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神子の父   作者: KURO
第1章 神子誕生
8/8

事後報告



天気は晴れやかなお日様が昇る日。

そんな日だからか、東の端にある小さな村は、いつもより、より一層活気づいている気がする。



しかし、まだ日も出始めた頃だというのにご苦労なことで。



村を通り抜けるための中心にある道をてくてく歩いていると、


「おはよう、レンさん!なんだ朝から仕事とは珍し……えぇっ!?」

「……」



頭に鉢巻きを巻き付けた、顔なじみの異世界の果物を売る八百屋のオッサンが俺を見て驚く。



どうしたのだろうか?



とろとろ歩くとまたしても、



「レンさん!いつ見てもいい男ね!またそんなボロ切れみたいな服着て、少しは身だしなみに気おつけ……あらまぁっ!」

「………」



今度はご近所さんのおばちゃんに驚かれた。



あれ?なんか、いつもと違うぞ?



すると今度は前から何かやって来た。



「旦那ー!おはようございますー!今日もじゃんじゃん稼ぎましょ………ぬおおお!?」

「………………」



こいつのリアクションが一番うるさい。


そう思いながら、俺--レン・カーツヴォルトは朝から骨身に響く頭痛に苛まれた。



説明しよう。何故、人の視線が嫌い、注目されるなどもってのほかを掲げる俺がこんなにも見られているわけを。



「パパ様ー!お髭が濃いいですね!」

「だ、旦那が……、幼児を連れて歩いてる!」

「変な言い方をするな!ナンド、お前減給な。

ルイオ、このちっこいオッサンはばっちぃから触っちゃ駄目だぞ」

「もしかして、ドワーフですか?初めて見ました!」



お察しの通りだ。俺の隣には、この村で噂される神子ことルイオ・カーツヴォルトがいるからである。なんでそんな事で驚くの?と思われるだろうが、ルイオと違って俺の村でのポジションは無口・鬼畜・偏屈野郎と最悪なもので通っている。



……別にそこまで嫌われ者ではないかな?実際さっきから話しかけられたりしてるし。けど俺ってそういうこと全部面倒臭くて無視したりしてるからあんまりよく思われてないんだよね。それでも声かけてくれる村人には感謝しなきゃいけないだろうけどさ。



まぁ話が脱線したが、つまり滅多に会話もしないコミュ障野郎が息子--それも神子--と仲良く、それも手まで繋いで歩いてるとすれば、皆驚くのも無理はない。ナンドなど驚きのあまり口をあんぐり開けたままフリーズしてしまっている。




しょうがない。正気に戻してやるかな。



「おい、ナンド。起きろー」



バチコーンっ!



「はっ!スミマセン。つい頭が異次元にぶっ飛んでったみたいで」

「安心しろ。俺はお前のことをいつもぶっ飛んでる危ないヤツだと思ってるから」

「もう隠し立てすることなく普通に酷いですぜ旦那……。いつものことですけど」


ナンドは何か呟いたようだが聞こえなかった。



「旦那、旦那」

「なんだよ…」



ナンドが小さく、ドワーフ特有の土に汚れた手で俺を手招きする。近くまで寄ると、身長の無いナンドの背にあわせて屈まなくてはならない。


するとナンドは俺の耳元で嬉しそうに呟いた。



「その様子じゃ、仲直り出来たみたいですな」

「……」



仲直り。

アレが本当に仲直り出来たというのだろうか?

結果的にはそうだと言える。でないと、ルイオとこうして二人並んで歩くことが叶わなかったのだから。けど俺はただ正直に思ったコトをルイオにぶつけただけだ。自分自身の我が儘を息子に伝えただけだ。




……いいや、そもそもナンドがアドバイスしてくれなかったら、謝る言葉もかけられなかったかもしれない。一人でうじうじ悩んで、怒って、薄暗いダンジョンに篭もりっぱなしだったかもしれない。



そんな事、万が一にもあってはならない。

意地でもならない。



なぜなら、俺は--神子の父なのだから。



だから胸を張ってこう応えた。



「ああ、仲直り出来た」

「ははっ、そいつは良かった」



口周りの真っ黒い髭を触りながら笑う。


俺はナンドのこういう所を気に入っている。ナンドは自分の事になるとてんでダメだが、いざ他人の事となると共に考えてくれる所が……。



「…………………」



……なにこれナンドお前俺の好感度上げにキテナイ?俺に好かれた所で別段何もないヨ?




だが、そこで期待を裏切ってくれるのがナンドだ!



「旦那?どうしたんですかい?……はっ、まさか!俺が頼りになりすぎて惚れちまったんですか!?すいやせん。俺、男に興味ないんで……」

「ンなわけネェだろ!!!」



コイツマジデイッテンノ!?


だったら本気でキルユーなんだけど!?



「パパ様、早く『ぎるど』に行きたいです!」

「そうだな。ほら行くぞナンド」

「へぇ!神子がうちのギルドに来るんですか!?そいつは大騒ぎだ!」



ぴょんぴょん飛び跳ねるルイオに手を引かれ、俺はナンドを連れ冒険者ギルドに向かった。





---そこに難敵が居座っているとも知らずに。



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