わたし、夢って言うの」とちゃんとしゃべってくれた。
「そうか~夢ちゃんか~いい名前だね!でどうしたの?お母さんとはぐれちゃったのかな?」
「うん・・・あのね、さっきまでそばにいたの・・でもね、わたしがはしゃいでね・・・それでいなくなっちゃたの・・・」
「あ~1人で先に進んじゃって迷子になっちゃったんだね・・・そっかそっか・・う~んあっちょっと待っててねお母さんすぐ見つけてあげるね。桜さんちょっと夢ちゃん見ててくださいね」
「えっあっうん・・わかったけど何するの?」
桜さんと夢ちゃんは不思議そうに見ているのをよそに神子さんと相談をする。
神子さんはやれやれと呆れ顔だったが、やろうとしてることを承諾してくれた。
そして、カードを手に持ち小さな声で詠唱をはじめた。
「我、夢見間 賭が願う!!!夢の間!!夢見る間!!!ひとときの瞬間我に力を!!!世界を守る!二次元を守る力を貸したまえ!!!永遠の想像ダウンロード!!!」
頭の中にBGMが流れてくる。
先程のアーサーの時と違い格好も何も変わってなかったが、自分の中で何かが変わったのがわかった。
(よしとりあえず成功だな・・っと)
準備を終えて桜さんと夢ちゃんの前に戻る。
夢ちゃんはまた泣きそうになっていたので、一つの提案をする。
「夢ちゃん!!歌ってみないかい??一緒にさ!!」と笑顔で話しかける。
桜さんはびっくりしていた、そりゃそうだよね駅内で歌うなんて補導もんだし、いきなり何言ってるの?気でも狂った?と言われかねないよねと思いながらも夢ちゃんを見続けると夢ちゃんは少しもじもじしながら「私・・うたうのへただけど・・いいの?」と恥ずかしそうに言ってきた。
「大丈夫だよ!!じゃあ歌おうか!!何がいい??」
「うんとね!!うんとね!!ぞうさんとかきらきらぼし!!」と笑顔で答えてくれた。
「ぞうさん!!にきらきら星いいね!お兄ちゃんも子どものころよく歌っていたよ!じゃあいっせ~ので歌うよ」
「うん!!」
「いっせ~の!!!」と言う声で2人が元気よく歌い始めた。
桜さんは恥ずかしそうにしてそばで見ていたがふと不思議なことに桜さんは気づいた。
それは、さっきまで泣いている子に声もかけず見向きもしなかった周りを歩いていた人たちが足を止めてとても多くの人が見始めていた。
だだ童謡を歌っているだけなのにだ、しかも誰も迷惑そうな顔をしていない、むしろ聞き惚れているという光景だった。
2人は気にせず楽しそうに踊りながら歌い続ける。
すると、人混みの中から「夢ちゃん!!!」とどこからか声がするその声に「ママ!!!」と歌うのをやめて走り出した。
それを見届け
「皆さんお聞きいただきありがとうございました!!無事夢ちゃんのお母さんもみつかりましたのでここまでにします。ありがとうございました。」
と元気よく言うと周りから拍手など聞こえてほどなく皆居なくなっていった。
「ありがとうございました。うちの夢がご迷惑おかけして・・・」
「いえいえ!!いいんですよ。無事に見つかってそれに楽しく歌えて僕もよかったです!」
そういうと、夢ちゃんが
「うん!!とてもたのしかったの!!ありがとうかけるおにいちゃん!」と笑顔でお礼を言ってきた。
「おう!!こちらこそありがとう!でももう迷子になるなよ」
そういってばいば~いと手を振る夢ちゃん達を見送った後、桜さんに耳を引っ張られた。
「かけるく~~んいったいどういうことかな~??説明してもらえるのよね?」
と笑顔ではあるのだが・・なんか少し怒っていた。
「あはははは・・・えっとですね実はこのカードを使いましてね・・その・・周りの人の心に訴えかけていたんですよ、夢ちゃんのお母さんどこですか~ってね」
桜さんにカードを見せるとそこにはマイクの絵がかいてあり絵の下にvoiceと書いてあった。
桜さんは、口をパクパクし金魚みたいになりながら神子さんを見る。
神子さんもやれやれという顔をしているのを確認してこちらに振り向きなおした。
「こんな事件でもないことに能力使うなんて!馬鹿なの!というかなんで止めなかったんですか!!」と2人して怒られた。
「いや~私は止めたんだよ桜、でも賭くんが人助けもこの能力を手に入れた者の使命じゃないですか!と凄い説得されてしまってね・・神としてはその承諾してしまったんだ~別に悪い事に使う訳じゃないしいいかってね。」
神子さんが言うと桜さんは少し落ち着いてくれた。
「もう過ぎたことだからここまでにします。ちなみにあのvoiceのカードで使ったキャラクターはなんだったの?」という桜さん
「あ~桜さんわかるかな??少し前に流行っていたアニメでボーカルガールって言うやつ、その中に出てくる「歌歩」って言う子だよ。いや~部分ダウンロードできてよかったよ~危うく女の子になっちゃうとこだったからさ~」と笑顔で説明すると呆れながらも
「なるほど・・あのアニメなら知ってるわよ、確かその子の能力は心に訴えかける声でいろんな人の手助けをするって、それでこのカードを使ったわけね。瞬時にそれを思いつくなってすごいんだけど・・なんだかねぇ・・」
納得しながら軽くため息をついた。
「まぁ上手くいったしいいじゃないですか~」と言うとさらにため息をついたが何か思ったのであろう顔をあげる
「そういえば、賭くん思ったんだけどあのビッグサイトの時も今回もそうだったけど、あなたが話かけると泣いている子もすぐ泣きながらでもしゃべってくれたのは何故??私もそこまでやっていることは大差ないはずなんだけでど・・・」と疑問をぶつけてくると
僕が「全然違います!!!」とはっきり言うと桜さんは少しビクッとのけぞった。
本当に何言ってるんだろこの人はと少し思ったが説明することにした。
「いいですか??桜さんはまず子どもになんて声かけましたか?」と言う問いに
「えっと確か・・名前、年齢どうして泣いているかとか迷子になったの?とか聞いたかな、これって普通の事じゃないの?」当たり前のように答えた。
なるほど・・典型的に大人達が間違いやすい子どもへの聞き方を覚えてしまっているなと思った。
「桜さん、考えてもみてください、まず桜さんが普通知らない人から君どこから来たの?名前は?住所はどこなの?なんて聞かれたら桜さんはどうします??」と質問すると
「そりゃあ警戒するわよ、なに?この人いきなり話しかけてきて何なのかしら怖いし気持ち悪いってなるかしらね。」と答えると
「それじゃあ桜さん、先程あなたが子どもたちにした事とどう違いますか?」
「えっと・・・・あれ・・私がやっていること・・・同じ?」
ようやく気づいてくれた。
「そうなんです。一緒なんですよ、子どもなら更にもっと警戒してしまいます、警察だろうと迷子センターだろうと同じです、大半の大人は間違った事をしてしまってるんです。」
そういうと桜さんは少し首をかしげた。
「でも、賭くんも同じ事していたよね?何が違うの?」と言われ頭をかかえた。
あっこの人気づいていないのか・・・そうか・・今ので気づくだろうと思っていたのにと少しうなだれていると神子さんが言ってくれた。
「桜、あなたと賭の違いは最初に名乗っているか名乗っていないかだよ。」
「うん・・神子さん正解です。」
拍手をポンポンとする。
それでようやく桜さんも気づいてくれた。
そう、子どもは大人と違って好奇心も凄いが、大体の子は警戒心が強く相手をよく観察することから始まる、大人は顔とか体系や声、職業などに大体気を取られてしまうが子どもは違う。
子どもも確かに顔とか声とかに気を取られてしまうが、最初に名乗るか名乗らないかでは警戒心が変わるのだ、だからもしも子どもが泣いていたりする時は、ちゃんと苗字から名前まで言ってあげるとよいのである、その後に名前を聞いてあげると良いとされているんだ。
そんな説明してあげると桜さんは少し悲しそうにしていた。
「ううう・・・自分結構子ども達に怖い事していたんだね・・・でも賭くんそんな事よく知っていて偉いね」
感心され少し照れくさかった。
実はこの技法を教えてくれたのは、沖縄に住む知り合いの保育士さんで僕が近所に住む子どもたちと仲良く遊びたいのに警戒されたくないという事を話すと教えてくれた技法なのだ。
それにこの技法は親戚同士とか、仲間内で集まりやすい場所でも有効で大体の子はこのやり方で話しやすくなってくれるのだがそのことは内緒にしておこう。
「あっ!!!時間!!!」
神子さんが腕時計を見せてきた。
いつの間にか時間は23時をむかえていた。
「「「やっべ~~~」」」
3人は声を揃えて言った。
また明日と3人はそれぞれ乗る電車のあるホームに向かった。




