行方不明
サイトのメンテが入っていたようで投稿が遅れてしまいました。
次回は月曜か火曜日に投稿予定です。
ひとまずアルバイトは引き受けるという方向で話がつき、さらに詳しくはまた後日となったので私はナナちゃんへのお土産を手に帰り道を歩いていた。
なんか最近このパターン多いよね。
とりあえず図書塔で話してまた後日きてねってパターンの奴。
多いというか基本パターンになってるよね。
いつもならナナちゃんが本を読むのをアマリリスさんとお話しながら待ってるのだけど、今日は朝早く出てきたからお留守番しているはずのナナちゃんの待つ家に急いで帰る日だ。
お詫びのお菓子を持って家を出たのに、帰りはお土産のお菓子を持っていくという…なんだか面白いよね。
なーんて変な事を考えつつも家の前までたどり着くと…何故か我が家の敷地ギリギリのところで逆立ちをしている人がいた。
あまりにも不審者過ぎるけれど残念な事に知り合いで…なんとアトラさんだ。
…冷静に考えるとアトラさんって分類的には不審者で間違ってないよね?ごりごりの犯罪者だよね?たぶん。
アトラさんの服装は何とスカートなんだけど器用に裾の部分を股に挟んで下着が見えないようにしている。
どうしてそうまでして我が家の前で逆立ちを…。
「なにしてるんですかアトラさん」
「およ~?ようやくお帰りですかぁユキノさ~ん…よっこいしょとぉ~」
アトラさんはくるりと足を下ろして器用に立ち上がると衣服の乱れを軽く整えてにぱっと笑う。
「…何か用ですか」
「え~ちょっとご飯でもどうでしょうか~って~」
「あいにくもう食べてきました」
「ではご一緒にショッピングでもどうですかぁ~?女子らしくお洋服でも見に行きましょうぅ~」
「…あの、先日あなたの所の偉い人?にもう関わらないように言われたし、関わらないように言っておくとか言われたんですけど?」
「あぁ~クイーンの事ですかねぇ~?あの人は今頃私の当て身とカララさんの締め落としのダブルコンボでぐっすりと寝ているので大丈夫ですぅ~」
大丈夫な要素がどこにもないけれど本当に大丈夫なのだろうか。
まぁ私の心配することじゃないか。
「とにかく同居人がいるから突然来られても困るんだよ私は」
「ですかぁ~。でも今日はその同居人さんお留守ですよねぇ~?」
「ん?」
「一緒にいるのかと思ってましたがユキノさん一人ですしぃ~」
「さっきから何を言ってるの?」
「えぇ~?だから同居人さんはお留守なんですよね~?普段は家の中に気配を感じますけど今日は何も感じませんからお留守ですよねぇ~って~?」
私はアトラさんを無視して慌てて玄関の扉を開いて駆け込んだ。
寝室のドアを開け放ち、中を確認するとナナちゃんはそこにはいなかった。
「ナナちゃん!?」
家中を駆け回り、いるはずのナナちゃんを探すけども確かに言えなお中に人の気配がない。
なんで、どうして…?
「あ!そうだ靴!」
玄関に引き返して靴が置いてあるはずのそこを見るとナナちゃんの靴はそこにはなかった。
「ユキノさん~突然どうしたのですかぁ?」
声をかけられた瞬間、ほぼ無意識のうちに私はアトラさんの首を掴んで押し倒していた。
「どこにやったの…ナナちゃんをどこにやった!!!」
「あらぁ~遊んでくれるのは嬉しいですけどぉ~私はそのナナちゃんさん?の事をなにもご存じではないのですぅ」
「じゃあなんでここに居た!お前が…お前が!!」
「落ち着いてくださいなぁ~何事も冷静さを欠いたほうが負けるものですぅ~。獣が人間様に勝てないのと同じ理論ですよぉ~。クールに行きましょう~私は本当に何も知らないのですぅ~どこかナナちゃんさんが行きそうな場所とかないのですかぁ?」
首を抑えられている状況なのに余裕そうなその態度が腹立たしい。
いや、落ち着け…そうアトラさんは何も間違った事は言っていない。
とにかく落ち着くんだ。
私は深呼吸を繰り返し、アトラさんの首から手を離す。
「…ナナちゃんに何かしてたら許さないから」
「何もしていないので許してくださぁい~で?心当たりはあるんですぅ?」
心当たり…あると言えばある。
たぶん私を追って図書塔に向かったというのが一番可能性があるけれど…それだと帰り道で私と出会わないのはおかしい。
ううん、どこか寄り道をしてたとか私がお土産を買っている間にすれ違ってしまったのかもしれない。
きっとそうだ。
「行かなくちゃ…」
全力で私は駆け出して図書塔に向かう。
おねがい…ナナちゃんどうかそこにいて…!
「あのあの~ただ同居人さんがお出かけしているだけですよねぇ~?そこまで焦る事なのですかぁ?」
そんなアトラさんの言葉に返せる答えなんてない。
なんでこんなに焦るのか自分でもわからない。
ナナちゃんだって人間だ。
たまには一人っきりでお出かけしたくなる時もあるかもしれない。
でも…だとしても私はナナちゃんがいつどこにいるのか全てを知っていなければいけない。
だってあの子には私が必要なのだから。
そして私にはあの子が必要なのだから。
私一人だけでも、ナナちゃん一人だけでもダメなんだ。
あの子は私が守ってあげないと…私が全部してあげないとダメなんだから。
それが私がナナちゃんにしてあげられることなんだから。
「ナナちゃん!!」
いつの間にかたどり着いていた図書塔の扉を壊す勢いで開け放つ。
中ではアマリリスさんが少しびっくりしたような様子でこちらを見ていた。
「どうしたのユキノちゃん。さっき帰ったばかりなのに…忘れ物でもした?」
「そんなんじゃないです!アマリリスさん、ナナちゃんが来てませんか!?来てますよね!」
「…来てないけど?」
「嘘だ!来てるはずです!」
「来てないよ。状況は分からないけどこっちに来てるのならユキノちゃんと鉢合わせてるんじゃない?」
「くっ…!!」
踵を返してナナちゃんを探しに行こうとしたところ、肩をアトラさんに掴まれて引き留められた。
「なに!!」
「だからぁ~少し冷静になりましょうって~。お友達が困っているのですぅ~私も協力してあげますからぁ一回整理しませんかぁ?」
「…なに?もしかしなくてもナナシノちゃんいなくなったの?」
そこでついに耐えきれなくなって私は崩れ落ちてしまった。




