第17話 D面-5
「はーい。医師もさじを投げた心星病の最末期重症患者が通りますよー。
というわけで、『ココロスター』10周年、おめでとうございます!!
そして、1ファンとして言わせてください! キャストの皆様、運営、制作にたずさわるスタッフの皆様、関係者の皆様、この作品を作ってくれて、本当に本当にありがとうございます!
実は、この案件、10周年を祝うレターを送ってくれ、っていう案件をシンクスフィア様からいただいた時は『マジか!』と思いましたよ。
スタッフさんから教えられた時、部屋の内と外を探し回りましたもん。『ドッキリでした』って書かれたボードがないか。
本当に本物でした。ありがとうございます。
ちなみに、この収録も10テイク目か20テイク目か、わかりません! もう数えるの止めました!
恐らく、ウチのスタッフさんが一番出来が良いものを送ってくれていると思います。
でも、心星病患者としては、今年はドキドキです。本当にドキドキです。
『ココロスター』に殺されるんではないかって。
だって、先日のシークレットライブは本気で心臓が止まりましたよ。
今年は10周年を控えているからおとなしくしてくれるだろうって思ってたんですよ。
確かに、前半はそうでしたね。いや、追加シナリオイベントは大盛況でした。エモくてエモくて、エモすぎでした!
周年ライブも最高でした。あの素晴らしい演出! もう、何百回とKS-1でリピートさせていただきました。
でも、最後にあんな特大の爆弾を、アメジスト様とガーネット様を現実に降臨させるなんていう特大の爆弾を炸裂させるなんて、卑怯ですよ。卑怯!
見てください。このバイタルアラートの警告の数。
少し思い出しただけでアラートが鳴るんです!
配信会社から警告通知も来ましたよ。「これ以上アラートがなったら、サービスの提供を停止します。病院に行ってください」って。
実際、病院に行ったら、お医者さんにはさじを投げられました。「あなたに付ける薬はないです」。
本当に言われたんですよ。
まあ、言われた人は私だけではないようですが。
キャスリンも同じこと言われたってケラケラ笑いながらSNSに書き込んでいましたよね。
世界中の人が似たようなこと言われたみたいです。
世界経済も一瞬止まったみたいですけど、問題ないですね。
今では「ココロスター」は世界言語です。
プレイするために日本語の勉強を始める人が激増しているらしいです。
日本に遊びに来る外人さんたちの話す日本語が上手いのなんのって。
他にも、アメリカのどこかの州では「ココロスター」のおかげで犯罪率が低下して治安が良くなったらしいです。
嘘か本当かは分からないですが、どこかの紛争地帯では敵同士が心星病に感染したために停戦になったとか。聖地巡礼するために平和になったとか。
こんなことをバカ真面目に研究して論文を発表した人がいるみたいですね。
10年前と比べると世界の暴力が30%減ったらしいです。
ボクからすると、本当? なにそれ? ですが、とにかく、平和が一番です! そして、アメジスト様が仰っていたように、みんながHappyになったら問題なし。
その中心に「ココロスター」があるなら、ボクたちは何も言うことなしです。
振り返ってみれば、3rdライブで確変したのが全ての始まりだったんでしょうか。
5周年の時に悠希ちゃんと咲良ちゃんが加入して、6年目の時にあったキャスリンのカミングアウトから始まった怒涛のコラボ展開と、7thライブでの共演。本当に濃密な時間でしたね。
体験イベントで、ガーネット様とお話しできた時間はボクにとってかけがえのない一生の宝物です。
あ! そうそう。ドキュメンタリー映画の世界興行収入300億円突破もおめでとうございます。
とにかく、なにが言いたいのかと言いますと、10周年記念イベントはなんでも来やがれです。
必ず、生き残ってみせます。
そして、15周年、20周年、果ては100周年も堪能してみせます。
……あ! 通知が来た。え? 10周年記念イベントの内容、一部公開?
新タイトルリリース決定? ジャンルは世界初のVRMMO?
うわお! 将来、フルダイブ型にも進化予定?
え? 専用ヘッドマウントディスプレイKS-1を持っている人にはベータテスト優先参加権?
……ぅっしゃああ!! 持ってるボク、勝ち組決定!
えーと、他には……あ、これ、やるの? これもやるの? ちょっと待って! え? これも?
ぇぇえええーー!? やっちゃうの、これも?
あ、準備しなきゃ! 準備しなきゃ!
忘れずにベータテストの申込のスタンバイもしなきゃ! ……あ!
そういうわけで、『ココロスター』10周年、おめでとうございます!
以上、星屑13号でした!」
本編はここまでとなります。
お読みいただき本当にありがとうございます。
続く外伝は第3話の最後で消えた和希の話になります。本編とはかかわりが薄く、蛇足と言われるかもしれませんが、こちらも楽しんでいただけると嬉しく思います。