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2-3

 男は出されたコーヒーを一口だけ飲んだ後、腕組みをして、時折り頷いては何やらブツブツと呟きながらARを体感していた。

「グレート、なかなか素晴らしいデ~ス。これをユーが一人で作ったのデスカ? ミスターハネヤマ」と男はリクの方に顔を向けた。

「え? はあ、そうですけど……。――って、俺の事知ってるんですか? 」

 名前を呼ばれたリクは驚いて尋ね返した。

「ヨーク知ッテマース。17才で世界ハッカーコンテストで優勝した伝説の天才ホワイトハッカー『リク・ハネヤマ』」

 眼鏡の奥の淡い青褐色の瞳が真っ直ぐにリクを捕らえている。

「あなたはいったい……? 」

「オー、失礼しまシタ」表情が穏やかになり、男は立ち上がり「マイネームイズ――ライアン・ログスベルトっていいマ~ス。ナイス・トゥー・ミートゥ・ユー 」とリクに向かって右手を差し出した。

 どこかで聞いた名前だと思いながら、差し出された手と握手を交わそうとリクも右手を差し出す。

「おっと! ソーリー。握手できまセ~ン」

 ライアンと名乗った男は差し出していた手を引っ込めた。すかされたリクは思わずつんのめる。

 ライアンは肩をすぼめ、両手を耳の辺りで広げ、「ソーリー、ソーリー。握手は、ある人の為に取ってあるのデ~ス。ハッハッハ」と、首を傾けながら日本人から見たらオーバーなアクションで笑った。

「――はあ、そうですか……」

 リクは少々あっけにとられながら生返事を返した。

 バボとネネは厨房から首だけ出してその様子を見ている。

(――変な外人――リクがのまれてる……)

(――昨夜から変なヤツばっかりね――)

 二匹は声を潜めて会話した。


「しかし、アキハバラ、グッドデスネ~。ずっと憧れてまシタ。マンガ、アニメ、ジャパニーズアイドル、ヘンタイ、どれも最高デ~ス」


(――最高って、一つなんか変なの混ざってるし!――)

(――リク、そこは突っ込みなさいよ!――)

 ライアンの言葉に二匹は反応してリクを見るが、リクは普通にニコニコと営業スマイルしながら「日本へは?」とライアンに尋ねた。

「オー、ビジネスで来まシタ。ずっと来たかったんデスガ……仕事がベリー忙しくて――。毎日アメリカで日本のムービーサイトばかり見ていまシタ。この店の事もインターネットで知りまシタ。素晴らしい店デス! ARとジャパニーズカルチャーの融合、ファンタスティックデ~ス。これからも期待してマ~ス。ARメイドとかARアニメとかARアイドルとかARヘンタイとか、エトセトラ」

 ライアンは嬉しそうにリクの肩を叩きながら、そう語った。

「いやあ、ありがとうございます」と、リクは照れている。


(――だから、変なの混ざってるって! ――)

再び遠巻きにつっこむバボとネネ。


「おっと、そろそろ行かねばなりまセ~ン。面白かったデス」

 ライアンは会計をした後、ゴキゲンな様子で歌を口ずさみ始めた。それに合わせて両人差し指をリズミカルに頭の上に左右に付き上げるヲタ芸の身振りをしながら、店の出口に向かう。

(――げッ! 私達の新曲?!――)

 ネネが目を丸くして驚く。

 ライアンが歌ったのはネネ達グループの新曲なのだ。

「ありがとうございました」

 リクが挨拶しながら出口の扉を開けると、ライアンは歌をピタリと止めた。クルリとリクの方に振り返る。

「ミスターハネヤマ。いつかまた勝負がしたいデ~ス。今度は負けませんデ~ス」

 ライアンはリクにそう言うと、再びヲタ芸をしながら帰っていった。

「え? 勝負? なんの事だろ?」

 リクは首をかしげながらライアンを見送った。

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