もっともっと、とーってもいい場所。
夏のホラー2021参加作品。
ぼくは、学校でかくれんぼをしていた。
友だちとかくれんぼしていた。
なつ休みだから、学校ぜーんぶを使ってのかくれんぼ。
百を数えて「もぉいいかぁい」「まぁだだよぉ」って、かくれんぼをしていたんだ。
ぼくは、かくれるのがトクイなんだ。
そうじ道具のロッカー? ダメダメ、そんな所にかくれても、ドアを開けたらすぐに見つかっちゃうよ。
音楽室の楽器入れのたな? んー、まぁまぁかな。楽器のかげにかくれられるしね!
もっともっと、ぜったいに、だれにも見つからない、とーってもいい場所があるんだよ?
ぼくは、二かいに上がって、美じゅつ室に入った。
美じゅつ室のとなりには大きい絵がいっぱいおいてある部屋があるんだ。
先生が『キャンバス』って言うんだよ、っておしえてくれたっけな。
この部屋のカギはね、いつもここに置きっぱなしなんだって。ヒミツだよ?
大きいキャンバスたち、ちょっと重たいけど、よいしょって少しずらしてね、ポスターをはがすとね……ほぉら、カベに穴があるでしょ?
よつんばいで、この穴から入ってね、左に行って、まっすぐすすんで、また左に行くと、ちょっと広い場所があるんだ。
ここが、ぼくのおすすめ! ぜったいに、見つからないよ!
「ほんと?」
あぁ、ほんとうさ!
「でも、このままじゃ、この穴が見えてバレバレじゃない?」
だいじょうぶだよ、キミが入ったら、ぼくが元にもどしてあげるからね。
え、ぼく? だいじょうぶだよ、ぼくは他にもいーっぱいかくれる場所知ってるからね! ほら、早く入って? もう百になっちゃうよ。
「ほんとだ! ありがとっ!」
ううん、どういたしまして。
きっとなかなか見つけられなくて、とーってもヒマだろうから、お昼ねでもしてるといいよ。
あぁ、だいじょうぶだよ、かえる時はちゃぁんと、友だちがみんないるか、かくにんするから、ね。
「おやすみ、みっちゃん」
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「ねえ、正義、今日学校に行ってたわよね?」
「うん、行ったよ」
「遊んだお友達の中に、井伊 路姫ちゃんっていたでしょ?」
「うん。みっちゃん、いたよ」
「帰る時にどこかで見かけなかった?」
「しらなーい」
「あら、一緒に遊んでないの? 友達でしょ?」
「あんまりなかよしじゃないから、いっしょにはあそんでないよ」
「そうなの?」
あの子は友だちじゃない。
いっしょにはあそんでない。
あんないしてあげただけ。
あんな子は、友だちなんかじゃない。
だって、いばってばっかり。
気がよわい子、泣かせてばっかり。
あの子は、わるい子だから、きっとバチが当たったんだよ。
ぼくは、ぜったいに見つからない場所、おしえろって言われたからおしえただけだもん。
「だって、あの子、ちょっといじわるだから」
「あー……。路姫ちゃん、家に帰って無いらしいのよね。心配だわぁ」
「そうだねぇ。……あそびつかれて、どこかでねてるのかも、ね?」