第12 決着
「これが・・・神の・・・天照の力・・・」
自分の手をまじまじと見る、先程までと違う白と黒が混ざった鎧と燃え盛る片手剣これだけで成功したことがわかる。
片手剣を軽く振ってみる。
ふわっととても軽く振るう事ができる、むしろ持っているのか不思議なくらいの重さだ。
手にしっくりくる、自分が長年使ってきたような感覚、この剣は天照が愛用している武器なんだろうと考えてると心の中で声がした。
(「賭くん、よくやったわね合体が成功して安心したわ、私は今あなたと一体になっています。なので心の中で会話ができます、フォローできる所はするので今は目の前にいるあいつを」)
賭は前を見る。
瓦礫に埋まってる桜さんとその前に立つジェノサイドが見える。
ゆっくり息を吸う、そして思いっきりはいた。
ジェノサイドがこちらを向くすると、そこには先程までいた賭の姿が居ない。
辺りを見回すと先ほどまで瓦礫に埋まっていた桜が居なくなっていた。
「ありがとうございます。こんなになるまで頑張ってくれて・・・あとは僕に任せてください。」
ジェノサイドが声がする方を向くとそこには桜を抱きかかえた賭が立っていた。
ゆっくりと桜さんをおろし傷を癒す光を放つ、すると桜の傷が少しだけ治っていく。
そしてある程度回復するのを見届け、ジェノサイドの方向を向く。
「なんだと!?馬鹿な!!ありえん!!!」
ジェノサイドが驚いているそれも無理もない、ほんの一瞬で仲間を助けだし離れた場所に賭がいるのだから、その移動した瞬間を目で追えなかったのだから。
そんな賭に、ジェノサイドもただならぬ雰囲気を感じたのか、何かの技だろう空間から剣を取り出した。
「こんな人間ごときにこの剣を使い本気を出さなくてはならないとわな!!!」
そういうと背中から黒い羽を出し、まがまがしい黒い気を放ち始めた。
慌てる様子のジェノサイドを見て、少し落ち着きを取り戻したネクタルが言った。
「あら、あんたその剣は使わないんじゃなかったんでしたっけ?まぁ使うのはかまいまへんけどこの世界に影響でない程度ですまさないとあきまへんよ。」
世界に影響?それほど凄いものなんだと息をのむ。
事実、ジェノサイドが出したその剣は黒く闘気のようなオーラを発してるのが見える。
賭はゆっくりと剣を構えジェノサイドをじっと見る。
ジェノサイドもゆっくりと息を吐きそして剣を構える。
お互い向き合いながら、隙を覗う。
先程までネクタルと一緒に怯えていたアヌビスも落ち着いたようで冷静に見ていた。
沈黙がはしる。
風が緩やかに流れ一枚の木の葉が飛んできた。
その瞬間!!2人が同時に動いた。
賭そして、ジェノサイドの剣が互いにぶつかり合う。
ぶつかり合った衝撃で周りに衝撃波が起こる、地面や建物がミシミシいうのが聞こえる。
それを感じた瞬間、打ち合っていた剣をはじき後ろに下がりジェノサイドが空へ飛びあがる。
賭も翼を羽ばたかせて空へ飛びあがりジェノサイドを追う。
お互い斬撃を飛ばす。
右、左、上、下、また左からとお互いの研ぎ澄まされた神経をフルに使いながら攻防を繰り返す。
互いにぶつかり合う音が空に響く。
お互い譲らず戦いは激しさをましていき、スピードが速くなっていく。
普段の自分なら見えないであろう、だが今は天照と合体し神の力を借りることでジェノサイドの攻撃も追うことが出来ているのだ、それくらい目の前にいるこいつは危険で危ないのだ。
気を抜くと一瞬でどちらかが負ける、お互いそれを感じていた。
そして攻防を繰り返しながら徐々にだが、ジェノサイドに攻撃がかするようになってきた。
一撃、二撃、段々と当たっていく。
ちっと舌打ちをしジェノサイドが距離を取ろうとしたのを見逃さず一撃を放つ。
「がはっ!!!」
ジェノサイドに強烈な斬撃が当たりようやく血を流した。
ここだ!!!たたみかけようとした。
すると心の中に居る天照が「(賭くん離れて!!!)」と言ったのですぐに後ろに離れた。
離れたその一瞬、上からエネルギー弾が飛んできた。
危なかった、天照に止められなかったら直撃していただろう。
あの攻防の中、ジェノサイドは密かに作り出しわざと隙を見せ攻撃をくらったのだ。
ジェノサイドを見ると血は流しているがそこまで深手ではないがダメージはデカそうだ。
天照が居なかったらと思うだけで少しひやっとした。
「(賭くん倒したい気持ちはわかるわ、あいつが危険で今すぐにでもとどめを刺したいというのも、だけど落ち着いて一瞬の油断が命とりになるわ)」
「わかってます、だけど早くしないと・・・」
賭の心を読んだ天照が言う。
「(そう、やっぱり気づいていたのね。この合体がまだ完全ではなく時間制限ありの技という事に・・)」
「はい・・・」
戦っているうちに気づいていた。徐々に自分の身体が悲鳴をあげ始めているのを、そして神と合体するというのを今日初めてやりさっきまで平凡に過ごしていた自分が制御できるのはもって数分だろうと。
剣を構えなおすとそれを見たジェノサイドも構えなおした。
するとジェノサイドが喋りかけてきた。
「人間、お前は何故そこまでして二次元を守ろうとする、あんなもの人間に害しかもたらさぬ毒でしかないではないか、そんなに価値があるものではないだろう。」
ジェノサイドが凄い圧を放ってきたが、賭は息を吸ってそしてゆっくり話した。
「確かに、二次元は害になる事もある、人を傷つけたり、怖い思いもさせたりする、時には人を死に至らせてしまうこともある。」
「ならなぜ!!!そんなものを守ろうとする!!!」
そう言われ、賭はジェノサイドをキリッと見ていう。
「だけれども、それがすべてじゃない!!!二次元は素晴らしいんだ!!夢もくれるし明日への希望をくれたり、時には命の大切さや恋についてだって考えさせてくれる。大切なものに気づかせてくれたりもするだから!!!だからこそ無くてはいけないものなんだ!!!」
そう言い放つと賭が持つ剣が炎をたぎらせた。
自分の心に剣が反応してくれているのを感じた。
「次だ・・・次の一撃で決める貴様を倒せばもう邪魔者は居なくなる。」
ジェノサイドの剣もまた黒い闇を放つ。
「あぁああ!!こちらも次の一撃で決めてやる!!!」
互いに息を吸う。
そして、息を吐くと周りの大気が震えている。
「次の一撃やんなぁ」
「あぁ・・次で本当に決着がつく」
ネクタルもアヌビスも静観している。
「賭くん・・・天照様・・・・」
桜もその様子を見ていた。
そしてその瞬間がやってきた。
お互いの剣が違うオーラを放つ!!!
「闇をすべてを覆え(おお)!!我が力すべてを捧げる!!!黒い闇剣」
「日輪よ照らせ!!!世界を守るために暖かなその力で!!!くらえ!!!!!転輪の煌めき!!!!」
互いの技がぶつかり合い、闇と炎が空をかける。
「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「はああああああああああああ!!!!!!」
ザッシュっという音とともに互いの位置が逆になり技を撃った状態の構えで止まった。
下で見ていた、アヌビス、ネクタル、桜は息をのむ。
どっちだ!?
すると、地面に炎の剣が落ちてきた。
賭が肩を手で押さえ抱えていた。
ジェノサイドはニヤリと笑ったがその瞬間に気が抜けたのか気を失い、浮力を失い地面に向かい落ちていく。
そして、ズッシャという音と共にジェノサイドが地面に倒れた。
「勝てた・・・・」
と言うと賭も合体が解け落ちそうになったが、解けたと同時にまだ少し余力を残した天照が賭を捕まえ、抱きあげ降りてきた。
「よくやったね。賭くん!君が頑張ってくれたからだありがとう。」
「天照さんが居なかったら無理でしたよ・・・お疲れ様です。」
賭と天照は互いに拳を握り拳を合わせた。




