表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

第三回なろうラジオ大賞投稿作品

探偵助手は探偵のエスパーぶりに溜息が尽きない

作者: 衣谷強

『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。

指定キーワードは『助手』。

探偵とエスパーという、無茶な組み合わせをお楽しみください。

 とある探偵事務所。

 事務所の主である探偵は、紅茶のカップを傾けて空にすると溜息をつく。


「なぁ助手」

「何ですか先生」

「暇だね」

「暇ですね」

「先月華麗に殺人未遂事件を解決したのに何でだろ? 警察から依頼がバンバン来るかと思ったのに」

「その解決方法に問題があったかと」


 助手の言葉に、探偵が目を見開いた。


「……どのあたり?」

「いくら『手で触れた人の心が読めるエスパー』だからって、部屋に入った途端全員に握手を求めた挙句、『犯人はあなたです』は色々すっ飛ばしすぎです」

「だってわかっちゃうんだもん。善は急げって言うし」

「で、犯人お決まりの『証拠はあるのか!』に『ないけどあなたは犯人です。間違いない』は、周囲からはもはや言いがかりレベルに見えましたよ」

「ふむー」


 探偵は納得と不満が混じった息を吐く。


「でもその後ちゃんと心を読んで、凶器とか犯行の流れとか動機とか言ったじゃん」

「それが一番まずかったですね」

「え、何で?」

「凶器と犯行の流れまでは良かったんですけど、観念した犯人が動機を語ろうとしたのに、先生全部言っちゃうんですもん」


 助手の指摘に、探偵ははたと手を打った。


「あー、言わせてあげた方が良かったやつ?」

「良かったやつです。特にとどめを刺そうとしてやめたくだりは、先生が無駄に情感を変に込めたせいで、さらに空気が微妙になりましたし」

「良かれと思って」

「あの後皆様『お、おう……』って言ったっきり、静かになったじゃないですか」

「あれ私の語りに感動してたからじゃなかったんだ」

「なかったんです。刑事さんが手錠かけるタイミング見失って、危うく逮捕しないまま解散になるところでした」

「助手がフォローしてくれて助かったよ」


 笑って言う探偵に、助手は溜息をつく。


「全く先生は手で触れられれば心がわかるからって、それ以外に対して雑なんですよ」

「面目ない。私は助手なしには生きていけないね」


 にこっと笑って言う探偵から、助手はふいっと目を逸らした。


「……そういうところですよ」

「え? 何?」

「お茶のお代わりはいりますか、と聞いたんです」

「あ、お願い」

「お茶菓子は?」

「クッキー!」

「はいはい」


 助手は足早に給湯室に姿を消す。

 じきに甘く温かな香りで部屋が満たされていった。

読了ありがとうございます。


探偵と助手の性別は、あえて設定してません。

ぽやんな男探偵の世話する世話焼き女助手でも、ほんわか女探偵をやれやれと助ける男助手でもお好きな方で。

……同性、そういうのもあるのか。


配役を入れ替えて読み返してもらったら楽しいと思います(個人の感想であり効果を保証するものではありません)。


次回キーワードは『サイコロ』、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] エスパー設定に絶妙な助手のツッコミ面白かったです。 男性同士をイメージしてましたが、最後で読み間違えていたと思い、あとがきであえての性別不明なのかと知り、他の方の感想で混乱するという、映像…
[良い点] なろうラジオ大賞3から拝読させていただきました。 性別論議も起こっているようですが、それはさておき、なんとなくまったりして、しょうがないなーという関係もほっこりしていいですね。
[良い点] ほんわか天然さんな探偵さんと、フォローが大変な苦労症の助手さんのコンビが素敵でした。 探偵さん、助手さんのことはとても大切にしてるんだろうなと思いました。 触れれば心が分かるだけに、大切…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ