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邂逅

次回は明日か明後日に投稿します。

「はぁ~疲れた疲れた!年取るとすーぐ腰にきていけねぇよなぁ」


ネフィリミーネはドガッと擬音が聞こえてきそうな勢いでソファーに腰を掛け、それに倣いクイーンも向かい側のソファーに座る。

イヴセーナは別室で寝かされており、アルフィーユは座らずにネフィリミーネの後方に控えるようにして佇んでいた。


「おい、アル。お前も座れよ」

「私は立場上、あなたのサポートが仕事なのでここで、」


「すーわーれー!手元に見栄えのいい顔かおっぱいがないと落ち着かねぇんだよ俺様は」

「…」


ジトっとした目をしながらもアルフィーユが控えめにソファーに腰を掛ける。

そんなやり取りを見てクイーンもジトっとした目をネフィリミーネに向けたが、それを受けている本人は機嫌がよさそうに鼻歌を歌っていた。


「相変わらずですねネフィリミーネ様」

「おうよ、ババアなんてもうどうやっても生き方なんて変わらんもんよ」


「そうですか。それで…何があったのか聞いてもいいですか」

「聞いてもいいですかって言うかさ、あのにーちゃん間者だったんだろ?セキュリティーどうなってんのよ。あ、責めてるわけじゃないぜ?ただほら、俺様の女達に何かあったら一大事でマジヤバいだろ?」


「ここにあなたの女なんていません。それとセキュリティー面でもご心配なく。先ほどの彼の事はとっくの昔から把握済みでしたわ。彼が外部に送っていた手紙等の情報もすべて回収していますし、今回もあえて泳がせてどこの所属なのかを確かめようとしていただけです」

「あ、そうなん?じゃあ余計なことしちまったか」


「ご心配なく。多少計画は狂いましたが修正できないほどではありませんわ」

「ならよかった。ところで…」

「クイーンさん~軟膏ってどこにありましたっけぇ~」


ネフィリミーネが別の話題に移ろうと口を開きかけたその時、二人が話していた部屋にやけにのんびりとした口調が割り込み、会話を中断させた。


「お、アトラじゃねぇか。相も変わらず可愛い顔してんなお前は」

「んお、中ボスじゃあないですかぁ~相も変わらず反吐が出るほどチャラいですねぇ~」


声の主はアトラであり、その姿を確認したネフィリミーネが軽く手をあげ挨拶をし、アトラもそれに倣い少しだけ頭を下げた。


「アトラ…軟膏なんて何に使うの?手でも痛めたのかしら」

「いえいえ~必要なのは私ではなくてぇ~」


そこでようやくクイーンはアトラが気絶したカララを片脚を掴んで無造作に引きずっていることに気がついて盛大にため息を吐いた。


「また喧嘩したの?もう少し落ち着きを持ちなさい」

「それは濡れ衣ですよぅ。今日はカララさんのいつものやつですぅ。勝手に自爆したんですぅ~」

「ぎゃはははははは!!やっぱ賑やかだな。カララの奴は今日も変わらず可愛い顔してんな」


ネフィリミーネが可愛いと口にした瞬間に、バッと弾かれたようにカララが体を起こす。

額の中心にはその部分を盛大に打ち付けたのか、ぷっくりとした膨らみが出来ており、またアトラが引きずっていたせいで本人からは見えないが背中側がとても見せられたものではない状態になっていた。

しかしそれらを理解していないカララはキョロキョロと半開きの瞳で辺りを見渡していた。


「今だれかカララちゃんのこと可愛いって言った?」

「おー言った言った。久しぶりだなカララ~今日も可愛いぜっ」


「あ!中ボス!でしょでしょ!もっと言って!カララちゃん可愛いって!」

「可愛い可愛い。お前がいつだって可愛さの最上値だぜ~!」


「もっと!」

「相変わらずいい女だなカララ!今夜こそ俺様と一発…いや一発と言わず腰が砕けるほどに熱い夜を過ごそうぜ!」


「あ、そういうのはいいです」


それは今までないほどにカララ渾身のマジトーンでの拒絶だったとアトラとクイーンは後に語っていたという一言だった。


「んだよつれねぇな~!たまには年寄りをいたわると思って相手してくれてもいいじゃねぇか!女同士あと腐れもなしよぉ~」

「いやあたし女に興味ないし~。むしろ(つら)のいい女はみんな敵だから」


「ぎゃはははははは!そういう一貫性のあるところ俺様は好きだ、ぜっ!」


カララに向かってウインクを放ったネフィリミーネの頬を隣にいたアルフィーユのビンタが襲い、小気味のいい音を辺りに響かせた。


「いってぇええええ!何すんだこの野郎!」

「…あなたが何人夜を共にする相手を作っても構いませんが嫌がる相手に強要はしないと約束しましたよね?」


「だからってシバくこたぁねぇだろうがちくしょう…だったら嫌がらない奴ならいいんだよなぁ?」


ネフィリミーネはその腕をアルフィーユの方に回し、うっすらと赤く染まった耳を軽く舐めた。


「っ…あの様子じゃあイヴセーナさんは無理でしょうし…それであなたが他の人にその毒牙を剥かないというのなら…」

「そりゃあ健気な事で…今夜は寝かせねぇからな」


ふっ…と耳に息を吹きかけながら囁かれた言葉にゾクゾクと身体を震えさせた後に、くったりとした様子でアルフィーユがソファーに倒れ、それをネフィリミーネが満足そうな顔をして支える。

その光景を正面から見せつけられたクイーンはゆであがったかのように顔を紅潮させ、しばらく何も言えずにわなわなと口を震えさせたが、やがて咳払いをして誤魔化した。


「ごほん!それでネフィリミーネ様。戻ってこられたという事はボスから話を聞いているという事でいいのよね?」

「おーちゃんとここに来る前に「小リス」に言われた通りにしてきたぜ。ユキノとか言うねーちゃんに会ってきた。結果はまぁ小リスから聞いてくれ」


「…あの私たちしかいないとはいえ、一応名前を連想させるような呼び方はやめてもらえないかしら」

「んなこと言ったって俺様にとってはあいつがおしめしてた頃から小リスなんだぜ?ババアに今さら習慣変えさせようなんて思っちゃいけねぇよ~」


「はぁ…変えられずとも意識はしておいてください。あなただってボスが窮地に陥るのを望んでいるわけじゃないでしょう?」

「おうともよ、可愛い妹分だからな。気を付けるよ」


「お願いしますわよ本当に…それでもう一つお仕事を頼みたいの」

「あぁ聞いてるよ。ナナシノちゃんだっけ?どこにいんの?」


クイーンがゆっくりと上を指差し、ネフィリミーネはいかぶしげに首をひねった。

なぜならネフィリミーネは「そこ」に何の気配も感じ取れなかったからだ。


「上にいるのか?何の「匂い」もしないんだが?」

「います。物音一つ聞こえてこないそうですが抜け穴はおろか窓一つない部屋を貸しているので」


「おいおいおいおい!聞くところによるとあのユキノってねーちゃんとそう変わらん年の女の子なんだろ?だめだぜ~瑞々しい果実を閉じ込めるなんてマネしちゃあ…うっし!ならいっちょ挨拶に行くか!鍵はどこだ?」

「マスターキーが戸棚に隠してあるわ」

「あっ」


マスターキーという言葉に反応してカララが何故か全身から冷や汗を流し始めた。

隣にいたアトラにアイコンタクトを送り助けを求めようとしたが帰って来たアトラの視線には「ば~~~~~~~~か」という返答のみが込められていて…。


そこから10秒後、カララにクイーンからの特大の雷が落とされたのだった。

エイプリルフールに合わせたわけではないですがしれっと某リスさんのついていた嘘をお披露目する回でした。

捻るつもりもなかったので以前からひたすらほぼ答えを言っているような物でしたが…(笑)

次回からそこら辺の掘り下げになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] …あぁそうか、小リスちゃんからすればリフィル様って一応仇になるわけですね 立場的に手帳の主の素性は理解した上でのもんだろうしなぁ 最期がどうなったかまでは載ってないだろうけどリフィル様のこと…
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