3-2
「なんとか、データの復元は出来ないのか?! 」
「今、調べています! 」
イブラエラ・ジャパンの現場はパニックだ。数人がかりであらゆる手を尽くす。
「おい! あれを見ろ! 」
慌ただしく皆が走り回る中、誰かが突然声を上げた。
「ARか?! 」
「ホーリーシェパード……? いや、違う! なんだ?! あれは?! 」
――WOOOOOOOOO!!!!――
何かがそこにいた。巨大な犬の様にも見えるが、そうではない。なぜなら、それには一つの胴体に三つの首があったのだ。三メートルはあるだろうか――。その異形の者はヨダレを垂らしながら狂った様に叫ぶと、周囲に炎を吐き、強靭な前足でオフィス内の機器を次々に破壊した。三つの首は斧のような牙でケーブルを喰いちぎり、デスクを噛み砕き飲み込んだ。その場の人達は逃げまどい倒れていく。そいつが大きな雄叫びを上げると、空気が震え、フロアのガラスが吹き飛んだ。そして、そいつは滅茶苦茶になったその場から忽然と姿を消した――。
フロアの煙は廊下にまで広がり、防犯ベルが鳴り響いていた――。
「オーマイガッ!――なんデスカ?! この有様は?! 」
側近と共に社に戻ったライアンは、その場の光景に声を上げた。倒れている社員の一人を揺さぶり起こす。
「ヘイ! しっかりするのデス! いったい何があったというのデス?! 」
「ケ、ケルベロスが……、シェパードが本物のケルベロスに……、ウウッ――」
社員は朦朧とした様子で訴えると、再び気を失った。
「なんデスって?! ヘイ?! ヘイユー?! 」
揺すっても、男はグッタリしたまま目を開けない。
諦めてライアンは立ち上がり、何か考え込む様に顎に手をやると
(まさか――――実体化……)と呟いた。
「――いいデスカ? 今日の事はメディアには秘密にしてくだサイ。決して明るみにしてはいけまセン。いいデスネ?! 」
ライアンは険しい表情で側近にそう指示をした。