case7.その赤って本当に赤?
新参ながら隣国まで名が轟くブラン商会。
そんなブラン商会の会長は船で遠く離れた国を目指していた。
会長にはごく親しい者にしか明かしていない秘密がある。
『異世界転生者』、会長の知識はこの世界で有利に働くことが多い。
しかし逆もある。
「青い蛸はないよなぁ」
会長にとっての異世界は前世の常識で測れないことが多い。
先ほども空飛ぶ青い蛸に襲われ撃退した。
そして船員たちはそれを躊躇いなく食べた。
「船乗りさんは別としてうちの子まで食べるなんてさ…」
ここで会長はふと不安に駆られた。
会長は猫の特徴を持った種族だ。
そして会長が”うちの子”と呼ぶのは犬の特徴をもつ種族の双子の子供。
「犬とか猫って『赤』を認識できないよね…」
犬は青が一番認識しやすい、だから躊躇いなく食べたのか?
自分は色を認識できるが、子供たちはどうだ?
常識の押し付けは良くない。
分かっていても会長は確かめずにはいられなかった。
「二人ともちょっときてー」
会長は双子に手招きする。
そしてパタパタと駆け寄る子供たちを撫でながら質問した。
「ねぇ、赤と言えば何を思い浮かべる?」
「「りんご!」」
良かった。
そう思ったが、すぐにその考えは打ち消された。
自分の知らない赤を赤と認識していたら?
確かめようがない、それでも何故か会長は質問を止められなかった。
青は?
緑は?
黄は?
次々と聞いた。
きっと会長は同じ景色を観れていなかったら?
そう考えると、不安で悲しかったのだろう。
幾つもの色を聞き、最後に会長は尋ねる。
「白と言えば?」
双子は顔を見合わせて笑顔で会長の髪を指さした。
会長の髪色は晴れた日の雲の色。
「そっか…そうだよね」
会長は自分が愚かだったと反省した。
愛しい子供たちの白は自分、それは会長の心を満たした。
今まで考えていた不安が吹き飛とんだ会長は我が子を抱きしめる。
例え観てる景色の色彩が違ったから何だと言うのだ。
「もし見てる色が違っても、一緒にいる事実は変わらないよね」




