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才能の片鱗

次回は明日投稿します!

「ふむふむ…ほうほう」


私の膝の上でナナちゃんが本を読みながらぼそぼそと声を漏らす。

今までも気がついたらナナちゃんが隣にいたという事はあったけれど、最近はこうして膝の上に乗ってくる。

やろうと思えば片手で持ち上げられそうなほど軽いナナちゃんだけど、こうしている太ももから膝にかけて確かなお尻の柔らかい存在感を感じる。

最初に出会った時はほとんど骨と皮…は言い過ぎかもしれないけど、かなり痩せていたからそれに比べればだいぶお肉がついてきたかな?…でも私としてももう少しお肉をつけて欲しいなんて思ったり…そっちの方が健康的だし。


「ふむふむ…ほー…なるほど…」


たぶん自分でも声が漏れていることに気づいていないくらいに本に集中しているみたい。

…邪魔をしてはいけないのは分かっているけど、こう…なんだかちょっとだけ妙な衝動が湧いてくる。

今このままぎゅっと抱きしめてみても怒られないだろうか?という…。

そっとやれば…そっとやれば気づかれないかもしれない。

勘違いしてほしくないのだけど、これはなにか変な事をしようとしているのではなく、ナナちゃんが健康的に育っているかの…肉付き具合のチェックをしたいだけだ。

決して変な感情は伴ってはいないのだ。

ただただ保護者としての心配というか、責任と言うかそういうやつなのだ。

さて…言い訳も終わったところで…いざ!


「…」


読書の邪魔をしないように慎重に…しかしちゃんと肉付きチェックが出来るようにしっかりと…全ては私の身体捌きにかかっている。

慌てるな…魔物退治で培った全ての経験を今ここに!

そしてゆっくり…ゆっくりとナナちゃんのお腹に手を回し…ぎゅっと抱きしめることに成功した。


「…おぉ」


その瞬間、私は確かな感動を覚えた。

ナナちゃんは見た目通り、驚くほど華奢で細くて…それでも腕に伝わってくるのは確かな肉の感触。

ほにゅんと柔らかくて…低めとはいえ確かな体温も感じる。

思えば正気の時…こうした平常時にナナちゃんを抱きしめたというのは初かもしれない。

日常の…何でもないこの瞬間にナナちゃんを抱きしめることに成功した。

これを感動と言わずに何というのだろうか。


「ふふっ…ふふふふふ…」


ついつい人としてどうなのかって言うレベルの笑いが口から出てきてしまったのは御愛嬌だ。

そんなこんなで私がナナちゃんのお腹を堪能し、ふと顔をあげると…こっちにふりかえっているナナちゃんと目が合ってしまった。


「…」

「…」


ヤバイ。

いつから気がつかれていた?いつから見られてた?絶対にまずい。

ナナちゃんの中での私の評価が爆下がりしてしまうかもしれない。

どうにかしなければ。

あわあわと言い訳を考えている間にも、私の腕はナナちゃんのお腹に絡みついたまま離れようとしない。

この腕…完全に私の脳と分離されている…!?いや、そんな馬鹿な事を考えている場合じゃない。


(…)


私の内側の誰かからも呆れたような視線を向けられている気配を感じるけど、そんなもの知らない。

今はとにかくナナちゃんの中の私の評価を守るんだ!


「えっと、これは──」

「ユキノさん」


私が何かを言うよりも先に、ナナちゃんが口を開いた。


「な、なにかな…?」

「少しだけいいですか?ちょっと試したいことがありまして」


「あ、はい」


スルリとナナちゃんが私の腕から抜け出して、向き合うようにして立ちあがる。

腕の中から逃げていった温もりに一抹の寂しさを感じていたのもつかの間、ナナちゃんが私の胸とお腹の間?くらいにトンと手を置くように触れる。

なんだろう…?また胸を揉みたいのかな?

行動の意味が分からなくて首をひねると、私の目にナナちゃんが手に持っている本の表紙が飛び込んできた。


【超解説 人体解剖全図】


瞬間、なにか軽い圧迫感を感じると共にまるで電流が走ったかのように私の全身に衝撃が奔った。

何が何だかわからずベッドの上にうずくまる。


「い、いだっ…ぃ…な、なにが…?」


いや…痛いと反射的に言ってはみたものの…気にするほど痛くはない。

びっくりはしたけどダメージはそんなにない。

ただびっくりはしたよ。

びっくりしたんだよ。

一瞬だけだけど息できなかったし…。

たぶんナナちゃんから掌底のようなものを受けたのだと思うけど…ほんとのほんとにびっくりした…。


「痛かったですか…?ごめんなさい、痛みはないと思ったのですが…ほんとにすみません」

「あ、い、いや!痛くはなかったけど…なに、をしたの…?」


「いえユキノさんと「遊ぶ」時に毎回痛い事ばかりだと芸がないかと思いまして…ちょっと趣向を変えてみようと思ったのですが…」

「そ、そうなんだ…びっくりするから次からは先に教えてね…」


「はい、すみません…」


謝りながらナナちゃんがうずくまってる私の顔を覗き込む。

すると少しずつその真っ白な頬に朱がさしていくのが目に見えてわかった。

もしかしてと頬を触るとどうやらちょっと泣いてしまったみたいで涙が一筋だけ流れ出していて…気がつけばにっこりとした笑顔を見せてくれた。


どうやら私の反応に大変満足してくれたらしい。

うん、ナナちゃんが喜んでくれたのならいいや。

わざわざ勉強してくれたみたいだし…というか本読んだだけで今のを実行できるのってすごくない?もしかしてこれが天才というアレ…!?


(変な方向に行ってしまったなぁ…)


呆れているような、黄昏ているような哀愁のこもった声が私の内側から聞こえてきた気がするけど多分気のせいだろうと思った。

前から肉を切る感触とかたびたび言ってましたがユキノさんは触感フェチです。

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― 新着の感想 ―
[一言] スノーホワイトさん、特に何もしてなくても起きてるじゃないですかァ! スノーホワイトさんも触感フェチなのかな…腕でもあるし…
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