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共感求ム。  作者: imaginary
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秘密基地の話。


 私が『無軌道台風』として巷を騒がせていたと同時期、私は『師匠』とも呼ばれていた。それは、冒険が大好きだった当時の私が友達に「冒険のためには勇気が必要。そのための修行をしよう」と持ちかけたのが発端である。


 ここで、各修行場を述べる。一つ目は私の自宅付近にかまえている給水等。二つ目は横断道路の途上に位置する橋の下。三つ目は川べりの雑草地帯。四つ目は林の中にそびえる無人小屋である。


 今回は無人小屋の話を進めることにする。


 横断道路を途中で左にそれ、細い脇道を進んで行くと右手に小さな区画内で雑木林がある。その雑木林の中に入り込むと、小さな区画と思っていたのと裏腹に、意外にも奥行きがあり、奥へ奥へと進んで行くと開けた道が姿を現す。その道をまた少し歩くと無人小屋がたたずんでいる。


 初めは雑木林探検をしていたのだが、無人小屋に気付いたときは思わず「これだ!」と手を打っていた。その時は友達のダイ君と二人で探検していたのだが、ダイ君のほうも目を輝かせていた。


「ここを秘密基地にしよう!」


 二人は同じ意見だった。前々から秘密基地を作りたいと考えていたので、無人小屋との出会いは絶好の機会となった。


 無人小屋は、廃墟同然でいつ崩れ落ちてもおかしくないような小屋だったが、戸締りはされていた。入り口は鋼鉄の扉だし、入れるような穴は開いていないし、窓も全て閉まっていた。しかし、小さな穴は至る所に開いていたので、私達は交互にその穴から部屋の中を確認した。


 小屋というよりは木造の倉庫のようなものであった。カレージのように工具が壁に掛けられて、床には分解された扇風機やテレビなどがほこりをかぶり置いてある。


 しかし、入れないのなら意味はない。私とダイ君は小屋の前で唸るばかりであった。しかし、突然にダイ君がひらめいた。


「壁一枚でできてるんだから、壁の下に穴を掘ってそこをくぐれば良いんじゃない?」


 しかし、壁は地面の中にまで入り込んでいて、その方法は不毛な努力に終わった。


 ダイ君が必死に穴掘り作業を続けているなか、私は小屋の壁に取り付けられた排水管をつたって屋根に登った。少しばかりダイ君を驚かせようと屋根からダイ君を見下ろして「ダーイ君」と呼んだ。すると、こちらを向いたダイ君は歓声の声を上げて「俺も登る」と言った。


 しばらくしてダイ君も屋根に登ってきて、「な、壁のぼりの修行役にたってでしょ?」「まあ、確かに」「これからは師匠の修行には従いたまえ」「了解です」などと言い合い、屋根で遊んだ。


 しかし、私がよそ見をしていると、がごん、と大きな音が耳に入ってきた。何事かと振り返るとダイ君が屋根にはまっていた。屋根の板が抜けて、ダイ君がそこにはまっていたのである。


「たすけて……!」


 ダイ君が手を伸ばすので、私は駆け寄ってダイ君を引き上げた。すると、ダイ君がはさまっていた穴からは幸運にもはしごが見えていた。


「危ないよ。落ちたら死ぬってば」


「師匠をなめるんじゃない」


 心配するダイ君を背中に私はその穴からはしごを伝って下りた。


「すげえ! 下りれた! 中すげえ! 臭いけど」


 私が興奮していると「俺も行きたい」とダイ君がいったので、私は窓の鍵を開けた。屋根から下りたダイ君もそこから中に入った。


 こうして、二人が見つけた秘密基地は他のメンバーである『しおっち』と『たいし』にも伝えられることになり、これからは鍵を開けた窓から出入りすることになた。以後、秘密基地の取り壊しが行われるまでこの話しは続く。


 私達は他の誰がつくった秘密基地より自分達の基地が一番優れていると信じていたし、多分それは秘密基地を持っていた全員が思うことではないかと思う。


共感求ム。

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