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共感求ム。  作者: imaginary
16/19

アンドレの逆襲の話。


 この話は私が小学校五年生で、転校先の学校にも慣れてきた頃のことである。


 私は『無軌道台風』という異名を負ぶっていたが、学校ではさぞかし落ち着いたようすで雨に打たれた子犬のような奴だと周りから言われていた。しかし、やはり『無軌道台風』と呼ばれた私が子犬で小学校生活を締めるのは潔しとしない。そろそろひと吹きしてやろうかな。などと企てていた時期のことである。


 怠惰広報委員であった私は女子にちょっかいを出していた。


 ただ、あまり直結に言うと読者様から見た私のイメージが悪くなり、せっかくの小説達が廃れてしまう一方であるので、ちょっかいの内容を私による判断から構成・編集・さらなる編集・さらにさらなる編集を加えたうえでここに記す。


 一番多かったちょっかいは勝手に作ったあだ名である。

名前というのは一つの生命につけられた貴いものであり、その人がその人である証しであり、決して汚してはいけないものである。それに関わらず私は「怪油魔」や「ひょろっぱ」に始まり、「アンドレ」から「休む松ノ木」――これはあだ名じゃないけど――などのあだ名を作っては公言し、ことごとく名前を汚した。


 そんな不毛で無益なことをして誰も得をする者はおらず、かえって女子に煙たがれるだけであった。しかし、当時の私には不名誉こそが最大の名誉であり、『勝手にあだ名付け』は無軌道台風の名をさらに轟かせる所業となった。


 これは私にあだ名をつけられて唇を噛み締めていた『アンドレ』が突如に起こした逆襲なるものである。


 あれは、放課後のグラウンドであった。


 私はしおっちと遊具で遊んでいたが、そこにアンドレとひょろっぱがやってきた。

 アンドレとはかの有名なプロレスラーのことをさし、彼女が平均に比べ長身の女性であったからつけたあだ名であった。


 私としおっちは案の定アンドレに「やーい、アンドレがきた!」などと言ってちょっかいを出した。


 すると、いつもは黙って睨んでくるのに今回は「また馬鹿にしてえ」となぜか嬉しそうに愛想を振りまいた。おそらく何か得体の知れない病原菌に身体を蝕まれているのだと思ったが、この話は『知らぬ間に恋のキューピット』へと続く。


 しかし、その時の私は、何だかちょっかいを出したのに軽くあしらわれてちょっかいを出したという気がせず、気分が悪くなった。


 ゆえに、ここには記せないような酷いことまで口に出してしまったのである。しかし、あえて記すなら「ブサイク」だとか「まぬけ」だったわけである。もしも、当時の私がそこにいたのなら四階の窓から放り投げたいぐらいなのだが、その時はやんちゃな盛りだったのであろう。


 すると、愛想が良かったはずの彼女は突然に涙目になるとグラウンドの砂を私に向かって投げつけてきたのである。投げられた砂は顔に掛かり、髪に掛かり、服のなかに掛かり、くつのなかに掛かった。しかも、本気で投げつけるので肌に痛い。


 私はそこでやっと反省したのかもしれない。


 ただ、その時の私には彼女が怒った理由が分からなかった。しかし、のちに分かることになる。やっぱりそれは『知らぬ間に恋のキューピット』の話を見ないと分からない。何だか『知らぬ間に恋のキューピット』を見ないと理解できないような話で申し訳ない。


 長くなってしまったので、今回の共感求む話は一文に任せる。


 髪の中に砂が入っている感触というのは、はなはだ気持ち悪い。


 以上である。


 共感求ム。


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