それぞれの夜2
次回更新は未定です。
一週間以内のどこかには投稿予定です!
すみません!少し事情があり、ちょっと短めです!この話のあとがきまで目を通していただけると嬉しいです!
暗すぎる理由ではないです!
カンカン、カンカンカンカン、カカカカカカカカカン。
周囲を石材の壁で囲まれた空間でそんな硬いものを叩いているような音が断続的に鳴り響く。
その場所は一応換気用の穴が開いていたが部屋の最奥で真っ赤に燃え盛る火がくべられた窯のようなものが存在しているせいか、何もせずにいても全身から汗が噴き出てくるような温度となっていた。
そんな場所で一心不乱に細長く、平べったい鉄をハンマーで叩く少女がいた。
「…」
少女は鉄を叩いたのちに目を細めて細かくそれを確認し…再びハンマーを叩きつける。
そんな作業を数度繰り返し、ようやく納得がいったのかハンマーを脇に避けて鉄の塊を何かの液体に浸し…その後燃え上がる窯の中に鉄を放り込む。
「…」
(ねーねー)
少女は両腕を組み、まるで職人の目つきで炎の中の鉄を見つめていた。
「…」
(ねーってば。おーい)
窯の中で鉄を飲み込む炎はまさに舞い上がる深紅の龍のようで…少女はさながらその龍と鎬を削るドラゴンスレイヤーの如くであり、瞬きすら行われることはなく、ただただ炎が空気をかき回して舞い上げる音だけがそこに静寂の中で行われている戦いを物語っている。
「…!!」
だがその戦いも終わりを告げる時が来た。
少女は弾かれたように器具を炎の中に差し入れて中の鉄を回収…それをすばやく確認したのちに足元にあった特殊な液体の中に落とし入れて…。
(ねーってば!呼んでるでしょうが!ナナシノー!!)
「…なんですか。今忙しいのですが…リトルレッドさん」
興がそがれたとばかりに先ほどまで纏っていた匠の雰囲気を霧散させてナナシノは自身の後方にふわふわと浮かんでいる半透明の人物に向き合った。
(だって暇だもの。さっきから何をやってるの?)
「見てわかるでしょう。包丁を作っています」
(なんで?)
「作りたいからです。常々思っていたのです…包丁はものによって握った時の感覚が違う…刺したときに伝わる感触も。それは同じ職人が作った同じ規格の包丁でもそうです。ならばこの私にぴったりと馴染む最高の一振りがあるはずだと。しかしそれに出会うことは難しく…周囲のお店を何度も何度も回りましたが納得の行く手触りの包丁は見つかりませんでした」
(その話長い?)
「そんなある日、いつものように包丁を物色しているとここの方がそんなに納得ができないならば自分で最高の…いいえ、至高の一振りを生み出してみてはどうかと提案を受けたのです。ゆえに私はこうして包丁の製造方法を学び、自分だけの一本を作り出すためにここでこうしているのです。そもそも包丁というのはその起源が──」
(あーはいはい、私が悪かったですーその辺でゆるしてくださいー)
「…」
ナナシノはジトっとした目を自分と同じ顔をしたリトルレッドに向けた。
あの話し合いの少し後からナナシノにはリトルレッドの姿が見えるようになっていた。
しかし他人に彼女はどうやら見えないようで…同時にその声も誰にも届いてはいない。
自分にだけ見える…幽霊のような存在をナナシノはしかし、それほど悩むことはなく受け入れた。
リトルレッド本人にもなぜこんなことになっているのかわからないこの状況…考えることは好きなナナシノだが、考えても答えが出ないことを考えるよりも目先にある探求心を満たすほうが優先だと思ったからだ。
それにナナシノにとって今回のような場合を除きリトルレッドとの会話はとても有意義なものだった。
自分にはない知識…それを大量に持っている彼女との会話は掛け値なしに貴重といえるものだったから。
(てかさー包丁なんて作ってどうするのよ。料理なんてそんなにするの?以前クッキーの作り方は教えたけどもさ)
「包丁が料理にしか使えないなど、あなたにしては随分と浅い見解をひけらかしてきますね。包丁というものは人にさ、」
(せっかく気を使ったんだから堪えなさいよ。料理にしか使っちゃダメなのよ包丁は)
「包丁の使い方なんて百人いれば百通りの使い方があってしかるべきです。私はそれが刺すという方向に向いているだけです」
(向けちゃだめだし、百人いても一通りの使い方しかあっちゃダメなのよ包丁は。ここを貸してくれてる人もアンタが人に刺すために包丁作ってるなんて知ったら泣くんじゃない?)
「そんなはずはありません。むしろ親方も人に刺すために包丁を作っているのかもしれません」
(娑婆にいて店なんか開いていいはずがないのよ、そんな思想のやつが。この世にあっていい発想じゃないのわかるわよね?私だものね?)
「私のこの想いが否定されるというのなら…そんな世界滅んでしまえばいいとすら思います」
(自分を正当化するつもりなんてこれっぽっちもないけれど、そんな猟奇的かつくだらない理由で私と同じ境地に達するのやめてくれない?そろそろ泣くわよ?私が)
辿るかもしれなかった運命の先にいる未来の自分を泣かせながら、ナナシノはそれでも包丁づくりをやめないのであった。
申し訳ありません、私自身何ともないのですが、最近のあれで少しあれがあれしておりまして…更新が遅れそうなのでひっそりと存在しているツイッ…エックスには書いたのですが少々投稿が遅れそうです!
それを伝えたくて今かけている段階までで投稿させていただいた次第です!私は完全に無事なので大丈夫です!
その代わりと言っては何ですがすっごい前にどこかで言っていたような気がする書いたはいいけれど投稿していない単発の短編作品をこの機会にとちょっとお試しに短編集という形で昨日から投稿してみています!
https://ncode.syosetu.com/n7126io/
こちらもしよろしければ暇なときや気を紛らわせたいときにでも覗いていただければなと思います!とりあえず昨日の分と今日の分で投稿しておりますが、またこういう機会にちょこちょこと投稿していこうかなと思っております!
すでに書いてあるものをそのまま張り付けている感じですので、今連載しているこの作品に充てるはずの時間を割いているわけではないのでご安心ください!
すぐに戻ってくると思いますので少々お待ちいただければと思います!




