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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

リルリーディア

作者: 水都莱兎

リルリーディア。

それは、人を惑わすもの。

愛される存在。

小柄で可愛らしい。

精霊。

どれもこれも噂であり、その実態を知るものはいない。

ただ、ひとりを除いて……。


遠い昔、小さな白いお城があった。

そのお城ではある2二人の存在が最も重要だ。

なぜなら、この物語には欠かせないから。

その二人とは……。

ひとりの少年とひとりの少女。

少年の名前をセアフィル。

少女の名前をリルリーディア。

二人はは仲良しだった。

少年はお城に住んでいた。

少女はいつの間にかお城にいた。

だから、どこから来たのかはわからない。

リルリーディアに尋ねても笑みを浮かべるだけ。

また、不思議なこともあった。

リルリーディアはセアフィルだけにしか見えなかった。

お城の中を歩いてリルリーディアと話していたら、ひとりでしゃべっている可笑しな奴だと後から言われる。

セアフィルはひとりなんかじゃないと言うが、他の人たちは信じなかった。

それ以来、お城の中の人目がある場所では話さないようにしている。


リルリーディアはどこから来たのは言わなかったが、自分が何者なのかは教えてくれた。

自分は『天使』だと彼女は告白する。

白くて大きな翼も見せてくれた彼女をセアフィルは信じた。

セアフィルは真っ白くて綺麗な天使に一目惚れする。

それは、セアフィルが六歳の時のこと。


リルリーディアとセアフィルはお互いの仲を深めた。

話したり、遊んだりした。

時には、二人は何もせずに黙っているだけだった。

リルリーディアとセアフィルはそのような場でも心地よかった。

不快には感じなかったし、どちらも焦りのようなものはない。

彼らはお互いの存在がまるで自分と同じであるかのように相手の意思がわかった。

彼らは寄り添いあい、いつしか恋に落ちる。

そして、彼らは恋人になった。


問題はあった。

リルリーディアは誰にも見えない天使。

セアフィルだけにしか見えない天使。

セアフィルの世界はお城の中だけではなくなった。

他の人とも交流するようになったのだ。

セアフィルは好青年に成長し、女の子たちからモテるようになる。

誰も彼もがセアフィルに近づき、よくて恋人または遊び相手になって貰いたかった。

だから、セアフィルの周りには女の子が多かった。

しかし、セアフィルはそれらを相手にはしない。

ハッキリと断る。

「自分には恋人がいるから諦めて。 君たちになびくことは一切ないから。」

それを聞いても諦めない女の子は多かったが、いつしか彼から女の子が離れていき、つきまとわれることはなくなった。

それは、セアフィルの恋人が現れていないため。

セアフィルが言っている恋人の影はない。

セアフィルの恋人は死んだ人でその影を追っているかわいそうな人と噂されるようになった。

それを慰めようとした人たちは言われた。

「勘違いしないで。 あの子は生きているよ。」

では、なぜ現れないのか。

姿を見せないのか。

本当はそんな人物いないのではないか。

セアフィルが女の子たちから逃げるための口実ではないか。

それらの疑問が残る。

セアフィルに執心だったひとりが聞いた。

「生きているというなら何故現れないの? 私たちから逃げる口実ではなくって?」

その質問にセアフィルは答える。

「何を言っている? 彼女はいつも僕とともに歩いているではないか。あぁ、僕にしか見えない天使だから君たちが見えていないのは仕方のないことか。」

逆に女の人はセアフィルが何を言っているのかがわからない。

わかりたくない。

いつもセアフィルとともに歩いている人なんかいない。

女の人が受け入れられない事実。

セアフィルは狂っているのだと、自分の理想の人を追いかけて見えないものが見えるようになってしまったのだと女の人は思った。

女の人はセアフィルが恐怖の対象になった。

多くの人は人にないものを恐れる。

もし、九割が一般人で一割に特別な力を持った人がいたとしよう。

その一割を認め、受け入れられる人は少ないだろう。

絶対に認められないとは言わない。

時には、嫉妬しながらでも恐怖を持っていてもその力を受け入れられる人はいるだろう。

その一部には純粋な好意で受け入れられる人もいる。

でも、女の人は前者だ。

受け入れられず、恐怖に怯える。

こいつはなんだと本能が自分に訴えかける。

化け物だと狂った人だと。

それが、女の人が行き着いた答え。

女の人は脱兎のごとく逃げた。

セアフィルを振り向くことなく。

その日からセアフィルは可笑しな人間だと噂された。

人々が寄り付かなくなった。

セアフィル自身はリルリーディアにしか、興味がなかったために女の人が集まってこなくなり良かったと思っていた。


セアフィルはリルリーディアに好意を伝える。

「好きです。付き合ってください。」

自分にしか見えない天使に伝えた。

リルリーディアは何も答えなかった。

リルリーディアは何も言えなかった。

セアフィルはそんな彼女を見て、ダメかと落胆したが、リルリーディアはセアフィルの唇に自分の唇を重ね合わせる。

リルリーディアは言葉で好きということを言ってはいけなかった。

だから、キスをした。

セアフィルの頰は真っ赤に染まる。

「そっか。 君も僕と同じ気持ちで嬉しいよ。」

何がそうなのかはわからない。

それは二人の間でしか理解できないことだろう。

セアフィルはリルリーディアにキスをした。

触れるだけの優しいキスを……。

それが二人が恋人になった時の思い出。


そんな思い出も日常も変わり果てる。

セアフィルのことを恐怖した人々が彼を殺そうと城に集まっていた。

人々の間に恐怖心が広がり、安寧を得るにはセラフィル自身を殺すしかないと思い至ったのだろう。

人々は刃物を持ち、城の前に立った。

セラフィルを呼び出すが、セラフィルは出てこない。

しかし、何かの力か何もいないのに門の扉がが開いた。

天使は姿を現した。

その姿は少女ではなく、少年。

そう、セラフィルの姿だった。

人々はますます怯えた。

ただ、笑って立っているセラフィル(・・・・・)に。

人々は恐怖心が最高潮になったのか。

彼に刃物を突きつけ始めた。

しかし、刃物は彼を通り抜ける。

ますます人々は得体の知れないものに怯え、恐怖した。

震えが止まらない体で彼を刺し続けるのに彼には効かない。

刃物は通り抜けるだけ。

人々は一歩ずつ後ろに下がり、刃物を落として逃げる。

セラフィルという存在は人間ではない。

化け物だと確信して……。



城の地下。

リルリーディアしか知らない隠し部屋。

そこに、セアフィルは眠っていた。

心地よさそうに笑って。

リルリーディアはセアフィルを撫でる。

何度も何度も愛おしそうに手を伸ばした。

彼は息をしていなかった。


人々が来る前の日にセアフィルは殺されていた。

セアフィルに執心だった女の人に。

顔はやつれており、血色も悪い。

青白い顔色で髪もボサボサ。

耐えられなくなった恐怖心がセラフィルを殺す結果に行き着いたのだろう。

他の人々と同じように……。

女の人はセラフィルを刺し、叫び声をあげて逃げていった。

セアフィルは心臓から血を流して死んでいた。

リルリーディアは涙を流した。

セアフィルの心臓を元に戻し、血を止めた。

しかし、死んだ人間は生き返らない。

リルリーディアはセアフィルを住んでいるお城に連れて帰った。

セアフィルはリルリーディアに軽々と持ち上げられていた。

城の一室にセアフィルを横たえて何かをつぶやく。

そのつぶやき声はまるで歌っているようだった。

つぶやきが終わった後、リルリーディアはセアフィルにキスをした。

セアフィルの、身体は淡い光を放つ。

それが何を意味したのかはリルリーディアにしか分からない。

ただ、その後のリルリーディアはセアフィルを愛おしそうに見つめ続けていた。


リルリーディアは毎日セアフィルに会い、毎日セアフィルの姿になった。

セアフィルに寄り付かなかった人はあのような出来事があったから一層寄り付かなくなり、セアフィルを見ると逃げる。

セアフィルはただ笑みを浮かべているだけ。

しかし、ある日だけは可笑しかった。

人々は真っ青になり、倒れるものもいた。

それは、セアフィルがセアフィルを殺した女の人を真っ赤に染め、引きずっていたから。

その後、彼女がどうなったのかは分からない。

もっと悲惨な状態にされたのか、その状態のまま処理されたのか。

リルリーディアだけが知る事実だろう。


リルリーディアは門を閉めて、一生外に出ることはなかった。

セアフィルとともにいて、セアフィルに寄り添い見つめる。

セアフィルが返事することはない。

リルリーディアは声を発する。


「天使は人に好きを伝えることはできない。 伝えたら存在が消えてしまうから。私はセアフィルが好き。

今やっと言えるのに、悲しいね。セアフィルは私が消えてしまうと分かってくれたから私に好きという言葉を言わせなかった。私が示した態度で分かってくれたからそれはとても嬉しかったんだよ。私はセラフィルを守り続ける。何年も何十年も何百年も何千年先も守り続けるよ。あなたの魂が天に還るまで、私はセラフィルの身体と魂を守り続ける。」


魂のことはよく分からない。

でも、死んでしまったらすぐに魂は天に還るのではないのか。

いや、セラフィルがリルリーディアを放って置けないから留まったのかもしれない。

リルリーディアがセラフィルに話した言葉にセラフィルが笑っていたように見える。

動いていないのにおかしいね。

でも、世の中にはたくさんの不思議があるんだろう。

このお話もその一つ。


少年と少女は人間と天使でした。

少女は天使を好きになり、天使は少年を好きになりました。

少年と天使はいつしか恋に落ちて恋人になりました。

少年は女の人に好かれましたが、天使一筋でなびくことはありませんでした。

少年が言ったことが人々に恐怖をもたらしました。

特に少年に執着していた女の人は少年を殺してしまいました。

天使は少年の死体を綺麗にして優しく抱きとめ、お城に帰りました。

少年は天使にもう一度返事をすることはありませんでした。

天使は少年を守るために、少年の死体が腐らないように一生そのままであるようにしました。

天使は少年を殺した人を罰しました。

少年を殺した女の人に罰を与えたのです。

天使の大切なものを奪った女の人の、魂を奪い閉じ込めました。

暗くて一生出ることは叶わない場所に閉じ込めました。

天使は少年を守り続けました。

少年の体が消えていくまで守り続けました。

そしてまた……。


少女に近づく少年がいる。

少年がひとりの少女に話しかけた。

真っ白な肌の色に目は金色。

髪も金に輝き、唇はぷっくり膨らんでいる。

可憐な少女だ。

「ねぇ、ぼくとあそばない?」

少女は少年を見る。

黒い髪に黒い瞳。

肌の色は白っぽいが焼けてはいる。

優しく笑みを浮かべている唇。

愛する少年だと認識して……。

「私は天使なの。貴方にしか見えないよ。それでもいいなら遊ぶよ?」

少年はキョトンとした。

「ぼく、てんしってはじめてみたよ。 きれいなんだね。つばさはあるの? あるならみてみたい! あとは、ぼくにしかみえないってとくべつかんがしててうれしいや。てんしとあそべるきちょうなことをのがしたりできないよ。はやくあそぼう?」

少女は嬉しそうに笑った。

「翼はあるから後で見せてあげるね。私は貴方だけの天使。貴方が望むのなら私はなんだってするわよ。でも、私の望みもきっと貴方と同じね。」

「てんしののぞみってなに〜?」

少年は首をかしげる。

少女は愛おしそうに少年を見つめて答える。

「ふふっ……、今は貴方と遊ぶこと! それが私の望みだよ。貴方と同じでしょう?」

「うんっ! ぼくとおなじだっ!!」

少年と少女は顔を見合わせて笑った。

その後の少年と少女はきっと……。

二人の行く末がどうか幸せであるように願おう。


【天使の存在を知るのは世界でただ一人。天使は天使を見ることができるただ一人を愛し続ける。】

永遠に……。



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