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神子の父   作者: KURO
第1章 神子誕生
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ルイオ・カーツヴォルト





ダンジョン攻略を終えたレンとナンドは、冒険者ギルドに戻り、近くにあった丸テーブルに腰掛けていた。


「旦那のオゴリだー!皆飲みまくれ!」

「「「オオオー!!!」」」

「………」


レンの目の前では、冒険者をやっている屈強な男達が酒を湯水のように飲みまくる。


帰ってきて早々アイテムを換金したらこれである。後でナンドにはキツいお仕置きをしなければならないと心に決め、今は他の者達と一緒に酒を煽る。


「旦那が背後に回り込んだ瞬間、ボスの背中にズドンとお見舞いしたわけよ!それから---」


ナンドが冒険者達の前でレンのボス攻略の事を熱く語っていた。

周りの冒険者達もその時の状況を想像し、静かに聞き入る。

そして話が終わればどんちゃん騒ぎだ。


「1人でボスを倒したのか!?流石!」

「本当ですね。レンさん程の冒険者はここにはいませんね」

「だろ!何たって旦那の子供は神子だからな!」


おー、と周囲がざわめく。


レンは面倒だと思い席を立った。


「俺はもう帰るぞ。金は払ってあるから後は好きにしろ」

「もう帰っちまうんですか?失礼します!」

「「「失礼します!!!」」」


酔ったナンドと冒険者達が一斉に頭を下げてレンを見送った。


レンが去ると、隣にいた冒険者がナンドに話しかける。


「なぁ、レンさん、ちょっと機嫌悪くなかったか?」

「えっ?ああ。もしかすると、子供の話が出したのがまずったのかもしれねぇな」

「子供?レンさんの?」

「俺も詳しいことは分かんねぇんだけどよ。レンさん、子供との仲が悪いらしい」

「何でまた?」

「だから、俺も詳しいことは知らないんだって。ただ何となくそんな気がするだけなんだが……」


ナンドとレンはパーティーを組んでまる2年が経っている。戦闘専門のレンに荷物持ちのナンド。一緒に冒険を共にするも、二人の間ではあまり深く話し合う事が無かった。


そもそも関わろうとも、レンの方から触れてくれるなという感じがした。


これからはもっと踏み込んだ話をして、仕事仲間としてではなく一人の友人として接せれないだろうか、とナンドが思案していると、


「ま、レンさんの事だから心配ないだろ。おーい!こっち酒追加ー!」

「あっ!馬鹿てめぇ!これ以上飲んだら俺が旦那に仕置き食らう事になるだろーが!」

「払うのはコイツで!」

自分(てめぇ)で払えバカヤロー!俺は絶対払わないからな!」


もう既にお仕置き確定のナンドは結局、運ばれる酒の前で欲に負け、他のものと同じく泥酔するまで飲みまくるのだった。




------





俺の息子は神子だ。

神子と言われても分からないだろうから説明しよう。


神子とは---神の子だ。


………。

これでは分からないか。


てか、神子について説明すること自体が難しい。

その言葉は一般的によく使うものではないにしろ、元々存在していて実在するものなのだ。


りんごってなに?に対して果物だよ、と答えるように神子も神の子なのだ。


特徴を挙げるなら、先天的に人間には無い特別な能力を持つ凄い人族。


そんな凄い神子が俺の息子だ。


俺の妻が残した大切な忘れ形見。

そして俺にとって唯一無二の宝物。



「ただいま」

「あっ!パパ様!」


俺の足元に駆け寄りくっ付いてくる人族の男の子。

澄んだ青い瞳に小さなお鼻。綺麗に短く切り揃えた金色の髪。その体躯はまだ細くて華奢だが、疲れてはいるが自分より身体の大きい父を倒す勢いのある突進力は将来性を感じさせてくれる。


可愛らしく、愛らしく、どこからどう見ても美男子でイケメンな人族の男の子が俺の息子---ルイオ・カーツヴォルトだ。


俺の顔を見ようと足にくっ付いたまま背伸びしている姿に笑いそうになったが、そこは無表情に徹して顔に掛かったローブを外し視線を合わせるため床に膝をついた。


「パパ様、パパ様!」

「どうした?」

「あのですね!修道院の司祭様に魔法を教えてもらいました!」

「……」


司祭様というのは近くにある古ぼけた教会で牧師みたいな格好をした奴だろう。毎日のように有りもしない神を祈っては望んで貧困な日々を過ごしているじめじめとした薄暗い悲しい奴。


いやいや、司祭などどうでもいい。

それよりルイオはなんて言った?


「魔法?」

「はい!魔法とは案外、簡単なものですね!それに司祭様が僕は素晴らしい聖職者に成れると仰って下さいました!」

「そうか。なら、魔法は禁止する」

「えっ?」


喜びに満ちた表情から一変。ルイオは口をぽかんと開けたまま、おずおずと言った感じで訊いてきた。


「禁止とは、使用する事がでしょうか?」

「そうだ」

「何故ですか!?」


目から涙を流し、必死に抵抗しようとする意志を感じた。


胸が痛い。

どうして息子にこんな顔を向けられなくてはならないのか。


けれど俺はルイオの為、頑として譲らなかった。


「その司祭とやらに魔法を教えてもらうのもやめろ」

「そ、そんな……っ」


ルイオは袖で顔を拭うと、ばっと自分の部屋に引きこもってしまった。


「……」


閉める寸前、俺を睨んだ気がしたが、気のせいだろう。


俺は引き締められる胸の傷みを癒すため、静かにベッドに横たわった。



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