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第39話 騎士団対抗リレーはなんでもあり? ルリアミサイル発射!

「姫様、正気ですか!? 王女殿下が辺境騎士団の代走など……! 国家の品位に関わりますぞ!」


 演習場に響き渡るのは、本部庶務課団長ゼクスの悲痛な叫びだ。眼鏡をガタガタ震わせ今にも泡を吹いて倒れそうな勢いだが、当の本人であるステア王女は涼しげな顔。

 むしろ「わくわくが止まりませんわ!」と言わんばかりのキラキラした笑顔で屈伸運動をはじめている。


「あら、ゼクス。わたくしは特別騎士団長でもありますのよ? 有事の際には真っ先に駆けつけるのが騎士の矜持。リレーも有事も同じですわ♪」


「どこが同じなのですかぁああああ!」


 が、そんなゼクスの声は……かき消された。

 王女が飛び入り参加すると聞いたまわりの騎士たちが、拳を突き出してステア王女コールをはじめたのだ。ゼクスの叫びは完全スルーされた。

 もうぶっちゃけみんな興奮状態だ。まあ年一のお祭りなんだから、こんなサプライズもアリかなと思うことにしよう。

 ていうかこの王女さまが言う事聞くようにも思えない。


 そんな王女が俺の方を向き、いたずらっぽくウインクする。


「さあ、タケオさん! わたくしにしっかりバトンを繋いでくださいましね♡」


「……は、はい。善処します」


 俺は手にもつ鉢巻を握りしめた。

 こうなっちまったもんはしょうがない。なら、おっさんがやれることをやるか。




 ◇◇◇




「位置について、よーい……」


 ドン! という乾いた音が鳴り響く。スタートの合図である火球が上空に打ち出された。

 と同時に屈強な騎士たちが我先にと地を蹴り、雪崩のような地響きがこだまする。


 俺たちグルト辺境騎士団第一走者、ルリアはというと……。


「ちょ、ルリアなにやってんのさ!」


 まだスタートラインにいた。


 スリーナの激が飛ぶ中で、ルリアは精霊召喚魔法をつかってサラを呼びだしたようだ。


 そのサラを両腕に抱えて進行方向とは逆を向くルリア。

 トレードマークのアホ毛をピンとして、声をあげる。


「サラちゃん! 火炎放射! 一点集中!」


「キュイイイッ!」


 ルリアに抱かれたサラマンダーのサラが、その小さな口から猛烈な勢いで炎を噴射した。



 ―――ぎゅん!!



 すさまじい勢いでルリアが発射される。

 まるでちっこいアホ毛弾丸だ。


 後続集団を一瞬でごぼう抜きにしたルリアミサイルだが……


「ひゃああっ! ガクんガクんしますぅうう!」


 サラの火力が全く安定してないのか……推進力が右に左にと暴れ、ルリアの小さな体が激しく揺れる。

 さらに後ろむいて爆進するもんだから、他選手に当たりまくってピンポン玉のようにポンポン弾かれて余計に軌道が迷走しているな。


 そしてなによりも……


 激しく揺れすぎてルリアのドデかい胸元がえらいことになっている。……おい、騎士たちの目が釘付けじゃないか。競技に集中しろよ、野郎ども。


 色んな意味でとんでもないな、ルリアミサイル……。


 ちなみにこのリレーは何でもありだ。剣術だろうが魔法だろうが体術だろうがオーケー。有事の際に国の根幹を背負う騎士たちゆえ、実戦に近いサバイバル形式が伝統なのだそうだ。まあ手加減はむろんするが。


 なので。


「―――疾風衝撃魔法(ウィンドブラスト)!」

「―――衝撃剣技(ウェーブブレード)!」


 当然ながら、相手もなんでもありだ。

 不安定なブースト状態で風系統攻撃の妨害。ルリアはコースを大きく外れてしまった。


「いたた……さ、サラちゃんは戻って! ディーネちゃん、わたしの周りにだけ水流を出して!」


 ルリアが杖を振ると、魔法陣から水の精霊ウンディーネが現れた。


「ん……りょーかい。いく」


 ドォオオオオッ!


「ひゃ、ちょ、勢い激しいぃいいいい!」


 ディーネの口から吐き出された暴力的な水流。ルリアはその波に乗り走るというより流される形でトラックを突き進む。

 だが、水流を巧みにコースに沿わせているため結果的にめちゃくちゃ速い。


 先頭集団を巻き込みながら、流されていくルリア。


「おお、なんだかんだで先頭グループまできた」

「やるじゃん、ルリア」


 さらにルリアが通り過ぎた後はベチョベチョのぬかるみと化していた。


「うおっ!?」

「あぶな! ぎゃん!」


 後続のランナーたちが次々と足を取られ、泥の中に突っ込んでいく。

 こりゃ泥んこレースみたいになってるぞ。


「ふわぁ~~スリーナさ~~ん」

「ルリア、そんままでいい!」


 水流と共に流れてきたルリアから器用にバトンを受け取った第2走者のスリーナが、軽快なジャンプで泥まみれのコースをピョンピョン飛んでいく。


「まあ~~ルリアさんもスリーナさんもすごいですわ~~♪」


 王女が手を叩いて喜んでいる。

 第1走の時点で、すでに従来のリレーじゃなくなっているんだが。


 俺はびじょびしょになったルリアを引き起こし、スポーツドリンクを差し出した。


「ふぁ~~つかれました~~クピクピ」


 スポドリをがぶ飲みするルリアを横に、スリーナへ視線を向ける。


 彼女は場慣れしているのか、ぬかるんだ地面をまるで水面を跳ねる石のように器用にかつ高速で駆け抜けていく。


「スリーナのやつ、全然転ばんな……すげぇ」

「ふふ、タケオさん。あれは風魔法を使ってますわね」

「ええ? そんなんですか」


 全然わからん。


 ていうかぶっちゃけ魔法使っているように見えんのだが、おっさんには。


「足元に限定的に風の魔法を付与してますわ。だから転ばないんですの」


 え? そうなん?

 あ、たしかになんか足元にモヤっとした感じの揺らぎがあるような……


「つまり風の靴を履いているようなもんですか」

「はい! すっごく高度な魔法使用ですわ♪」


 スリーナのやつ、なんか凄い事をやっているんだな。

 てか、それを瞬時に見抜いたこの王女様もすごくない?


「ふふ、わたくしもお飾りにならないよう多少は訓練してますのよ」


 そんな俺の疑問をくみ取ったかかのように、にっこり微笑むステア王女。

 王族おそるべし……


 だが、他団も負けてはいない。

 火魔法で瞬時に地面を乾燥させて足場を作る者、重力魔法で体を浮かせて重力を無視する者。そして、ただデタラメな足腰の強さだけで泥を弾き飛ばし、怒涛の勢いで追い上げてくるごつい強騎士。


 さすが騎士団の代表たちだ。

 悪路に怯む様子が微塵もない。


「タケ! まかせたし!」


 息を切らしながらスレーナが俺の待つラインに飛び込んできた。さあ、俺の番だ。


 バトンを受け取り、全力で地を蹴る。


 てカッコいい言い方してみたけど。普通のおっさんの走りである。

 なんとか先頭集団を維持して、ステア王女にバトンを渡すことができれば御の字だ。


 ……が、すぐに異変に気づいた。

 俺の進路を塞ぐように、三人ほどの騎士が露骨に距離を詰めてくる。装備の紋章を見るに、本部のそれもゼクスの息がかかった部下たちだ。


「……悪いな、タケオ。俺たちの上司は君の不運を望んでいるんだ」


 なるほど、順位など眼中になく妨害メインか。


 年一イベントで白けたことしやがって。


 だが……


 ひとつ忘れてるぞおまえら。


 このレースはなんでもありってことをな。


 俺は自身の魔力を練り始めた。


【読者のみなさまへ】


第39話まで読んで頂きありがとうございます!

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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