表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

「機能停止」

「ミサが……ミサ、もうダメかも……」

「ミサが……どうかしたんですか!」

 ウイルス事件の影響でミサの電子頭脳がストップする。

 心配しているジルに、さらなる不幸がふりかかろうとしていた。

 復讐の刃がまさとに向けられていた。


 まさとの誕生日前日。

 ジル・操・響子は響子の家に集まっていた。

「まさとさんの誕生日が迫ってます~」

「頑張ってケーキ作ろうね」

 操の笑顔にジルはちょっと赤くなった。

「そうだ、ジル、ミサはどうしてるの?」

 響子が聞くのに、

「ミサはメンテナンスで長崎先生の所です」

「メンテナンス?」

「この間の停電騒ぎから、ちょっと調子悪いみたいなんです」

「そうなの……ジルは大丈夫」

「えへへ~」

 ジルは愛想笑いを浮かべると、ごまかすように操の肩を揺すった。

「早く作りましょう!」

「う、うん……」

 しかしジルは台所を見回すと、

「でも、何で響ちゃんの家で作るんです?」

 ジルは響子と操を交互に見て、

「ぼくは……操ちゃんの家がよかったな」

 ジルが赤くなりながら言うのに響子は笑うと、

「操ちゃんの家は大きいから、ジルなんか行ったら大変だよ」

「ふえ?」

「操ちゃんのお父さんが出てきて、『うちの娘に~』なんて言ったらどうする?」

「ふええ……」

 ジルは操の顔を見ながら言った。

「操ちゃんのお父さんはこわいんですか?」

「ど、どうかな……」

「ぼく、響ちゃんの所でいいです~」

 響子は微笑みながらジルと操にエプロンを渡した。

 三人はエプロンをすると、早速戦闘態勢に入った。

 操の指導でスポンジを作ったり生クリームを泡立てる二人。

 くるくると働く操にジルと響子は感心していた。

「ふえー、操ちゃん料理人みたいです」

「本当、操ちゃんすごいね」

 ジルと響子が言うのに、操は一瞬照れたもののすぐに真顔に戻ると、

「はい、スポンジの完成!」

 オーブンからはケーキ屋さんで見かけるくらい大きさのスポンジが狐色に焼け上がっていた。

「カステラみたいですね」

 ジルが言うのに響子が頷いていると、操が先に出来上がっていた生クリームを持って来てスポンジに塗り始めた。

「本当は、スポンジを上下で分けて間にフルーツとか挟むといいけど……」

 操の言葉に二人は頷いた。

「でも、最初だから、ともかく簡単にね」

 操の手でスポンジはすっかり生クリームで見えなくなっていた。

 もはや真っ白な円柱状のケーキ。

 操は一ヶ所デコレーションを作ってみせた。

 生クリームをチョンと置く。

 そのクリームの上にイチゴを置いた。

「こんな感じで作るの……どう?」

 操の鮮やかな手なみにジルと響子は唸るばかりだった。

「じゃ、あたしが生クリームを置くから、ジルがイチゴを置いて」

 操から生クリームを受け取った響子。

 ジルはイチゴの入ったボウルを手に頷いたが、

「でも、そっちの方が面白そう……」

「う……でも、ジル、やってみる?」

 響子は操が作ったのに倣って、早速生クリームを置いた。

 ジルは頷くと、自分でも生クリームを置いてみた。

 結果は散々だった。

「うう……ぼくには向いてないみたいです~」

 がっくりして言うジルに、操はチョコレートのチューブを見せながら、

「ハッピーバースデーって文字はジルが書いたら?」

「文字ですか?」

 ジルは響子がデコレーションしているのを見ながら、

「不器用なぼくに出来るでしょうか?」

 操がそれを聞きながらカステラを持ち出してきた。

 皿の上に載せられたカステラに操は生クリームを塗ってから、

「これで練習したらいいよ」

「!!」

 操はチョコのチューブを握って「ジル」って書いてみせた。

「操ちゃん上手です~」

「文字を描くのは簡単と思うよ」

「ぼくでも出来るでしょうか?」

 ジルは操からチューブを受け取ると息を呑んだ。

 操の書いた「ジル」という文字。

 全面に書かれていてもう余白がない。

「もう書けません~!」

「こうするの」

 操は生クリームをしゃもじに取って、文字を塗りつぶしてしまった。

「ふえ、消えちゃいました!」

「何度書いても、何度でも消せるでしょ」

「消しゴムみたいです~」

「失敗しても安心だよね」

「えへへ、安心しました~」

 笑顔のジル……しかしすぐに神妙な顔になると、操が塗り潰すのに使った生クリームのボウルを覗き込んで、

「でもでも、消しゴムなくなったらどうしたらいいんでしょうか?」

「そ、そこまでは練習しなくても、大丈夫と思うよ」


 ジルは一人、完成したケーキを持って研究所に向かった。

 一度家に戻ってみたが、ミサがまだで、研究所まで迎えに来ていた。

 長崎のデスクのある部屋に入ったが、研究員の姿はあれど、長崎はいなかった。

「ジル!」

「ふえ?」

 振り向けば、黒縁眼鏡に三つ編みの女が立っていた。

「えーっと」

「ジル?」

「え、ええ、ぼくはジル、あなたは?」

「私はさえ、大分さえ」

 ジルはそれを聞いて頷いた。

「ミサを作った人ですね」

「そう、よかった、来てくれて」

 さえはジルの手を握ると言った。

「ミサが、大変な事になってるの!」

「え?」

「ミサが……ミサ、もうダメかも……」

 ジルの手から離れ、床に落ちるケーキの箱。

「ミサが……どうかしたんですか!」

 ジルはさえの白衣を揺すった。

「ともかく、早く!」

 さえはジルの手を引いて研究室を飛び出した。

 行った先は初めて晶子と会ったあの部屋だった。

 二つある入り口の一方に入る。

 診察台の上にミサが横になっていた。

 この間、停電騒ぎの時のようにミサはサングラスとヘッドホンをしていた。

 難しい顔をして、長崎が腕を組んでミサを見つめている。

「先生!」

「あら、ジル、ちょうどよかった」

「ミサ、どうかしちゃったんです!」

「大きな声出さない」

「ふええ……」

 診察台に横たわっているミサは、いつものミサと何らかわらなかった。

「ミサがもうダメかもって……」

「そうなのよ……この間の停電やら誘拐やらでね」

「停電や誘拐がどうして?」

「停電の時にミサの頭にウイルス入ったのよ」

「ぼくも入りましたよ」

 ジルは言いながら、しかし唇を歪めていた。

 ジルは受信しながら片っ端から忘れていったのだ。

「ぼくも……ウイルスを……」

 ジルは言いながら震えた。

 長崎はそんなジルに見向きもしないで、

「ジルも受信はしてたけど、ミサは性能がいい分まともに受信してたの」

「……」

「処理をしているうちに、熱がこもって人工知能に負荷がかかったみたいなの」

「負荷……ですか」

「誘拐の時にも、イタズラされそうになったんでしょ?」

「え、ええ……」

「その時頭を打つかなにかしてたみたいなの」

「そ、そんな……全然そんな、病気みたいな感じじゃなかったのに」

「そうなんだけどね」

 長崎は近くのパイプ椅子を引き寄せ腰を下ろすと、

「回路のどこかがいきなり壊れたみたいなのよ」

「回路が壊れたって……」

「そう、だから、動かなくなったの」

「そ、そんな……動かなくなったって……」

 ジルは長崎の腕を引っ張り揺すった。

 長崎はそんなジルの頭を撫でながら、

「ミサは今、電子頭脳が停止しているのよ」

「停止って……」

「まぁ、死んでる……って言っていいかしら」

 長崎の腕に痛みが走った。

 ジルが噛みつきそうな顔で長崎をにらんでいた。

「先生、またですか!」

「またって……」

「じじうさが死んで、犬も死んで……赤ちゃんいたけど……」

「……」

「今度はミサですか!!」

 ジルは長崎の身体を揺するのを、さえが背後に回って肩をつかまえ引き離した。

「先生ミサを助けて下さい!」

「……」

「先生何でも出来るんでしょう!」

「……」

「先生!」

「ジル……」

 声がしたのは、診察室に置かれたコンピューターからだった。

 ジルはさえの手を振り切ってその前に立った。

「ミサ!」

「ジル……」

「生きてるの!」

「もちろんです」

 さえと長崎もジルの後ろに立って、コンピューターを見つめた。

「ミサ、大丈夫?」

 長崎の呼びかけに、コンピューターの画面が反応した。

 四本ある棒グラフが激しく動いた。

「はい、先生、聞こえます」

「診察台でダウンしたんだけど……どうしたの?」

「メインボードが壊れたみたいです」

 コンピューターのスピーカーからのミサの音声。

 長崎とさえが目を見合わせ、頷いた。

「今は、どうやって動いてるの?」

「通信用のボードです」

 それを聞いて長崎とさえは診察室から出て行ってしまった。

 ジルは棒グラフが伸びたり縮んだりするのを見て、目に涙を浮かべていた。

「泣かないでください」

「ふえ、わかるの?」

「モニターの上にカメラがあるでしょう?」

 ミサの言う通り、画面の上にCCDカメラがあった。

「今はそのコンピューターの機能で会話してるんですよ」

「ミサ、すごいね」

「ジルは出来ないんですか?」

「ぼくは……想像できないや」

「ふふふ……」

 それまで涙ぐんでいたジルの顔が、ミサが笑うのを聞いてパッと明るくなった。

「大丈夫……なんだね」

「はい、だから安心して下さい」

 ジルは頷くと、

「そうだ、今日、操ちゃんとケーキ作ったんだ」

「ケーキ……」

「ミサ、早く元気になってよ、おいしく出来たんだ」

「大丈夫なんですか?」

 ミサの言葉にジルは一度は怒ってみせたが、

「ほとんどは操ちゃんが作って、ぼくはイチゴを置いたり字を書いただけなんだ」

 二人が笑っていると、長崎達が戻ってきた。

 画面がまた激しく反応すると、

「ジル、今から治療するから、いいかしら?」

 そんな長崎の言葉にジルはコンピューターの前から離れた。

 キーボードを操作する長崎の脇で、ジルはカメラに向かって言った。

「ミサ、今から先生が治してくれるって!」

「はい」

 ミサの返事を聞いて、長崎は言った。

「じゃ、ジル、今からちょっと忙しいから、席を外してくれるかしら?」

「は~い」

 ジルは返事をすると、部屋を出ようとした。

 一度足を止めると振り向いて、

「じゃ、ミサ、待ってるよ」

 それだけ言うと治療室を飛び出した。

 さっきケーキを落したのを思い出しながら研究室に走った。

 途中何度か研究員にぶつかりながら、ケーキの箱を探した。

 床に落したままだった筈の箱。

 落したと思った所の近くの机に箱はあった。

「あったあった!」

 ジルは箱の中を確かめた。

 ケーキは崩れ、ぐちゃぐちゃになっていた。

「……」

 ジルの目に瞬時に涙が溜り、あふれ出した。

 ジルはその場にうずくまり、背中を震わせながら嗚咽をもらし続けた。


 まさとは夜勤の憲史が来るまでの間、ジルがしょぼんとして帰って来たのが気掛かりでしょうがなかった。

 ミサの具合が悪いのは、長崎からの電話で聞いていた。

(最近、不幸続きだからなぁ……)

 この間、大好きな黒ウサギが死に、犬も助けようとして死んでいた。

 ジルは何とかそれを乗り超えているように見えたが、以前ほどの元気がなかった。

 長崎からの電話で、ミサが電子頭脳を取り換えないといけないとまさとは聞かされていた。

 そしてその際、ミサの記憶が一部消えてしまい……ある意味死んでしまうとも説明を受けていた。

 その事を、ジルにどう説明していいか、まさとは考え込んでいた。

(さっきはなぁ……)

 まさとはジルが店に入って来た時の事を思い出した。


 電子音が鳴り、自動ドアが唸った。

 まさとはレジをしながら、入って来たジルにちらっと目をやった。

 ジルは涙で汚れた顔をしていた。

 客がレジを済ませてしまうと、店内は二人きりになった。

 表通りから少し離れたこのコンビニは、夕方時はちょっと静かだった。

「おかえり、俺、もうちょっと仕事なんだ」

「はい……まさとさん」

「うん?」

「ミサが……ミサが!」

 ジルが涙ぐんで言うのに、まさとは黙って頷いた。

「長崎先生が、治してくれるよ」

「ですです……でも……」

「でも?」

「ぼくがしっかりしていれば、ミサはあんなになりませんでした!」

「ジルがしっかりしていれば?」

「ですです、停電の時も、公園の時も、ぼくがだらしないばっかりに……」

 ジルは鼻をすすりながら、レジの前に立った。

 そして停電の時、いいかげんな事をしていた事を告白した。

 公園の事件で、ミサを守れなかった事を告白した。

「ぼくは、お兄さんなのに、何も出来ませんでした……」

「……」

 まさとは何も言えなかった。

 ただ、ジルの頭を撫でて、見つめるしか出来なかった。

「ぼくは……どうしたらいいでしょうか?」

 そんな言葉に、まさとはただ頷くだけだった。

「まさとさん……」

 ジルのまっすぐな瞳に見つめられて、まさとは言った。

「長崎先生が、きっと治してくれるよ」

「……」

「それまで、祈るくらいしか、出来ない」

 それを聞いて、ジルはコクリと頷いた。


(あの時は、言葉が見つからなかったし……)

 まさとはジルが帰って来た時の事を思い返しながら、何と言ったらよかったか、あれこれと考え反省していた。

 自動ドアのチャイムが鳴る。

 まさとは憲史が来たのかと目をやったが、白いジャージ姿の茶髪だった。

 目についたのは、骨折しているらしく片腕を包帯でつっていた。

 客が奥の冷蔵庫に行ってしまうのを見てまさとはため息をつくと、なかなか来ない憲史を呪っていた。

 客とまさとだけの店内。

 本当ならもう一人バイトがいたのだけれども、ここのところの騒ぎでバイトがやめてしまった店にヘルプで回っていて、憲史が来るまでの間、店を出る事が出来なかった。

 まさとは天井にチラチラ視線をやりながら、部屋で黙り込んでいるジルの姿を想像していた。

(テレビでも見て、笑っててくれればいいんだけどなぁ)

 ミサの事を聞いた時、まさとも心配した。

 しかし、ミサは電子頭脳を搭載したロボットだった。

 電子頭脳や人工知能は確かにまさとの分野だ。

 でも、それを搭載している身体は人間の肉体だった。

 ミサの電子頭脳が壊れてしまえば、交換は頭を一回開ける事になる。

 それには医者としての知識と技術が必要で、それは長崎の分野だった。

(それに……)

 ジルならともかく、ミサは最新の機器を組み込まれているのだ。

 ミサのファイルを見た時、まさとはもう自分では理解を越えていると痛感していた。

(俺にもミサはわからないし……)

 その時、またチャイムが鳴った。

 自動ドアに目をやると、そこにはポテトチップの円筒形の容器が転がっていた。

「?」

 まさとが首を傾げていると、背後でガラスの砕ける音がした。

「!!」

 まさとが振り向いた瞬間、胸にナイフが刺さっていた。

 さっきの客がそこにいた。

「な……」

 男はナイフを持った手をグッと押した。

 まさとはそのまま押され、後ろに倒れた。

 床に転がったまさとはゆっくり手を上げ、血まみれになった自分の手を見つめた。

「お、おい……」

 不思議と笑っていた。

 茶髪の男はレジの金を漁り、煙草を取れるだけ取るとまさとの前に立った。

 そして包帯が巻かれ、肩につるされた腕を見せながら、

「お前の妹のせいでこうなった、慰謝料もらってくぜ」

 そう言い残して、カウンターを飛び出した。

 まさとはかすむ視界の中で、血に染まった手を改めて見つめた。

 ぼやける視界。

 まさとはゆっくりと胸に刺さったナイフに手をやった。

 ナイフの柄を握ったまま、まさとはゆっくりとまぶたを閉じた。

 ミサやジル、さえの姿が閉じた筈のまぶたに浮かんだ。

 やたらとジルのアップが続く中、まさとはその影に隠れてなかなか見えない姿を見よう見ようともがいていた。

「長崎……先生」

 白衣姿の長崎は不機嫌な顔をしていた。

 眼鏡の奥の瞳はにらみ付けるようだった。

 ジルやミサ、さえは心配そうな顔だったのに、長崎だけ怒っていた。

「何で?」

 まさとは物音に、微かに目を開けた。

 そこには憲史と晶子が立っていた。


 まさとと一緒にジルと晶子が救急車に乗り込んだ。

 ハンドルを握っているのはさえだった。

 まさとを乗せてすぐにレントゲンや音波チェック。

 研究所に急ぐ救急車。

 運転しているさえのインカムに長崎の指示が届いていた。

「まさとさん!まさとさん!」

 ジルは叫び、まさとの身体にしがみつきそうになった。

 それを晶子が必死に押さえ込んでいた。

「まさとさんっ!」

 晶子に羽交い絞めされても、ジルは身体を揺すり続けた。

 険しい顔をしてジルを捕まえている晶子に、さえは時々目をやり頷いた。

「あのー、何もしなくていいんですか?」

 晶子はもがくジルを離さないようにしながら聞いた。

「そうね、ナイフはそのままの方がいいわ」

「え?」

「ナイフ抜くと、血がどんどん出るから」

 さえがハンドルを切ると、車体が軋み、傾いた。

「でも、今もいっぱい血が出てます!」

 ジルが叫んだ。

 さえはそんな言葉に見向きもしないで、

「さっき機械にかけたの、長崎先生に見てもらったから絶対よ」

「でもでも!」

「棚にある包帯でも何でもいいから……傷口の回りを押さえて」

「……」

 晶子が手を放すと、ジルは棚を探し始めた。

 出てきた包帯をジルは手を震わせながらナイフの周囲にやった。

 どんどん血に染まる包帯。

 血でぺたぺた張り着くのを、ジルは丁寧に伸ばしていった。

「でも……どんどん血が出ます」

「ジル……」

「はい?」

「こっちに来て」

 さえの言葉にジルは運転席の方に行った。

 血まみれの手を見せて、震える唇で言った。

「まさとさん、死んじゃいます」

 そんなジルにさえは微笑んだ。

「長崎先生が大丈夫って言ってたから、お兄ちゃん助かるわよ」

「本当ですか?」

「ジルは……注射は嫌い?」

「痛いのは……嫌ですよ」

「お兄ちゃん、血が足りなくなると思うから輸血しないといけないの」

 ジルはそれを聞いて、注射で血を抜くのを想像していた。

 一瞬ジルの表情が青ざめたが、そんなジルの脳裏にまさとの笑顔が思い出された。

 頭を撫でて微笑んでくれるまさと。

 一緒になって寝てくれるまさと。

 ジルの震えていた唇は、しっかりしたものになった。

 固く閉じられた唇が、ゆっくりと開いた。

「ぼくは、まさとさんの遺伝子で作られてるから、輸血出来るんですね!」

 さえはそんなジルの表情をルームミラーで確かめていた。

 鏡の中でしょぼんとするジル。

 そんなジルの目の前で、まさとの服から何かが落ちた。

「?」

 救急車の床に落ちた何かに、ジルはそっと手を伸ばした。

 拾ってみると、それは携帯電話だった。


 手術台にはまさとが横たえられていた。

 その隣の部屋では、さえとジルの身体から血が抜かれていた。

 ジルがまさとの事を思い、蛍光灯のまぶしい天井を眺めている時、長崎はまさとの胸の具合を確かめて、刺さっているナイフを抜きにかかっていた。

 まさとの胸から抜かれるナイフ。

 すぐに助手が傷口を押さえたが、一瞬吹き出した血が長崎の顔にかかっていた。

 血しぶきのついたままの眼鏡で長崎はまさとの胸を切り開いた。

 肋骨を切り取り、心臓を見て息を呑んだ。

 ナイフが刺さって穴の開いた心臓。

 まだ脈はうっているけれど、血はどんどん心臓からあふれ、周囲に溜まっていた。

 長崎は指示で人工心臓の機械が手術台に寄せられる。

「心停止してないけど、一気にいくわよ!」

 長崎の合図にスタッフも頷いた。

 メスを受け取ると心臓の摘出にかかった。

 長崎は真剣な表情で手術にあたっていたが、一瞬手を止めるとため息をついた。


 ジルは輸血の為の血を採取した後、ぼんやりと診察室の待ち合い室にいた。

 時計が時を刻む音がやたらと大きく聞こえる部屋で、ジルは中間照明の部屋の壁を見つめていた。

 木目の壁を見ていると、その木目がまさととの暮らしを思い出させていた。

「まさとさん……どうなっちゃうんでしょう」

 ジルがつぶやくと、時計以外の音が聞こえたような気がした。

「?」

 ジルは耳を澄ませながら、パッと表情が明るくなった。

「ミサ?」

 ジルは診察室に入り込むと、ミサの横たわっている診察台に歩み寄った。

「ミサ?」

 ジルは診察台の上のミサに話かけたが、返事はなかった。

「ジル、こっちです」

「ほえ?」

「こっち」

 ジルは周囲を見回し、部屋の隅にあるコンピューター画面を覗き込んだ。

 しかし画面は真っ暗で、動いていないみたいだった。

「下です、下」

 そんな声にパソコンラックの下を覗き込んだ。

 ノートパソコンがちょっとだけ開いた状態になっていた。

「これ?」

「そうです」

 ジルはおそるおそるノートパソコンを持ち上げると、診察台のミサの横に置いた。

 ゆっくりとノートパソコンを開くと、この間見た画面がそこにあった。

「ミサ、つながってるの?」

「はい、今はこのコンピューターにいます」

「ふええ」

「画面を開いてもらって助かりました、カメラが見えなくて」

 ジルはノートパソコンの画面の周囲を見回し、横にあるカメラを覗いた。

「これ、カメラ?」

「はい、そうですよ」

 ジルが微笑んだにもかかわらず、ミサは、

「どうしたんですか、泣いてますね?」

「ううん、ぼく、笑ってるよ」

「ええ、でも、泣いた跡が見えます」

 言われてジルは眼鏡を外し、目をこすった。

 診察台の引き出しを見て、ティッシュを見つけると顔を拭った。

「ぼくは泣いてないもん!」

「ふふふ……」

 ミサが笑ってるのを聞いて、ジルも笑みを浮かべた。

「ウソをついでもダメだね」

「ジルは顔に出ますから」

「む~」

「何かあったんですか?」

「ううん、何も……」

「ウソはなしです」

「う……」

 ジルはちょっと考えて、

「じじうさが死んじゃって……」

「ジル……」

 ジルはムッとするとカメラを隠して、

「わんちゃんが死んじゃって……」

 画面のグラフが激しく動いた。

 部屋の監視カメラがジルの方を向いた。

「ジル、こっちから見れるんですよ」

「う……」

 ジルは天井から出ているカメラを見て渋い顔をした。

 椅子を持ってカメラの下に行ったけれど、椅子を踏み台にしても届かなかった。

 あきらめてジルが戻って来ると、またグラフが振れた。

「何があったんです?」

「ミサは知らなくていいんだよ」

 すると今度は画面にミサのCGが現れた。

「ジルは顔に出ますよ」

「う……」

「直接電子頭脳に聞いてもいいんです」

「ダメ!」

 画面のミサが怒った顔をした。

 ジルはちょっと考えてから、一度部屋を飛び出した。

 戻って来たジルの手には、昼間持ってきたケーキの箱。

「ほら、ケーキ、ミサの」

 言いながら、中からぐちゃぐちゃのケーキを取り出した。

「落しちゃって……」

 ジルは力なく笑いながら、画面のミサを見つめ、それから診察台の上のミサに目を向けた。

 一瞬ミサのCGが歪んだが、すぐに笑顔になると、

「ありがとう……でも、今はこんな身体で食べられない」

「じゃあ、ぼくが食べちゃう」

 ジルはぐちゃぐちゃになったケーキを食べながら、チラチラとミサのCGを見た。

「ミサには隠し事出来ないかな……」

「?」

「妹だし、一緒に住んでるし……家族だし」

「ですね、隠し事はなしです」

 ジルはケーキを全部食べてしまうと、

「まさとさんが、怪我したんだ」

「まさとさんが?」

「うん、胸に包丁が刺さってた」

 CGのミサの表情がこわばり、診察台の上のミサの身体も微かに動いた。

 ジルは診察台を見てドキドキしながら、

「ここまで救急車で運んだんだよ」

「大丈夫なんですか?」

「ここに運んだ時は、まだちょっとしゃべる事が出来たんだけど……」

「それで?」

「今は集中治療室って所」

「そう……」

 CGのミサは頷くと、

「長崎先生が手術したんですね?」

「うん、そうだよ」

 CGのミサは微笑んで言った。

「なら、大丈夫ですよ」

「そうかな……」

「だって、長崎先生は私やジルを作ったんですよ」

「でも、じじうさ死んじゃうし、わんちゃんも死んじゃうし……」

「長崎先生がダメなら、他のお医者さんでも助かりませんよ」

 ジルはCGのミサを見つめた。

 ノートパソコン付属のCCDカメラがジルを見つめている。

「だよね、先生がダメなら、誰もまさとさんを治せませんよね」

「そうですよ」

「それに、ミサも治してもらわないとね」

「そうです」

「じゃあ、ぼくはまさとさんを見て、ポチを見て帰ります~」

「はい」

 ジルはCGのミサに手を振って部屋を出た。

 画面のミサは出て行くジルを見て表情を曇らせていた。


 ジルはまず生まれたてのポチを見た。

 ポチはまだ目も開いていなくて、保育器の中で眠っているだけだ。

 でも、ジルが小窓を開けて中に手を入れると、その指に吸いついて来た。

 ジルはそれを見て笑顔になると、

「はやく大きくなって欲しいです~」

 言いながら、係りの人に一度頭を下げるとまさとのの元に向かった。

 集中治療室はまさと一人だった。

「ジル!」

 まさとは酸素マスクをしていたけれど、ジルを見つけると大きな声を上げた。

「まさとさん!」

 ベットに寝かされて、鼻や口に管を通されているまさと。

 しかしその表情は血色もよく、元気だった。

「まさとさん……」

 ジルは歩み寄り、まさとの手を握った。

 その手の温もりは、いつものまさとの手だった。

「まさとさん……死んじゃうかと思いました」

「ほら、元気だぞ」

「まさとさん!」

 ジルはまさとのベット際にしゃがみ込むと、青い瞳に涙が溜まった。

 ボロボロと涙を流し頬を汚すジル。

 まさとは笑みを浮かべると、

「泣くなよ、死んだんじゃないんだし」

「そうよ、ジル」

 ベットから動けないまさとの代わりに、長崎がジルの頬をハンカチで拭った。

「だってだって、胸に包丁が!」

「包丁?」

「ちっちゃい包丁」

 長崎が笑いながら、

「くだものナイフよ、くだものナイフ」

 長崎がジルの肩を揺すりながら言うのに、ベットのまさとは目を細めた。

 ジルはまさとの手を揉むように触り、感触を確かめていた。

 しかし、そんなまさとの表情から笑みが消えた。

 目を細めたまま、枕に頭を埋めてしまった。

「手術はすぐに済んだけど、消耗してるから……」

 長崎の言葉を聞いてジルは窓の外を見た。

 真っ暗な外の景色。

「今日は泊まっていきなさい」

「うん……」

「ジルの部屋……まだそのままだから」

 ジルは長崎の言葉に頷くと、集中治療室を出ていった。


 ジルが生まれて一年間を過ごした部屋。

 テレビにゲーム、ベットもそのままだった。

 ジルはベットに膝を抱えて座ると、真っ白な壁をじっと見つめた。

「ジル?」

 長崎がミサの身体を背負い、ノートパソコンを持って入って来た。

「ミサ……」

「ミサも一緒なら、夜もこわくないでしょう?」

 長崎はミサをカーペットの上に寝かせると、タオルケットを掛けた。

 それからノートパソコンを開くと、ミサの側に置いた。

 すぐにミサのCG画面が出てきて微笑んでくれた。

 ジルは体操座りのまま、じっと長崎を見上げた。

 そんなジルのしぐさに長崎がちょっと首を傾げると、

「先生……まさとさんは大丈夫なんですか?」

 ジルの言葉を聞いて、長崎はこわい顔になった。

「私の手術が失敗したっていうの?」

「……」

「あんなに元気になったのに!」

「いいえ……ちょっと聞いただけです」

 長崎は怒ったまま一度部屋を出て、すぐにトレイを持って戻って来た。

「はい、夕ごはん」

「……」

 ジルは受け取ると、先割れスプーンでスクランブルエッグをつついた。

「ごはん食べたら、もう寝なさい……もう遅いし」

「は……はい」

 ジルは頷くと、もそもそと食事を始めた。

 口に入れても味がぜんぜんしなかった。

 ジルはそれでも食事を平らげ、ベットに横になった。

 明かりを消して、ミサのノートパソコンを閉じて、天井を見上げた。

 藍色の空間に、この間までなら公園で襲ってきた連中が浮かんだ。

 でも、今日はベットに横になっているまさとの姿だけが、やたらとはっきり見えるような気がした。

(まさとさん……)

 時計の針は、長崎が出ていってから一回りしていた。

 ジルは目の下に隈を作って立ち上がった。

 まさとの事が、心配でしょうがなかった。


 集中治療室で、まさとはうとうとしながらも眠れないでいた。

 目の前には、長崎がパイプ椅子に座ってまさとを見つめていた。

「先生……」

「眠りたい?」

 長崎は口元に笑みを浮かべて言った。

 まさとはその言葉に何も言わずに首を傾げた。

 長崎はまさとにくだものナイフを見せて、

「これが刺さってたのよ、ちっちゃいけど、心臓にズブリとね」

「先生……何か食べるの、ない?」

「うん……そうねえ、リンゴがあるわ、これでいい?」

 長崎は返事を聞かずにリンゴの皮を剥き始めた。

 まさとはそんな長崎を眺めながら、

「それ、刺さってたナイフ」

「そうよ」

「先生……俺、助かるんですか?」

「……」

「正直なところ、教えてください」

 長崎は手を止めると、ベット脇のテーブルの引き出しをあさり始めた。

 紙皿を見つけると、まさとの布団の上に置いた。

「聞きたい?」

「……」

 長崎はリンゴを紙皿の上に載せながら、ため息を一つついた。

「心臓にナイフが刺さった……手術したけど、とても助かるものじゃなかった」

 まさとの喉仏が上下した。

 長崎は酸素マスクを外して、まさとの口にリンゴを入れようとした。

 しかしチューブが口に通してあって、とてもリンゴを噛めなかった。

 長崎はあきらめ、酸素マスクを元通りにした。

 そして手にしていたリンゴは自分で食べてしまった。

「俺のリンゴ……」

 まさとが笑いながら言うのを見て、長崎もクスクス笑ってから、

「死にかけてる人間らしくないわね」

「で、どうなの?」

「見た瞬間、ダメって思った」

「でも、生きてるけど……」

「心臓は穴が開いてるけど、まだ元気だった」

「……」

「ともかく心臓を摘出して、穴を塞いで、元に戻したの」

 まさとは小さく頷いて、

「穴、塞いだんですよね?」

「ええ、でも、心臓は他の臓器とは訳が違うわ、縫ってみたけど、検査したら死んだ心筋が血中に出てる」

「心臓……どんどん弱ってる?」

「そう、そんなところ」

 まさとはため息をつくと、

「ショックだった……こんなに元気だから」

「言わない方がよかった?」

「いいや……聞いてなかったら別の意味で、ね」

 まさとはちょっとだけ笑うと、

「もう、助からないんだ……」

「……」

「大学に……研究所にさえが入って来た時、すごくショックだった」

 まさとは語り始めた。

 かすれるような声で、さえとの競争に破れた事や、研究所を辞めた事を話した。

 辞めた後は、ここでの研究をきっぱり忘れる為にコンビニで働いた事。

 コンビニの店長は……コンビニ以外に祭の露店の仕事なんかもあって、それらに追われて忙しかった事。

 新しい仕事で、新しい人間関係に出会って、次第に研究所の事を忘れた事。

「でも、ジルが来たんだ」

 まさとは長崎をチラチラ見ながら、

「ジルが来てから、暮らしがジルを中心になって回り始めたんだ」

 まさとはジルとの暮らしを思い出しながらしゃべった。

 眼鏡が必要だった事。

 ペットを飼いたがった事。

 ケーキを分けてくれた事。

「ミサも来て、なんだかすごく楽しかった」

「そう……」

「ずっとずっと、こんな暮らしが続くと思ってた」

 まさとは言いながら、ゆっくりと手を伸ばした。

 さっきから長崎が一人でリンゴをつまんでいる手をつかまえて、

「一人で食べてる……」

 長崎はまさとの言葉に眉をひそめた。

「ここを辞めた時は、コンビニで働いている時は、もう死んでもいいって思った事が何度もあった」

「さえちゃんのせい?」

「負けたし」

 まさとは笑うと、

「でも、今は、死にたくない……」

 長崎はまさとの手を振り払い、リンゴを食べた。

 次の一個をつまもうとして、またまさとにつかまった。

「先生……」

 長崎はまさとの手を振り払うと、黙ってリンゴを口に運んだ。

 まさとの手は長崎の手を追い、つかまえると揺すった。

 長崎はそんなまさとのしぐさを無視するように口を動かしていたが、いきなり眼鏡を外して立ち上がり、まさとの酸素マスクを外し、唇に唇を押し付けた。

「ん!」

「!!」

 長崎が目を閉じているのに対し、まさとは目を見開いて白黒させていた。

 口移しで噛み砕かれたリンゴがまさとの口に入っていく。

 二人の舌は絡みあって、ゆっくりと離れた。

「点滴あるから、食べる事ないんだけどね」

「先生……」

 長崎はパイプ椅子に戻るとまさとの手を撫でながら、

「大分くんが研究所に来た時、私はちょうど手術の後だったの」

「手術?」

「子宮摘出、聞いた事あるでしょ?」

 まさとはそれに小さく頷いた。

「なんでしたっけ……医学部時代の友達とか聞いてます……」

「そうよ、すごく優秀でね……」

「……」

「私の身体にメスを入れて、失敗して、それっきりになっちゃったの」

「……」

「ショックを受けてる時に、大分くんが来たのよ」

「……」

「最初は全然気にならなかった、でも、今時研究に夢中で、机を枕に寝るなんてね」

 長崎が言うのに、まさとは恥ずかしくなって鼻の頭が赤くなった。

「ロボットの研究、一緒に出来てすごく嬉しかった」

 長崎の手がゆっくりと上げられ、まさとの布団を叩いた。

「でも、生きたい理由がジルにミサ……」

「……」

「なんだかすごく嫉妬した……大分くん全然わかってくれないし」

「どこでわかれと?」

「ジルは大分くんの遺伝子情報なのよ?」

「?」

「私は子宮ないから、大分くんの子供、産めないの……」

「だから……俺の遺伝子で、俺の電子頭脳で人工知能?」

「そう……電子頭脳も人工知能も大分くんの設計だけど、組んだのは私」

「そこまで考えてなかった」

「だから、大分くんには死んでもらいたくないの!」

「……」

 長崎はまさとに顔を寄せると、

「大分くんは、私の事、好き?」

 長崎はまさとの頬を撫でながら、

「私は、もうおばさんだけど……」

 まさとはそれを聞いて首を横に振った。

「そんな事は、歳、聞いた事ないけど……二十八、いや、二十六くらいかなって」

「三十すぎてるの……」

 長崎は笑みを浮かべるまさとを見て怒った。

「私の事が好きじゃないなら、もう微笑みかけないで……」

 まさとは一瞬真顔になって、すぐに微笑んだ。

「俺、先生が遅くまで研究に没頭しているの見て、すげー感動してた」

「……」

「一生懸命だと、惚れちゃうかな」

 まさとの言葉に長崎は真っ赤になった。

 長崎の手にまさとの手が重なり、弱いながらも握りしめた。

 まさとはベットのリクライニングスイッチを押し、ベットを起しながら、つかまえた長崎の手を思い切って引き寄せた。

「な?」

 まさとは酸素マスクを外すと、思い切って身体を起した。

 一瞬まさとと長崎の唇が触れ、すぐに離れた。

 二人はお互いの眼鏡がぶつかったのに頭を抱えていた。

「な、なんて事すんの!」

 長崎は額の所をさすりながら、まさとの顔に酸素マスクをはめた。

 まさとは咳込みながら、

「こういうのは男からって思ってたから」

「バカね……」

「映画みたいに格好よくは出来なかったな」

「あ、あのね……」

「うーん、それじゃあ……玲子」

 名前を呼ばれて長崎は真っ赤になると、立ち上り、注射を出した。

「大分くん、あなたを助けてあげる」

 注射が打たれたのに、まさとは痛みを感じなかった。

 すぐに目がクラクラし始める。

「ど、どうやって……」

 長崎はまさとの顔を覗き込みながら言った。

「ジルの心臓をもらうのよ!」

「なっ!」

 叫んだが、まさとの視界はくるくる回りながら闇に落ちていった。



aiz(r3b/r) for web(aiz012s.txt)

DCOx1(2017)

(C)2002,2017 KAS/SHK


「でも、ちょっと困ってます」

「うん?」

「まさとさんいないし、ミサも研究所だから……」

「そうだね……ジルも研究所にいたほうがいいよ」

「そうですね……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ