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疑惑の階段  作者: ran.Dee
1/5

婚約破棄は突然に

ラウエンシュタイン王国にある貴族学園の講堂では卒業式を(つつが)なく終えたところで全校生徒が退場の案内を待っていた。


「はい、ちゅーもーく!」


無人となったはずの壇上にいつのまにかカール王子殿下とその取り巻き、及びヘルマン男爵家の令嬢フローラが立っていた。

会場内の視線が壇上に集まった頃合いを見計らって殿下が口を開いた。


「コンスタンツェ・ランメルツ、前へ出たまえ。」


★★★


王国一の大貴族、ランメルツ公爵家の長女コンスタンツェは幼い頃にカール王子と婚約した。

婚約と同時に次期国王、次期王妃としての教育が始まったが、残念なことに殿下は凡庸であった。

逆にコンスタンツェが優秀過ぎたため不幸なことに殿下の凡庸さが際立ってしまった。

大人たちはちょうど良い組み合わせと考えたが当の殿下は居たたまれない。

しかしラウエンシュタイン王家に王子はカールしかいないため逃げ場はなかったのだ。

婚約者との関係は形式的なものに留まった。


★★★


「お呼びでしょうか、殿下」


コンスタンツェは首席であったので最前列の真ん中にいた。

なので、その場で立ち上がっただけで「前へ出た」ことになった。

どこからか失笑が漏れた。


そんな殿下でも見目だけは王者の風格がある。

姿勢良く引き締まった体躯に真っ白な儀礼用の騎士装束を纏い、整った顔の周りに綺羅綺羅しく輝くブロンドの髪をたなびかせ、口元をニヒルに歪ませて透き通った碧の瞳で睥睨する様はなんとも言えない圧がある。


相対するコンスタンツェも稀にみる美人だった。

長く癖のないプラチナブロンドのストレートヘアに彩られた白磁の(かんばせ)に表情を映さない切れ長のアイスブルーの瞳、ポッテリと形のよい桜色の唇が僅かに開かれ、この状況への当惑を表す。

女性にしては長身で細身であっても柔らかな曲線を描く肢体は白ブラウスの首元に赤いリボン、袖に金糸の刺繍が施された紺のブレザー、臙脂のフレアスカートといった当たり前の制服姿でも蠱惑的に見える。


「コンスタンツェ、私は君を未来の国母には相応しくないと判断した。

これをもって婚約を破棄させてもらう。」


「婚約を解消することについては了承いたします。

しかし未来の国母に不適というご判断につきましては理由をご教示いただけますでしょうか?」

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