赤い眠り姫
次回は土曜日投稿予定です。
フランネルさんに先導されて私はついに帝国本土の土を踏んだ。
恐ろしいというかなんというかフランネルさんと一緒にいっぱい検問やらなんやらを通ってきたのだけど…ほとんど顔パスだったよ…。
実はこの人めちゃくちゃ偉い立場の人なのではないだろうか…?失礼な事をしていないかただただ心配だ。
あまり考えないほうが精神衛生的にはいいかもしれない。
「ユキノちゃん」
「あ、はい!」
「どう?初めての帝国は」
「えっと…」
まず感じたことは「人が多い」だった。
入口の検問を抜けてすぐの場所にいるのだけれど、おそらくこの周辺で私の視界にいる人たちだけで村の人口を優に超えている気がする。
それほどに人が多い。
それと皆笑顔に見える。
活気があって賑わっていて…帝国というのは現皇帝の独裁国家だと聞いていたので少し怖いイメージを抱いていたのだけれど、どうやら思い込みだったみたい。
どこを見ても行き交う人、人、人…。
ピリッとした痛みが右腕に奔る。
「…」
「ユキノちゃん?」
「あ!?すみません!ぼーっとしてました…」
「疲れた?馬車結構揺れたもんね。先に休もうか?」
フランネルさんが私の手を握る。
決して太っているわけではないけれど、フランネルさんは衣服の上からも分かるくらい出るところが出ていてフワッとした体形をしている。
そのためなのか握られている手もとっても柔らかくて暖かい。
もしこの手を、その胸を…その腹を────
「またぼーっとしてる?」
「っ!ごめ、ごめんなさい…」
慌ててフランネルさんの手を振りほどく。
失礼だったかもしれないけれど、これ以上はダメだ。
「謝ってばかりだね?別にいいのに。やっぱり先に休もうか…今日はとりあえず私の部屋に泊ってね」
「え…」
もしかしてそれは今日一晩フランネルさんと共に過ごすという事だろうか。
それは絶対にまずい。
この数時間でもこの人がいい人だというのが分かった。
そんな人にこれ以上迷惑はかけられないし、なによりこんな私が一緒にいることは何が何でも許容できない。
「うーん。微妙な顔をしてるけど今日はダメなの。他に宿をとるっていうのもキミの立場上ちょっと難しくてさ…今日だけ我慢してね」
「あの…」
「なに?」
「これ以上私に優しくしないでください…」
「ん…?」
フランネルさんが何を言っていると?とでも言いたげな目を向けて来るけれど、私としてはそう言う他ない。
おそらく今日の宿の事やこうして私を案内していることを断るとフランネルさんも困るのだろう…じゃないと私みたいな田舎者にここまでしてはくれないだろうから。
ならもう優しくしないで下さいと伝えるしかないのだ。
優しくされると好意を持ってしまうから。
好意を持つと私はその感情に他の感情が伴ってしまうから。
「…とにかく優しくしないでください」
「変な事を言うね。優しく…してるかな?無下には扱ってないとは思うけれど優しくしてるってほどでもなくないかな?」
「いえ…十分優しいと思います…」
「うーん…叩いて悪口でも言ってみればいい?」
「あ、はい。そうしてもらえるのなら助かるかもしれません」
「いや冗談だよ?とりあえずまぁ優しくしないでって言うのなら…なるべく?気を付けるけど」
「ありがとうございます」
不思議そうな顔をしながらも納得をしてくれたフランネルさんだったけど、その後もフランネルさんの態度はほとんど変わっていなくて、ニコニコとした人好きのよさそうな笑顔で帝国の中を案内してくれてその度に私の中で何かが疼いた。
そして日が傾きかけた頃、とても高い建物の中に通された。
見た感じは塔のような建築物で、大きな建物がたくさんある帝国内でもかなり高い。
中はと言うと無数の本棚とそこに敷き詰められた本…上に登る階段とその先にはさらに本…まるで本の迷宮だ。
「あの…ここは?」
「私の職場かな?ここの管理が私の仕事なの。ちなみに住み込みだよ」
「へ、へぇ~…」
あらためて見渡すと目につく限りでも歴史書や絵本…小説に読めない文字で書かれたものなど多彩な種類の本が置いてある。
村には当然だがこんな数の本はなく、それどころか商人さんが持ってきた奴を買わない限りは娯楽の本など存在してすらいない。
ちょっと酔ってしまいそうなくらいだ。
「受付の裏にね、私が寝泊まりしてる部屋に続く扉があるからとりあえず荷物だけ置いてきて」
「わかりました…」
「うん。疲れてるみたいだしご飯食べるところ教えてあげるから、そこでご飯食べて今日はもう休もうね」
「はい…ん、あれ?フランネルさんここの管理をしているんですよね…?」
「うん」
「大丈夫なんですか…?私につきっきりで」
「ああ、大丈夫だよ。バイトの子が一人いるから」
「バイトとは…?」
「んーまぁ私以外に働いてくれてる子がいるってこと」
「なるほど…」
いや…こんな広い場所を一人で?フランネルさんがいたとしても二人?そんな事が可能なのだろうか…それとも都会ではそれが普通なのかな…。
私は都会という存在に軽く恐怖を覚えたのだった。
────────
なんとなく生活感が薄いような気がしたフランネルさんの部屋に少ない荷物を置かせてもらい、再び二人で外を歩く。
ご飯を食べられるところと案内された場所はこれまた大きな建物で、中ではいろんな人が料理を楽しんでいる。
「ここねこの辺りの地区で働いてる人だと少し安く食べられるの。ユキノちゃんがこれからどうするのか働くのか働かずに他のことをするのか分からないけれど、お姉ちゃんから貰ったプレートを見せれば同じ待遇を受けられるよ」
「そう、なんですね…」
はい、これとフランネルさんに渡された硬くて不思議な手触りの紙?板?のような物には見たことも聞いたこともないような料理の名前がずらっと書いてあって何を頼めばいいのか分からない。
「何か好きなものは?」
「えっと…お野菜の汁とかでしょうか…鳥のお肉とか入ってると…嬉しいかもしれません」
「うーん…じゃあシチューとかにしておく?」
「えっと…?じゃあそれで…」
料理の注文の仕方を教わって、人のよさそうなおばあさんにしどろもどろになりながらも注文を終える。
数分で用意されたシチューという食べ物はとてもいい匂いがした。
「先に食べてて。あそこに席とっておいたから」
「あ、はい」
指定された場所に座って「いただきます」と匙を手に取る。
命をいただく時はいただきます。
私の記憶に残る数少ない母の言葉だ。
「あ…美味しい…」
初めて食べたシチューはとても美味しくて…お腹の中に広がるじんわりとしたぬくもりが私の中に溜まっていた黒い物を溶かしてくれているようだった。
「ユキノちゃんお待たせ」
「あ、は…い…」
料理を受け取ったのであろうフランネルさんの姿を見て私は絶句した。
カラカラとフランネルさんが料理のたくさん載った荷車を引いていたからだ。
「フランネルさん…ここで働いているんですか…?」
「んん?なんで?さっきの場所の管理人してるって言ったばかりじゃん」
そう言ってフランネルさんは私の向かいに座り、荷車の中から料理を手元に引き出して幸せそうにほおばった。
見ているだけでもお腹がすくような光景ではあるが…荷車に乗せられた大量の料理が気になりすぎる。
働いているわけではないのならその料理は一体…?誰か取りに来るのだろうか?
まさか一人で食べるわけじゃないよね?何人前なんだって量あるし…。
なおそのまさかで私がちまちまとシチューを食べている間に恐ろしいスピードで荷車の料理がフランネルさんの口の中に消えていく。
今とんでもない事が私の目の前で繰り広げられているというのに、私以外の人は気にもしていない。
いや、正確にはチラッとこちらを見てくる人はいるのだけど、
「あ、フランネルさんだ」
「おお。相変わらず美人だよなぁ~今日はいい日だぜ」
「あんなに食べてるのにどうしてスタイル崩れないんだろう…」
「羨ましいけどフランネルさんだから仕方ないみたいなところあるよね…」
とみんな受け入れている。
絶対おかしいよ…というかやっぱりフランネルさんってそこそこ有名人みたい…。
皆名前知ってるし。
ひぃ~。
「食べないの?手止まってるよ」
「あ、ひゃい!」
慌てて適度に冷めたシチューに手を付ける。
このままでは私の何十杯も食べているフランネルさんのほうが先に食べ終わってしまいそうだ。
そうやって慌てて食べていると私たちがいるテーブルに人型の影が落ちた。
誰だろうとそちらを見ると、知らない男の人がいて何故か笑っている。
服やアクセサリーが無駄にキラキラとしていて目が痛い。
「やぁフランネル嬢」
「ん?…あぁ、リッツくん」
どうやら二人は知り合いの様だ。
ただフランネルさんは男の人を一瞥だけするとそのまま食事を再開したので親しいわけではなさそう?
そう思った次の瞬間、男性がフランネルさんの匙を持った腕を掴み上げた。
「…なに?」
「いけないなぁ。いつも言っているだろう?僕の妻になるのだから意地汚い真似はやめたまえ。もっと優雅に淑女らしい食事をするんだ」
つ、つつつつつつつ妻!?この人フランネルさんの旦那様だったの!?
驚愕の事実、なんとフランネルさん結婚していました。
いやまぁフランネルさんすっごく美人だしそう言う人がいてもおかしくはないよね。
「はぁ…私はリッツくんの妻じゃないしお付き合いするつもりもない。食事中だか離してほしいな」
「いつまでも照れ隠しをするものではないよ。たまになら可愛らしさを感じるがこうもしつこいとむしろ逆効果だ。僕のような高貴な存在が君を見初めたという事実に浮かれるのも分かるが、そろそろ遊びは終わりだよ」
男性がフランネルさんの手の甲にキスをした。
「またやってるよ、あの成金野郎」
「な。ただ親の事業が一発当たったからって貴族面だぜ」
「しかもフランネルさん狙いとか身の程を知らないにもほどがあるよね」
ひそひそと周りから散々な声が聞こえる。
男性はそれを特に気にしていないようで、ずっと意味の分からない笑みを浮かべていた。
「ふふん。負け組共の嫉妬は実に心地がいいなぁ…ほらそろそろ立ちたまえフランネル嬢。今夜は高級な宿をとってあるんだ。そこで一晩を共にしようじゃないか」
「無理。今日はユキノちゃんの案内をしないといけないから」
「なに?」
そこでようやく私の存在に気がついたのか男性が私を睨みつけてきた。
「なんだ?この底辺臭のする女は。僕の妻ともあろう女性がこんな…妻の役目は夫をたてること。ならばこそ人付き合いも僕の利になる人を選びたまえ…それこそ君は皇帝ともつながりがあるんだろう?」
「国の偉い人を呼ぶときは敬称をつけないとダメだよ。いいから離して」
ぐいっとフランネルさんが手を引くと、男性は勢いに体勢を崩してテーブルの角で額をうった。
「ぐおぉおおおおお…」
額を抑えてじたばたと動くその姿は…ちょっと面白くて、その様子を見ていた周囲の人もくすくすと笑っていた。
それに気がついたのか男性は顔を真っ赤にして立ち上がり、まだフランネルさんが食べている途中だった料理を地面に叩きつけると不機嫌そうに外に出て行ってしまった。
フランネルさんは結局最後まで男性の方は見ずに、無表情で地面にぶちまけられた料理を見つめていた。
「あの…大丈夫ですか?」
「ん?うん、大丈夫。ごめんね変なこと起っちゃって」
「私は別に…」
「なんだかご飯食べる雰囲気でもなくなったし、帰ろうか」
「はい…」
私たちは片づけに来てくれたお店の人や、周りのお客さんに謝りつつ外に出た。
すでに日は落ちて夜となっていたけれど、村に比べてかなり明るい。
明かりがついている建物が多いからだろう…凄いとおもう一方で空を見上げても少しだけ星が見にくいのが少し残念だ。
「はぁ…」
フランネルさんがため息を吐いた。
あまり深入りはしないほうがいいとは分かっているけれど、さすがに全く触れないというのも気まずい。
「あの…さっきの人、フランネルさんの事を妻って…」
「困ったものだよねぇ…なんか変な妄想しちゃってるみたいでさ?少し前にいきなり「僕の妻にしてあげよう。泣いて喜ぶだろう?」だってさ。ちょっと面白いよね」
「面白いですか…?付き合ってはいるんです…?」
「そんなわけないよ~全然好みじゃないしさ、前に「僕より身長が高いのはいただけないから側を歩く時は後方に下がって控えるようね」って言われて~背が高いの地味に気にしてるからさ?こりゃないなって」
「あ~…」
私としてはフランネルさんはスタイルがよくていいなぁとしか思わないのだけど、本人的には気にしているポイントらしい。
あまり背が高いとかは言わないようにしなければ。
「それに私…相手がいるからさ」
「え!?」
フランネルさんが胸元をごそごそとするとするりと紐で繋がれた指輪のようなものが現れた。
月明かりを反射して銀色に輝くそれはとてもきれいに思えた。
「はぁ…それにしてもさすがにそろそろ何とかしないとまずいんだよね~…近いうちにお姉ちゃんきちゃうだろうからそれまでに何とかしないと。シスコンなのあの人」
「あ、えっと…確かお姉さんって女神様…」
あの人がシスコン…なんだか想像できないような出来るような…。
というかそうだよ、女神様の妹さんなんだよねフランネルさんって。
…正直あんまり似ていない。
私の記憶にある女神様とフランネルさんで、似てるなと思えるような部位がない。
双子じゃないならそんな物なのだろうか?
「女神様…女神様か~」
「あ、その…名前を知らなかったので…変ですよね…」
「変ではないけど…いや女神様って呼び方は少し面白いよ。言い得て妙というか」
「それはどういう…」
私が言葉の意味を訪ねようとした時、それを遮るようにして物陰から人が飛び出してきた。
咄嗟にフランネルさんが私を突き飛ばし、勢いそのままに尻もちをついてしまった。
「やぁフランネル嬢。いい夜だね」
「リッツくん…さすがに待ち伏せはどうかと思うな」
私には目もくれず、フランネルさんと向き合っているのは先ほどの男性だった。
男性はキザな動きでフランネルさんに近づき、フランネルさんは距離を詰めさせないためかゆっくりと後ずさる。
「はぁ…あのねフランネル嬢。懐の深い優しい僕でもさすがにそろそろ怒るよ?見た目がいいからって調子に乗るのはいただけない…僕の妻ともあろう人の醜聞が流れでもしたら僕のイメージに傷がつくからね」
「もうすでに傷だらけだと思うけど」
「ほんとうに君は分かっていないね。ならばそんな君をしっかりと「教育」するのも夫である僕の役目だろう、さ!」
一瞬だけ辺りが眩しい光に包まれた。
男性が掲げた腕から青白い閃光が…雷のように見えるそれが放たれてフランネルさんの頬をかすめて地面に小さな穴をあける。
「リッツくんそれは…」
「はははは!すごいだろう?魔法なんてちっぽけなものじゃないぞ?僕が天から与えられた力さ!僕が!この世で一番素晴らしいと!世界が言っているんだ!」
バチバチバチと青白い光が男性の手の上で弾けては消えていく。
「フランネル嬢は魔法が得意なのだろう?そこそこ有名だものな?だけど、いいやだからこそわかるだろう僕の力の凄さが!」
「…」
「分かったなら今までの非礼を詫びて跪け。そうすれば少しくらいの痛い思いをするだけで許してやる」
「…」
このままじゃまずい。
フランネルさんが危ない…助けないと。
でもどうやって?
───方法ならあるじゃないか。
ダメ、絶対にダメだ。
でもこのままだとフランネルさんがあぶないんだ。
でもダメだ。
考えるな、これ以上…そのことを考えるな。
落ち着くんだ私。
これはフランネルさんを助けるための行為だ。
自分の欲望に流されるわけじゃない。
違う、それは言い訳だ。
考えるな、考えるな。
でも…あの男の人は悪い人だ。
悪い人はいいんだ。
だって悪い人なんだから。
フランネルさんだって助かる。
あんなに親切にされておいて、見捨てるつもりなの?私は。
「そうだ…あの人は悪い人なんだ…それにフランネルさんを助けないと…あはっ!そうだたすけないと!だってそれは悪い事じゃないもんねぇ…」
考えるまでもなかった。
これはやってもいいことだ。
そうときまればもう我慢なんてしなくていいよね?だってずっとずっと我慢してた。
帝国にはたくさん人がいて…フランネルさんは優しくしてくれて…ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…。
私はゆっくりと立ち上がり、男性を見据える。
あの人は…やってもいい人だ。
そう考えると同時に、私の右腕が裂けた。
「なんだ?」
何かを感じ取ってくれたのか男性の視線がフランネルさんから私に移る。
フランネルさんも何事かと男性の肩越しに私を見ていた。
待っててねフランネルさん…今助けてあげるからね。
裂けた右腕から血が噴き出し、そしてさらに腕は裂けていく。
血管等の細長い管がちぎれ飛び、肉はバラバラに、だがそれらは一切地面を汚すことはなく、空中にとどまり、そして再構成されていく。
新たに出来上がる右腕はドクンドクンと脈打つ赤黒く巨大な異形の腕。
指の一本一本は鎌の刃ような形状となり完成する。
「なんだ…なんだその腕は!?フランネル嬢!貴様は化け物を連れ歩いていたのか!?」
「…」
散々な言われようだ。
私はバケモノなんかじゃない。
だってこんなにも我慢したのだから…たくさんの命がそこらじゅうを歩いているのに必死に自分を押さえつけていたのだから。
それは我慢の出来ない獣じゃなくて理性がある人間だってことでしょう?
でも我慢はもうおしまい。
私の心はもう乾いてしまったから…お腹がすいたらご飯を食べるように、乾いたのなら潤さないといけない。
血が見たい。
柔らかな肉を引き裂いてその中身を引きずり出したい。
真っ赤な血を浴びてそのぬくもりに浸りたい。
私はどうしようもなく…人を殺したい。
「──【ブラッドレイン・スノーホワイト】あなたは死んでもいいと思うから…殺すね」
────────
それはその一部始終をずっと見ていた。
夜空に浮かぶ月に紛れるように…人を見下ろす天の神のようにただ見下ろしていた。
風に揺られて黒に混じった何色もの色の髪がゆらゆらと舞う。
「んふふふふふふ!ちょっと様子を見に来たらとっても面白い事になってるなぁ。夢から覚めない眠り姫ちゃんは血の雨を降らせながら目覚めさせてくれる王子様を待っている…んふふふふふふ!君がどんな子なのか私に見せて?もし私の期待に応えてくれるのなら…ちょうどいい「お人形さん」を用意してあげるからね」
にっこりと誰もが心を奪われるような笑みを浮かべた女神の側で、目に光の無い少女が身体を抱きかかえるようにして座っていた。