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帝国の姫3

話が進んでいないので本日二話投稿します。

次は17時に投稿予定です。

 倒れたアリスをその場で皆で介抱、なんとか会話ができるレベルまで回復したのはそれから10分ほど後だった。

まだ少し青い顔をしているけれど、それでもちゃんと自分の足で立ち上がれているので大丈夫…なのだとは思う。


「ふぅー…いやはや世話をかけたなっ!皆の者!アマリリスくん!それと…」


アリスが私を見て首をひねったので自己紹介をしなくてはと慌てて頭を下げる。


「わ、私はユキノ…ユキノ・ナツメグサといい、申しまする!」

「おお!君がそうなのか!話は聞いているよ余はアリス・フォルレント!偉大なる帝国皇帝の娘だ!」


話を聞いている…?それってどこまで聞いているのだろうか?それ次第で私のスタンスというか立ち振る舞いは結構変わってしまいそうな気がしなくもないわけで…いや、どちらにせよあんまり偉い人と喋ると無礼なことしてしまいそうだからあんまり関わらないほうが…。

そこで私は辺りがシーンと静まり返っていることに気がつき、下げていた頭をゆっくりとあげた。

するとお辞儀をしていたから気がつかなかったらアリスが私に握手の手を差し出していたのだ。


「あ!あばばばばばばばばば!きききき気がつきませんでした!申し訳…!」


ガッ!とアリスの手を握りぶんぶんと上下に振ってしまったところで…パニックのあまりさらに馬鹿な事をやってしまった事に気がついて咄嗟にアリスの手を放り投げるように放してしまった。

もうダメだ。

もう何もかも終わりだ…ごめんナナシノちゃん…私はもう帰れないかもしれない…。


「アマリリスさん…家でお留守番しているナナシノちゃんの事お願いします…」

「一回おちつこ?ユキノちゃん傍から見たらヤバ…面白い人だよ?」

「わははははは!いいじゃないか、面白い人は好きだぞ!だから余に対する無礼を許そうじゃないか!」


アリスは腕を組んで大笑いし、その豪快さを感じさせる言動が見た目のおしとやかさとはやっぱりミスマッチだ。

いや!いまあそんなこと言っている場合じゃない!だってアリスの背後に控えている大人たちはなんかすごい顔で私の事を睨んでいるもの!


「い、いえ!貴族様に失礼な事を…!大変申し訳ないです…!」

「貴族様…ふむ貴族様か…」


ああ!またやってしまった…本人を前にして貴族様はないでしょ私…!!


「あ、すみませんんんん!!」

「ははは、まぁ本当に落ち着きたまえ。ユキノくんは外から来たのだったな?なら後学のために一つ教えておこう。この国に貴族などという者はいない」


「え…?そ、そうなんですか?」

「うむ。ここは軍事帝国だからな!偉く見える人は皆軍人、もしくは騎士だ!それと余のようにそれに準する肉親だな。よって貴族様といういい方はそもそも正しくないのだ!そこだけは覚えておくといいぞ!そして余の立場は…身もふたもない言い方をすれば姫だ!」


「は、はいぃぃいいいい!!」


もうとにかく元気よく返事をする。

それだけが私に許された行動だった。


「ちなみにね?軍人さんたちがいわゆる他の国…外にも見せてる戦力で、騎士が対外的には隠してる戦力だね。今アリスちゃんの後ろにいる人たちが軍人で、この前コーちゃんの隣にいたアレンくんは騎士だね」


アマリリスさんがボソッと耳打ちしてくれたけど、びっくりするほど頭に入ってこない。

とにかくパニックなのと恥ずかしいのとで死んでしまいそうだ。


「わははは!さて、では一区切りという事でそろそろ本題に入ろうではないか」


アリスちゃんが空気を変えるように手をパンパンと叩いて…当たり所が悪かったのか痛そうにしているのを紫髪の子が優しく撫でている。


「おっけーおっけー。とりあえず私の魔法で図書塔までいこうか~。時間かかっちゃったからここも人がきちゃいそうだし」

「うむ、問題ない」


そう纏まりかけたところで声をあげたのは軍人さんたちだ。


「お待ちください姫!先ほどまで体調を悪くされていたのですから本日は休んだ方がよいと思います!」

「そうですアリス様!本日はもう帰りましょう!」

「いやいやそう言うわけにもいくまい。今日はアマリリスくんたちと話すのが本題なんだぞ?呼び出したのも余なのだからやっぱりやめた、などとは言えまいて」


「姫の体調が何よりも大切です!」

「そうです!この国であなたよりも優先されることなどそれこそ陛下くらいしか、」

「そうか、なら余を優先してもらおう。アマリリスくんたちと話をするから君たちは先に帰っていてくれたまえ。なに後でアレンくんが合流する予定だから問題はない」


「姫!」

「…これは余にとっても大事な事なのだ。心配してくれるのは嬉しいが…余を思うのならばこそ好きにさせてくれ」


軍人さんたちはアリスの言葉に複雑そうな顔をしながらも押し黙ってしまい、アリスもそれ以上は何も言う事はなく、紫髪の子の手を握って私とアマリリスさんの元にゆっくりと歩いてきた。


「行こうかアマリリスくん、ユキノくん」

「はーい」


そしてアマリリスさんがパチリと指を鳴らすと視界が暗くなるいつもの奴を体験したのちに…私たちは図書塔内部の入り口付近にたどり着いていた。


「お、おっと…」


魔法の影響かちょっとだけくらっとしてしまい、体勢を崩す。


「だいじょうぶ?」

「ああはい…大丈夫で…?」


誰かが手を伸ばしてくれたのでその手を取ると驚くほど冷く、まるで…死人の手のようだ。

その手の主は誰かと視線をあげると…それは紫髪の少女の腕で、彼女がアリスとつないでいないほうの手を伸ばしてくれていたのだ。


「…」

「…」


お互い無言になりつつも紫髪の少女の手を借りて立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。

見た目はどう見ても年下だけど…どう声をかけるのが正解なのか分からない。

年下の子供に話しかけるようにすればいいのか…ただアリスと一緒にいることから偉いところのお子さんの可能性があるわけで…ひぃ~身分が怖い…。


「そんなに緊張しないであげてくれユキノくん。この子は「リコ」…私の友達なんだ。きみも仲良くしてあげてくれ」

「よろしく」


リコちゃんが再び伸ばしてくれた手を今度はゆっくりと握る。

やっぱりその手は…ぞっとするほど冷たかった。


「よ、よろしくお願いします…」

「うんうん、挨拶も済んだところで上に行こうか。ここじゃ人が来るかもしれないからね。とりあえず五階まで上がれば一般の人は立ち入り禁止だから」


そんなアマリリスさんの言葉を受けて私たちはさらに移動を開始したのだけど…三階の階段を上り切ったところでアリスの様子がおかしくなった。


「ぜひゅーっ…こひゅーっ…」


大量の汗を流しながら呼吸を乱し、手すりに身を預けて止まってしまった。

そうとうに辛そうだけどやっぱり体調が悪いのだろうか…。


「アリスちゃんつかれた?」


リコちゃんがアリスの背中をさすり、小さく舌足らずな声で心配をしたけれどアリスは「問題…ない…」と立ち上がり、再び階段を上る。


「おえっ!げほっげぼふぉ!うぉぇ!…はーっ…はーっ…し、しぬ…」


し、死ぬ!?大変だ!早く病院に連れて行かないと!


「あーあー待った待った。あのねユキノちゃん…アリスちゃんね?とっても虚弱体質でね体力が全然ないの」

「な、なるほど…」

「し、失礼な事を…ごほっ!言わないでくれたまえ…余が…げほっげほっ!…この程度の階段…に…このわた、余が屈することなど…ない…おぼろろろろろろ」


気丈にふるまおうとしていたアリスだが限界を迎えてしまったのか再びリバースしてしまい、すかさずリコちゃんが袋を用意し図書塔の床が汚れることはなかったが…これは相当なものだと理解した。


「あ、あの…失礼じゃなかったら私がお連れしましょうか…?」


おんぶでも抱っこでもして私が運んだ方がいいとこの時は思ったのだけどアリスは頑として自分の足で登り切るのだと譲らなかった。

息を乱し、座り込むこともあったが何度も立ち上がり進んでいく。

その間ずっとアリスとリコちゃんはつないだ手を離すことがなかったのが印象的だった。

そしてたっぷりと時間をかけ、大量の汗と涙と吐しゃ物を乗り越え…ついに図書塔の五階にたどり着いた!


「ど、どうだ…!私にできない…ごぼふぉぁ…余にできない…こと、はっ!ないぃぃ~…おぼろろろろろろろ」

「アリスちゃんがんばった~ゆうしょうだよー」


謎の達成感に包まれているアリスとリコちゃんに私とアマリリスさんは涙を浮かべながら拍手を送った。

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[一言] ツッコミ不在の恐怖が今ここに! 冷たい手に触れるだけでナチュラルに死人を連想する主人公 主人公とはいったい(てつがく)
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