言葉の代償
次回は火曜日までのどこかで投稿します!
長期休みは忙しくなるのでもしかしたら間が空くかもしれません!あかないかもしれません!よろしくお願いします!
「スノーホワイト…ううん、ユキ・ナツメグサ」
「あ…?」
私の言葉に全員がしん…と静まり返った。
…注目してほしかったわけではないので、少しどぎまぎしてしまうけれど…それでもやることを…出来ることをしよう。
「私は今日だけはって死ぬ気で前を向いてるの。だからあなたもいい加減前を向きなよ。いつまで逃げてるの。かっこ悪いよ」
「逃げている…?お前今この私に逃げているといったのか?」
「うん。そして本命はそっちじゃなくてかっこ悪いのほうだよ。ダサい。見てられないよ。私はそっちのリトルレッド…カナレアさんのことはほとんど何も知らないし、あなたたちの関係性に対して口を出せるほど何かを知っているわけでもない。でも…あなたが今この場で一番かっこ悪い事だけは分かるよ」
「お前…なんだ突然。口を出せないとわかっているのなら黙っていろ。これは私たちの問題で、お前が介入することじゃない。雰囲気にのまれて調子づいていたのかも知らんが、程度はわきまえろよ小娘が」
スノーホワイトが目を鋭く細めて睨んできた。
ここ最近はずっと一緒にいて、何度も会話をしたけれど…ここまで純粋に怒りをぶつけられたのは初めてだ。
そして怒っているという事は触れられたくない部分に私が触れられたという事でもあるから。
ならこのまま攻めるべきだ。
「わかってるよ今の私が調子に乗ってることくらい。でもいくら調子に乗ってても他の人にこんなこと言わないし…勇気もないよ。でもあなたにいう権利くらいはあるでしょ。私が悩んでるときに後ろから偉そうに口を出していたくせに、自分に順番が回ってきたからって都合よく怒らないでよ」
私と根本を同じとする…同じ顔をした、別の人生を歩んだ私。それがスノーホワイト。それがユキ・ナツメグサ。
他人だけど…私。
だからこそスノーホワイトにも今日くらいは逃げるのをやめて欲しいのだ。
まさに勝手な言い分かもしれないけれど…私がこんなに頑張っているのだからお前も頑張れよというやつだ。
頑張っているなんて言葉、自分に使うのは調子のいいことかもしれないけれど今回ばかりは許してほしい。
「言うに事欠いて逃げるなだと?かっこ悪いだと?よくそんな口がこの私に聞けたな。私が…何から逃げているというんだ?何もかもを犠牲にして…それでもカナの幸せを願った!それのどこが逃げているというんだ!むしろ立ち向かったんだよ私は!」
「誰も!…誰もあなたのその時の決断と決意をかっこ悪いだなんて言ってない。私が言ってるのは今だよ」
かつてはそれが最善だと信じて、大切な誰かのために本人なりに前を向いて最後までやり遂げたのだろう。
私はそんな彼女を心の底から凄いと思っているし、敵わないとも思っている。
たった一人のためだけに自らを犠牲にしてまで世界を救う…それがどれほど勇気のいることかなんて考えるべくもない。
かっこよくて…尊くてまさに物語の勇者のような…誰にも否定されるべきではない想いだ。
「でも今のあなたは違うでしょ。もうただ意地になってる…本当はついてきて欲しい癖に、一緒にいたいって思ってるくせにそれが怖くて口に出せないだけじゃん」
具体的に何が怖いかなんてわかんないだと思う。
断られて拒絶されること、決定的に何かが変わってしまうこと、大切だと一度は守ったはずの人を道づれにすること…いろんな想いがぐちゃぐちゃになってただ漠然と怖いという感情に固まって心に重くのしかかる。
そして何もできなくなるから、ならせめてとかつて自分が下せた決断を引きずって…正しいと信じて行動できた過去に縋りついて目を反らすしかない。
「あなたが私の考えていることが分かるように、私にだってあなたの考えくらいわかるんだよスノーホワイト。もう正直になりなよ。私の背中を押したんだから、その責任を取って前を向いて見せてよ」
「…」
「その結果がどうなったって…状況が変わったのなら想いだって変わるから…ちゃんと改めて今の考えを伝えるべきだよ。私は…そう思うな」
さすがに偉そうが過ぎると思わなくもないけれど…でも言いたくなってしまう。
私がナナちゃんに想いを伝えようって想えたのはスノーホワイトのおかげもあるから…怒られても嫌われても、彼女にも同じように大切な人に想いを伝えてほしい。
他ならぬもう一人の私なのだから。
「あ、あの…ユキノさん」
「ん?」
私と手をつないでいたナナちゃんがその手を解いて不安そうな顔で私の手を引っ張る。
なになに?いったいどうしたのだろうか?
「もうそのあたりでやめておいた方が…」
まさかのナナちゃんからの制止がかかってしまった。
やっぱり私の行いは傍から見たらありえない行為だったのだろうか…もしかして好感度を下げてしまっただろうか?不安になるとほぼ同時に誰かが私の肩をガシッ!と力強く掴んだ。
誰かと驚いてみてみればそれは…リトルレッドだった。
「え、あ、あの…」
ナナちゃんと同じ顔をしているけれど、ほとんど絡みのない人だから言葉に詰まる。
というか…なんでいきなり肩を掴まれているのか不思議でならない。
困惑しているとリトルレッドはニッコリと私に笑いかけてきた。
とっても…可愛らしい笑顔だった。
「ねぇあなた…よくズバッとあの分からず屋に言ってくれたわね。そこはありがとう」
「あ、はい…」
お礼を言われてしまった。
でも肩を掴む手に痛いほどの力が込められているのは…気のせいなのだろうか。
いや…そんなはずはない。
「でもね?うちのユキとの会話によけいなちゃちゃ入れてきてんじゃないわよ!」
次の瞬間、目にも留まらない速度で脚を払われ、掴んだ肩を起点にぐるりと身体が持ち上げられ…回されて…顔から地面に叩きつけられた。
「リトルレッドはスノーホワイトのことで口を挟まれるととても怒るのでその辺でと止めようとしたのですが…」
ナナちゃんのそんな呟きが聞こえてきたけれど…少し遅かったね。
顔から地面にめり込んだまま…やっぱり調子に乗りすぎていたのかもしれないと反省した。
今日だけは無敵な気がしていたけれど…ダメなものはダメなのだ。
明日からはこれを教訓にしていこう…私は強く決心したのだった。
めんどくさい女が主人公に牙を剥く。




