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「ねぇここんとこ絵美、木本君のこと避けてない?」
さすが咲、ばれたか……。
今日は21日、約束の1ヶ月まであと一週間。ついでにいうと夏休みは明後日から。
私が学校を休んだ日から極力ばれないように秀悟を避けてきたんだけど……咲にはバレバレだったみたいだ。
「なんだって、そんな事してるのよ」
「うぅ~だってなんか秀悟といると調子狂うというか、最近おかしいんだもん」
そういって机に頭を乗せる私。じぃーっと見てくる咲。
「なーんだ絵美は木本君のこと好きになっちゃって恥ずかしがってるだけか」
「そのことなんだけど……好きなのかどうかなんてわからない。秀悟がいい人だっていうのはこの3週間でよーくわかったけれども」
そもそも恋愛なんて私はしたくないんだから。
この間両親に電話した。ママに電話口で泣かれた時はどうしようかと思った。
二人とも秀悟が言ってたみたいに私のことを心配してくれてたみたいだった。
電話かけてくれてうれしいって言ってくれた。
パパの今の奥さんに食事の心配までされた時はさすがにびっくりした。
彩さん(パパの奥さん)は私がずっと独り暮らしをしていることを心配していたらしい。
いっしょに暮らすことも考えてって言われた。一度も会ったこと無いのに……。
私は自分で思っていたよりも周りの人に愛されているみたいだ。
その、電話をしたときにいけないことかもしれないと思ったんだけど、聞いてみた。
ママのことは嫌いかどうか、パパのことは嫌いなのか。
二人とも、結婚は上手く行かなかったけど今でも好きだって言ってた。
お互い今は一番ではないけれど、嫌いになんてなれないって。
それを聞いて私の恋愛に関する偏見は無くなった。良いものかもしれないとさえ思う。
だけど今までしたこと無いもん。好きかどうかなんて私は知らないしわからない。
眉間にしわ寄せて考えてる私の頭をよしよしってなでながら咲が言った。
「素直にならないとだめだよ」って。
22日、今日は終業式。
学校が終わって帰るとき、秀悟からメールが来た。
『話があるからのこってて』
なんだろう?
午前中で終わりだし、今日はどの部も休みらしくあっという間にひとがいなくなって、放課後の教室に残ったのは私と秀悟だけだった。
久しぶりの二人きりの状況で妙にどきどきする。顔に出てませんように。
「で、話ってなぁに?」
なんか今日の秀悟は元気がないかも。今日は話が終わったらいっしょにお昼ご飯たべたいなぁ。
こないだ咲と行ったお店のランチおいしかったしまた行きたいな。
……ダメダメ、秀悟とは距離を置いてるんだった。
「絵美この間から俺のことさけてるよね」
ぎくっ秀悟にもバレてたのか……
「さ、避けてなんかないよ」
「いや、避けてるよ。こうやって話すのだってなんか久しぶりじゃん」
確かにここ数日秀悟と話をしてなかった。だってなんだか焦って話せなくなってしまうんだもの。
目が合うだけでも動悸がするし。
でもそんなこと言えないし、言い返せなくてうつむいてしまった。
「やっぱり、迷惑だったよな……。ごめん1ヶ月もつきあわせて。あと少し残ってるけど明日から夏休みだし、今日で終わりにしよう、いままでありがとう」
そう言い残して秀悟は教室を出て行ってしまった。
私が秀悟の言葉を理解できたのは1人残された後しばらくたってから。
ショックでなにも考えられない中浮かんだのは咲の言葉。
『素直にならないとだめだよ』
それももう遅すぎるかも
夏休みになって、秀悟にあれ以来会ってない。
もうどうすればいいのかわからない。1ヶ月、私はしてもらうばかりだったから。
家に咲が遊びに来たときに秀悟に言われたことを話した。
なんだかメールや電話ではとても話すことなんかできなかったから。
改めて口にすると現実味がまして今まで涙なんて出なかったのに止まらなくなった。
「絵美、この間私が言ったこと覚えてる?」
うなずく。
「素直になれって」
「そう。絵美が今泣いてるのは木本君と別れたくないからだよね?」
そう聞かれてそうだって気づく。
私はいつも自分のことがわからないんだ。人に言われてから気づくことばかり。
秀悟のことも、パパとママのことも。
咲は続ける。
「この間、絵美は木本君のことが好きなのかわからないって言ってたじゃない? じゃぁそう言えばいいのよ。好きなのかまだわからないけど別れたくないって」
「そんなこと言えないよ……自分勝手すぎるよ」
「だって最初に言われたって言ったじゃない。木本君は絵美が木本君のこと好きじゃなくても良いって言ったんでしょ? 大丈夫よ。世の中には惚れた弱みっていう言葉があるぐらいだし。絵美はいつも我慢しすぎるから……こんなのわがままでもなんでもないんだからね」
咲に言われるとそんな気がしてくる。
咲は凄いと思う。いつも私は元気をもらってばかりだ。
「だから、もう一回ちゃんと連絡してみなさいよ」
「うん……ありがとう。咲も何かあったら私に言ってね。絶対力になるから。」
咲はにっこり笑った。
27日の夜、メールした。
『明日の夕方学校の前の公園にきてください』