欠けた心
明日はお休みです。
次回は金曜日までに投稿します。
ユキノさんがどれくらい正気じゃないかの回になります。
頭がまるで脳内で鐘を鳴らし続けられているかのように痛い。
耳元で金属をこすり合わされ続けているような不快な耳鳴りが止まない。
まるで全身に鉛を流し込まれたかのように体中が重い。
何もかもがおかしくて、今にでも私の全部が壊れてしまいそう。
なんでこんなに体調が悪いのか…寝てないから?食べてないから?ずっと動き続けているから?
違う。
その理由は大切なものが欠けてしまっているから。
私が私であるがために必要なものが欠けてしまっているから。
私を…私のままでいいんだと許してくれた…私のすることを笑顔で受け止めてくれていたナナちゃんがなぜか私の元にいない。
どうして?なんで?おかしいじゃない、だって…ナナちゃんは私のものなのに。
私にはナナちゃんが必要だしナナちゃんには私が必要で…そんな私たちが側にいないなんておかしいよね。
「どこ…ナナちゃんどこに行ったの…?」
耳鳴りの外でカラカラ…といった音が聞こえる。
これは何の音?あぁ…私が引きずっているボロボロの剣が地面をこする音だ。
なんでこんなものを私は持っているの?
「──────────!!!!!」
「あ…?」
今度はなんだかとてもうるさい音がして不出来な人形のように動かしづらい首で音のした方向を見る。
そこには真っ黒な霧のようなもので全身を覆われた動物のような物…魔物がいた。
なんで魔物がこんなところに?あぁ違う…私は魔物を探していたんだ…あれ?ちがうよ?私はナナちゃんを探して…。
「──────────!!!!!」
「うるさいなぁ…」
そういえば魔物を殺すとナナちゃんのいるところがわかるんだったかな?…そうだそうだ。
魔物を殺してきた道をたどれば何とかって誰か言っていたよね。
そっかぁ~じゃあ殺そう。
そうしないと私のナナちゃんのところに行けないのだから。
「──────────!!!!!」
魔物が振り上げた大きな爪を躱して、手に持った剣でその顔を抉る。
どうやら魔物というものは新陳代謝?等の身体の機能は全て止まっているらしく、どれだけ傷つけても思ったより血は出ない。
身体があんまり汚れないからその点はとても助かるよね。
誰かがナナちゃんに会うのに身体を綺麗にしていた方がいいみたいなことを言っていた気がする。
誰だっけ?まぁいいや。
とにかく魔物を殺さないと…。
ぐちゃぐちゃと目につく場所すべてをミンチにしていく。
こいつらって死んだのかどうか判別がしにくいのだけど、全身をぐずぐずのミンチに変えれば動かなくはなるからね。
あぁでも最初に聞いておかないと…。
「ねえナナちゃんはどこ?あなたはどこから来たの?」
「─────…───、──…」
魔物は何も言わずにか細く息を漏らしているだけだ。
あれ…魔物って喋れないのだっけ…?そりゃそうだ、だって動物だもの。
あれ?動物って喋れないんだっけ…?まぁどうでもいいや。
よく見たら足跡が残ってるし、そこを辿っていけばいいよね。
「ナナちゃん…今行くよ」
重たくいう事を聞いてくれない脚に力を入れて一歩ずつ足跡をたどっていくと石でできた家のようなものがある場所にたどり着いた。
目立たなせないためか高さはそこまでないけれど、横や奥には広そうな建物…。
「あぁ~…なんだっけ…そうだ…ナナちゃんがいる場所…」
カカナツラとかいうナナちゃんを連れて行った人たちのいる場所…どうすればいいんだっけ…。
何かをしなくちゃいけない気がするんだけど…頭痛がひどくてまともな考え事が出来ない。
えっとえっと…とりあえず中に入ろう。
重い扉を押し開いて一歩中踏み入るとたくさんの人の気配。
「人…そっかぁ人かぁ…」
何をすればいいのか分かんないけど…人がいるのなら話は早い。
殺せばいいんだ。
だって人は殺せば死ぬから。
そうすればナナちゃんのいるところに行けるよね?
「ん?なんだお前。見ない顔だが所属は…」
曲がり角で出会った人が何かを言っていたけれど耳鳴りがひどくて何も聞こえない。
だから首を刎ねた。
流石に剣がボロボロで切れ味が悪くなってきたから新しい武器を拾わないとなぁ…何かないかなぁ…あ、スノーホワイトは?
いやいやスノーホワイトはダメだよ…だってあれは…。
あれ?なんでダメなんだっけ…?わからない。
わかんないのなら使ってもいい?でもなんでかダメな気はしているわけで…あぁ~頭が痛くて何もわらないぃぃ~。
「待て!待って!も、目的は何だ!なんでこんなことをするんだ!」
「あ…え…?」
考え事をしていたら誰かが私の足元で尻もちをついていた。
何だろうこの人?
「頼む…お願いだから目的を言ってくれ!怖いんだ…そんな無表情で…何の感情も感じさせない目で人を斬り殺すのはやめてくれ!お願いだから…!」
「あ~…?」
なんだかよく分からなかったのでとりあえず斬り殺した。
血の噴水を起こしながら力無く倒れた誰かの手からカランカランと何かがこぼれ落ちて…それは剣のように見えた。
わぁ丁度よかった~新しいのが欲しかったんだぁ。
剣を拾い上げていつの間にか進んできていたらしい建物の中を戻って行く。
道中には不思議と人の死体がたくさんあった。
二人しか殺していないような?いや、みんな殺しちゃったんだっけ?そんな事より頭が痛い。
耳鳴りがひどい。
身体が重い。
それよりもナナちゃんがいない。
「どこぉ…ナナちゃん~」
あの子は私のものなのに…あの子にとっても私はあの子のものなのに。
どうして私たちは一緒に居ないのか。
とても不思議でならない。
「「「──────────!!!!」」」
建物を出ると目の前に魔物の大群がいた。
数えるのもめんどくさくなるような数だ。
「ねえあなた達…そんなにたくさんいるのなら一人くらいナナちゃんの居場所知ってるぅ?」
「「「──────────!!!!!」」」
叫ぶばかりで魔物達は何も言ってはくれない。
あれ?喋れないんだっけ?んん?どうでもいいかぁ。
ザクザクザクザク
ザクザクザクザクザクザク
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク
どれくらい時間が経っただろうか?
もうザクザクとした感触に飽きてきたところでようやく魔物達が一匹残らず動かなくなった。
いや、もう一つだけ動いているような気配がある。
「あなたはナナちゃんの居場所知ってるかなぁ」
「知ってるよ」
ピタッと時間が止まった気がした。
なんだなんだ~やっぱり喋れるんじゃん。
くるりと声のしたほうを振り向くとそこに真っ赤なフードで顔を隠した女の子がいた。
「魔物じゃない?」
「似たようなものかも」
「そうなの~?でもどうでもいいや。ナナちゃんはどこ?」
「あっち」
「どっち?」
「きて眠り姫さん。あなたの眠る棺のもとに連れて行ってあげる」
赤いフードの女の子が私の右手を取る。
ドクンと一瞬だけ…何かが脈を打ったかのように感じたのだけど一瞬だし気のせいだったかもしれない。
「わ~い」
あれ~?というかこの女の子誰なのかな?だけどまぁいいかぁ~ナナちゃんのところに連れて行ってくれるみたいだし。
それに何というかこの子から悪いものを感じない…うーん?
そして私は赤いフードの女の子と一緒に居る間、身体の不調がわずかにマシになっていることに気がつかなかった。
主人公がびっくりするくらい正気じゃないです。
メンタルダメージが凄かったところをなんとかナナシノ先生がつなぎとめていた感じなのでいなくなるとこうなりますですハイ。




