監禁
ユキノさん視点に戻ります。
いま私はふわふわとした夢心地に包まれて、ああ私は寝てるんだなとなんとなく自覚しているんだけど…何か凄く違和感を感じる。
まるで…そう…なんの遠慮もなく身体を…というか胸をもみくちゃにされている感覚。
まさかとは思うけれど私これ…寝ているところを襲われてない?それはいくらなんでもまずので起きなければと意を決してまだ働いていない頭を無理やり叩き起こしてひとりでに閉じようとする瞼をこじ開けた。
するとやはり私の上に人影がまたがっていて、その状態で私の両胸を一心不乱に揉んでいる。
「…なに…?」
「あ、起きましたか」
その声を聴いた瞬間、まだ眠ろうとしていた私の頭は一気に覚醒した。
ずっと聞きたかった声…その主はナナちゃんだった。
「ナナちゃん…!」
「わっ」
勢いをつけて起き上がり、ナナちゃんの小さな身体を抱きしめる。
動いた途端にお腹にズキッとした痛みがはしったし全身が今にもバラバラになりそうなほど痛い…だけどそんな事より今目の前にナナちゃんがいるという事の方が重要だ。
「よかった…無事だったんだね…!」
「ええはい。ユキノさんが助けてくれたんじゃないですか」
「私が…?うぅ…っ」
頭が痛い。
そういえば自分が今まで何をしていたのかよく思い出せない…ナナちゃんを探していたのは間違いないのだとは思うけれど…ところどころ記憶が靄がかかっているかのように不明瞭だ。
しかしナナちゃんがこうして私の手元にいる…それで十分だ。
「あの…大丈夫ですか?もしかしてまだお腹痛いですか?」
「あ…大丈夫だよ。うん大丈夫…だからもう少しこのまま」
ナナちゃんを抱きしめたまま身体を倒して眠っていたベッドに埋まる。
もしかしてナナちゃん苦しいかな?と少しだけ心配になったけれど、もぞもぞと身体を動かして私の胸を触っているので問題はないと思う、たぶん。
それにしても寝心地のいいベッドだ…ナナちゃん効果もあるかもしれないけれどふわふわで素晴らしい…いやちょっと待って、どこここ。
明らかに私の家じゃない。
こんなベッドないし、よくよく観察してみるとどこかの高級な宿の様に部屋が広い。
私は一体どこで眠っていたの…?
「あの…ナナちゃん」
「はい?」
「ここ何処か分かる…?」
「いえ、私もさっき起きたばかりなので」
「そう、だよね…」
これは少しまずいかもしれない。
いい方向に考えれば誰かが私たちを保護してくれたのかもしれないけれど、悪い方に考えれば…。
こういうのは変に楽観視せずに常に最悪の事態を想定して動くべきだ。
はやくここから抜け出そう…そうは思うけれどふわふわベッド+抱き枕状態のナナちゃんの誘惑に抗う事が非常に難しい。
どうすれば…。
「あのユキノさん」
馬鹿な事を考えていたせいで妙にどもった返事をしてしまったけれど、ナナちゃんは気にした様子もなく何かを考えているような神妙な顔で口を開いた。
「え、あ、はい。なんでしょう」
「ユキノさんって…その…お姉さんとかいますか?」
一瞬何を聞かれているのか分からなかった。
その言葉が私あまりにも関係がないというかなじみがないというか…人生で初めて聞かれた質問だと思うし…。
「お姉さんって…姉って事だよね?いないと思うけど…一人っ子だよ私」
「そうですか…」
ナナちゃんは何故だか納得がいっていないようだったけれど…何なんだろう?え?いるの私?お姉ちゃん。
いや絶対にいないはずだ。
お母さんと暮らしていた幼いころに私とお母さん以外の人が家で一緒に暮らしていた記憶なんてない。
ただ当然だけど幼いころにお母さんとそんな話をするはずがないので、隠し子なんかがいた可能性は否定できない…。
うーん…。
「というかどうしたの?突然そんな事…」
「あぁいえ…あまり気にしないでください」
気になるよ。
まぁしかしナナちゃんが気にしないでと言うのなら気にしない。
なんかそういうお年頃なんだろう、うんうん。
「じゃない!早くここから逃げないと」
「逃げるんですか?」
「逃げるよ!だってここがどこかも分からな…」
言葉を全部言い切る前に、コンコンと部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
一歩遅かった…。
体を再び起こして、ナナちゃんを背に庇いながら立ち上がる。
どうする?どうするべき?
コンコンともう一度扉がノックされた。
どちらにせよここから逃げるのなら扉を通るしかない…ならば。
「…はい」
意を決して返事をすると扉が軽い音をたてながらゆっくりと開かれて…そして…。
「あぁ~ユキノさんようやく起きたんですねぇ~そこそこ心配していましたよぉ」
のんびりとして間延びのした独特な喋り方と共にアトラさんが顔をのぞかせた。
「アトラさん…?」
「ええそうですぅ~頭脳明晰の奇々怪々、可憐激動でおなじみのアトラですぅ」
「初めて聞いたしそんな肩書がおなじみでいいの」
可憐激動ってなんだ。
…ともかく出てきたのがアトラさんで安心したけれど、よく考えると何も安心できない。
なぜなら彼女は犯罪組織の幹部だからです。
「ともかく無事に目覚めたみたいでよかったですねぇ。一応ご飯持ってきたのですけど食べれそうですかぁ?」
「あぁうん…あのアトラさん」
「はぁい?」
「ここってもしかして…」
「あぁ~ここは我々アラクネスートの拠点ですぅ」
私は思わず頭を抱えてしまったのだった。
刺すか揉むかのスキンシップ。




