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話合い

説明回です。

少しの間このお話が続いてしまうので本日はもう15時に一話投稿します。

息が苦しい。

皇帝という肩書を持っている女性に見つめられている…ただそれだけなのに身体を押さえつけられて首を絞められているような苦しさを感じる。

同時に背中に冷たい刃物を押し当てられている気さえしてくる。

殺される。

どうする?なんでこんな状況に?このままだと殺される…?どうする…どうする…?

殺す?

そうだ殺すしかない。

殺されそうなんだからそうするしかないじゃない。


違う、落ち着け。

落ち着いて私。

そんなことできるわけない…そもそもこれだけ気圧されているのに敵うはずない。

それに殺したところでどうするの?その後は?そう…殺すわけにはいかないんだ。

だから落ち着いて…大丈夫…。


「コーちゃん。あんまり刺激しないであげてってお願いしてたでしょう」

「ふん。この程度で刺激なんか言えるものかよ。まぁもっとも…まさか軽く睨んだだけで殺気まで飛ばされるとは思わなかったがな?」


ドキリと軽く心臓が跳ねた。

皇帝さんの隣に控えているアランと呼ばれていた鎧の人もそっと腰の剣に手をかけている。

どうしようと相変わらず混乱することしかできない私の前に庇うようにアマリリスさんが入ってくれた。


「コーちゃん、話したでしょう?ユキノちゃんは…」

「もしかすれば我らが捜していた能力持ちだって言うんだろ?分かってるさ。だがな、だからと言って余計な危険を背負うつもりもねぇんだよこっちは。お前からの報告書をざっと見るだけでも問題しかねぇ」


「だからそれをどうするか話しましょうっていうのが今回の趣旨でしょう?」

「…ちっ」


アマリリスさんが私に振り向いて「大丈夫だからね」と微笑んだ。

そんな彼女を見て右腕の疼きを感じてしまう自分がひどく惨めだ。


「まぁいい。なら早速その話とやらを始めようじゃないか。座れ」


私とアマリリスさんはいつの間にか用意されていた椅子に腰かける。

これから一体何が始まるのか…ただただ恐怖だ。


「ユキノ・ナツメグサ」

「は、はい!」


皇帝さんに名前を呼ばれ声を裏返しつつ返事をする。


「昨日の街中で起こった事件の報告を見させてもらった。お前はアルトーンの所のガキから能力を奪った。それは間違いないのか?」

「アルトーン…?」


誰の事なのか一瞬分からなかったけれど、すかさずアマリリスさんが「リッツくんのこと」と耳打ちしてくれる。

だけど問題は私が持っているその問いに対する答えが「よく分からない」になるという事だ。

記憶はもちろんある…あるのだけど正直何が起こっていたのかは理解していない…。

あの時は便利だなぁとしか思っていなかったから…。


「どうした。なぜ黙る?」


また皇帝さんの目が鋭くなった気がした。

もう素直に話すしかない…。


「ごめんなさい…よくわからなくて…」

「わからない?」


「はい…確かのあの時は…なんと言いますか…その、そんな感じの事が起こったってだけで…私自身初めての事でしたし奪えたというのが正しいのかどうか…」

「おい、アマリリス」

「なに?」


「アルトーンのガキはどうした。あいつの能力は健在なのか?」

「…」


「おい」

「…わかんない。でもあの子、私に言い寄ってきてて…それをお姉ちゃんが見ちゃってたみたいで…」


アマリリスさんが俯き、皇帝さんが顔に手を当てて苦々しい顔をした。


「どうして止めなかった」

「止めたけどさぁ~ああなったお姉ちゃんを私がどうこうできるわけないでしょう~?」


「今アルトーンのところで問題が起こるのは…いや、それは置いておくとしてもあいつの能力がどうなったかの確認が取れねぇじゃねえか」

「お姉ちゃんが言うには「欠片」が無くなってるって話だったよ」


トントンと皇帝さんが難しい顔で椅子を軽く叩いている。

話を聞く限りあの男の人に何かがあったみたいだけど…私は殺していない…はず。

あの時アマリリスさんが止めてくれたはずだよね…?

それにお姉ちゃんって言っていたし…女神様が何か関係している?

でもまさかあんな綺麗で透き通ったような人が人を殺すなんてマネはしない…よね?


「おいユキノ・ナツメグサ」

「はい!!?」


「いちいち驚くな。お前…今でもあのガキが使っていた雷は使えるのか?」


気にしていなかったけれど問われて改めると確かに私は今でもあの雷の力を使える。

そんな感覚がある。

という事は本当にあの力を奪えた…?でもどうして突然スノーホワイトにそんな力が目覚めたのだろう?


「どうなんだ」

「あ…その、使えると思います…」


「ふむ…」

「コウちゃん。今度は私がお姉ちゃんが手出ししないようにするからさ、もう一回ユキノちゃんに試させてみるのはどう?」


「…まぁそれしかないわな。なぁユキノ・ナツメグサ…いや、ユキノ」

「はい…」


「お前、神の存在を信じるか?」

「神…ですか?」


神様…それはよくある概念的なあれの事だろうか…?

なにか大変な時に助けてくださいと願ってみたり、祈りを捧げて見たりする…いわゆる神頼みの神様?

信じているかと聞かれれば…どうなのだろう?よく分からない。


「えっと、その、気にしたこともなかったと言いますか…」

「まぁそうだろうな。人という奴は神頼みを平然とするが、だからと言って別にその存在を感じているわけでもない。信仰という行為もそうだ。そこに本当に神がいるのかどうかなんて関係ない。ただ盲目に自分の考えを信じているだけというのがほとんどだ。だがな?いるんだよ神様ってのはな」


「え…?」

「実際にはいたというのが正しいか?かつてこの世界にはとある一柱の神がいた。この世界そのものを司っていた大層な奴だ。そしてある時、その神が死んだ」


皇帝さんがとても真面目な顔で語っている。

まさかこの状況で絵本や小説の話をしているわけではないと信じたいけれど…いきなり神様とか言われてもどうしても創作の話だと思えてしまう。


「そう変な顔をするな。とりあえず最後まで聞け。まぁ色々あったんだが、その神は死んだ…というか殺されたんだ。一人の阿呆が何も考えないままぶっ殺しやがった…その結果どうなったと思う?」

「いや…え?その…わかりません…」


「その神が持っていた力が粉々に砕けて世界中に散らばったんだ。その「力の欠片」は実に様々な現象を引き起こした。雲に混じれば陸を沈めるほどの雨を降らせ、大地に混じれば地面を引き裂くほどの揺れを起こした」


そこまで聞いたところで私はその話に聞き覚えがあると感じた。

いや…たぶんたいていの人は知っている話だ。

辺境の村育ちの私でさえ知っているこの世界の歴史…。


「100年前の大災害…?」

「そうだ。もう少しだけ正確に言うなら100年と数十年前か?ガキでも知っている、忘れる事の出来ない忌々しい歴史だ。それを引き起こしていたのが神の「欠片」。だがな問題はそれだけじゃなかったんだ。いいや、むしろこっちのほうが問題だった」


災害以上の問題…当然だけど私はその当時の災害を文でしか知らない。

いや、もしかしたら誰かに聞いた話だったのかもしれない…とにかく当時を経験した人間ではない。

だけどそれがどれだけ酷い出来事だったのかは想像もできないくらい恐ろしい。

それ以上のことがあるのだろうか…。


「欠片は世界に混じれば災害を引き起こす。ならば生き物に混じればどうなったと思う?」


ゾクリと冷たい何かが私の背をこぼれ落ちた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、前作の「欠片」とは別だったんですねこれ 力だけ残ってたのかぁとか思ってました
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