第8話 D面-2
>「星屑13号のスターダストチャンネル」は間もなく始まります
>今しばらくお待ちください
こう書かれたテロップが誰もいないステージの後ろのスクリーンのトップに出ている。
ステージ前には様々なアバターの姿があって、アバターから書き込まれたコメントがテロップの下のスクリーンに映し出され流れていく。
: 間に合った
: 13号も出世したよな
: 最初は個人勢だったのに
: あっという間に人気になって
: スカウトされて企業勢の仲間入り
: 帰宅途中だけどログイン
: なんか後方腕組彼氏面がいる
: 言いたいことは理解できる
: 今じゃあトップ配信者の1人だもんな
: 中身は変わらない
: ゲームをしていたらニッコニコ
: イベントシナリオには号泣
: 時々尊死して配信強制停止
: ライブチケットの抽選に外れたら
: 悔しさでのたうち回って
: 当たったら超歓喜
: からの尊死=配信強制停止
: だけどライブの当選当たらなくなった
: 5周年記念だから仕方なくね
: ツアーで6カ所回んだぜ
: 東京、大阪、札幌、福岡、名古屋、東京
: アリーナだけでなくドームも追加されたけど
: チケットの枚数は増えているはずだけど
: 1つも当たらなかった
: 当たらないと思ったら札幌当選<福岡県民
: 地方在住ゆえ最初から配信オンリー
: 13号も全公演応募して当選は1つだけ
: ツアーファイナルだからいいんじゃん
: そろそろ始まるな
: 待機
: 全裸待機
テロップが消える。
「イェーイ! 星屑13号のスターダストチャンネル、はっじまるよー! みんなー! 見てるー?」
ハイテンションなアバターがステージ上に現れ、両腕を上げ下げしている。
: 乙
: 見てる
: 見てるよー
「いつものように最初に確認! このチャンネルはゲーム『ココロスター』を勝手に応援するチャンネルです。ここでのやりとりについて、『ココロスター』の運営さんに突撃したり迷惑をかけたりしないようにお願いします。そして、今日は5thライブツアーファイナルの感想回だー! 観たか? 聞いたか?」
: みた
: きいた
: 神
: 今回も神
「そ! 今回もチョー神! さすが5周年記念のファイナル!」
: 期待を裏切らない
: 期待以上
: 始まりから全力全開
: 会場全体に鳥の羽が降ってきた
「そうそう! 最初はステージの上になんか降ってきたなー、って思ったら、風が吹いて、会場全体に白い羽がぶわーって」
: あれは凄かった
: リアル会場の良さ
: 羽もリアル?
: 違う立体映像
: 透けてない!
: 本物と見間違えた
: 配信もすごかったぞ
: 羽がドアップで映されて
: そこからぶわーっ
「え? そうなん? 配信はまだ見てない!」
: 配信もみないと損
「うわわ! もうツアー始まってから配信の演出もちょくちょく独自の入れてきてたけど、もしかしてファイナルはもっと凄かった?」
: すごかった
: もうすごすぎ
: 全力全開
: 今回のライブの演出って全部立体映像?
: イエス!
: その通り!
「うわ、やっぱりそうなんだ。もう凄かったよねー。お花畑が広がったと思えば、宇宙に飛び出したり、月に行ったり、と思えば、そこは深海だったり。どこまでがステージなのか、どこまでが会場なのか、もう分からなかったくらい!」
: マジ凄かった
: あれは圧巻
: リアリティありすぎ
「あと、美羽姉がガラスの壁を蹴破るところも凄かった! ガシャーンってステージ一面にガラスの破片が飛び散って」
: マジリアルだった
: 歌詞とセットで震えた
: 感動で涙がでた
: これまでのライブでも時々使われていたけど、ファイナルは別格だった
「そうそう! リミッター全部取っ払ってしまった感じ!」
: あれが普通と思うなよ
: あれを見たら他のライブが満足できなくなる
「らしいね。ボクは『ココロスター』以外のリアルイベントは行っていないけど、ボクの友達が別のに行ったら、言葉は悪いけど、しょぼかったって言ってた。やっぱ、お金の使い方がすごいのかね?」
: それはある
: それよりもノウハウの蓄積
: 使い込んできて使い慣れてきた
: そのうちキャラも再現してほしい
: あれだけライブに立体映像使っているのココロスターだけ
「ふーん。そうなんだ。よし! これ終わったらリピートで配信見るぞ!」
: 見る
: リピートで見る
: 徹夜で見る
「徹夜は明日に響くぞー。ま、分かるけど。ボクも今晩は徹夜だ!」
: 明日は休み
: 有給
: ワイ仕事
: 早番
: 出張
「お仕事の人、お疲れ様~。頑張って~。よし、話をライブの始まりに戻そう。で、羽が消えたら、ステージに光のカーテンが下りているの」
: そうそう
: ワクワク
: 期待が高まった
「そう! ドキドキした。これから始まるんだって。そのカーテンが消えたら」
: 消えたら
: 消えたら
「美羽姉、江莉姉たち12人のキャストさんたちが勢揃い!」
: 鳥肌立った
: サブイボ立った
: 歓声凄かった
: 同志たちも最初から全力全開
「ほんと、そう! ボクも全力で叫んでた!」
: ワイも
: 配信の前で叫んでた
: 新人さんもいた
「いたね、いたね、新人さん。初々しさがあったね。そして、最初の曲が『リ・スタート』」
: ド定番
: 奇はてらわなかった
「そうだよねー。もう定番って感じだよねー。でも、今回は新人さんの美船さんと天堂さんが入ったから、歌割りが変わっていて、新鮮だった」
: だった
: 新人さんもソロあり
: 初々しかった
「初々しかったねー。一生懸命さが溢れていて。それが一転、あんなことになるなんて……」
: ww
: あんなことw
: 草生える
: 次の曲のことだよな
「でもさ、でもさ。『リ・スタート』が終わった後の舞台袖に下がる先輩たちの新人さんたちへのハイタッチ。最後はそれぞれ美羽姉、江莉姉がギュッと抱きしめんの。あれはエモい! エモすぎる!!」
: エモかった
: あれだけでご飯三杯いける
「次、頑張れってエール送ってるの! 次が新人さんたちのデビュー曲の『エターナルツインズ』だったから。本当に温かいよね、優しいよね。それなのに、運営は本っ当に鬼畜!」
: ww
: 本当そう
「そう思うよね! 新人さんにあんな激ムズな曲、歌わせるなんて。本っ当に申し訳ないんだけど、イベントで先に実装されたこの曲を初めて聞いた時は、なんて言ったらいいのかな……歌に対して新人さんたちのスキルが追いついていない感じがした」
: ワイも
: 思った
: あれはムズイ
: 暗黒期の運営が戻ってきた気がした
「でもさ! あの子たち本当にすごいよね! あそこまで仕上げてきた、なんて言葉では言い表せない。本ッ当に自分のものにしてきたよ! もうね、もうね! 頭サビだけでボクの、ボクたちの心が奪われた感じ!」
: 永久保存
: あのボーカルのパワフルさよ
: ダンスもキレッキレ
: 別人が歌っているかと思った
: ワイらのハートを持っていかれた
「この『エターナルツインズ』だけで満足感一杯だったけど、今日のライブは畳みかけてくるの! 次が美羽ねえ&江莉ねえのデュオ曲『ラストアタック』」
: きた!
: きた! きた!
: ラスボス降臨
: セトリの妙よ
「『エターナルツインズ』だけで、同志たちは最高に盛り上がっていたのに、『ラストアタック』のイントロが始まっただけで、さらに盛り上がる! ボクのテンションも振り切れた! しかもさ、美羽姉と江莉姉がステージ上にバンッって下から飛び出してくるの! もうあの瞬間、全力全開で叫んでいた! ああ! もう、思い出しただけでテンションが上がってきた! みんなー、今日はこの調子で語りつくすぞー!! ……あ。待った。バイタルアラートがなってる。尊死したら配信が強制停止しちゃうから。ごめん、ちょっと深呼吸して、落ち着ける」