2006年5月7日─1
発生年月日・2006年5月7日
天気・晴れ
気温・記入無し
結末深刻度・0
特記事項・(三級機密事項)による事件の可能性。一級組員を1名派遣したが、彼の到着前に、遺族に(特級機密事項)が接触したと思われる。
○●○
『夢』を見た。とても怖い『夢』だ。
私の家族が殺される『夢』。
父、母、弟が殺された。姉と私だけは生きている。
私は自室のベットの上でその事に気が付いた。
姉が、生首の髪の毛を握りしめて、私の前に立っている。
その首が、自分達以外の首だと気付いた瞬間に理解した。
──次は私の番だ。
だが、不思議と恐怖心は無かった。
それが『夢』だとすぐに気付いたからだ。
人は、なかなか『夢』を『夢』だと理解しないけど、全くしないわけじゃない。
実際に私にもその経験がある。
レム睡眠だかノンレム睡眠だとか、そういう違いによるものだと思う。詳しくは分からないが。
だから目を開けた。
『夢』が消え失せて、現実に塗り潰される。
「……え」
現実にノイズが走り、『夢』が現実を塗り潰す。
私の目の前にいるのは、『夢』と同じく何かを握りしめて立つ姉の姿。
体を血で赤く染めて、私を虚ろな目で見つめている。
『夢』と違う所は、握りしめているモノが生首ではなく包丁だという事。
そういえば、『夢』の中では彼女は凶器を持っていなかった。
だから、恐怖心が無かったのだろうか。
だが、現実の彼女は凶器を握りしめて私を見つめている。
今度こそ、次は私の番だ。
『夢』と違って恐怖心はある。
目の前にいる彼女に怯えている。恐れている。怖がっている。
「……わ、私を殺すの? というか、何で血まみれなの? お父さんお母さんは大丈夫? 弟に何かした? 」
震えながらも、疑問を口にした。
するとなぜか、姉の顔が歪んだ。
小さく首を横に振って、何かを伝えようとしている。
一体どうしたというのだ。
今まで私の心を支配していた恐怖心は嘘のように消え去り、代わりに疑問が湧いてきた。
本当に姉は家族を殺したのか。彼女の体を赤に染めているのは本当に血なのか。この状況は何なのか。そして何よりも、これは現実なのか。
──『夢』ではないのか?
「お姉ちゃん」
私が、そう口にした瞬間。
姉の体は爆ぜた。
私の体は赤に染まり、先程の姉と同じようになった。