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第16話 剣姫VS元剣聖!? いや、もうすぐ定時だからおっさん現代フードだしますね

「あらあら~シュトちゃんたらぁ~おいたですか~ひさしぶりにお仕置きかしら~~♪」


 フルノラ団長が腰の剣を優雅に抜く。

 俺は剣の素人だがそんなおっさんでも分かるぐらい、その所作にジワリと凄みを感じる。


「……ふん」


 そんな団長に対して、剣姫シュトリアーナが冷たく笑った。

 彼女もまた、鞘から剣を抜く。

 剣姫の中身は横に置いておくとして、その強さは本物だ。本部の演習とかに同行した際に、毎回この人は人間?って疑問がわくぐらいヤバイ。


「こんな辺境のぬるま湯につかっているあなたに、もはやその力はあるまい。そのだらしない身体……鍛錬を怠ったようだな」


 鍛錬不足からそんなムチムチボディになるかわからんが、そんな剣姫の挑発に……

 フルノラ団長の目つきが変わった。


 次の瞬間。


 ―――シャッ

 ―――シャッ


 ……ん?


「え、ちょっと」


 ―――シャッ

 ―――シャッ


 一瞬で視界から2人が消えた。

 床が揺れ、壁が悲鳴を上げ、空気が震える。

 そして―――剣閃が、音が、気配が、そのすべてが同時に押し寄せてきた。


 なんてカッコいい感じで言ってみたが、ようするにおっさんにはなんも見えない。

 影っぽい何かがシャッシャッいうとる。


「な、なんだこれ……」


 俺はその場でよくわからんシャッシャッに棒立ちしている。


「あらぁ~~シュトちゃんってばさらに鋭くビンビンになってるじゃない~♡」

「ふん、さすが元剣聖……うでは鈍ってなかったか」


 はい? 


 ええぇえ、このムチムチ団長……剣聖だったんかい。


 しかも、剣姫シュトリアーナの師匠。

 つまりとんでもない二人ってことか。


 剣の道を目指す騎士なら、心の奥底から震える場面なのだろう。

 普通の騎士団員ならば、この頂を見て震えないやつなどいないのかもしれない。


 わるい。


 おっさんあんま興味ないや。


 むろん騎士団員(おもに内勤騎士)としての仕事はきっちりする。が、剣に対してぶっちゃけ思い入れとか言われてもないからなぁ。俺はここでのんびりスローライフ勤務を楽しみたいんだ。

 もうすぐ定時だし、ここでシャッシャッやられても困るんだよな。


 ていうか2人とも、なんでこんな辺境ゆるゆる騎士団にいるんだ。むしろそっちの方が気になる。

 あんたらの力を発揮する場所はここじゃないだろ。


 ―――すたっ!

 ―――すたっ!


 2人の騎士が動きを止めた。


「あらあら~~ここまで成長しているなんてぇ~嬉しいわぁ~~」

「ふぅ……一撃で決められない」


 再び対峙する剣姫シュトリアーナとフルノラ団長(元剣聖)。

 2人は互いに鋭い視線を交差させる。


 さて、白熱しているところ悪いんだが……

 止まってくれたことで、狙いが正確に付けられる。


 俺は魔力を練って、唯一の能力を発動した。



「―――現代フード召喚×現代フード召喚!!」



「あふぁっ♡」

「んむっ!?」


 2人の動きが止まる。

 むろん俺の剣で止めたわけではない。そもそも俺の剣は竹光やし。


 俺がやったのは、現代フード2個同時召喚―――そう俺は剣姫の口にハンバーガーをフルノラ団長の口にシュークリームを直接召喚したのだ。


 どうだ、大好物の直接投入は?


「タケオちゃんったらぁ~直接お口に~~♡」

「た、タケオぉお~! 無理やりはダメぇ~~♡」


 よし、言い方はアレだが効果てきめんだったようだな。


 だが、こんなもんじゃ終わらせないぜ。

 いい機会だ。徹底的に叩き込んでやる。


「――――――現代フード連続召喚!!」


 ぽぽぽんっと、ハンバーガーが剣姫の口に突っ込まれていく。


 ―――ハンバーガー!

 ―――チーズバーガー!

 ―――テリヤキバーガー!


「んはぁあ~~いっぱいきた~~♡」


 まだまだぁ~~さらにぃいい~

 ―――ダブルバーガー!

 ―――チーズダブルバーガー!

 ―――テリヤキダブルバーガー!


「ダブルうぅうう~~おいしいぃい♡」


 剣姫シュトリアーナは剣をほっぽり出して、ハンバーガーを夢中でほおばりまくる。

 よし、お次は団長だな。


「覚悟してもらおうか……フルノラ団長」

「あらあぁ~ん、ワタシはシュトちゃんみたいに簡単に堕ちないわよぉ~」


 ほう……面白い。


「ならば元剣聖とやらの力を……見せてもらおうか!

 ――――――現代フード連続召喚!!」


 団長に召喚したのは、もちろん彼女がお気に入りのシュークリームだ。


 ―――シュークリーム(生クリーム)!

 ―――シュークリーム(カスタード)!

 ―――シュークリーム(チョコレート)!


「はふぅんん♡ なにこれさからえないいぃいい~~♡」


 よしダメ押しだ、こっちもダブルいってみるか。

 色香は消せないが、食欲で覆いかぶせてやる。


 ―――ダブルクリーム(カスタード×生クリーム)!

 ―――ダブルクリーム(カスタード×チョコ)!

 ―――ダブルクリーム(マロン×生クリーム)!


「やぁああああ~~あふぅ~も、もうダメぇ~~♡」


 ふむ、こんなもんか。


「んはぁ~~♡♡」

「あふぅ……♡♡」


 二人とも完全に戦闘不能だ。

 こうして冷酷氷剣姫シュトリアーナとムチムチ団長(元剣聖)フルノラは、さらに深く堕ちていった。


「……ふぅ」


 なんか俺も腹減っちゃったよ。

 ハンバーガーとシュークリーム食べよう~~っと。


 おお、やっぱダブルバーガーいけるな! このずっしりした感じが最高!

 シュークリームも久々に食ったがよい。カスタードとホイップクリームのダブルとか美味すぎるわ。


 俺が満足して食べ終わった頃には、団長たちも正気に戻っていた。


「タケオちゃん♡」

「タ、タケオ……」


 フルノラ団長が囁き、剣姫も顔を赤くする。


「これは二人だけの、ひ・み・つ♡」

「今日のことは絶対に言うな。約束を破ったら……今日の部分だけ脳を斬る」


 こうして俺は剣姫に加えて、ムチムチ団長(元剣聖)へのうまうま担当という秘密の仕事が増えたのであった。


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